ありのままのキミに夢中 ~イケメンはずんどうぽっちゃりに恋をする!~

中村 心響

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15章 苗の異変

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「クソ!‥

また、あの二人を見んのかよ!!」


晴樹は頭を抱え小さな声で言葉を吐き捨てた

あの日‥
付き合い始めて、手を繋ぎ学校から笑いながら帰って行く二人の姿‥あの時の景色が頭に浮かんで離れない‥


‥どんなに好きでもただ想ってるだけじゃッ‥なんにもならない!!

「‥んで‥っそんな約束してんだよ‥ッ‥」



両手で頭を抱え、今にも泣き崩れそうな表情を微かに見せる晴樹を直哉は心配そうに見つめている‥



‥なえっ‥


一緒に居たいっ


兄さんの立場でなんてほんとに我慢出来るわけないだろっ‥


ジジイじゃあるまいしっ
俺が‥援助するだけで満足なんて出来るわけないだろッッ


キスだって‥したくてしょうがないっ

苗の‥

柔らかい体だって思いっきり抱きたい──



酔って眠った苗と素肌を重ねて思いっきり抱きしめた感触が、鮮明に晴樹の脳裏に蘇る



一度知ってしまった好きな娘の感触‥そして体温‥


忘れられる筈がなかった‥



あの二人が付き合い出したら‥

やっぱり耐えられない‥



離れたくなくても‥
たぶん‥また俺が逃げる‥



苗を好きになって自分の情けなさを十分に知りつくした‥


‥あと二週間

あと二週間で苗はまた‥夏目のものになる‥



晴樹は頭を抱えたまま下をうつ向き机を見つめた‥


隣に居れるだけでいいなんて‥ただのキレイごと‥


好きな娘の傍に自分以外は居て欲しくない―――っ



どんなに期待出来なくても、望みがなくても‥援助するだけでも傍に居れればいいなんて決心してもッッ


心がそれを拒否してしまう‥

頭では‥わかっていてもっ心がもがく―――


絶対に誰にも渡したくないと心が暴れ出すっ


「なえ‥‥なんで‥

なんでッ‥俺じゃ駄目なんだ‥‥」


か弱い声で呟くと、晴樹は震える唇をキュッと強く噛み締めていた‥














「あと‥

二週間‥か‥」


学校が終わり、晴樹は駐車場から車を出して苗を待ちながらボソっと呟く‥

革のシートに身を沈め、深いため息をつきながら‥

悲しい笑みを浮かべ、そしてまた小さく呟いた


「‥クス‥

どーしたって結局、幸せは俺から逃げてくじゃん‥」



力なく開かれた瞼を数回瞬くと、車の天井に目をやりふと、バックミラーを覗き込む。そこには後方から歩いてくる苗の姿が映し出されていた‥


晴樹はそんな苗を遠い目で見つめている‥


‥苗、
俺がまたお前から離れていったらお前はすがりついてくるんだろ?



夏目と付き合い始めた苗に、晴樹から切り出した縁切り宣告‥


苗はあの時、必死になって晴樹の携帯にメールと電話を繰り返し入れていた。


“苗の傍にいて──”

“兄さん居ないと苗はだめだょ”



すごく嬉しくて‥すごく複雑で‥
だって届けられたその言葉はすべて、援助のためだから‥


俺自身を想って届けられた言葉は一つもない‥



どんどん近づいてくる苗をミラー越しに見つめると、晴樹はふと眉を寄せ悲しそうに顔を歪めた。





「兄さん!お待たっ」


車までたどり着くと、助手席のドアを開けて明るく声をかけてくる苗に晴樹はとっさに作り笑いを浮かべ、苗を迎えていた‥。



‥苗を送るのもあと二週間‥‥たぶん二人付き合い始めたら、夏目はなるべく俺から苗を引き離そうとするはず‥




「苗‥」

「はいはい!なに?」


走り出した車の中で話しかけてきた晴樹に苗は明るく応えた。


「今から映画でも見に行くか?」

「映画?‥‥いいねそれ!
今、ちょうど観たいのがあっただょ!!」


「観たいの?

いいよ、じゃあ苗の観たいやつにしようか」

晴樹の提案に明るく乗ってきた苗に晴樹も笑顔で返す

「でも、兄さん忙しいんじゃないの💧?
お客さんの相手しなきゃでしょ‥?」

「ああ‥昨日散々付き合ったからな💧
今日は大丈夫だろ!?」


‥俺の全部の時間を使われちゃかなわない‥
今だけでも苗との時間を‥

昨日散々歩き回ったんだ‥さすがに今日は家でのんびりしてるだろ?



晴樹は勝手にそう思い込む‥‥


「そう💧?

じゃあ‥買い物、先にしていい?すぐ済むからさ」

「買い物?
すぐ済むならいいけど💧」

そう答え、苗の指定する薬局に車を走らせる晴樹の横で苗は屈託のない笑みを浮かべ横目に通り過ぎる景色を眺めていた


‥いやぁ助かったっ!
兄さんが買い物付き合ってくれる時にしか買い込めないもんね。
ほんと、兄さんには感謝感激だよ!



‥寒い日は懐で温めた靴を履かせてあげたいくらいだね!!



苗は心の中で晴樹に忠誠を誓っていた‥


薬局に着くと、苗は赤ちゃんコーナーに向かい必要な物をどんどんカートに入れて行く。

オカンの出産後に備えて、おむつやミルクを苗は手に入れたかったのだ。



会計を済ませ、品物を袋詰めしているとふと、晴樹の携帯に電話が入った


「───っ…」

晴樹は携帯を確認して一瞬焦りを感じる


‥こんな時に何だよリディのヤツっ!?


品物の袋詰めを苗一人に任せ、晴樹は苗から距離を置き電話に出ていた


『晴樹遅い!
まだ、学校終わらないの!?もう、アタシ待ちくたびれたわ!!』


「はあ?だって今日は何も約束なんてしてなかっただろ!?」


電話に出た瞬間ご立腹のリディに晴樹も言い返す


『約束!?そんなのっ‥

したに決まってるじゃない!!

覚えてないの!?』


‥えっ
約束なんてしたか?


リディに強気で返されて晴樹はぐっと押し黙った。

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