【完結】一夜限りのはずが、ハイスぺ御曹司に熱烈求愛されて一途な愛を刻み込まれました

中山紡希

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第三章 近付く距離

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全てが完璧だとは思っていたけど、家事能力まで高いなんて信じられない。
こういう人を巷ではスパダリと呼ぶんだろうか。
奈々子が今の彼の姿を見たら、大騒ぎだろう。

「――どうした?そんな見られたら照れるよ。俺がいなくて、寂しい?」
「べ、別に見てませんから!勘違いですよ!」
「ははっ、分かりやすいね」

とびっきりの笑顔を浮かべる彼から、慌てて視線を反らす。
ダメだ。彼といると、調子を狂わされてしまう。

出会いは最悪だったけど、あのときの彼の言動は本当に悪気がなかったのかもしれないと思わされる。
いまだに彼がどういう人間なのか掴み切れない。
いや、むしろ知れば知るほど彼が分からなくなる。
頭の中がゴチャゴチャになり、私は再びパソコン画面に向き合う。

こういうときは仕事をするに限る。
奈々子の言う通り、私は相当なる社畜らしい。
しばらくすると、テーブルの上にホットコーヒーが置かれた。

「ありがとうございます」

首と肩が凝り固まっている。お礼を言って、一度作業を中断して大きく伸びをする。

「休みの日もこうやって仕事漬け?」

砂糖とミルクをたっぷり入れて、マドラーでグルグルとかき混ぜる私に彼が尋ねた。

「まあ、忙しい時はこんな感じですね」
「そっか。でも今日はもう終わりにしよう。無理するのは体に良くない」

……な、なんですと?

こめかみを引きつらせながら、彼に目を向ける。
彼はテーブルに肘をつき、手のひらの上に頬を乗せて伏し目がちに私を眺めていた。

「無理をするな……?こうなっている理由はなんでしょう?JJTのコンペ、時間が足りないって私言いましたよね?それを強行したのは誰でしょう?」

皮肉たっぷりに質問攻めする。

「俺だけど」

悪びれる様子の一切ない彼に盛大な溜息を吐く。
自分が受け持っている仕事だけで精いっぱいだというのに、JJTの仕事までやれば作業量が多くなる。
彼だってそれを分かっているはずなのに……。

「今からやろうとしてるのは、JJTの企画書づくり?」
「そうです。伍代さんがチームに入ってくれるのはありがたいですが、結局チームリーダーの私が動かなくちゃならないので」

上司から仕事を押し付けられることは今までにも数えきれないほどあった。
入社二年目になり一通りの仕事を覚えた後は酷かった。

『お前ももう一人前だ。白鳥ならできるよ。俺も協力するからさ』

まだ経験の浅かった私はその言葉を本気にして、上司の期待に応えようとして死に物狂いで仕事をこなした。
でも、それは口先だけの言葉だった。
自分の力だけではどうすることもできなくなり上司に協力を依頼すると、『それはお前の仕事だろ』と冷たくあしらわれて、『期待して損した』と苦々し気に吐き捨てられた。

『協力する』『サポートする』そんな言葉は当てにならないのだということを、このとき私は思い知った。

結局、その案件を獲得して上司に報告すると『よくやった。ここからは俺が引き継ぐ』と手柄を奪われた。
そういうことが何度も続きて、精神的にも肉体的にもボロボロになった。
そんな私とは対照的にその上司は実績を買われて他社に引き抜かれ、栄転した。

上司の仕事を引き受けた結果がこれか。
私が新規開拓したクライアントのほとんどは横取りされ、営業成績は最下位近くまで落ち込んだ。
押し付けられる雑用、途方もない量の企画書、女だからという理由だけで駆り出される接待。

『私、何やってんだろ……』

ある日、張り詰めていた糸がプツリと切れた。
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