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第五章 不穏と波乱
3
この日の午後、私は黒川さんを引きつれてアポを取った芸能事務所へ出向き、最近人気の若手俳優にCM出演の交渉を行った。
けれど、結果はふるわない。長期間映画の撮影で海外へ行くため厳しいとの回答を受けた。
「あ~あ、空振りばっかりじゃないですかぁ。どうするんです、これ?」
「ねえ、危ないから歩きスマホはやめなさい。人にぶつかったらどうするの」
「はいはい。分かりましたよ」
スマホ片手に歩く黒川さんを注意すると、反省の色も見せずめんどくさそうに唇を尖らせてスマホをしまう。
「仕方ないわ。次のアポに向かいましょう」
この日、三か所の芸能事務所を回り出演してくれる芸能人への打診を行うも、話がまとまることはなかった。
挙句の果てにスケジュールが開いているというまだ無名の新人女優はどうかと相手側からの提案まで受ける始末だ。
なんの成果も得られないまま会社へ戻ると、斎藤さんが真っ青な顔で駆け寄ってきた。
「白鳥さん!大変です!!」
「え?」
「今、JJTの宣伝部長さんがいらっしゃって。娘さんのことがSNSに晒されてるってひどくご立腹で」
「え?なに、どういうこと……?」
「私も詳しくは分からないんですが、インフルエンサーがどうとら言っていて……」
「インフルエンサー……?」
ハッとする。今朝、宣伝部長が推しているインフルエンサーの話を黒川さんにした。
私は右隣にいた黒川さんに視線を向ける。
「黒川さん、なにか心当たりは……?」
「えっ、あたしですかぁ……?別に何もやってませんよぉ」
私と目を合わせることができず、視線を宙に漂わせる黒川さん。
必死に笑顔を浮かべようとしているものの、口元は誰が見てもわかるぐらいひきつっていた。
「今、宣伝部長はどこにいますか?」
斎藤さんに尋ねる。
「局長はあいにく不在で、ミーティングルームで冬野さんが対応してくれています」
「冬野くんが……。わかりました」
一刻も早く黒川さんに状況を確認し、私が宣伝部長の対応に当たるしかない。
「正直に言って?謝罪は一分でも一秒でも早いほうがいいから」
「やだなぁ。あたしは何も知りませんって」
「今ここで正直に言うなら、私が手を貸す。でも、もし嘘をついたり誤魔化そうとしたら後はないわ。これ、場合によっては始末書だけじゃすまされない案件よ?」
そう脅すと、今度は黒川さんの顔からスッと笑みが消え失せる。
「それ、どういうことです……?」
「クビよ。それでもいいなら私は構わないけど。決めるのはあなたよ」
私の言葉に黒川さんがようやく白旗を上げた。
けれど、結果はふるわない。長期間映画の撮影で海外へ行くため厳しいとの回答を受けた。
「あ~あ、空振りばっかりじゃないですかぁ。どうするんです、これ?」
「ねえ、危ないから歩きスマホはやめなさい。人にぶつかったらどうするの」
「はいはい。分かりましたよ」
スマホ片手に歩く黒川さんを注意すると、反省の色も見せずめんどくさそうに唇を尖らせてスマホをしまう。
「仕方ないわ。次のアポに向かいましょう」
この日、三か所の芸能事務所を回り出演してくれる芸能人への打診を行うも、話がまとまることはなかった。
挙句の果てにスケジュールが開いているというまだ無名の新人女優はどうかと相手側からの提案まで受ける始末だ。
なんの成果も得られないまま会社へ戻ると、斎藤さんが真っ青な顔で駆け寄ってきた。
「白鳥さん!大変です!!」
「え?」
「今、JJTの宣伝部長さんがいらっしゃって。娘さんのことがSNSに晒されてるってひどくご立腹で」
「え?なに、どういうこと……?」
「私も詳しくは分からないんですが、インフルエンサーがどうとら言っていて……」
「インフルエンサー……?」
ハッとする。今朝、宣伝部長が推しているインフルエンサーの話を黒川さんにした。
私は右隣にいた黒川さんに視線を向ける。
「黒川さん、なにか心当たりは……?」
「えっ、あたしですかぁ……?別に何もやってませんよぉ」
私と目を合わせることができず、視線を宙に漂わせる黒川さん。
必死に笑顔を浮かべようとしているものの、口元は誰が見てもわかるぐらいひきつっていた。
「今、宣伝部長はどこにいますか?」
斎藤さんに尋ねる。
「局長はあいにく不在で、ミーティングルームで冬野さんが対応してくれています」
「冬野くんが……。わかりました」
一刻も早く黒川さんに状況を確認し、私が宣伝部長の対応に当たるしかない。
「正直に言って?謝罪は一分でも一秒でも早いほうがいいから」
「やだなぁ。あたしは何も知りませんって」
「今ここで正直に言うなら、私が手を貸す。でも、もし嘘をついたり誤魔化そうとしたら後はないわ。これ、場合によっては始末書だけじゃすまされない案件よ?」
そう脅すと、今度は黒川さんの顔からスッと笑みが消え失せる。
「それ、どういうことです……?」
「クビよ。それでもいいなら私は構わないけど。決めるのはあなたよ」
私の言葉に黒川さんがようやく白旗を上げた。
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