100 / 100
エピローグ
2
しおりを挟む
「あっ、だけど実は他人には良い顔するけど、家の中ではモラハラ全開の男もいるし……。もしかして、そういうんじゃ……」
「ないない。いつもあんな感じだよ」
「えぇ~!ありえない。あたしがやってるゲームの中のキャラにも負けない超スパダリじゃない!」
奈々子の言葉に冬野くんが反応する。
「奈々子さんは伍代さんみたいな男性がタイプなんですか?」
「そりゃ女だったら誰でもそうでしょ。結婚してからもあんな風に愛してほしいもの」
冬野くんはいまだ奈々子に自分の想いを伝えられていない。
さすがの奈々子だって冬野くんの気持ちにはとっくに気付いているだろう。
三人は家族ぐるみの交流を深めているけど、冬野くんが一歩を踏み出せずにいた。
『春ちゃんの気持ちを考えるとなかなか気持ちを伝えられないです。大好きなママに彼氏ができるのって……嫌だと思うんですよ』
今どきの若い子なのに、冬野くんの考えは至極まっとうだ。
自分の気持ちを優先せず、奈々子や娘の春ちゃんのことを一番に考えてあげていた。
「ママは理想が高すぎるよ」
すると、春ちゃんが呆れた口調で言った。
四歳になり幼稚園に通うようになってすっかりお姉さんになった春ちゃん。
最近、クラスに好きな男の子ができたと奈々子が教えてくれた。
「はじめくんじゃダメなの?」
「えっ!?」
春ちゃんの言葉に、奈々子と冬野くんの声が重なり合う。
「ママとはじめくんが結婚したら、春は嬉しい。だって、春ははじめくんが大好きだから」
「そっか……。春の気持ちはよく分かったよ。ありがとう」
奈々子は隣に座る春ちゃんの頭を優しく撫でる。
それを見ていた冬野くんと奈々子は目を見合わせた。
照れくさそうに微笑みあう二人を見ていると、私まで幸せな気分になる。
きっと二人が結ばれる日も近いはずだ。
「白鳥さ~ん!ヘルプです!心音ちゃんが泣きだしちゃいました!!」
「抱っこしてくれてありがとう」
黒川さんの元へ歩み寄り、心音を抱っこする。すると、心音は私の顔を見ると、ピタリと泣き止んだ。
「赤ちゃんってこんなに小さくても、ママのことはよくわかってるんですよね」
「そうですね」
斎藤さんの言葉に自然と頬が緩む。
目尻に涙を溜めながら私を見上げるその純粋な瞳に愛おしさがこみ上げてくる。
「白鳥さん、なんか顔つき優しくなりましたよね。前はこーんな怖い顔してたのに」
黒川さんが目尻を指で持ち上げる。
「失礼ね。そんなにきつい顔してなかったでしょ」
「いや~、してましたよ。だから、みんな白鳥さんのこと悪女って呼んでたんじゃないですか」
「ちょっと、黒川さん」
斎藤さんが慌てて黒川さんを諫める。すると、彼女は肩を竦めてふふっと笑った。
「でも、今は優しくて穏やかな良いママの顔してますよ。まるで聖母みたいな?」
黒川さんの言葉に「それは言いすぎでしょ~?悪女から聖母じゃキャラ真逆じゃない」と奈々子がケラケラ笑う。
「ちょっと、アンタたちホント失礼ね!」
私が不満げに文句を言うと、片付けを終えた智哉さんが私と心音の元へ歩み寄った。
「みなさん、うちの可愛い妻をイジメないでもらえますか?」
そう言って私の肩を優しくを抱く智哉さん。
「ヤバッ!伍代さん、それはダメ……。キュン死する……」
「ああ、尊い。スパダリ最高!」
黒川さんが胸を押さえ、奈々子が頬に手を当ててうっとりと智哉さんを見つめる。
きっとこれから先もずっと、私はこうやって娘の心音ともども彼に甘やかされるに違いない。
私が誰かに悪女だと言われようと、智哉さんならありのままの私を丸ごと受け入れてくれると確信を持てる。
そっと見上げると、智哉さんと目が合った。優しい微笑みに胸が鳴る。
前世では結ばれなかった私たちは今、娘の心音とともに家族になった。
智哉さんから一途な愛を刻み込まれ、私は幸せを噛みめながら溢れんばかりの笑顔を浮かべたのだった。
【END】
「ないない。いつもあんな感じだよ」
「えぇ~!ありえない。あたしがやってるゲームの中のキャラにも負けない超スパダリじゃない!」
奈々子の言葉に冬野くんが反応する。
「奈々子さんは伍代さんみたいな男性がタイプなんですか?」
「そりゃ女だったら誰でもそうでしょ。結婚してからもあんな風に愛してほしいもの」
冬野くんはいまだ奈々子に自分の想いを伝えられていない。
さすがの奈々子だって冬野くんの気持ちにはとっくに気付いているだろう。
三人は家族ぐるみの交流を深めているけど、冬野くんが一歩を踏み出せずにいた。
『春ちゃんの気持ちを考えるとなかなか気持ちを伝えられないです。大好きなママに彼氏ができるのって……嫌だと思うんですよ』
今どきの若い子なのに、冬野くんの考えは至極まっとうだ。
自分の気持ちを優先せず、奈々子や娘の春ちゃんのことを一番に考えてあげていた。
「ママは理想が高すぎるよ」
すると、春ちゃんが呆れた口調で言った。
四歳になり幼稚園に通うようになってすっかりお姉さんになった春ちゃん。
最近、クラスに好きな男の子ができたと奈々子が教えてくれた。
「はじめくんじゃダメなの?」
「えっ!?」
春ちゃんの言葉に、奈々子と冬野くんの声が重なり合う。
「ママとはじめくんが結婚したら、春は嬉しい。だって、春ははじめくんが大好きだから」
「そっか……。春の気持ちはよく分かったよ。ありがとう」
奈々子は隣に座る春ちゃんの頭を優しく撫でる。
それを見ていた冬野くんと奈々子は目を見合わせた。
照れくさそうに微笑みあう二人を見ていると、私まで幸せな気分になる。
きっと二人が結ばれる日も近いはずだ。
「白鳥さ~ん!ヘルプです!心音ちゃんが泣きだしちゃいました!!」
「抱っこしてくれてありがとう」
黒川さんの元へ歩み寄り、心音を抱っこする。すると、心音は私の顔を見ると、ピタリと泣き止んだ。
「赤ちゃんってこんなに小さくても、ママのことはよくわかってるんですよね」
「そうですね」
斎藤さんの言葉に自然と頬が緩む。
目尻に涙を溜めながら私を見上げるその純粋な瞳に愛おしさがこみ上げてくる。
「白鳥さん、なんか顔つき優しくなりましたよね。前はこーんな怖い顔してたのに」
黒川さんが目尻を指で持ち上げる。
「失礼ね。そんなにきつい顔してなかったでしょ」
「いや~、してましたよ。だから、みんな白鳥さんのこと悪女って呼んでたんじゃないですか」
「ちょっと、黒川さん」
斎藤さんが慌てて黒川さんを諫める。すると、彼女は肩を竦めてふふっと笑った。
「でも、今は優しくて穏やかな良いママの顔してますよ。まるで聖母みたいな?」
黒川さんの言葉に「それは言いすぎでしょ~?悪女から聖母じゃキャラ真逆じゃない」と奈々子がケラケラ笑う。
「ちょっと、アンタたちホント失礼ね!」
私が不満げに文句を言うと、片付けを終えた智哉さんが私と心音の元へ歩み寄った。
「みなさん、うちの可愛い妻をイジメないでもらえますか?」
そう言って私の肩を優しくを抱く智哉さん。
「ヤバッ!伍代さん、それはダメ……。キュン死する……」
「ああ、尊い。スパダリ最高!」
黒川さんが胸を押さえ、奈々子が頬に手を当ててうっとりと智哉さんを見つめる。
きっとこれから先もずっと、私はこうやって娘の心音ともども彼に甘やかされるに違いない。
私が誰かに悪女だと言われようと、智哉さんならありのままの私を丸ごと受け入れてくれると確信を持てる。
そっと見上げると、智哉さんと目が合った。優しい微笑みに胸が鳴る。
前世では結ばれなかった私たちは今、娘の心音とともに家族になった。
智哉さんから一途な愛を刻み込まれ、私は幸せを噛みめながら溢れんばかりの笑顔を浮かべたのだった。
【END】
47
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
恋に異例はつきもので ~会社一の鬼部長は初心でキュートな部下を溺愛したい~
泉南佳那
恋愛
「よっしゃー」が口癖の
元気いっぱい営業部員、辻本花梨27歳
×
敏腕だけど冷徹と噂されている
俺様部長 木沢彰吾34歳
ある朝、花梨が出社すると
異動の辞令が張り出されていた。
異動先は木沢部長率いる
〝ブランディング戦略部〟
なんでこんな時期に……
あまりの〝異例〟の辞令に
戸惑いを隠せない花梨。
しかも、担当するように言われた会社はなんと、元カレが社長を務める玩具会社だった!
花梨の前途多難な日々が、今始まる……
***
元気いっぱい、はりきりガール花梨と
ツンデレ部長木沢の年の差超パワフル・ラブ・ストーリーです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
取引先のエリート社員は憧れの小説家だった
七転び八起き
恋愛
ある夜、傷心の主人公・神谷美鈴がバーで出会った男は、どこか憧れの小説家"翠川雅人"に面影が似ている人だった。
その男と一夜の関係を結んだが、彼は取引先のマネージャーの橘で、憧れの小説家の翠川雅人だと知り、美鈴も本格的に小説家になろうとする。
恋と創作で揺れ動く二人が行き着いた先にあるものは──
隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
Melty romance 〜甘S彼氏の執着愛〜
yuzu
恋愛
人数合わせで強引に参加させられた合コンに現れたのは、高校生の頃に少しだけ付き合って別れた元カレの佐野充希。適当にその場をやり過ごして帰るつもりだった堀沢真乃は充希に捕まりキスされて……
「オレを好きになるまで離してやんない。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる