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第八章 新たな命
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「いきましょうか。店の外に薄葉組の人間を待たせています」
「……ま、待ってくれ!」
すると、先程までの強気の表情から一転し、黒岩が情けない声を上げた。
「わ、分かった。俺が全部悪かった!この店に二度と手出ししないと約束する!」
「なにが言いたいんです?」
「お前たちの狙いはなんだ?こんな小娘の為だけに久我組が動くわけないだろ?」
「そうですね。ただ、今回は若頭たっての希望なので、我々は従わざるを得ないんです」
「おい。さっさとそいつを連れていけ」
久我さんが低い声で窘めると、神城さんはやれやれとばかりに小さく頷いた。
「今、あなたのところの組長の竹政一郎はもちろん、あなた以外の幹部連中は全員薄葉の手の中です」
丁寧な神城さんの口調とは裏腹に、彼の眼光は鋭い。
「組を解体するか、それとも薄葉の配下に置かれるかはわかりません。もしも言いたいことがあれば、直接ご自分の口から組長へお話ください。ただ、あなたは間違いなく破門でしょう。それか……まあ個人の悪事があれこれバレてしまったので、生きていられればいいのですが。せっかく幹部までのし上がったのに、残念でしたね」
神城さんは薄っすらと笑みを浮かべて言うと、継母に視線を向けた。
「ああ、そうだ。あなたも連れてくるようにと言い使っています」
「なっ!?どうしてよ!あたしはなんの関係もないわ!!連れてくなら、その人だけにして!」
継母がブルブルと震えあがる。
「由紀子、テメェ裏切んのか!!」
「アンタがうまくやんないからこんなことになってんでしょう!?」
継母がヒステリックに叫ぶ。いつも一緒にいてあんなにも愛し合っていたはずのふたりがいがみ合う姿はあまりにも滑稽だった。
「おい」
すると、久我さんが継母を呼び止めた。
「今までのことを萌音に謝れ。そして、二度と彼女の前に姿を現さないと約束しろ」
「ハァ!?どうしてあたしが――」
「……できねぇのか?」
継母は久我さんの鋭い眼光とその迫力に負けた。
ごくりと生唾を飲み込み、おずおずと頭を下げた。
「……今まで……ごめんなさい。もうあなたには関わりません……」
しおらしく謝るなんて継母らしくない。
恐らく腹の中では私を憎々し気に罵っているだろう。
それでも、彼女からの謝罪に今までの苦労が報われていくようだった。
神城さんが黒岩と継母を連れて店を出て行く。この場に残されたのは、私と久我さん、それに尚の三人だった。
「……尚……」
頭を垂れてうな垂れている様子の尚に近付いていこうとすると、久我さんが私の腕を掴んだ。
「……ま、待ってくれ!」
すると、先程までの強気の表情から一転し、黒岩が情けない声を上げた。
「わ、分かった。俺が全部悪かった!この店に二度と手出ししないと約束する!」
「なにが言いたいんです?」
「お前たちの狙いはなんだ?こんな小娘の為だけに久我組が動くわけないだろ?」
「そうですね。ただ、今回は若頭たっての希望なので、我々は従わざるを得ないんです」
「おい。さっさとそいつを連れていけ」
久我さんが低い声で窘めると、神城さんはやれやれとばかりに小さく頷いた。
「今、あなたのところの組長の竹政一郎はもちろん、あなた以外の幹部連中は全員薄葉の手の中です」
丁寧な神城さんの口調とは裏腹に、彼の眼光は鋭い。
「組を解体するか、それとも薄葉の配下に置かれるかはわかりません。もしも言いたいことがあれば、直接ご自分の口から組長へお話ください。ただ、あなたは間違いなく破門でしょう。それか……まあ個人の悪事があれこれバレてしまったので、生きていられればいいのですが。せっかく幹部までのし上がったのに、残念でしたね」
神城さんは薄っすらと笑みを浮かべて言うと、継母に視線を向けた。
「ああ、そうだ。あなたも連れてくるようにと言い使っています」
「なっ!?どうしてよ!あたしはなんの関係もないわ!!連れてくなら、その人だけにして!」
継母がブルブルと震えあがる。
「由紀子、テメェ裏切んのか!!」
「アンタがうまくやんないからこんなことになってんでしょう!?」
継母がヒステリックに叫ぶ。いつも一緒にいてあんなにも愛し合っていたはずのふたりがいがみ合う姿はあまりにも滑稽だった。
「おい」
すると、久我さんが継母を呼び止めた。
「今までのことを萌音に謝れ。そして、二度と彼女の前に姿を現さないと約束しろ」
「ハァ!?どうしてあたしが――」
「……できねぇのか?」
継母は久我さんの鋭い眼光とその迫力に負けた。
ごくりと生唾を飲み込み、おずおずと頭を下げた。
「……今まで……ごめんなさい。もうあなたには関わりません……」
しおらしく謝るなんて継母らしくない。
恐らく腹の中では私を憎々し気に罵っているだろう。
それでも、彼女からの謝罪に今までの苦労が報われていくようだった。
神城さんが黒岩と継母を連れて店を出て行く。この場に残されたのは、私と久我さん、それに尚の三人だった。
「……尚……」
頭を垂れてうな垂れている様子の尚に近付いていこうとすると、久我さんが私の腕を掴んだ。
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