ディバイン・レガシィー -箱庭の観測者-

月詠来夏

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【箱庭探訪編】第1章「星の輝く箱庭」

13話 確かめたい

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 寝心地が最悪すぎたせいか、太陽が昇ってすぐに目が覚めた。淡い光が入ってきただけだというのに。
 私が目覚めたとき、メアたちはまだ眠っていた。特にシオンは気持ちよさそうにいびきをかいて寝ていた。相変わらず、寝たり食べたりするときは本当に危機感がない。
 ティルやアンナちゃんも寝ている。ヴァーサーとサクは、日中は出てこないらしい。
 しばらく寝たふりしてるか……。
 ────────

「おら、起きろ」
「いったぁ!?」

 寝床から窓をぼんやり眺めていたら、ティルに耳を引っ張られた。
 すぐに離してくれたので血は出なかったものの、びっくりしたあまり勢いで飛び起きる。

「何すんのよ!? 寝てたんだけど!?」
「お前実は起きてたんだろ。普通に起きてくりゃいいのに」
「うっさい! 私にも色々あんの!」

 昨日みたいに言い合っていたら、遠くの方で小さな笑い声が聞こえてきた。他でもない、アンナちゃんのものだった。
 それだけならまだ微笑ましかったのだけど────。

「おい。ユキアから離れろ」
「なあメア、オレも加勢していいか? さすがに見過ごせねぇ」

 笑いながらティルの前に立った二人だけど、目が全然笑っていない。シオンに関しては両手で指をポキポキ鳴らしていて、完全にやる気だ。
 というか、いつの間に起きてたの……?

「ちょっ、やめなさいよ二人とも! ソルも止めるの手伝って!!」
「興味ない……」

 寝床に座ったまま魔導書をぼんやりと読んでいる。
 やっぱりこういう時は当てにならない!



 一旦騒動が落ち着いたところで、私たちはティルとアンナちゃんと話をした。
 二人は、昨日の夜に何があったのかほとんど覚えていないらしい。アンナちゃんがサクの意識に介入して異能力の発動を阻止することができたくらいだ。
 ただ、アンナちゃんでもその時の数分くらいの出来事しか覚えていない。話しぶりを見ても、この隠れ家での会話は知らないようだ。

「……まあ、朝起きたらここにいるってことは、昨夜も何かあったってことなんだろうけどな。それにお前らが巻き込まれたのも、なんとなくわかるよ」

 なんだかあっさりとしている。今までも、似たようなことがあったのだろうか。

「で、お前らはこれからどうするんだ。そもそも、何をしにあの街に来たんだよ」
「あー、それなんだけど。オレたち、お前らの親父に会いてぇんだ」
「────は?」

 唐突すぎるシオンの言葉に固まったティル。アンナちゃんも、みるみる顔が青ざめていった。
 行動力の高さは認めてるけど、いくらなんでも単刀直入すぎない!?

「何が目的なんだよ」
「いやー、俺の親友がお前の親父の研究に興味あるとか言い出してさ」
「え?」

 親指で自分を示されて、そんな話聞いてない、と言いたげなソル。
 でも、元から科学とか異能力に興味持ってたし、言い訳にはちょうどいいんじゃないかな……。

「っ、あいつに不用意に近づくな!! ろくな奴じゃないんだぞ!?」

 すごい剣幕で立ち上がったティルが怒鳴る。あまりの迫力に場が凍り付いた。
 ティルが怒る理由はわからなくはない。でも、このままじゃ彼の元に案内してもらえない。さすがに自力じゃ会いに行けなさそうだし……。
 ……しばらくの沈黙の末、アンナちゃんが少し不安そうに顔を上げた。

「……わたしは、会いに行ってみてもいいと思う」
「アンナ!! お前まで何言ってんだよ!?」
「わたし、お父さんとお母さんのこと、何も覚えてないの。お兄ちゃんは何も教えてくれなかったけど……わたし、確かめてみたいよ。どうしてお母さんが死ななきゃいけなかったのか……わたしたちは、どうしてこんな身体にされてしまったのか……」

 ────この子たちは、片親も失っていたのか。
 本当に、私は何も知らなかった。何も知らずに接していた。あの夜までは。

「…………。危険な目に遭うかもしれないんだぞ」
「そこは安心して。私たちが守るから!」

 私の言葉に明るい表情を浮かべたアンナちゃん。ティルはまたぶっきらぼうな顔つきに戻ったが、少しずつ落ち着きを取り戻していった。

「……アンナが行くなら、俺も行く。唯一の家族なんだから」
「お兄ちゃん……」
「それに、この際だから色々とケリをつけたい。今まで曖昧にしてきて、いいことなんか何一つなかったんだから」

 いい感じに話がまとまってきて助かった。これなら、今日中にはシュレイドの元に向かえるだろう。
 なんとかして二人からヴァーサーたちを引き離して倒せば、それで私たちの命も助かるはず。

「早速向かうか、ユキア?」
「そうだね。ティル、シュレイドがどこにいるかわかるの?」
「あいつは隣国の郊外にある研究所に住んでる。そこまで案内してやるよ」
「あー、ちょっと待てよぉ。腹ごしらえしないと、いざというとき力発揮できないだろー」

 いざ出発となったところで、真剣な顔をしたシオンが止めてきた。
 拍子抜けしそうになったけど、よく考えたら昨日から何も食べていなかったような……。

「何言ってんだお前。街には戻れねぇんだぞ」
「ちっちっちっ。ここはオレに任せてくれよ」

 ティルとアンナちゃんは、お互いに顔を見合わせて首を傾げている。
 シオンは得意げな笑みを浮かべながら、片手を突き出した。

「『ユニヴァ・クリエイツ』!」

 唱えた瞬間、私たちの前に金色の魔力の塊が現れる。瞬く間にパンへ形を変え、差し出した手に落ちた。
 温かくて香ばしい。まるで焼きたてのパンみたいだ。

「す、すごい……! シオンさんも異能力を持ってるんですか?」
「あ? これは固有魔法だよ。オレの場合、魔力さえあればなんでも作れるぜ?」
「シオンが知っているものに限るけどね」
「こらソルっ! 余計なこと言うな!」
「ふふっ。シオンさんたちって、魔法使いなんですね」
「ま、まあな!」

 両手を腰に当てて、自慢げに胸を張っている。
 あー、何も食べてないのに妙に元気そうだと思ったら、事前に自分だけ何か食べていたのかもしれない。
 抜け駆けしないでほしいと思ったけど、言い出したらキリないしやめておこう。アンナちゃんは嬉しそうだし。
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