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【神間陰謀編】第4章「懐かしき故郷と黒い影」
77話 受け入れられないもの
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……眠い。
昨日は満足に眠れなかったというのに、結局いつも通りの時間に起きた。尋常じゃない疲労に寝不足が重なり、非常に身体がだるい。
「おはよー、ユキ! 朝ご飯食べよー」
目を擦りながらリビングに向かうと、彼がいた。昨日と同じように、家に残った食材を使って簡単な朝食を作った。トーストと目玉焼きだけだ。
それでもアスタは喜んでくれる。単純なときは、本当に単純なのだ。
朝食中に、アスタと今日やることを話す。私はキャッセリアの案内も兼ねて、今日一日彼に付き合うことにした。
「とりあえず、ヴィーに会いに行きたいんだ。いつまでも会わないわけにはいかないしね」
早めに準備を終えて、アスタを連れてデウスプリズンに向かう。今日もキャッセリアは晴天に恵まれ、陽光のおかげで空気が温かい。
デウスプリズンの前にやってきて、呼び鈴を鳴らして少し経ってから、ヴィータが出てくれた。
「あら、ユキア。おはようございます……って、お兄様?」
「や、やあヴィー。元気そうで何よりだよ」
えらく引きつった顔で、軽く手を振るアスタ。ヴィータは僅かに目を見開いて、そのまましばらく硬直していた。
────と思ったら、次の瞬間に頭を引っぱたき、うつ伏せに倒すと同時に頭を踏みつけた。
「い、痛い痛い! ヴィー痛いよー!」
「一体どこをほっつき歩いていたんです? またわたしを置いていくつもりだったんでしょう? どの面下げて戻ってきたんですか、ええ?」
げしっ。げしっ。心なしか鈍い音が聞こえてくる。
自分やステラよりも小さく見える子供が、子供の頭を無表情で踏みつけている。恐ろしいを通り越して、血の気が引いた。
「ヴィ、ヴィータ? もうその辺りにしといたら?」
「なんですか。わたしとお兄様の事情に口を挟まないでくれません?」
「そんなつもりはないよ。無事はわかったんだし、許してあげてもいいんじゃないって」
「……まあ、そのとおりですね。この場で無様な姿を晒しても仕方ありませんし」
私の説得を受けて、足をどけてくれた。頭をさすりながら立ち上がるアスタは、踏まれた後頭部を
さすりながら目に涙を浮かべていた。
「で、四日間も何をしていたんです? ユキアが目覚めない間、ふらふら遊んでいたんですか?」
「違うよ! ボクはボクで調べものしてたの!」
ヴィータたちが箱庭を去った後、クロウリーやその仲間を尾行していたことを伝えるアスタ。話を聞いているうちに、興奮していたヴィータは徐々に落ち着いていった。
「……それならそうと、事前に伝えてくれればよかったのに。心配したんですよ」
「うん。それはごめん」
頭を下げたアスタに対し、ヴィータはほんの少しだけ微笑んだ。昨日は随分と気が立っているように見えたが、こうして巡り会えたおかげで幾分か気が楽になったようだ。
「クリムは何してるの?」
「来客と話してますよ。用があるのでしたら呼びますが」
「いや、いいよ。仕事の邪魔しちゃ悪いし」
クリムの忙しさは、キャッセリアに生きる者なら大体知っている。最年少ながら多忙なのは周知の事実だ。
「お兄様、白の宮殿にはもう行かれましたか?」
「宮殿? 行ってないけど」
「でしたら、最高神アイリスに挨拶してきたらどうですか。会わないままでは、キャッセリアにいづらいでしょう」
ヴィータは既にアイリスと知り合いだった。彼女を知っているのなら、アイリスも兄の存在くらいは認知しているだろう。会うだけならそれほど大変でもない。
デウスプリズンに行ってからの予定は考えてなかったし、このまま宮殿へ直行することにした。
「ヴィーは来ないの?」
「わたしは忙しいんです。お兄様と違って」
そう言い残して、建物の中へ戻っていってしまった。さっきよりは怒っていなさそうだったが、まだ少し機嫌が悪そうだった。
その足で繁華街を通り、白の宮殿へ向かった。他の神に奇異な目で見てくることに、私は気づいている。
アスタは私についてきながらも、不思議そうに周りを見ていた。
「ねぇ、ユキ。どうしてみんな見てくるのかな」
「知らないよ」
大方の原因はあんたでしょうが。まあ、神隠し事件から生きて帰ってきたこととか、他にも色々考えられるものはあるけれど。
宮殿に入ってすぐのエントランスホールに入ると、見知った顔を見つけた。向こうが、私たちの方に歩いてきていた。
「あ、ユキア! 元気そうでよかった!」
「久しぶり、アリア」
モップを片手に、アリアが手を振ってきた。私も軽く手を振り返した。
アーケンシェンという高貴な立場にいる彼女には、昔戦い方を教えてもらった。使っている武器種が若干違うものの、私にとっては彼女は師匠みたいなものだ。
アスタの存在に気づくと、彼女はにーっこりと笑いかけた。
「君がヴィータのお兄さんだね。私はアリアラス・ウォーレイス。アリアでいいよ」
「う、うん。ボクはアスタ。よろしく」
またアスタの顔が引きつっていた。初対面相手なら余程の理由がない限り気さくに話しかけられるだろうに。
……といっても、相手が気持ち悪い笑みを浮かべていたら無理もないか。
「ふふ、君ちょっと可愛いねー。おねーちゃんと遊ばないー?」
両手の指をわしわしと動かし、私の後ろに立っているアスタににじり寄ろうとしてくる。その様がどう見ても変質者そのものだったので、黙って片手剣を召喚して刃を振り上げた。
「うわっ、危ないなぁ!? 嘘だよ、嘘!」
「あんたの場合は冗談にならないから悪質なのよ! いい加減やめなさいよ、その悪癖!」
「だから手出さないってばー!」
両手を挙げて降参の意思をアピールしてきたので、剣を収めたが騒ぎ続けている。
今になって思ったが、私の知り合いは変な奴が多い。男の子好きのアリアといい、女の子好きのノインといい、幼子を付け狙おうとする変質者が混じっているから対処が面倒だ。
「────あら、アリアラス様。お仕事を放棄なさって何をしているのです?」
ぎゃーぎゃー騒いでいるアリアの元に、一人の女性が近づいてきた。まとめあげた暗めの金髪に、艶やかな漆黒のマーメイドドレスをまとっている。見たことのない女だ。
アリアは彼女に気づくと、慌てて平静を装った。
「や、やっほーミラージュ。仕事終わったの?」
「これからですわ。年下の神の仕事くらい、きちんと把握していただけます? 曲がりなりにも、誇り高きアーケンシェンでしょう?」
「あははー、ちょっとふざけすぎちゃったかなー。ごめんごめん」
苦笑いしながら軽い感じで謝るも、反省の色を感じないのは私だけだろうか。相手に睨まれているにもかかわらず、アリアは陽気な態度を崩さない。
ミラージュと呼ばれた女は、大きくため息をついてから、今度は私の方に向き直る。
「あなたも大変ですわね。上に立つ者がこんなだと、苦労ばかりでしょう?」
「ま、まあ……ええ……」
表面上だけは笑っているように見えた。女は「ごきげんよう」と挨拶をすると、そそくさとその場から去っていった。
宮殿はいろいろな神が各々の用事を済ませに来るから、知らない者に会うことも珍しくないが、なんだか今の神は少し雰囲気が怖かった。私が宮殿に来る機会はそこまで多くないが、また会ったらどう対応しようかな……。
「それより、ユキア。ここに来たってことは、アイリス様にご用?」
「そんなところ。今いる?」
「うん。ついてきて」
踵を返し、二階へ繋がるエントランスホールの階段を上っていく。
アイリスの部屋の前に立つ神兵がアリアに気づくと、私たちに譲るようにして退いた。
ノックしてから、「失礼します」と扉を開ける。中にはアイリスだけがいて、机で何か作業をしていたようだ。
「アイリス様、お客人ですよ」
「む? アリアにユキアか。それと、お主は……」
「アスタっていうらしいです。ヴィータのお兄さんで、ユキアと仲がいいみたい」
「アリア!? 余計なこと言うな!」
お兄さん、ってところまでで充分でしょうが、と睨みつけてアピールしたが、あちらはニヤニヤとしながら目をやってきた。
「ほう、ヴィータの兄か。妾はアイリス・エンプランツェじゃ。キャッセリアを治める最高神じゃ。よろしく頼むぞ」
机から立ち上がり、アスタの前に近づいたアイリスが手を差し伸べた。しかし彼の方を見遣ると、手を握らず呆然としていた。驚いて固まっているように見える。
「……ね、ねぇ。ボクたち、前に会ったこと、あるよね?」
「は? 何を申しているんじゃ、お主?」
「う、嘘はやめてよ。ボクのこと覚えてるでしょ? ねぇ────」
「無礼者!!」
呆然とした目のままゆらゆらとアイリスに近づくと、一瞬で横にふっ飛ばされた。アイリスが杖で叩いたのだ。
幸い調度品などは壊れず、壁に叩きつけられただけだったが、アスタはしばらく動こうとしなかった。
やがて、力ない笑い声が聞こえてくる。
「……あは、ははは。ひどいよ……なんでこんなことするの?」
「い、いきなりなんじゃ、お主!? 頭が狂っておるのか!?」
「…………ごめん。勘違いだった。帰るね」
空気が凍りつき、その場の誰もが唖然としている間に、彼は立ち上がって部屋を飛び出した。
これが会って数秒の出来事だとは、到底思えなかった。
「……アイリス様と知り合い? だったわけじゃなさそうだし……変なのー」
「ぐぬぅ……アスタと言ったか? 覚えておれ!!」
アイリスがかんかんに怒り出し、こちらに矛先が向けられそうになる。私は慌てて、彼の背中を追いかけるため部屋を退出する。
昨日は満足に眠れなかったというのに、結局いつも通りの時間に起きた。尋常じゃない疲労に寝不足が重なり、非常に身体がだるい。
「おはよー、ユキ! 朝ご飯食べよー」
目を擦りながらリビングに向かうと、彼がいた。昨日と同じように、家に残った食材を使って簡単な朝食を作った。トーストと目玉焼きだけだ。
それでもアスタは喜んでくれる。単純なときは、本当に単純なのだ。
朝食中に、アスタと今日やることを話す。私はキャッセリアの案内も兼ねて、今日一日彼に付き合うことにした。
「とりあえず、ヴィーに会いに行きたいんだ。いつまでも会わないわけにはいかないしね」
早めに準備を終えて、アスタを連れてデウスプリズンに向かう。今日もキャッセリアは晴天に恵まれ、陽光のおかげで空気が温かい。
デウスプリズンの前にやってきて、呼び鈴を鳴らして少し経ってから、ヴィータが出てくれた。
「あら、ユキア。おはようございます……って、お兄様?」
「や、やあヴィー。元気そうで何よりだよ」
えらく引きつった顔で、軽く手を振るアスタ。ヴィータは僅かに目を見開いて、そのまましばらく硬直していた。
────と思ったら、次の瞬間に頭を引っぱたき、うつ伏せに倒すと同時に頭を踏みつけた。
「い、痛い痛い! ヴィー痛いよー!」
「一体どこをほっつき歩いていたんです? またわたしを置いていくつもりだったんでしょう? どの面下げて戻ってきたんですか、ええ?」
げしっ。げしっ。心なしか鈍い音が聞こえてくる。
自分やステラよりも小さく見える子供が、子供の頭を無表情で踏みつけている。恐ろしいを通り越して、血の気が引いた。
「ヴィ、ヴィータ? もうその辺りにしといたら?」
「なんですか。わたしとお兄様の事情に口を挟まないでくれません?」
「そんなつもりはないよ。無事はわかったんだし、許してあげてもいいんじゃないって」
「……まあ、そのとおりですね。この場で無様な姿を晒しても仕方ありませんし」
私の説得を受けて、足をどけてくれた。頭をさすりながら立ち上がるアスタは、踏まれた後頭部を
さすりながら目に涙を浮かべていた。
「で、四日間も何をしていたんです? ユキアが目覚めない間、ふらふら遊んでいたんですか?」
「違うよ! ボクはボクで調べものしてたの!」
ヴィータたちが箱庭を去った後、クロウリーやその仲間を尾行していたことを伝えるアスタ。話を聞いているうちに、興奮していたヴィータは徐々に落ち着いていった。
「……それならそうと、事前に伝えてくれればよかったのに。心配したんですよ」
「うん。それはごめん」
頭を下げたアスタに対し、ヴィータはほんの少しだけ微笑んだ。昨日は随分と気が立っているように見えたが、こうして巡り会えたおかげで幾分か気が楽になったようだ。
「クリムは何してるの?」
「来客と話してますよ。用があるのでしたら呼びますが」
「いや、いいよ。仕事の邪魔しちゃ悪いし」
クリムの忙しさは、キャッセリアに生きる者なら大体知っている。最年少ながら多忙なのは周知の事実だ。
「お兄様、白の宮殿にはもう行かれましたか?」
「宮殿? 行ってないけど」
「でしたら、最高神アイリスに挨拶してきたらどうですか。会わないままでは、キャッセリアにいづらいでしょう」
ヴィータは既にアイリスと知り合いだった。彼女を知っているのなら、アイリスも兄の存在くらいは認知しているだろう。会うだけならそれほど大変でもない。
デウスプリズンに行ってからの予定は考えてなかったし、このまま宮殿へ直行することにした。
「ヴィーは来ないの?」
「わたしは忙しいんです。お兄様と違って」
そう言い残して、建物の中へ戻っていってしまった。さっきよりは怒っていなさそうだったが、まだ少し機嫌が悪そうだった。
その足で繁華街を通り、白の宮殿へ向かった。他の神に奇異な目で見てくることに、私は気づいている。
アスタは私についてきながらも、不思議そうに周りを見ていた。
「ねぇ、ユキ。どうしてみんな見てくるのかな」
「知らないよ」
大方の原因はあんたでしょうが。まあ、神隠し事件から生きて帰ってきたこととか、他にも色々考えられるものはあるけれど。
宮殿に入ってすぐのエントランスホールに入ると、見知った顔を見つけた。向こうが、私たちの方に歩いてきていた。
「あ、ユキア! 元気そうでよかった!」
「久しぶり、アリア」
モップを片手に、アリアが手を振ってきた。私も軽く手を振り返した。
アーケンシェンという高貴な立場にいる彼女には、昔戦い方を教えてもらった。使っている武器種が若干違うものの、私にとっては彼女は師匠みたいなものだ。
アスタの存在に気づくと、彼女はにーっこりと笑いかけた。
「君がヴィータのお兄さんだね。私はアリアラス・ウォーレイス。アリアでいいよ」
「う、うん。ボクはアスタ。よろしく」
またアスタの顔が引きつっていた。初対面相手なら余程の理由がない限り気さくに話しかけられるだろうに。
……といっても、相手が気持ち悪い笑みを浮かべていたら無理もないか。
「ふふ、君ちょっと可愛いねー。おねーちゃんと遊ばないー?」
両手の指をわしわしと動かし、私の後ろに立っているアスタににじり寄ろうとしてくる。その様がどう見ても変質者そのものだったので、黙って片手剣を召喚して刃を振り上げた。
「うわっ、危ないなぁ!? 嘘だよ、嘘!」
「あんたの場合は冗談にならないから悪質なのよ! いい加減やめなさいよ、その悪癖!」
「だから手出さないってばー!」
両手を挙げて降参の意思をアピールしてきたので、剣を収めたが騒ぎ続けている。
今になって思ったが、私の知り合いは変な奴が多い。男の子好きのアリアといい、女の子好きのノインといい、幼子を付け狙おうとする変質者が混じっているから対処が面倒だ。
「────あら、アリアラス様。お仕事を放棄なさって何をしているのです?」
ぎゃーぎゃー騒いでいるアリアの元に、一人の女性が近づいてきた。まとめあげた暗めの金髪に、艶やかな漆黒のマーメイドドレスをまとっている。見たことのない女だ。
アリアは彼女に気づくと、慌てて平静を装った。
「や、やっほーミラージュ。仕事終わったの?」
「これからですわ。年下の神の仕事くらい、きちんと把握していただけます? 曲がりなりにも、誇り高きアーケンシェンでしょう?」
「あははー、ちょっとふざけすぎちゃったかなー。ごめんごめん」
苦笑いしながら軽い感じで謝るも、反省の色を感じないのは私だけだろうか。相手に睨まれているにもかかわらず、アリアは陽気な態度を崩さない。
ミラージュと呼ばれた女は、大きくため息をついてから、今度は私の方に向き直る。
「あなたも大変ですわね。上に立つ者がこんなだと、苦労ばかりでしょう?」
「ま、まあ……ええ……」
表面上だけは笑っているように見えた。女は「ごきげんよう」と挨拶をすると、そそくさとその場から去っていった。
宮殿はいろいろな神が各々の用事を済ませに来るから、知らない者に会うことも珍しくないが、なんだか今の神は少し雰囲気が怖かった。私が宮殿に来る機会はそこまで多くないが、また会ったらどう対応しようかな……。
「それより、ユキア。ここに来たってことは、アイリス様にご用?」
「そんなところ。今いる?」
「うん。ついてきて」
踵を返し、二階へ繋がるエントランスホールの階段を上っていく。
アイリスの部屋の前に立つ神兵がアリアに気づくと、私たちに譲るようにして退いた。
ノックしてから、「失礼します」と扉を開ける。中にはアイリスだけがいて、机で何か作業をしていたようだ。
「アイリス様、お客人ですよ」
「む? アリアにユキアか。それと、お主は……」
「アスタっていうらしいです。ヴィータのお兄さんで、ユキアと仲がいいみたい」
「アリア!? 余計なこと言うな!」
お兄さん、ってところまでで充分でしょうが、と睨みつけてアピールしたが、あちらはニヤニヤとしながら目をやってきた。
「ほう、ヴィータの兄か。妾はアイリス・エンプランツェじゃ。キャッセリアを治める最高神じゃ。よろしく頼むぞ」
机から立ち上がり、アスタの前に近づいたアイリスが手を差し伸べた。しかし彼の方を見遣ると、手を握らず呆然としていた。驚いて固まっているように見える。
「……ね、ねぇ。ボクたち、前に会ったこと、あるよね?」
「は? 何を申しているんじゃ、お主?」
「う、嘘はやめてよ。ボクのこと覚えてるでしょ? ねぇ────」
「無礼者!!」
呆然とした目のままゆらゆらとアイリスに近づくと、一瞬で横にふっ飛ばされた。アイリスが杖で叩いたのだ。
幸い調度品などは壊れず、壁に叩きつけられただけだったが、アスタはしばらく動こうとしなかった。
やがて、力ない笑い声が聞こえてくる。
「……あは、ははは。ひどいよ……なんでこんなことするの?」
「い、いきなりなんじゃ、お主!? 頭が狂っておるのか!?」
「…………ごめん。勘違いだった。帰るね」
空気が凍りつき、その場の誰もが唖然としている間に、彼は立ち上がって部屋を飛び出した。
これが会って数秒の出来事だとは、到底思えなかった。
「……アイリス様と知り合い? だったわけじゃなさそうだし……変なのー」
「ぐぬぅ……アスタと言ったか? 覚えておれ!!」
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