ディバイン・レガシィー -箱庭の観測者-

月詠来夏

文字の大きさ
94 / 276
第5章「神々集いし夢牢獄」

93話 年上で変わった戦友

しおりを挟む
 一通りお菓子や談笑を楽しんだあと、パーティーは解散した。トルテさんは「また遊びに来てね」と最後まで見送ってくれた。

「じゃあねユキア、みんな」
「バイバイなのだー!」
「ステラ様、帰りましょうか」
「うん! ユキアおねーちゃん、みんな、また明日!」

 その後はシュノーとレノ、アルバトスとステラが高級住宅街の方向へ帰っていった。
 私と幼なじみ三人以外に残ったのは、アスタとノインだ。ノインは一人寂しく博物館に帰っていくんだろうな、と思っていたが、しばらくは私たちの元を離れなかった。

「いやー、最近はあんたら元気そうでよかったよ。この間までの大騒ぎは何だったんだってくらい、今は楽しいね」

 へらへらとした笑みとその言葉が、ノインなりの気遣いだと私は知っている。けれど、私のふっ、という小さな笑い声を皮切りに、私たち幼なじみ四人は笑いを止められなくなった。

「ノインがそういうセリフ言うなんて、おもしろー」
「へぇ!? なんでぇ!?」
「だってお前、いっつも寝てるか小さい女の子追いかけるかしてねーじゃん」

 シオンの言う通りだった。私たちはしばらく笑いっぱなしだった。アスタは最初私たちを見て驚いたようだったが、次第に同じく笑顔を見せるようになってくる。
 そんな中、継続的に鳴り響く爆音のような不思議な音が聞こえてくる。いや……人間の箱庭にある、「エンジン」の駆動音に思えた。

「よぉー! ノインに……お、シオンとソルじゃねーか!」

 カフェの前に、暗めの金色の二輪車に乗った青年が止まった。赤いメッシュが入った金髪だが、リーゼントと呼ばれる髪型に仕上げている。赤い瞳はぱっちりと開いていて、いかにも乗り物に乗るひとのような軽装姿のお調子者そうな神だ。
 声をかけられたシオンはおぉ、と手を振り、ソルも小さく礼をした。それに対しノインは、ちょっと鬱陶しそうに「うわー」と声を上げた。

「なんであんたらここに来てんの? 何か用事?」
『そんなところだ。残った仕事を片付けている最中だ』

 二輪車の後ろには、小さな箱が紐で括りつけられていた。仕事内容は、運び神のようなもの……なのだろうか?
 ……ん? ちょっと待って。今喋った声、最初に声をかけてきたひとと声質が違う。青年よりも、今の声の方が少し渋いような気がする。

「────バ、バイクが喋ったあああぁぁぁ!?」

 一番最初に絶叫したのはアスタだった。あんたが一番驚くのか。私とメアでさえそこまでオーバーリアクションになっていない。

『驚きすぎだ。こっちこそ、模様のある瞳の子供を初めて見たんだが』
「ま、仕方ないんじゃね? 初対面だと、大半がビビるし」

 二輪車……じゃない、バイクが声を発するたび、前面のライト部分につけられた赤い宝石が光を発している。よく見たら意外とわかりやすかった。

「紹介が遅れたっスね。オレっち、オルフといいます! こっちはルマン、オレっちの相棒っス」
『よろしく』

 金髪リーゼントの青年──オルフさんが、バイク──ルマンさんの赤い宝石の部分をぽんぽんと叩きつつ紹介してくれた。私とメア、アスタは礼をしてから、自分たちの名前などを教えた。「よろしくっス!」と軽やかな返事が返ってくる。

「オルフさんって、シオンとソルの知り合いなの?」
「知り合いっつーか、戦友だ! 小隊は違ぇけど、同じ魔特隊なんだぜ」

 あ、なるほど合点がいった。それなら、どうして魔特隊なのに荷物配達みたいなことしているのか? それを尋ねてみたら、元々オルフさんは運び神だったので、その名残でたまに仕事を手伝っているのだそうだ。

「シオンが新しい隊長に選ばれたって知って、オレっち嬉しいぜ! つーか羨ましい!」
「そうかー……? でも、オルフは第二小隊の隊長だろ。普通に考えて、数字が小さい小隊の方が実力は上じゃねーの?」
「オレっちは実力っつーより、自動的にこうなったんだって! オレっちは代理で、本当の隊長はここ最近ずっとサボりっぱなしなんだぜ!? ひどくね!?」

 シオンみたいなただのお調子者かと思っていたが、彼もかなりの苦労人のようだ。魔特隊の事情はよくわからないけど。
 話が一段落したところで、ルマンさんが宝石をチカチカと光らせる。

『オルフ、そろそろ配達に行かないと時間配分が厳しくなるぞ』
「げっ、マジか。んー、じゃあ今日はお別れだなぁ。シオン、またどっかで会ったら一緒に模擬戦でもしねぇか?」
「お、そのときは付き合うわ!」

 オルフさんがルマンさんのハンドルを握り、シートへと飛び乗った。そして、ブロロロロとエンジンを起動させる。
 そのタイミングになって、ノインがとことこと歩み寄って、オルフさんとルマンにだらしなくしがみついた。

「ねーオルフー、あたしも乗せてってよー。博物館まで一直線でいいからさー」
「えぇー? どうする、ルマン?」
『嫌だね。少しは運動しろ、ロリコン』
「ケチー! 減るもんじゃなしー!」

 ノインが両腕を振り上げて抗議しているうちに、ルマンさんが発進してノインを輓きかける。ノインが地面に倒れ込んだ頃には、一人と一台の姿はかなり小さくなっていた。

「……シオン。もう帰ろう」
「え? あー、そうだな。じゃあユキア、メア、アスタ。また明日な」
「早いねー。バイバイ」

 ソルがシオンの肩を叩いて促し、彼もそれに応じて一緒にその場から去っていった。二人は特に何か会話する様子もなく、ただ静かに歩き遠ざかっていく。
 さて、私たちも繁華街から移動しようか、と歩き出す。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...