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第5章「神々集いし夢牢獄」
93話 年上で変わった戦友
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一通りお菓子や談笑を楽しんだあと、パーティーは解散した。トルテさんは「また遊びに来てね」と最後まで見送ってくれた。
「じゃあねユキア、みんな」
「バイバイなのだー!」
「ステラ様、帰りましょうか」
「うん! ユキアおねーちゃん、みんな、また明日!」
その後はシュノーとレノ、アルバトスとステラが高級住宅街の方向へ帰っていった。
私と幼なじみ三人以外に残ったのは、アスタとノインだ。ノインは一人寂しく博物館に帰っていくんだろうな、と思っていたが、しばらくは私たちの元を離れなかった。
「いやー、最近はあんたら元気そうでよかったよ。この間までの大騒ぎは何だったんだってくらい、今は楽しいね」
へらへらとした笑みとその言葉が、ノインなりの気遣いだと私は知っている。けれど、私のふっ、という小さな笑い声を皮切りに、私たち幼なじみ四人は笑いを止められなくなった。
「ノインがそういうセリフ言うなんて、おもしろー」
「へぇ!? なんでぇ!?」
「だってお前、いっつも寝てるか小さい女の子追いかけるかしてねーじゃん」
シオンの言う通りだった。私たちはしばらく笑いっぱなしだった。アスタは最初私たちを見て驚いたようだったが、次第に同じく笑顔を見せるようになってくる。
そんな中、継続的に鳴り響く爆音のような不思議な音が聞こえてくる。いや……人間の箱庭にある、「エンジン」の駆動音に思えた。
「よぉー! ノインに……お、シオンとソルじゃねーか!」
カフェの前に、暗めの金色の二輪車に乗った青年が止まった。赤いメッシュが入った金髪だが、リーゼントと呼ばれる髪型に仕上げている。赤い瞳はぱっちりと開いていて、いかにも乗り物に乗るひとのような軽装姿のお調子者そうな神だ。
声をかけられたシオンはおぉ、と手を振り、ソルも小さく礼をした。それに対しノインは、ちょっと鬱陶しそうに「うわー」と声を上げた。
「なんであんたらここに来てんの? 何か用事?」
『そんなところだ。残った仕事を片付けている最中だ』
二輪車の後ろには、小さな箱が紐で括りつけられていた。仕事内容は、運び神のようなもの……なのだろうか?
……ん? ちょっと待って。今喋った声、最初に声をかけてきたひとと声質が違う。青年よりも、今の声の方が少し渋いような気がする。
「────バ、バイクが喋ったあああぁぁぁ!?」
一番最初に絶叫したのはアスタだった。あんたが一番驚くのか。私とメアでさえそこまでオーバーリアクションになっていない。
『驚きすぎだ。こっちこそ、模様のある瞳の子供を初めて見たんだが』
「ま、仕方ないんじゃね? 初対面だと、大半がビビるし」
二輪車……じゃない、バイクが声を発するたび、前面のライト部分につけられた赤い宝石が光を発している。よく見たら意外とわかりやすかった。
「紹介が遅れたっスね。オレっち、オルフといいます! こっちはルマン、オレっちの相棒っス」
『よろしく』
金髪リーゼントの青年──オルフさんが、バイク──ルマンさんの赤い宝石の部分をぽんぽんと叩きつつ紹介してくれた。私とメア、アスタは礼をしてから、自分たちの名前などを教えた。「よろしくっス!」と軽やかな返事が返ってくる。
「オルフさんって、シオンとソルの知り合いなの?」
「知り合いっつーか、戦友だ! 小隊は違ぇけど、同じ魔特隊なんだぜ」
あ、なるほど合点がいった。それなら、どうして魔特隊なのに荷物配達みたいなことしているのか? それを尋ねてみたら、元々オルフさんは運び神だったので、その名残でたまに仕事を手伝っているのだそうだ。
「シオンが新しい隊長に選ばれたって知って、オレっち嬉しいぜ! つーか羨ましい!」
「そうかー……? でも、オルフは第二小隊の隊長だろ。普通に考えて、数字が小さい小隊の方が実力は上じゃねーの?」
「オレっちは実力っつーより、自動的にこうなったんだって! オレっちは代理で、本当の隊長はここ最近ずっとサボりっぱなしなんだぜ!? ひどくね!?」
シオンみたいなただのお調子者かと思っていたが、彼もかなりの苦労人のようだ。魔特隊の事情はよくわからないけど。
話が一段落したところで、ルマンさんが宝石をチカチカと光らせる。
『オルフ、そろそろ配達に行かないと時間配分が厳しくなるぞ』
「げっ、マジか。んー、じゃあ今日はお別れだなぁ。シオン、またどっかで会ったら一緒に模擬戦でもしねぇか?」
「お、そのときは付き合うわ!」
オルフさんがルマンさんのハンドルを握り、シートへと飛び乗った。そして、ブロロロロとエンジンを起動させる。
そのタイミングになって、ノインがとことこと歩み寄って、オルフさんとルマンにだらしなくしがみついた。
「ねーオルフー、あたしも乗せてってよー。博物館まで一直線でいいからさー」
「えぇー? どうする、ルマン?」
『嫌だね。少しは運動しろ、ロリコン』
「ケチー! 減るもんじゃなしー!」
ノインが両腕を振り上げて抗議しているうちに、ルマンさんが発進してノインを輓きかける。ノインが地面に倒れ込んだ頃には、一人と一台の姿はかなり小さくなっていた。
「……シオン。もう帰ろう」
「え? あー、そうだな。じゃあユキア、メア、アスタ。また明日な」
「早いねー。バイバイ」
ソルがシオンの肩を叩いて促し、彼もそれに応じて一緒にその場から去っていった。二人は特に何か会話する様子もなく、ただ静かに歩き遠ざかっていく。
さて、私たちも繁華街から移動しようか、と歩き出す。
「じゃあねユキア、みんな」
「バイバイなのだー!」
「ステラ様、帰りましょうか」
「うん! ユキアおねーちゃん、みんな、また明日!」
その後はシュノーとレノ、アルバトスとステラが高級住宅街の方向へ帰っていった。
私と幼なじみ三人以外に残ったのは、アスタとノインだ。ノインは一人寂しく博物館に帰っていくんだろうな、と思っていたが、しばらくは私たちの元を離れなかった。
「いやー、最近はあんたら元気そうでよかったよ。この間までの大騒ぎは何だったんだってくらい、今は楽しいね」
へらへらとした笑みとその言葉が、ノインなりの気遣いだと私は知っている。けれど、私のふっ、という小さな笑い声を皮切りに、私たち幼なじみ四人は笑いを止められなくなった。
「ノインがそういうセリフ言うなんて、おもしろー」
「へぇ!? なんでぇ!?」
「だってお前、いっつも寝てるか小さい女の子追いかけるかしてねーじゃん」
シオンの言う通りだった。私たちはしばらく笑いっぱなしだった。アスタは最初私たちを見て驚いたようだったが、次第に同じく笑顔を見せるようになってくる。
そんな中、継続的に鳴り響く爆音のような不思議な音が聞こえてくる。いや……人間の箱庭にある、「エンジン」の駆動音に思えた。
「よぉー! ノインに……お、シオンとソルじゃねーか!」
カフェの前に、暗めの金色の二輪車に乗った青年が止まった。赤いメッシュが入った金髪だが、リーゼントと呼ばれる髪型に仕上げている。赤い瞳はぱっちりと開いていて、いかにも乗り物に乗るひとのような軽装姿のお調子者そうな神だ。
声をかけられたシオンはおぉ、と手を振り、ソルも小さく礼をした。それに対しノインは、ちょっと鬱陶しそうに「うわー」と声を上げた。
「なんであんたらここに来てんの? 何か用事?」
『そんなところだ。残った仕事を片付けている最中だ』
二輪車の後ろには、小さな箱が紐で括りつけられていた。仕事内容は、運び神のようなもの……なのだろうか?
……ん? ちょっと待って。今喋った声、最初に声をかけてきたひとと声質が違う。青年よりも、今の声の方が少し渋いような気がする。
「────バ、バイクが喋ったあああぁぁぁ!?」
一番最初に絶叫したのはアスタだった。あんたが一番驚くのか。私とメアでさえそこまでオーバーリアクションになっていない。
『驚きすぎだ。こっちこそ、模様のある瞳の子供を初めて見たんだが』
「ま、仕方ないんじゃね? 初対面だと、大半がビビるし」
二輪車……じゃない、バイクが声を発するたび、前面のライト部分につけられた赤い宝石が光を発している。よく見たら意外とわかりやすかった。
「紹介が遅れたっスね。オレっち、オルフといいます! こっちはルマン、オレっちの相棒っス」
『よろしく』
金髪リーゼントの青年──オルフさんが、バイク──ルマンさんの赤い宝石の部分をぽんぽんと叩きつつ紹介してくれた。私とメア、アスタは礼をしてから、自分たちの名前などを教えた。「よろしくっス!」と軽やかな返事が返ってくる。
「オルフさんって、シオンとソルの知り合いなの?」
「知り合いっつーか、戦友だ! 小隊は違ぇけど、同じ魔特隊なんだぜ」
あ、なるほど合点がいった。それなら、どうして魔特隊なのに荷物配達みたいなことしているのか? それを尋ねてみたら、元々オルフさんは運び神だったので、その名残でたまに仕事を手伝っているのだそうだ。
「シオンが新しい隊長に選ばれたって知って、オレっち嬉しいぜ! つーか羨ましい!」
「そうかー……? でも、オルフは第二小隊の隊長だろ。普通に考えて、数字が小さい小隊の方が実力は上じゃねーの?」
「オレっちは実力っつーより、自動的にこうなったんだって! オレっちは代理で、本当の隊長はここ最近ずっとサボりっぱなしなんだぜ!? ひどくね!?」
シオンみたいなただのお調子者かと思っていたが、彼もかなりの苦労人のようだ。魔特隊の事情はよくわからないけど。
話が一段落したところで、ルマンさんが宝石をチカチカと光らせる。
『オルフ、そろそろ配達に行かないと時間配分が厳しくなるぞ』
「げっ、マジか。んー、じゃあ今日はお別れだなぁ。シオン、またどっかで会ったら一緒に模擬戦でもしねぇか?」
「お、そのときは付き合うわ!」
オルフさんがルマンさんのハンドルを握り、シートへと飛び乗った。そして、ブロロロロとエンジンを起動させる。
そのタイミングになって、ノインがとことこと歩み寄って、オルフさんとルマンにだらしなくしがみついた。
「ねーオルフー、あたしも乗せてってよー。博物館まで一直線でいいからさー」
「えぇー? どうする、ルマン?」
『嫌だね。少しは運動しろ、ロリコン』
「ケチー! 減るもんじゃなしー!」
ノインが両腕を振り上げて抗議しているうちに、ルマンさんが発進してノインを輓きかける。ノインが地面に倒れ込んだ頃には、一人と一台の姿はかなり小さくなっていた。
「……シオン。もう帰ろう」
「え? あー、そうだな。じゃあユキア、メア、アスタ。また明日な」
「早いねー。バイバイ」
ソルがシオンの肩を叩いて促し、彼もそれに応じて一緒にその場から去っていった。二人は特に何か会話する様子もなく、ただ静かに歩き遠ざかっていく。
さて、私たちも繁華街から移動しようか、と歩き出す。
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