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第5章「神々集いし夢牢獄」
幕間 星とお菓子と断罪神
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*
ある日の昼下がり。おしゃれなカフェの店内には、変わらず甘い匂いが漂っている。キャッセリアに唯一存在するカフェには、今日も多くの客が訪れており、それぞれお好みのデザートを楽しんでいた。
ユキアとアスタは、テーブル席に向かい合って座り、デザートとドリンクを頼んでゆったりと会話をしていた。ユキアの前にはオレンジケーキとストレートティー、アスタの前にはレモンティーとチーズケーキが置かれている。
「えへへ、やっぱりレモンティーにはチーズケーキが一番だよね、ユキ!」
「いや、私その組み合わせは食べたことないんだけど……」
アスタはレモンティーが特にお気に入りのようで、レモンティーに合うお菓子が大好物らしかった。ユキアもお菓子はそこそこ食べる方であったが、チーズケーキは食べたことがない。
「えー、これ美味しいよ!? ユキも今度試してみてよ」
「そうねぇ。でも私、昔からここのオレンジケーキ好きなんだよ。これがやめられないんだよねぇ」
「むぅー」
不満そうに頬を膨らませるも、すぐに笑顔に戻ってチーズケーキを頬張る。たまらなく幸せそうな顔を浮かべては、レモンティーを口にしてさらに微笑みをこぼすのだった。
「そういえばあんた、私のことはユキって呼ぶくせに、クリムのことは普通に呼んでるわよね」
「え? あ、そうだね」
「何か理由でもあるの?」
「ううん、ないよ。ただ、ヴィーを見ていてくれるのはありがたいな、って素直に思うんだけど。クリムのことは未だにわからないことがあるから」
ユキア自身も、クリムと頻繁に話すようになったのはつい最近のことだったので、彼の人となりは人並みにしかわかっていない。
そもそも、クリムは元から積極的に街の神と関わる方ではない。そして、彼に課せられた裁定者の役割もあり、本当の彼を知らず恐れる者も少なくない。
「クリムって、どんなひとなんだろう。ヴィーはひたすら真面目だって言ってたけど」
「真面目バカよ、真面目バカ。確かに頭はそこそこいいけど、正直アイリスの命令なんて素直に聞かなくてもいいと思うんだよね」
「でも、それってここの神にとっては普通じゃないの? ユキが変なだけで」
「さらっと変人扱いするのやめてくれる?」
「ご、ごめんね!?」
慌てて謝るアスタに向かって、ユキアはため息をつく。
「ただ、命令を聞かなきゃいけないのは仕方ないかもね。私はただの一般神だけど、あいつはアーケンシェンだし」
「立場とかも関係してるってことだね」
「そうそう。まあ、それ以外はなんだかんだいい奴よ。メアだってお世話になっているしね」
一般神に対して、堅苦しく厳格な態度で振る舞わざるを得ないということは、ユキアにもわかっている。逆に、そうした態度であることを必要とされない場面であれば、クリムは優しいどころか少し甘い部分もある。
アーケンシェンとしてそれはどうなんだ、と思わなくもないが、ユキアがクリムを頼りにできるのはそういう部分があるからこそだ。
「ねぇ、一つ思ったんだけど。クリムって、甘いもの好きなのかな」
「……どうしたのよ、急に?」
「クリムにお土産でも持っていこうかなって」
最初こそちょっとした誤解もあったものの、アスタもクリムのことは仲間と認めているようだった。お土産を持っていく、などという急な思い立ちはその影響だろう。
「そういえばあいつ、いっつも同じもの食べてる気がするわね。神兵が作ってる配達弁当」
「何それ、美味しいの?」
「安いには安いけど、味が濃くて食べられたもんじゃないわ。噂だと、たまに腐ってる状態で届くこともあるらしいし。そんなの食べるくらいなら自炊した方が全然マシよ」
「えっ、そうなの!? じゃあヴィーもそんな弁当食べてるってことじゃん!?」
複製の固有魔法を持つ女神・ミラージュによって生み出される神兵たちは、守備や戦闘だけでなくキャッセリアのライフラインを保つ役割も担っている。配達弁当もその一つであった。
どうも、クリムは食生活にとことん無頓着のようであった。最低限の栄養さえ摂れればそれでいいというような考えなのかもしれない。ユキアはヴィータのこともよくわかっていないので、恐らく彼女も似たような考えなのだろうと思っている。
「まあ、神は多少栄養バランスイカレてても、滅多に調子崩さないけどね。だからあんな味が濃い弁当でも食べる奴が多いのよ」
「そう考えると、ユキって結構人間に近い生活してるんだね」
「あら、ユキアちゃん。それにアスタくんも。今日は二人だけなのね」
二人が話している中に、店員のトルテが席にやってきた。何もデザートなどは運んでいないようで、手が空いているとわかった。
「ああトルテさん、こんにちは。実は、ちょっと相談したいことがあるんだけど」
「ん? なに?」
「アスタがクリムにお土産持っていきたいんだって。何か、甘さが控えめなお菓子ってないかな?」
ユキアがそう尋ねたとき、トルテは目をぱちくりさせていた。何を言われたのか理解できなかったようだが、それはごく僅かな時間だった。
「えっと……クリム様が、お菓子を食べたいっておっしゃってたの?」
「ううん、ボクが勝手に持っていくだけだよ」
「そ、そうなんだ。そうねぇ、甘さを控えめにするだけなら、一応どんなお菓子でも作れるわ」
「そうなの? じゃあ、チーズケーキは?」
トルテはアスタに向かって、困ったような笑みを見せる。
「ごめんね、チーズケーキはもう品切れなの。さっきアスタくんに売ったのが最後よ」
「えーっ!? そんなのありー!?」
だから、トルテさんのスイーツはキャッセリアの一番人気だと前に言ったじゃないか────と、ユキアは頭を抱えてため息をつく。
スイーツの種類で少し差はあれど、売り切れる速度はどれも早い。なおかつ、スイーツはすべて手作りであるため、そのときに売られている数も少ない。
それこそ、神兵の配達弁当とは比べ物にならないくらいの人気度である。
「あたし、クリム様とは話したこともないから、よくわかっていないんだけど。よく仕事をなされているのよね?」
「そうそう。あいつ、いっつも忙しそうにしているから。仕事の合間に食べられるものとかどうかなって思うんだけど」
「それなら、カップケーキやマフィン、クッキー辺りが無難じゃないかしら。カップケーキならまだ残っているわ」
「ほんと!?」
「ええ。そうだ、ラッピングとかもしないとね」
そう言って、トルテは厨房の方へと姿を消していった。ユキアはケーキを食べきり、ストレートティーを飲み干そうとしていた。
アスタはまだ、チーズケーキを全部食べてはいない。レモンティーも一口分残っていた。
二人とも頼んだデザートを腹に収めた後、トルテが四つのカップケーキと紙製の箱、そして複数の色のリボンを持ってやってきた。
カップケーキは茶色、桃色、黄色、緑色と、すべて味と見た目が異なるようだった。
「こんなものでよければ、どうかしら」
「いいね! ユキ、お金ある?」
「え、これ全部?」
「だって、クリムがどれ食べられるかわかんないし」
「はいはい」
ユキアが懐から銀貨を一枚取って、トルテに渡した。いつもありがとうね、と笑顔を見せながら、トルテが机にカップケーキを並べた。
「箱に詰める前に、おまじないをかけないとね」
「おまじない?」
「トルテさんの神幻術よ。作ってちょっと時間が経ったお菓子でも、作った直後みたいに美味しくなるんだって」
ユキア曰く、このカフェで売られているお菓子はすべて「おまじない」をかけられているという。
トルテは魔力を軽く収束させ、片手で持てる小さい、赤い杖を召喚した。その杖を両手で持ち、杖ごと両手の指を組み合わせる。
祈りを捧げるように目を閉じた彼女の周囲に、桃色の魔力でできた光が浮かぶ。
「この身の幸福をおすそ分け。みんなみんな、幸せに。『甘麗純愛菓』」
浮かんでいた光が、カップケーキを包み込んで溶けていった。
スイーツに大きな見た目の変化はなかったが、ふわふわと漂う甘い香りがより濃厚になった。トルテは四つのカップケーキを紙箱に詰め込んだ。
「これがトルテの神幻術なんだね」
「そうよ。次はラッピングね。リボンは何色がいいかしら……」
「青とか緑は?」
「いいわね。じゃあ、緑にしましょうか」
エメラルドグリーンのリボンを選び、蓋をきっちり結ぶ。ラッピングを終えたカップケーキ入りの箱を、トルテがアスタに手渡した。
「はい、できたわ」
「ありがとう、トルテ!」
「ううん、あたしにはこのくらいしかできないから。クリム様に喜んでもらえるといいわね」
トルテが見送る中、アスタとユキアはカフェを出て、街の郊外へと足を運んでいった。
*
昼も過ぎ、一人で黙々と書類にペンを走らせていた。ふと、机の置き時計を見ると三時を示しているのに気づく。
昼ご飯はもう食べたのだが、ずっと仕事をしていたからかお腹がすいた。とはいえ、夕飯までまだまだ時間がある。お腹がすいたまま作業するしかないか────
「クリム、邪魔するわよー」
「うわぁっ!? って、ユキアにアスタ? どうしたの、急に」
突然、二人の人影が書斎に入ってきた。予想外の出来事だったので、思わず間抜けな叫び声を上げてしまう。
ユキアと一緒に入ってきたアスタの手には、緑のリボンが巻かれたケーキの箱がぶら下がっており、僕に近づいてその箱を渡してくれた。
「これ、何だい?」
「繁華街にカフェがあるでしょ。あそこのお菓子買ってきたのよ」
「ああ、なるほどね」
まさか、お菓子を持ってくるとは思わなかった。さすがに小腹がすいているとはいえ、お菓子を食べる気はさらさらなかったのだが……。
「あれ、ヴィーは?」
「隣の部屋で読書してる。これ開けるね」
アスタからもらった箱を机に置き、リボンをほどいて開けてみる。中には、色とりどりのお菓子が四つほど入っていた。丁寧に持ってきてくれたのか、倒れたり崩れたりはしていない。
「……これは?」
「え、あんたもしかしてカップケーキ知らないの?」
「そういうわけじゃないけど。なんか、いろんな色があるね」
色によって香りが異なる……味が違うみたいだ。
カップケーキを知らない、というよりはどのお菓子がカップケーキなのかわからなかったという方が正しい。それくらい、お菓子には全然興味がなかった。
「じゃあ、一つはヴィータにあげるよ。どれがいいかな」
「ヴィーはこれが好きだと思う。抹茶味」
「ああ、それなら私が持っていくわよ。ちょうだい」
緑色のカップケーキをアスタから受け取り、ユキアは書斎から出ていく。僕とアスタだけが、その場に残された。
「……ユキ、こういう気の遣い方うまいんだよね」
「え?」
アスタは僕のベッドの縁に座り、桃色のカップケーキを食べ始めた。普段、ヴィータが座る場所にアスタが座っているのは、なんだかとても新鮮な気がした。
「ユキから聞いたよ? クリム、いつも味が濃い配達弁当食べてるって。食生活に気を遣った方がいいよ」
「……どうして、君がそんなこと気にするんだい?」
「だって、クリムに何かあったらヴィーが悲しむから」
別に、神は栄養バランスが著しく崩れたところで、体調を大きく崩すことはない。その辺りの調整は、身体の中に保有されている自身の魔力が自動的に補完してくれるからだ。黒幽病以外の病気になりにくいのも、魔力の調整によるものだ。
人間は、そういう魔力による体調の調整ができないらしい。だから、普段の生活から気にしないとすぐ体調を崩してしまうのだろう。
「アスタは、僕たちよりも人間みたいなことを言うんだね」
「ボク、人間の友達がいっぱいいたんだ。だから、人間の考えに影響されてる部分が多いのかも」
「そうなんだ……僕も人間の友達がいたら、もっと気楽に生きられたかもしれないな」
人間には人間の大変な部分があると思う。それでも、人間の生き方がどういうものなのか知りたい。そう思っていた時期があったのは、遙か昔の話だ。
「……正直な話、クリムはアイリスのことどう思ってるの?」
「き、急になんでそんなことを聞くの」
「立場とか事情とか、色々あるかもしれないけどさ。無理に命令を聞かなくたっていいと思うよ。クリムはクリムなんだから」
もしかして、今日お土産を持ってきたのは、そういう話をしたかったからなのか?
答えるのが怖かった。どこかで誰かに聞かれているのではないか恐ろしくなってしまう。ただ、仲間である彼の前で誤魔化すのは、色々と失礼な気がした。
「……普段は、とてもしっかりしているお方だと思ってる。でも、たまにあのひとが、すごく怖い存在に見えるときがあるんだ」
「というと?」
「アイリス様は僕以上に、罪人に容赦ないんだ。この世界の平和を乱す存在に対しては、信じられないくらい冷たいひとになる。そして、この世界に邪魔な存在をアーケンシェンに消させるんだ」
既にカップケーキは食べ終えていたアスタの顔が、少しずつ険しくなっていた。
アイリス様のことが気に食わない、というのは前から聞いたことがあったけれど、僕の予想以上に嫌悪している部分がありそうだった。
「命令に逆らってみようとか、考えたことってあるの?」
「一度だけ、アイリス様の命令に逆らおうとしたときがあるんだ。でも……ダメだった。逆らったら、大事なひとの命が危なくなるから────」
「なんだよそれ……脅されたってことじゃん! そんなのひどいよ!」
カップケーキの包み紙が、くしゃりと音を立てた。アスタがぎゅっと握って潰したからだ。
……もう食べ終わっててよかった。
「脅されたわけじゃないんだよ。僕のせいだったんだ。僕がうまく対処できなかったから」
「そんなの、アイリスが無能だったから悪いんじゃん! 最高神のくせに、他の神のカバーすらできないなんて!」
「……アスタも口が悪いね。アイリス様に聞かれたらどうするの?」
特に糾弾する気は湧いてこなかった。アイリス様に反抗的な態度をとる姿が、ユキアに似ていたのだ。
ぐぬぬと目を伏せて、勢いをつけてアスタが立ち上がる。紙ごと拳を握ったまま、彼は床を睨みつけながら言う。
「ボクはアイリスなんかに負けない。いくら最高神って言ったって、観測者のボクに勝てるわけないし」
「えっと、アスタ? あまり熱くならないで?」
「だから、クー。アイリスの命令を聞くのが苦しくなったら、遠慮なく逆らっていいんだよ。もし、アイリスがクーをひどい目に遭わせようとしたら、ボクが戦ってあげるから!」
……ちょっと自分に自信がありすぎじゃないのかな。それに、アスタには僕じゃなくて、ユキアのために戦ってほしいという気持ちもある。
それでも────遠慮なく逆らっていい、という言葉は、僕の緊張を優しくほぐしてくれる気がして、苦笑いがこぼれた。
「ユキアたちを助けてくれたのも、その優しさのおかげだったね。ありがとう、アスタ」
「このくらい、友達なら当然のことだよ」
「でも、あまりアイリス様を怒らせないでね? 僕にだけ矛先が向くとは限らないんだから」
「もちろん、ユキも守るよ。ヴィーだってアイリスに負けるわけない。クーがアイリスを恐れていても、ボクたちはちっとも怖くなんかないよ!」
僕は、残る二つのカップケーキに目を移す。残るのは、黄色と茶色のカップケーキ。なんとなく、ユキアは黄色を食べそうだなと思って、僕は茶色をもらうことにした。
一口かじって食べてみた。ほろ苦いけれど、甘い。多分、チョコレートという奴だ。きちんと焼けていてドロドロしておらず、サクサクとした食感なので食べやすい。
「お菓子って、こんなに甘くて心が軽くなるんだ……」
「でしょ? クー、いつか一緒にトルテのカフェに行こうよ。もっと美味しいお菓子があるかもしれないよ」
「うん、そうだね」
トルテ、という神には会ったことがない。でも、もしどこかで会うことができたら、このカップケーキのお礼をしたいと思った。
ある日の昼下がり。おしゃれなカフェの店内には、変わらず甘い匂いが漂っている。キャッセリアに唯一存在するカフェには、今日も多くの客が訪れており、それぞれお好みのデザートを楽しんでいた。
ユキアとアスタは、テーブル席に向かい合って座り、デザートとドリンクを頼んでゆったりと会話をしていた。ユキアの前にはオレンジケーキとストレートティー、アスタの前にはレモンティーとチーズケーキが置かれている。
「えへへ、やっぱりレモンティーにはチーズケーキが一番だよね、ユキ!」
「いや、私その組み合わせは食べたことないんだけど……」
アスタはレモンティーが特にお気に入りのようで、レモンティーに合うお菓子が大好物らしかった。ユキアもお菓子はそこそこ食べる方であったが、チーズケーキは食べたことがない。
「えー、これ美味しいよ!? ユキも今度試してみてよ」
「そうねぇ。でも私、昔からここのオレンジケーキ好きなんだよ。これがやめられないんだよねぇ」
「むぅー」
不満そうに頬を膨らませるも、すぐに笑顔に戻ってチーズケーキを頬張る。たまらなく幸せそうな顔を浮かべては、レモンティーを口にしてさらに微笑みをこぼすのだった。
「そういえばあんた、私のことはユキって呼ぶくせに、クリムのことは普通に呼んでるわよね」
「え? あ、そうだね」
「何か理由でもあるの?」
「ううん、ないよ。ただ、ヴィーを見ていてくれるのはありがたいな、って素直に思うんだけど。クリムのことは未だにわからないことがあるから」
ユキア自身も、クリムと頻繁に話すようになったのはつい最近のことだったので、彼の人となりは人並みにしかわかっていない。
そもそも、クリムは元から積極的に街の神と関わる方ではない。そして、彼に課せられた裁定者の役割もあり、本当の彼を知らず恐れる者も少なくない。
「クリムって、どんなひとなんだろう。ヴィーはひたすら真面目だって言ってたけど」
「真面目バカよ、真面目バカ。確かに頭はそこそこいいけど、正直アイリスの命令なんて素直に聞かなくてもいいと思うんだよね」
「でも、それってここの神にとっては普通じゃないの? ユキが変なだけで」
「さらっと変人扱いするのやめてくれる?」
「ご、ごめんね!?」
慌てて謝るアスタに向かって、ユキアはため息をつく。
「ただ、命令を聞かなきゃいけないのは仕方ないかもね。私はただの一般神だけど、あいつはアーケンシェンだし」
「立場とかも関係してるってことだね」
「そうそう。まあ、それ以外はなんだかんだいい奴よ。メアだってお世話になっているしね」
一般神に対して、堅苦しく厳格な態度で振る舞わざるを得ないということは、ユキアにもわかっている。逆に、そうした態度であることを必要とされない場面であれば、クリムは優しいどころか少し甘い部分もある。
アーケンシェンとしてそれはどうなんだ、と思わなくもないが、ユキアがクリムを頼りにできるのはそういう部分があるからこそだ。
「ねぇ、一つ思ったんだけど。クリムって、甘いもの好きなのかな」
「……どうしたのよ、急に?」
「クリムにお土産でも持っていこうかなって」
最初こそちょっとした誤解もあったものの、アスタもクリムのことは仲間と認めているようだった。お土産を持っていく、などという急な思い立ちはその影響だろう。
「そういえばあいつ、いっつも同じもの食べてる気がするわね。神兵が作ってる配達弁当」
「何それ、美味しいの?」
「安いには安いけど、味が濃くて食べられたもんじゃないわ。噂だと、たまに腐ってる状態で届くこともあるらしいし。そんなの食べるくらいなら自炊した方が全然マシよ」
「えっ、そうなの!? じゃあヴィーもそんな弁当食べてるってことじゃん!?」
複製の固有魔法を持つ女神・ミラージュによって生み出される神兵たちは、守備や戦闘だけでなくキャッセリアのライフラインを保つ役割も担っている。配達弁当もその一つであった。
どうも、クリムは食生活にとことん無頓着のようであった。最低限の栄養さえ摂れればそれでいいというような考えなのかもしれない。ユキアはヴィータのこともよくわかっていないので、恐らく彼女も似たような考えなのだろうと思っている。
「まあ、神は多少栄養バランスイカレてても、滅多に調子崩さないけどね。だからあんな味が濃い弁当でも食べる奴が多いのよ」
「そう考えると、ユキって結構人間に近い生活してるんだね」
「あら、ユキアちゃん。それにアスタくんも。今日は二人だけなのね」
二人が話している中に、店員のトルテが席にやってきた。何もデザートなどは運んでいないようで、手が空いているとわかった。
「ああトルテさん、こんにちは。実は、ちょっと相談したいことがあるんだけど」
「ん? なに?」
「アスタがクリムにお土産持っていきたいんだって。何か、甘さが控えめなお菓子ってないかな?」
ユキアがそう尋ねたとき、トルテは目をぱちくりさせていた。何を言われたのか理解できなかったようだが、それはごく僅かな時間だった。
「えっと……クリム様が、お菓子を食べたいっておっしゃってたの?」
「ううん、ボクが勝手に持っていくだけだよ」
「そ、そうなんだ。そうねぇ、甘さを控えめにするだけなら、一応どんなお菓子でも作れるわ」
「そうなの? じゃあ、チーズケーキは?」
トルテはアスタに向かって、困ったような笑みを見せる。
「ごめんね、チーズケーキはもう品切れなの。さっきアスタくんに売ったのが最後よ」
「えーっ!? そんなのありー!?」
だから、トルテさんのスイーツはキャッセリアの一番人気だと前に言ったじゃないか────と、ユキアは頭を抱えてため息をつく。
スイーツの種類で少し差はあれど、売り切れる速度はどれも早い。なおかつ、スイーツはすべて手作りであるため、そのときに売られている数も少ない。
それこそ、神兵の配達弁当とは比べ物にならないくらいの人気度である。
「あたし、クリム様とは話したこともないから、よくわかっていないんだけど。よく仕事をなされているのよね?」
「そうそう。あいつ、いっつも忙しそうにしているから。仕事の合間に食べられるものとかどうかなって思うんだけど」
「それなら、カップケーキやマフィン、クッキー辺りが無難じゃないかしら。カップケーキならまだ残っているわ」
「ほんと!?」
「ええ。そうだ、ラッピングとかもしないとね」
そう言って、トルテは厨房の方へと姿を消していった。ユキアはケーキを食べきり、ストレートティーを飲み干そうとしていた。
アスタはまだ、チーズケーキを全部食べてはいない。レモンティーも一口分残っていた。
二人とも頼んだデザートを腹に収めた後、トルテが四つのカップケーキと紙製の箱、そして複数の色のリボンを持ってやってきた。
カップケーキは茶色、桃色、黄色、緑色と、すべて味と見た目が異なるようだった。
「こんなものでよければ、どうかしら」
「いいね! ユキ、お金ある?」
「え、これ全部?」
「だって、クリムがどれ食べられるかわかんないし」
「はいはい」
ユキアが懐から銀貨を一枚取って、トルテに渡した。いつもありがとうね、と笑顔を見せながら、トルテが机にカップケーキを並べた。
「箱に詰める前に、おまじないをかけないとね」
「おまじない?」
「トルテさんの神幻術よ。作ってちょっと時間が経ったお菓子でも、作った直後みたいに美味しくなるんだって」
ユキア曰く、このカフェで売られているお菓子はすべて「おまじない」をかけられているという。
トルテは魔力を軽く収束させ、片手で持てる小さい、赤い杖を召喚した。その杖を両手で持ち、杖ごと両手の指を組み合わせる。
祈りを捧げるように目を閉じた彼女の周囲に、桃色の魔力でできた光が浮かぶ。
「この身の幸福をおすそ分け。みんなみんな、幸せに。『甘麗純愛菓』」
浮かんでいた光が、カップケーキを包み込んで溶けていった。
スイーツに大きな見た目の変化はなかったが、ふわふわと漂う甘い香りがより濃厚になった。トルテは四つのカップケーキを紙箱に詰め込んだ。
「これがトルテの神幻術なんだね」
「そうよ。次はラッピングね。リボンは何色がいいかしら……」
「青とか緑は?」
「いいわね。じゃあ、緑にしましょうか」
エメラルドグリーンのリボンを選び、蓋をきっちり結ぶ。ラッピングを終えたカップケーキ入りの箱を、トルテがアスタに手渡した。
「はい、できたわ」
「ありがとう、トルテ!」
「ううん、あたしにはこのくらいしかできないから。クリム様に喜んでもらえるといいわね」
トルテが見送る中、アスタとユキアはカフェを出て、街の郊外へと足を運んでいった。
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昼も過ぎ、一人で黙々と書類にペンを走らせていた。ふと、机の置き時計を見ると三時を示しているのに気づく。
昼ご飯はもう食べたのだが、ずっと仕事をしていたからかお腹がすいた。とはいえ、夕飯までまだまだ時間がある。お腹がすいたまま作業するしかないか────
「クリム、邪魔するわよー」
「うわぁっ!? って、ユキアにアスタ? どうしたの、急に」
突然、二人の人影が書斎に入ってきた。予想外の出来事だったので、思わず間抜けな叫び声を上げてしまう。
ユキアと一緒に入ってきたアスタの手には、緑のリボンが巻かれたケーキの箱がぶら下がっており、僕に近づいてその箱を渡してくれた。
「これ、何だい?」
「繁華街にカフェがあるでしょ。あそこのお菓子買ってきたのよ」
「ああ、なるほどね」
まさか、お菓子を持ってくるとは思わなかった。さすがに小腹がすいているとはいえ、お菓子を食べる気はさらさらなかったのだが……。
「あれ、ヴィーは?」
「隣の部屋で読書してる。これ開けるね」
アスタからもらった箱を机に置き、リボンをほどいて開けてみる。中には、色とりどりのお菓子が四つほど入っていた。丁寧に持ってきてくれたのか、倒れたり崩れたりはしていない。
「……これは?」
「え、あんたもしかしてカップケーキ知らないの?」
「そういうわけじゃないけど。なんか、いろんな色があるね」
色によって香りが異なる……味が違うみたいだ。
カップケーキを知らない、というよりはどのお菓子がカップケーキなのかわからなかったという方が正しい。それくらい、お菓子には全然興味がなかった。
「じゃあ、一つはヴィータにあげるよ。どれがいいかな」
「ヴィーはこれが好きだと思う。抹茶味」
「ああ、それなら私が持っていくわよ。ちょうだい」
緑色のカップケーキをアスタから受け取り、ユキアは書斎から出ていく。僕とアスタだけが、その場に残された。
「……ユキ、こういう気の遣い方うまいんだよね」
「え?」
アスタは僕のベッドの縁に座り、桃色のカップケーキを食べ始めた。普段、ヴィータが座る場所にアスタが座っているのは、なんだかとても新鮮な気がした。
「ユキから聞いたよ? クリム、いつも味が濃い配達弁当食べてるって。食生活に気を遣った方がいいよ」
「……どうして、君がそんなこと気にするんだい?」
「だって、クリムに何かあったらヴィーが悲しむから」
別に、神は栄養バランスが著しく崩れたところで、体調を大きく崩すことはない。その辺りの調整は、身体の中に保有されている自身の魔力が自動的に補完してくれるからだ。黒幽病以外の病気になりにくいのも、魔力の調整によるものだ。
人間は、そういう魔力による体調の調整ができないらしい。だから、普段の生活から気にしないとすぐ体調を崩してしまうのだろう。
「アスタは、僕たちよりも人間みたいなことを言うんだね」
「ボク、人間の友達がいっぱいいたんだ。だから、人間の考えに影響されてる部分が多いのかも」
「そうなんだ……僕も人間の友達がいたら、もっと気楽に生きられたかもしれないな」
人間には人間の大変な部分があると思う。それでも、人間の生き方がどういうものなのか知りたい。そう思っていた時期があったのは、遙か昔の話だ。
「……正直な話、クリムはアイリスのことどう思ってるの?」
「き、急になんでそんなことを聞くの」
「立場とか事情とか、色々あるかもしれないけどさ。無理に命令を聞かなくたっていいと思うよ。クリムはクリムなんだから」
もしかして、今日お土産を持ってきたのは、そういう話をしたかったからなのか?
答えるのが怖かった。どこかで誰かに聞かれているのではないか恐ろしくなってしまう。ただ、仲間である彼の前で誤魔化すのは、色々と失礼な気がした。
「……普段は、とてもしっかりしているお方だと思ってる。でも、たまにあのひとが、すごく怖い存在に見えるときがあるんだ」
「というと?」
「アイリス様は僕以上に、罪人に容赦ないんだ。この世界の平和を乱す存在に対しては、信じられないくらい冷たいひとになる。そして、この世界に邪魔な存在をアーケンシェンに消させるんだ」
既にカップケーキは食べ終えていたアスタの顔が、少しずつ険しくなっていた。
アイリス様のことが気に食わない、というのは前から聞いたことがあったけれど、僕の予想以上に嫌悪している部分がありそうだった。
「命令に逆らってみようとか、考えたことってあるの?」
「一度だけ、アイリス様の命令に逆らおうとしたときがあるんだ。でも……ダメだった。逆らったら、大事なひとの命が危なくなるから────」
「なんだよそれ……脅されたってことじゃん! そんなのひどいよ!」
カップケーキの包み紙が、くしゃりと音を立てた。アスタがぎゅっと握って潰したからだ。
……もう食べ終わっててよかった。
「脅されたわけじゃないんだよ。僕のせいだったんだ。僕がうまく対処できなかったから」
「そんなの、アイリスが無能だったから悪いんじゃん! 最高神のくせに、他の神のカバーすらできないなんて!」
「……アスタも口が悪いね。アイリス様に聞かれたらどうするの?」
特に糾弾する気は湧いてこなかった。アイリス様に反抗的な態度をとる姿が、ユキアに似ていたのだ。
ぐぬぬと目を伏せて、勢いをつけてアスタが立ち上がる。紙ごと拳を握ったまま、彼は床を睨みつけながら言う。
「ボクはアイリスなんかに負けない。いくら最高神って言ったって、観測者のボクに勝てるわけないし」
「えっと、アスタ? あまり熱くならないで?」
「だから、クー。アイリスの命令を聞くのが苦しくなったら、遠慮なく逆らっていいんだよ。もし、アイリスがクーをひどい目に遭わせようとしたら、ボクが戦ってあげるから!」
……ちょっと自分に自信がありすぎじゃないのかな。それに、アスタには僕じゃなくて、ユキアのために戦ってほしいという気持ちもある。
それでも────遠慮なく逆らっていい、という言葉は、僕の緊張を優しくほぐしてくれる気がして、苦笑いがこぼれた。
「ユキアたちを助けてくれたのも、その優しさのおかげだったね。ありがとう、アスタ」
「このくらい、友達なら当然のことだよ」
「でも、あまりアイリス様を怒らせないでね? 僕にだけ矛先が向くとは限らないんだから」
「もちろん、ユキも守るよ。ヴィーだってアイリスに負けるわけない。クーがアイリスを恐れていても、ボクたちはちっとも怖くなんかないよ!」
僕は、残る二つのカップケーキに目を移す。残るのは、黄色と茶色のカップケーキ。なんとなく、ユキアは黄色を食べそうだなと思って、僕は茶色をもらうことにした。
一口かじって食べてみた。ほろ苦いけれど、甘い。多分、チョコレートという奴だ。きちんと焼けていてドロドロしておらず、サクサクとした食感なので食べやすい。
「お菓子って、こんなに甘くて心が軽くなるんだ……」
「でしょ? クー、いつか一緒にトルテのカフェに行こうよ。もっと美味しいお菓子があるかもしれないよ」
「うん、そうだね」
トルテ、という神には会ったことがない。でも、もしどこかで会うことができたら、このカップケーキのお礼をしたいと思った。
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