魔法の使えない無能と呼ばれた私は実は歴代最強でした。

こずえ

文字の大きさ
18 / 108
双龍の刺客:ゼルシア

9話

しおりを挟む
俺は目の前で戦う2人を見る。

マリアとグレンだ。

グレンが勝負を挑もうとして、マリアが拒否していたところでグレンがマリアに斬りかかった為、マリアが応戦したのだ。

だが、実力は武器を構えてすらいないマリアが圧倒的に上だった。

グレンは明らかにボロボロになっており、マリアは涼しい顔をして立っていた。

「行くぜ!奥義…」

グレンの刀が文字通りの紅に燃え上がる刃になる。

マリアは特に避けようとはせず、ただ相手を見る。

「大文字!」

グレンが大の字に斬りかかる寸前でマリアが体勢を低くする。

魔法拳パライズ!」

痺れの魔法を纏ったはっけいでグレンを弾き飛ばし、痺れの効果でグレンを動けなくする。

マリアは「ふぅ…」と息を吐く。

「貴方と私では力の差があり過ぎます。今の私が武器を使わなかったのは、貴方を殺すつもりはなく、このくらいが貴方にはちょうど良いと判断した為です。何より、これから背中を任せる相手にいきなり斬りかかる無礼は許されるものでは無いですよ。」

グレンは痺れのせいで身体をピクピクと震わせている。

「それ…でも…俺は…」

グレンは痺れているにも関わらず、声を出す。

それは並大抵の冒険者では出来ない芸当だが、グレンは根性だけでそれを可能にしていた。

マリアはグレンの前に座って諭すように言う。

「納得がいかないようですね。なら、せっかくなので勝負をしませんか?この修行の期間でどっちが強くなれるか勝負しましょう。貴方の根性だけは人一倍優れたものだと思っていますし、貴方ならすぐに私を超える剣聖となるでしょう。だけど、私は全身全霊を持って貴方が強くなるよりももっと早く、もっと高く、飛んでみせますよ。」

グレンはニッと笑う。

「負け…ねぇ…ぞ!」

グレンは痺れながらも強気の姿勢を崩さなかった。

俺はグレンの治療をする。

手際よく、そして迅速な処置を…

そうしているとマリアがスッと立ち上がり、ここに来るまでの間で拾った剣に手をかける。

周囲がざわつき始める。

「前方に少なくともA級が5体、S級が2体、SS級が3体居ますね。他の方向からのモンスターの接近は無さそうです。」

マリアの察知能力は俺の察知能力よりも優れていた。

「戦闘態勢を整えろ!グレン、お前も行けるな?」

グレンは痺れの取れた身体を起き上がらせて言う。

「ゼルシアのおかげでバッチリだぜ!」

「数が多い…迅速に撃破しよう。上限解放リミットブレイク!」

マリアは遠くに影が見えたと同時に剣を抜いて、ほぼ音速で突っ走って行く。

「あ、おい!マリア!」

俺たちも慌ててマリアを追いかける。

「雷よ!魔法剣ギラ!剣技、一閃!」

マリアは光速をも越える的確な一振でA級とS級モンスターを全滅させる。

SS級モンスターの一体のグラスゴリラが自身の力で出現させた巨大な蔓のムチをマリアに向かって叩きつけようとする。

「遅い!魔法剣ファイア!」

マリアは難なく攻撃を避けて、火属性の高火力が上乗せされた剣技でグラスゴリラを討伐する。

「…っ?!」

突然、マリアが吐血して片膝をつく。

その隙を相手は見逃さなかった。

SS級モンスターのシルバージラフが鋼鉄の長い首を大きく振りかぶってマリアに向かって叩きつける。

「かはっ」

マリアは一瞬にして真後ろの大樹に叩きつけられる。

頭からも血を流しており、かなりのダメージを受けた様子だった。

俺はグレンに指示を出す。

「グレン!お前はマリアの援護を!俺はもう一体が合流する前に仕留める!」

グレンはシルバージラフに向き合って言う。

「俺に任せとけ!俺だって、冒険者なんだぞ!」

俺は遥か後方に居た最後のSS級モンスターの竜種:ギガントバーンと対峙する。

空を飛びながら移動していたギガントバーンが俺を視認して火球を放とうとする。

「させるかよ!水魔弾アクアバレット!」

水の力を込めた弾丸がギガントバーンの火球を撃ち抜いて消滅させる。

「ギャース!」

ギガントバーンは自慢の火球を破壊されて怒っているようだ。

俺の適性属性は炎だ。

だが、やつに炎は相性が悪過ぎる。

俺はさらに力を込める。

「これでどうだ!超水流弾ジェットアクアバレット!」

光速にも匹敵する速度の水の弾丸でやつの右翼を破壊する。

ギガントバーンは地に落ちてもこちらを見て威嚇する。

「ギャオギャオギャー!」

ギガントバーンが雄叫びをあげると同時に灼熱の業火がギガントバーンを包み込んで守る。

そしてそのまま左翼で羽ばたくと触れれば一瞬で溶かされそうなほど高温の熱風を撒き散らす。

「めんどくせぇやつだなっ!極大氷弾ギガアイスバレット!」

全てを凍てつかせる様な冷たい巨大な氷の弾丸を放つ。

氷の弾丸と熱風が激しくぶつかり合うせいで辺りに水蒸気の霧が発生して視界が悪くなる。

俺は探知サーチを使う。

「さーて…お相手さんはどう来るかなっと…」

俺は挑発ヘイトを使い、わざとやつに位置を感知させる。

これは一種のかけだった。

「そらよっと!火炎弾ファイアバレット!」

発射直後に最大火力になる様に調整した為、身体が焼けそうなほどの灼熱に襲われる。

そして、火炎弾は空中で燃え尽きるように消える。

「ギャアアアアアアス!」

そこに右翼が回復したギガントバーンが現れる。

「かかったな!痺れ玉パライズショット!」

痺れ効果のある玉が大量に発射され、ギガントバーンに襲いかかる。

「ギャオオオオオオオオ?!」

突然の奇襲にギガントバーンは為す術もなく痺れ状態になり、地に落ちる。

未だ抵抗しようとするギガントバーンの目に銃口を突きつける。

「悪ぃがテメーはここで終わりだ!超短距離確殺弾スーパーショートデス!」

ほんとに極めて限定的な状況下でのみ扱える絶対即死の必殺技を放つ。

魔力がごっそりと無くなる感覚と共にギガントバーンが完全に死亡した事を確認する。

「はー、疲れた。あの距離なら、絶対に殺せるかわりに即死効果で殺すと経験値にならねぇから、コスパはクソ悪いよなぁ…」

だが、今の俺にはこうでもしなければ、SS級モンスターを倒す事さえままならない。

「チッ…ともあろうものが情けねぇな…」

俺は目の前に転がるギガントバーンを見る。

固有種特有の変化も無い、ほんとにただの何の変哲もないギガントバーンだったのだ。

「…俺たちは治療も無限に出来るわけじゃねぇし、獲物の処理もしなきゃなんねぇから、無駄は極力避けねぇとな…でなければ、この島で6日を生き抜く事はおそらく無理だ。幸い、食料だけはモンスターを狩って何とかは出来るが…」

治療に役立ちそうな薬草を探知しようと範囲を広げる。

しかし、この辺りには治療に使えそうな物はなく、逆に毒性の強いものばかりであった。

「…となると、俺がここで消耗しきっちまったのは痛手だな。撃てても魔力のこもってないヘナチョコ弾くらいなもんだしな…いや、 魔力増強剤プリマチャージで気休め程度に回復させれば消費の少ない無属性弾なら、明日までもたせることは可能かもしれんが…」

俺がギガントバーンの処理をしながら、魔力増強剤で魔力を回復させていると探知にあるものが感知される。

「まずいな…この状況で災害級モンスターが追加で一匹、やって来ようとしてる。早くあいつらと合流して逃げなければ…」

俺は処理し終えた分だけをバッグに入れて、遥か後方で戦って居るであろう仲間の元へ走る。

「間に合ってくれよ…!」

ただただ全力で走る。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

処理中です...