60 / 108
反骨の意志
50話
しおりを挟む
「これは…」
そうこぼした少女の前に現れたのは大量の緑の液体で満たされたカプセルの中に入れられた様々な種族の少女たちだ。
001~120までの札が見える。
「被検体…001…103…ここは…壊れてる…みたいね…」
「コツコツ」と足音が聞こえたので、咄嗟に気配を消して隠れる。
その足音は002と書かれた札の少女のカプセルの前で止まる。
「002、もう少しで君のパーツも揃いそうだ。」
少女は14歳前後の身体つきの黒く長い髪の猫族のようだった。
声の主はそれなりに歳をとった男の様だった。
「君は最後までこの私から離れないで居てくれたまえよ…001や103の様な出来損ないと違って、君は優秀だと信じているからね。」
男は不気味に微笑んで言う。
「ここまで本当に長かった…君を創り始めて苦節15年、ようやく私の悲願が叶う時が来たと思ったら、001と103が脱走してしまったからね。後は憎き悪魔王の娘の血を採取出来れば…私はこの世界の王になれる…フッフフッ…フハハハハハ!」
男は高らかに笑いながら、部屋を出る。
「悪魔王の娘…アリスの事…?」
私はポツリとそう呟いて、002の前に立つ。
「…」
002は見れば見るほど、アリスを彷彿とさせるような見た目をしていた。
アリスと違うのは、背中に深紅の龍の翼がある事、頬が片方だけ龍の鱗に覆われている事、龍の尻尾がある事、髪が黒く長い事、胸部に大きな丸い塊がある事だ。
002が目を開ける。
しまった!
002は綺麗に輝いているコバルトブルーの瞳を私に向ける。
私は咄嗟に身構えたが、002は小さく微笑んだだけで、そのまま目を閉じてしまった。
見えてなかったのかな?
でも、今、完全に見られたはず…
私は不安を拭い去るように姿を消す情報隠蔽魔法を使って、その部屋を出る。
「守らなきゃ…」
私は足音を立てないように、迅速に行動する。
途中の部屋にモンスターとヒトの研究所みたいなところもあった。
思わず目を覆いたくなるような禍々しい生物が沢山いた。
…
出口まで来た瞬間だった。
「おやおや?こんなところにネズミが一匹…」
私は驚いて後ろを振り返るとそこには深紅の瞳の魔人がいた。
声から推測出来るのは女性である事くらいだった。
私は咄嗟に武器を構えるが、魔人は面白そうに微笑んで穏やかな表情のまま言う。
「ふむ。余の顔を見ても狂わないのは素晴らしい精神力を持っていると言えますね。君はあの猫族の少女より弱いですが、面白い力を持っていますね。」
魔人はいつの間にか道化の仮面をつけて私の隣に立ち、私の左肩に右手を置いていた。
やはり、女性のような白く華奢な手だ。
「ここは余の施設では無いので逃がしてあげますよ。余の目的は貴方ではありませんので…」
魔人はそう言って出口の扉を破壊する。
警報が鳴り響き、辺りが騒がしくなる。
「早くお行きなさい。そして、悪魔の子に伝えるのです!」
「ありがとう…」
私は魔人にお礼を言ってすぐに出口から出て、森の中へと走る。
背後では魔人が施設の人間と交戦しているのが見えた。
「あの人なら…大丈夫…急ごう…」
私は左肩から溢れる魔力を抑えながら、ただひたすらに森の中を走る。
「こっちの方が早い…」
私は街がある方向へ走る。
…
かなり街に近くなったところで突然目の前に無気力な瞳でこちらを見る猫族の少女が現れる。
少女は一瞬で私の後ろに回りこみ、そのまま私の身体を抱きしめると感情の無い声で言う。
「こっち…」
少女が天使の様な翼を広げて、そのまま私の身体ごと自分の身体を浮かせる。
「探す…した…」
少女のそんな言葉が聞こえると身体を勢いよく引っ張られる感覚がした。
…
邪神教団の王都襲撃事件から8日が経過していた。
私は街の修復の傍らでドワーフの職人と共に屋敷の破損箇所の修繕もしていた。
「はい。ドレイクさん、今日の差し入れです。」
私は全身真っ黒な毛で覆われている強面のドワーフの男性に自作弁当を差し出す。
「おう。いつも悪ぃな!嬢ちゃんのメシは美味いから、気合いが入るぜ!」
ドワーフの男性が人懐っこい笑みを浮かべる。
「いえいえ、こちらこそドレイクさんの丁寧な仕事で助かっております。私だけでは屋敷もここまで綺麗に修繕する事は出来なかったと思いますからね。」
「ガッハッハッ!俺はプロだからな!プロである以上、妥協はしないのが俺の信条だぜ!」
私たちがそんな会話をしていると南側から高速で接近する魔力を感じる。
「何か来てる?!」
私が言うとドレイクが険しい顔になる。
あの事件から8日しか経ってないのだ、警戒するのは当然というわけだ。
私は魔力を頼りに見ていると見覚えのある影を発見する。
「ヴァティアかぁ…」
私がそう言うとドレイクも安心した様子でホッとため息をついていた。
「探す…見つけた…」
ヴァティアはそう言ってとある人物を連れて帰ってきていた。
「…!リリア!」
私はヴァティアが無気力に下ろした青い顔をしている少女を抱きしめる。
「アリス…?」
少女が驚いた様子で言う。
「リリア…リリア…!う、うぅ…」
私の中の溢れる思いが雫となって落ちる。
「アリス…」
リリアが申し訳なさそうに見ている。
「心配…したんだよ…ずっと…連絡も…取れなくて…うぅ…無事でよがっだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」
私はリリアを強く抱き締めて大声で泣く。
…
しばらくして私の心もようやく落ち着いてきたところでリリアが言う。
「心配かけてごめん…」
「ほんとだよ!急に飛び出したかと思ったら、何日も連絡なくて…ほんとに心配したよぅ!」
「ごめん…」
リリアが申し訳ないと頭を下げる。
「いいよ…とにもかくにもリリアが無事だったんだから、それだけで十分だよ!ヴァティアもリリアを連れて来てくれてありがとう!」
「うん…」
ヴァティアは相変わらず無表情だったが、ほんの少しだけ嬉しそうな声で言う。
「ところで、リリアは今まで何してたの?」
「実は…」
リリアが今まで見てきた情報を話す。
「ふむふむ…つまり、邪神教団の目的は私の血であり、それによって002と呼ばれている猫族を完成させようとしていたのね。さらにモンスターとヒトのキメラのようなものもあったと…」
私は思考を巡らせる。
「まさか…そんな事をしてたとは…ね…」
私はそのまま一緒に聞いていたドワーフのドレイクに言う。
「ドレイクさん、この事は私からセガール王子に伝えますので、王宮から情報が出るまでは黙っていてもらえませんか?」
「あ、あぁ…俺にはついていけねぇ話だし、嬢ちゃんには恩もあるから構わねぇが…」
「すみません…」
リリアがあった、私を襲ったであろう魔人の話も気になるところだ。
私はリリアとともに王宮へ向かう。
…
私が謁見の間の扉の前で待っていると…
「アリスさん、遅くなってすみません…」
セガールは私の後ろに居るリリアを見て驚いていたが、そのまま謁見の間の扉を開けて中に入る。
私たちが入ると後ろで兵士が扉を閉める。
「まずはリリアさん、おかえりなさい。」
「ただいま…」
セガールとリリアが軽く挨拶をする。
「それでアリスさん、今日はどのようなご用件でしょうか?」
「実は…」
私はリリアから聞いた邪神教団の情報を話す。
「なんと…!そんな事を彼らはやっていたのですか?!」
「リリアの情報によれば、そうなりますね。おそらく、禁術も使われているでしょうから、奴らはとてつもなく危険なものを持っている事になりますし、私の血を欲しているようですので、またいつ襲撃してくるかもわからないですね。」
「禁術に違法な人体実験にキメラの生成…ほんとに命をなんだと思っているのでしょうか…」
セガールが怒りを露わにして言う。
「…私は…ここに居ても良いのでしょうか…」
私の口から溢れ出た言葉の真意は二人ともわかっていた。
「リリア…アリス…一緒…絶対…離れない…」
「私もリリアさんと同意見です。私は冒険者の事はあまりよくわかりませんでしたが、アリスさんの人柄はわかってきたつもりです。そして、私はより貴方に恋焦がれるようになっていきました。私の人生に貴方と言う存在は不可欠です。だから、私も貴方がこの国を出ようと言うなら、私も貴方の行き着く先の果てまでついて行きますとも!」
「二人はここに居てもらわないと困ります…特にセガールさんは王子様なのですからこの国にとって必要不可欠な人物ではありませんか…ですが、私が居なければこの国はもう壊される心配もありませんし…」
私がそう呟くと「バンッ!」と扉が開けられる。
そこには炎の女神、国防騎士隊、アルカノイド、元冒険者の4人も居た。
パリスが言う。
「アリスさん!パリスたちも貴方の事が必要なんです!だから…一人で行こうとしないで…ください…リリアさんの時みたいに寂しい思いはもうしたくないです!その事はアリスさんが一番よく知ってますよね!」
他の集まった人たちも頷く。
茉莉が「クルクル」と楽しげに微笑みながら言う。
「襲ってくるものなら、返り討ちにしてしまえば良いのです…反撃として、完膚なきまでに徹底的にぶっ潰しましょう。そうすれば、野望は阻止出来て襲ってくる愚か者も居なくなりますわ。」
「茉莉よ。そこまではしなくてもいいと思うぞ。だが、向かってくるものに反撃をしてやるのは賛成なのじゃ!私も縄張りの中の罪なき民を傷つけられて黙ってるほど堕ちて無いのじゃ!」
クレアも言うと他の人たちも静かにそれぞれの武器を掲げる。
冒険者の流儀として最上位の敬意を示しているとされているこの行為はこの世界に住むものなら、誰であっても知っている行為であり、国防騎士隊ですら、この流儀を利用するほど、この世界では礼儀正しい行為なのである。
「みんな…」
私は静かに左の拳をあげて言う。
「ありがとう!私たち全員の力を合わせて、邪神教団を打ち倒そう!」
『おう!』『はい!』
私達はそれぞれの場所でリリーフィルによって作戦会議をする事になった。
「…とその前に、リリアから皆に言いたい事があるそうです!」
リリアが驚いた表情をする。
皆が黙ってリリアを見ていた。
リリアは恥ずかしそうにしながらも大きな声で言う。
「急にいなくなってごめんなさい!」
それを聞いた数人が愉快に笑う。
「な、何故…」
リリアが困惑していると笑っていた数人のうちの一人のクレアがリリアの前まで来て言う。
「真面目じゃのう…じゃが、そこがお主のいいところじゃな!」
マリアが笑い過ぎて目に涙を浮かべながら、リリアの元まで来てリリアの頭を撫でる。
「おかえり。」
「ただいま…」
《7/16修正内容》
アリスの「連絡するなくて」を「連絡なくて」に修正しました。
他の変更点はございません。
そうこぼした少女の前に現れたのは大量の緑の液体で満たされたカプセルの中に入れられた様々な種族の少女たちだ。
001~120までの札が見える。
「被検体…001…103…ここは…壊れてる…みたいね…」
「コツコツ」と足音が聞こえたので、咄嗟に気配を消して隠れる。
その足音は002と書かれた札の少女のカプセルの前で止まる。
「002、もう少しで君のパーツも揃いそうだ。」
少女は14歳前後の身体つきの黒く長い髪の猫族のようだった。
声の主はそれなりに歳をとった男の様だった。
「君は最後までこの私から離れないで居てくれたまえよ…001や103の様な出来損ないと違って、君は優秀だと信じているからね。」
男は不気味に微笑んで言う。
「ここまで本当に長かった…君を創り始めて苦節15年、ようやく私の悲願が叶う時が来たと思ったら、001と103が脱走してしまったからね。後は憎き悪魔王の娘の血を採取出来れば…私はこの世界の王になれる…フッフフッ…フハハハハハ!」
男は高らかに笑いながら、部屋を出る。
「悪魔王の娘…アリスの事…?」
私はポツリとそう呟いて、002の前に立つ。
「…」
002は見れば見るほど、アリスを彷彿とさせるような見た目をしていた。
アリスと違うのは、背中に深紅の龍の翼がある事、頬が片方だけ龍の鱗に覆われている事、龍の尻尾がある事、髪が黒く長い事、胸部に大きな丸い塊がある事だ。
002が目を開ける。
しまった!
002は綺麗に輝いているコバルトブルーの瞳を私に向ける。
私は咄嗟に身構えたが、002は小さく微笑んだだけで、そのまま目を閉じてしまった。
見えてなかったのかな?
でも、今、完全に見られたはず…
私は不安を拭い去るように姿を消す情報隠蔽魔法を使って、その部屋を出る。
「守らなきゃ…」
私は足音を立てないように、迅速に行動する。
途中の部屋にモンスターとヒトの研究所みたいなところもあった。
思わず目を覆いたくなるような禍々しい生物が沢山いた。
…
出口まで来た瞬間だった。
「おやおや?こんなところにネズミが一匹…」
私は驚いて後ろを振り返るとそこには深紅の瞳の魔人がいた。
声から推測出来るのは女性である事くらいだった。
私は咄嗟に武器を構えるが、魔人は面白そうに微笑んで穏やかな表情のまま言う。
「ふむ。余の顔を見ても狂わないのは素晴らしい精神力を持っていると言えますね。君はあの猫族の少女より弱いですが、面白い力を持っていますね。」
魔人はいつの間にか道化の仮面をつけて私の隣に立ち、私の左肩に右手を置いていた。
やはり、女性のような白く華奢な手だ。
「ここは余の施設では無いので逃がしてあげますよ。余の目的は貴方ではありませんので…」
魔人はそう言って出口の扉を破壊する。
警報が鳴り響き、辺りが騒がしくなる。
「早くお行きなさい。そして、悪魔の子に伝えるのです!」
「ありがとう…」
私は魔人にお礼を言ってすぐに出口から出て、森の中へと走る。
背後では魔人が施設の人間と交戦しているのが見えた。
「あの人なら…大丈夫…急ごう…」
私は左肩から溢れる魔力を抑えながら、ただひたすらに森の中を走る。
「こっちの方が早い…」
私は街がある方向へ走る。
…
かなり街に近くなったところで突然目の前に無気力な瞳でこちらを見る猫族の少女が現れる。
少女は一瞬で私の後ろに回りこみ、そのまま私の身体を抱きしめると感情の無い声で言う。
「こっち…」
少女が天使の様な翼を広げて、そのまま私の身体ごと自分の身体を浮かせる。
「探す…した…」
少女のそんな言葉が聞こえると身体を勢いよく引っ張られる感覚がした。
…
邪神教団の王都襲撃事件から8日が経過していた。
私は街の修復の傍らでドワーフの職人と共に屋敷の破損箇所の修繕もしていた。
「はい。ドレイクさん、今日の差し入れです。」
私は全身真っ黒な毛で覆われている強面のドワーフの男性に自作弁当を差し出す。
「おう。いつも悪ぃな!嬢ちゃんのメシは美味いから、気合いが入るぜ!」
ドワーフの男性が人懐っこい笑みを浮かべる。
「いえいえ、こちらこそドレイクさんの丁寧な仕事で助かっております。私だけでは屋敷もここまで綺麗に修繕する事は出来なかったと思いますからね。」
「ガッハッハッ!俺はプロだからな!プロである以上、妥協はしないのが俺の信条だぜ!」
私たちがそんな会話をしていると南側から高速で接近する魔力を感じる。
「何か来てる?!」
私が言うとドレイクが険しい顔になる。
あの事件から8日しか経ってないのだ、警戒するのは当然というわけだ。
私は魔力を頼りに見ていると見覚えのある影を発見する。
「ヴァティアかぁ…」
私がそう言うとドレイクも安心した様子でホッとため息をついていた。
「探す…見つけた…」
ヴァティアはそう言ってとある人物を連れて帰ってきていた。
「…!リリア!」
私はヴァティアが無気力に下ろした青い顔をしている少女を抱きしめる。
「アリス…?」
少女が驚いた様子で言う。
「リリア…リリア…!う、うぅ…」
私の中の溢れる思いが雫となって落ちる。
「アリス…」
リリアが申し訳なさそうに見ている。
「心配…したんだよ…ずっと…連絡も…取れなくて…うぅ…無事でよがっだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」
私はリリアを強く抱き締めて大声で泣く。
…
しばらくして私の心もようやく落ち着いてきたところでリリアが言う。
「心配かけてごめん…」
「ほんとだよ!急に飛び出したかと思ったら、何日も連絡なくて…ほんとに心配したよぅ!」
「ごめん…」
リリアが申し訳ないと頭を下げる。
「いいよ…とにもかくにもリリアが無事だったんだから、それだけで十分だよ!ヴァティアもリリアを連れて来てくれてありがとう!」
「うん…」
ヴァティアは相変わらず無表情だったが、ほんの少しだけ嬉しそうな声で言う。
「ところで、リリアは今まで何してたの?」
「実は…」
リリアが今まで見てきた情報を話す。
「ふむふむ…つまり、邪神教団の目的は私の血であり、それによって002と呼ばれている猫族を完成させようとしていたのね。さらにモンスターとヒトのキメラのようなものもあったと…」
私は思考を巡らせる。
「まさか…そんな事をしてたとは…ね…」
私はそのまま一緒に聞いていたドワーフのドレイクに言う。
「ドレイクさん、この事は私からセガール王子に伝えますので、王宮から情報が出るまでは黙っていてもらえませんか?」
「あ、あぁ…俺にはついていけねぇ話だし、嬢ちゃんには恩もあるから構わねぇが…」
「すみません…」
リリアがあった、私を襲ったであろう魔人の話も気になるところだ。
私はリリアとともに王宮へ向かう。
…
私が謁見の間の扉の前で待っていると…
「アリスさん、遅くなってすみません…」
セガールは私の後ろに居るリリアを見て驚いていたが、そのまま謁見の間の扉を開けて中に入る。
私たちが入ると後ろで兵士が扉を閉める。
「まずはリリアさん、おかえりなさい。」
「ただいま…」
セガールとリリアが軽く挨拶をする。
「それでアリスさん、今日はどのようなご用件でしょうか?」
「実は…」
私はリリアから聞いた邪神教団の情報を話す。
「なんと…!そんな事を彼らはやっていたのですか?!」
「リリアの情報によれば、そうなりますね。おそらく、禁術も使われているでしょうから、奴らはとてつもなく危険なものを持っている事になりますし、私の血を欲しているようですので、またいつ襲撃してくるかもわからないですね。」
「禁術に違法な人体実験にキメラの生成…ほんとに命をなんだと思っているのでしょうか…」
セガールが怒りを露わにして言う。
「…私は…ここに居ても良いのでしょうか…」
私の口から溢れ出た言葉の真意は二人ともわかっていた。
「リリア…アリス…一緒…絶対…離れない…」
「私もリリアさんと同意見です。私は冒険者の事はあまりよくわかりませんでしたが、アリスさんの人柄はわかってきたつもりです。そして、私はより貴方に恋焦がれるようになっていきました。私の人生に貴方と言う存在は不可欠です。だから、私も貴方がこの国を出ようと言うなら、私も貴方の行き着く先の果てまでついて行きますとも!」
「二人はここに居てもらわないと困ります…特にセガールさんは王子様なのですからこの国にとって必要不可欠な人物ではありませんか…ですが、私が居なければこの国はもう壊される心配もありませんし…」
私がそう呟くと「バンッ!」と扉が開けられる。
そこには炎の女神、国防騎士隊、アルカノイド、元冒険者の4人も居た。
パリスが言う。
「アリスさん!パリスたちも貴方の事が必要なんです!だから…一人で行こうとしないで…ください…リリアさんの時みたいに寂しい思いはもうしたくないです!その事はアリスさんが一番よく知ってますよね!」
他の集まった人たちも頷く。
茉莉が「クルクル」と楽しげに微笑みながら言う。
「襲ってくるものなら、返り討ちにしてしまえば良いのです…反撃として、完膚なきまでに徹底的にぶっ潰しましょう。そうすれば、野望は阻止出来て襲ってくる愚か者も居なくなりますわ。」
「茉莉よ。そこまではしなくてもいいと思うぞ。だが、向かってくるものに反撃をしてやるのは賛成なのじゃ!私も縄張りの中の罪なき民を傷つけられて黙ってるほど堕ちて無いのじゃ!」
クレアも言うと他の人たちも静かにそれぞれの武器を掲げる。
冒険者の流儀として最上位の敬意を示しているとされているこの行為はこの世界に住むものなら、誰であっても知っている行為であり、国防騎士隊ですら、この流儀を利用するほど、この世界では礼儀正しい行為なのである。
「みんな…」
私は静かに左の拳をあげて言う。
「ありがとう!私たち全員の力を合わせて、邪神教団を打ち倒そう!」
『おう!』『はい!』
私達はそれぞれの場所でリリーフィルによって作戦会議をする事になった。
「…とその前に、リリアから皆に言いたい事があるそうです!」
リリアが驚いた表情をする。
皆が黙ってリリアを見ていた。
リリアは恥ずかしそうにしながらも大きな声で言う。
「急にいなくなってごめんなさい!」
それを聞いた数人が愉快に笑う。
「な、何故…」
リリアが困惑していると笑っていた数人のうちの一人のクレアがリリアの前まで来て言う。
「真面目じゃのう…じゃが、そこがお主のいいところじゃな!」
マリアが笑い過ぎて目に涙を浮かべながら、リリアの元まで来てリリアの頭を撫でる。
「おかえり。」
「ただいま…」
《7/16修正内容》
アリスの「連絡するなくて」を「連絡なくて」に修正しました。
他の変更点はございません。
0
あなたにおすすめの小説
辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい
ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆
気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。
チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。
第一章 テンプレの異世界転生
第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!?
第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ!
第四章 魔族襲来!?王国を守れ
第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!?
第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~
第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~
第八章 クリフ一家と領地改革!?
第九章 魔国へ〜魔族大決戦!?
第十章 自分探しと家族サービス
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~
さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。
全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。
ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。
これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる