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魔王都市とルネリス
66話
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「アリスよ!」
アスティアが真剣な表情で言う。
「我をお主のパーティに入れるのじゃ!」
「ま、魔王サマ?!」
アネさんが驚きのあまりに両手で口元を隠す。
エルルも驚きの表情を隠さずにアスティアを見る。
「アネラーゼよ。以前、我はそなたには次代の魔王になってもらいたいと話した事があったであろう?」
アスティアは真剣な眼差しでアネさんを見る。
「確かにソノ様なお話はされてマシタが…私には荷が重いとお断りサセてもらったハズデスヨ?」
アネさんが必死にアスティアの行動を止めようとするが、アスティアは真剣な眼差しでアネさんを見て言う。
「アネラーゼ、我は常日頃から言っておるだろう?お主は魔王の素質がある。そして、我を除けば、この国で一番強いのはお主じゃ。さらにお主は知略にも優れておる。我では到底思いつかぬ様な細かな法整備の案、戦闘時の指揮官としての策略もお主のおかげで誰の不満も無く、ここまで来れたのじゃ。それにのう…」
アスティアはニヤリと笑って言う。
「お主は民からの支持もあるのじゃ!武闘派はもちろんだが、他の魔人族や亜人族もお主を支持しておる。つまりな…お主は民から愛されておる。じゃから、自信を持って魔王の座に着くがよいぞ!」
アネさんは恥ずかしそうに顔を赤くしながら言う。
「狡いデスヨ…魔王サマにそんなに推されタラ、断れないじゃないデスカ…」
アネさんはそう言ってニヤリと笑う。
「デモ、私は魔王サマの秘書デス。魔王サマのお傍を離れるわけにはいきマセンネ。」
「それは困るのじゃ!いくらこの国が実力主義じゃからとは言え、民たちだけに任せるのは心もとないのじゃが…」
アネさんはエルルに目配せをするとエルルが全ての魔王都市の民を集める。
「お前たちー!」
エルルが民に向かって言う。
「魔王様が居ないと国を護れない様な軟弱者は居るかー!」
「んなわけねぇだろ!」とか「俺たちは魔族だぞ?」とか「私たちだって戦えます!」なんて言葉が聞こえてくる。
そして、一糸乱れぬ呼吸すらも統率された動きで言う。
「「我ら、魔王都市の民に軟弱者は居らず!魔王様のご意志を尊重できぬ者も居らず!この身体、この心、この命!全ては魔王様の為にある!例え、王が不在の状況であれど、我らが魔王様の土地は護るのが我らが義務である!」」
そして、エルルが堂々と豊満な胸を張って、アスティアに言う。
「魔王様、我々は産まれもっての戦闘民族です。都市の護りは我々に全ておまかせください!」
「お主らなぁ…」
アスティアがどこか嬉しそうにしながら笑う。
「ネ?皆、魔王サマの為なら、なんだって出来るんデスヨ。」
アネさんは眼鏡をクイッと持ち上げながら、ニヤリと笑う。
「全く…油断も隙もない奴らじゃよ。」
アスティアは呆れたような素振りをしながら嬉しそうに笑う。
「そうじゃ!」
アスティアは思い出した様に手を叩くと私の耳元に顔を寄せて言う。
「お主らが探しとるものは龍雅之里にほど近い。龍族との戦いを避ける為にも我を連れて行ってくれると助かるのじゃ。それに…」
アスティアは顔を離すと見た目通りのイタズラっぽい笑みで言う。
「3000年ぶりの外の世界じゃからな!全力で楽しもうぞ!」
こうしてアスティアが私たちのパーティに加勢する事となった。
「じゃあ、次は私の力をみせてアゲル!」
アネさんはそう言うと楽しそうに眼鏡をクイッと持ち上げる。
「リリア…やる…」
リリアがアネさんの前に立って剣を構える。
「まずは貴方ネ!お名前は…」
「リリア…」
リリアが短く答える。
「リリアサンネ!私はアネラーゼ・アンティルテ・スパイラーテですヨ!」
アネラがアスティアが結界を貼った時と同じ箱を投げる。
「それじゃあ、リリアサン…私の力、とくと見てネ!」
アネラーゼがそう言うとリリアが一瞬でアネラーゼの前に移動して剣を振り下ろす。
「良い行動デスネ!」
アネラーゼが出した糸でリリアの攻撃が防がれる。
「次は私の番ネ!スパイラルネット!」
アネラーゼのお尻から無数に蜘蛛の糸が伸びてリリアの身体を捕えようとする。
「疾風迅雷…旋風斬!」
リリアが自己強化魔法で強化した身体能力から剣を振り下ろして竜巻を発生させる事で、アネラーゼの糸を除去していく。
「アラ?全部飛ばされちゃったワ。」
アネラーゼはリリアの竜巻に飛ばされそうになった眼鏡を押さえながら楽しそうに笑う。
「少し…本気…出す…」
リリアの左眼の奥に赤い光が宿る。
「我が魂動、声、全ては勝利への舞…鬼神乱舞!」
リリアの攻撃力が超強化される。
「良いわネ!ナラ、私も力の一端を見せてあげまショウ!」
アネラーゼが魔力を高める。
「侵略セヨ!付与魔法:魔素強化!」
アネラーゼの魔力が超強化される。
同時にリリアが剣を戻して、背中の大斧を取り出す。
「行くよ…」
リリアが一瞬でアネラーゼの背後に現れて大斧を振るう。
「プリズミティックシールド!」
アネラーゼも防御魔法でダイヤモンドの様に硬く輝く腕でリリアの大斧を受け止める。
凄まじい衝撃波が発生し、結界の外に居る私たちにもその激しさが分かるほどだった。
「貴方、接近戦が得意なのネ?」
アネラーゼがニヤリと笑う。
「うん…それしか…知らない…から…」
リリアは特に表情を変えることも無く淡々と言う。
「ナラ…」
アネラーゼがリリアを弾き飛ばして、リリアの身長の倍ほどの刀身のある物と短い物の2種類のダイヤモンドの様に輝く剣を両手に召喚する。
「私も接近戦で戦ってアゲル!」
アネラーゼはそう言うと一瞬でリリアの目の前に移動し、右腕に持った短い剣で斬りかかる。
「どっせい!」
リリアは大斧を振り上げてアネラーゼの右腕ごと剣を吹き飛ばす。
アラクネラの右腕と握られていた剣が宙を舞い、アネラーゼの背後に深深と突き刺さる。
「凄い力ですネ…まさか、私の腕ごと吹き飛ばすなんて思いもしませんデシタ。」
アネラーゼは自身の無くなった右腕を見て言う。
「だから…言った…リリア…弱くない…」
リリアは当然と言いたげに言う。
「そうネ…貴方の事を見くびっていたワ。正直、一撃か二撃与えれば倒れると思ってタワ。デモ、実際は違っタ…」
アネラーゼは楽しそうに眼鏡をクイッと持ち上げながら言う。
「楽しくなってキタワ!もっともっと激しくいくワヨ!」
アネラーゼは右腕を再生させ、魔力を身体能力に変換する。
「…本気…出す…上限突破!」
リリアの大斧が二倍の重さになり、攻撃力が200倍になる。
「行くワヨ!スパイラルネット!」
アネラーゼのお尻から蜘蛛の糸が発射される。
「その技は効かない…旋風斬!」
リリアの大斧の振り下ろしから竜巻が発生し、アネラーゼの糸を巻き込んでいく。
しかし、同時にリリアの身体が右足から浮き上がり、バランスを崩して飛ばされそうになる。
「そう何度も同じ手にかからないことくらい想定済みヨ!」
体勢が崩れて思う様に動けないところにアネラーゼが飛びかかりからの振り下ろしでリリアに攻撃する。
「このっ!」
リリアはすぐに自分の右足に着いていた糸を切り離し、魔力を纏った右腕でアラクネラの剣を防ぐ。
「ぐっ…」
リリアに苦悶の表情が浮かび上がる。
「アハハハ!もう終わりなワケ無いデスヨネ!」
リリアの受け止めた腕の半分ほどまで剣が入る。
「あぐっ…」
リリアは押されながらも痛みに耐える。
「このままへし折ってあげマス!」
リリアの腕の1/4ほどまできた瞬間、リリアがニヤリと笑った。
「足元に…ご注意…」
そう言った瞬間、アネラーゼの足を引きずるかのように地面が動き出す。
「おっとト?!」
アネラーゼがリリアの腕から剣を離す。
「完全瞬間回復!」
リリアは回復魔法を使って一瞬で自分の右腕を元通りに修復する。
そして、その右腕を地に叩きつけて目の前の地面を崩壊させる。
「アラララ?!」
アネラーゼがバランスを崩して倒れる。
「これで…終わりっ!」
リリアの胸から紋章が浮かび上がり、リリアの力が強化される。
「全てを白く斬り裂く刃…世界樹の断罪!」
それは斜め一直線にアネラーゼの身体を白く塗り潰し破壊する。
「アアアアアアアアァァァァァァァ!」
アネラーゼの断末魔が聞こえると同時に結界が縮小し、全てを元通りに戻す。
アネラーゼは傷跡の残った自身の身体を見て言う。
「まさかこんなにも傷つけラレて負けちゃうなんて思いもしなかっタワ…初めは侮っていたとは言エ、本気で戦ったノニ…」
リリアは肩で息をしながら言う。
「世界樹…おかげ…リリア…負けてた…」
パリスが通訳しようとしたが、アネラーゼが「大丈夫」とジェスチャーする。
「確かに貴方が世界樹の力を使えなけレバ、私が勝っていたワネ。デモ、貴方の力が私を上回ったノハ変わらないワ。貴方が勝っテ、私が負けタ。さっきも魔王サマが言ってたヨウにこの都市は実力主義ナノ。つまり、勝てば全て解決なのデスヨ。」
「そう…」
リリアが小さく言うとアネラーゼが私に言う。
「アリスサン、私もパーティに加えてくれまセンカ?マア、嫌だと言っても、魔王サマのお傍に居るのが秘書の役目デスので、ついて行きますケド。」
こうしてアネラーゼも強引に私のパーティに入る事となった。
「…手続き…面倒くさそうだなぁ…」
私が遠くを見ながらボヤいているとアネラーゼが眼鏡をクイッと持ち上げながらニヤリと笑う。
「ソノ点は心配ご無用デスヨ。私が全て手続きを済まセテ起きまシタからネ!」
「凄い…これが魔王様の秘書の実力なのですね…」
パリスがキラキラと目を輝かせながら言うとアネラーゼはどこか嬉しそうにしながらドヤ顔で胸を張る。
「当然デスワ!私はこの広い魔王都市の王である魔王サマの秘書なのデスからネ!」
「おぉ…」
パリスが感心しているとクレアが遠くから騒がしく戻ってくる。
その後ろを疲れたと言いたげな顔でウルカが追いかけて、両手にパンを抱えたソルが嬉しそうに微笑んでいた。
「わはは!アリスよ、魔王都市の食事は美味いな!私は魔王都市って言うくらいじゃから、もっと禍々しい物が出てくるのかと思ってたのじゃが、そんな事は無くて見た目からすっごく美味しいのじゃ!ほれ!アリスのもあるぞ!」
クレアがトカゲの串焼きをアリスの顔に押し付けながら言う。
「クレアさん、アリスさんの苦手なものを押し付けないでください。魂が飛び出そうな顔をしてるじゃないですか。」
パリスがそう言うとクレアは「わはは!」と笑いながら、トカゲの串焼きを食べ始める。
「…ハッ!?」
アリスが我に帰った時には既にクレアはトカゲの串焼きを平らげていた。
「アリスさん、大丈夫でした?」
パリスが心配そうにアリスを見る。
「だ、大丈夫だよ…ちょっとビックリしただけで…ウッ…!」
アリスがとんでもない速さで門の外へ出て行く。
リリアが凄い速さでアリスを追いかける。
「うむう?アリスはトカゲが苦手なのか?」
アスティアが不思議そうに首を傾げる。
「まだアリスさんが幼い頃に炎蜥蜴に丸呑みされて死にかけた事があって、それ以来トカゲに分類されるものは全部トラウマになってしまったそうです。」
パリスが説明する。
「そうなのか。さすがにフィレスタの大英雄でも、過去のトラウマには弱いのじゃな。」
アスティアが納得した様子で「うんうん」と頷いていた。
「魔王サマもまだ力が弱かった時に似た様な事がありましたヨネ。」
アネラーゼが眼鏡をクイッと持ち上げながら言う。
「わ、我の事は良いじゃろう!?それよりもさっさと宿を探してじゃな…」
「ご安心ヲ!東の龍雅之里方面に向かう門に一番近い宿をご予約シテおりマスヨ。」
「準備が良過ぎるのじゃが?!」
アスティアが雑に扱われているのを見てクレアはどこか嬉しそうに頷いていた。
パリスはアネラーゼの手際の良さをキラキラした目で見ていた。
しばらくして、アリスが戻ってくるとアリスたち一行は宿屋へと向かうのであった。
アスティアが真剣な表情で言う。
「我をお主のパーティに入れるのじゃ!」
「ま、魔王サマ?!」
アネさんが驚きのあまりに両手で口元を隠す。
エルルも驚きの表情を隠さずにアスティアを見る。
「アネラーゼよ。以前、我はそなたには次代の魔王になってもらいたいと話した事があったであろう?」
アスティアは真剣な眼差しでアネさんを見る。
「確かにソノ様なお話はされてマシタが…私には荷が重いとお断りサセてもらったハズデスヨ?」
アネさんが必死にアスティアの行動を止めようとするが、アスティアは真剣な眼差しでアネさんを見て言う。
「アネラーゼ、我は常日頃から言っておるだろう?お主は魔王の素質がある。そして、我を除けば、この国で一番強いのはお主じゃ。さらにお主は知略にも優れておる。我では到底思いつかぬ様な細かな法整備の案、戦闘時の指揮官としての策略もお主のおかげで誰の不満も無く、ここまで来れたのじゃ。それにのう…」
アスティアはニヤリと笑って言う。
「お主は民からの支持もあるのじゃ!武闘派はもちろんだが、他の魔人族や亜人族もお主を支持しておる。つまりな…お主は民から愛されておる。じゃから、自信を持って魔王の座に着くがよいぞ!」
アネさんは恥ずかしそうに顔を赤くしながら言う。
「狡いデスヨ…魔王サマにそんなに推されタラ、断れないじゃないデスカ…」
アネさんはそう言ってニヤリと笑う。
「デモ、私は魔王サマの秘書デス。魔王サマのお傍を離れるわけにはいきマセンネ。」
「それは困るのじゃ!いくらこの国が実力主義じゃからとは言え、民たちだけに任せるのは心もとないのじゃが…」
アネさんはエルルに目配せをするとエルルが全ての魔王都市の民を集める。
「お前たちー!」
エルルが民に向かって言う。
「魔王様が居ないと国を護れない様な軟弱者は居るかー!」
「んなわけねぇだろ!」とか「俺たちは魔族だぞ?」とか「私たちだって戦えます!」なんて言葉が聞こえてくる。
そして、一糸乱れぬ呼吸すらも統率された動きで言う。
「「我ら、魔王都市の民に軟弱者は居らず!魔王様のご意志を尊重できぬ者も居らず!この身体、この心、この命!全ては魔王様の為にある!例え、王が不在の状況であれど、我らが魔王様の土地は護るのが我らが義務である!」」
そして、エルルが堂々と豊満な胸を張って、アスティアに言う。
「魔王様、我々は産まれもっての戦闘民族です。都市の護りは我々に全ておまかせください!」
「お主らなぁ…」
アスティアがどこか嬉しそうにしながら笑う。
「ネ?皆、魔王サマの為なら、なんだって出来るんデスヨ。」
アネさんは眼鏡をクイッと持ち上げながら、ニヤリと笑う。
「全く…油断も隙もない奴らじゃよ。」
アスティアは呆れたような素振りをしながら嬉しそうに笑う。
「そうじゃ!」
アスティアは思い出した様に手を叩くと私の耳元に顔を寄せて言う。
「お主らが探しとるものは龍雅之里にほど近い。龍族との戦いを避ける為にも我を連れて行ってくれると助かるのじゃ。それに…」
アスティアは顔を離すと見た目通りのイタズラっぽい笑みで言う。
「3000年ぶりの外の世界じゃからな!全力で楽しもうぞ!」
こうしてアスティアが私たちのパーティに加勢する事となった。
「じゃあ、次は私の力をみせてアゲル!」
アネさんはそう言うと楽しそうに眼鏡をクイッと持ち上げる。
「リリア…やる…」
リリアがアネさんの前に立って剣を構える。
「まずは貴方ネ!お名前は…」
「リリア…」
リリアが短く答える。
「リリアサンネ!私はアネラーゼ・アンティルテ・スパイラーテですヨ!」
アネラがアスティアが結界を貼った時と同じ箱を投げる。
「それじゃあ、リリアサン…私の力、とくと見てネ!」
アネラーゼがそう言うとリリアが一瞬でアネラーゼの前に移動して剣を振り下ろす。
「良い行動デスネ!」
アネラーゼが出した糸でリリアの攻撃が防がれる。
「次は私の番ネ!スパイラルネット!」
アネラーゼのお尻から無数に蜘蛛の糸が伸びてリリアの身体を捕えようとする。
「疾風迅雷…旋風斬!」
リリアが自己強化魔法で強化した身体能力から剣を振り下ろして竜巻を発生させる事で、アネラーゼの糸を除去していく。
「アラ?全部飛ばされちゃったワ。」
アネラーゼはリリアの竜巻に飛ばされそうになった眼鏡を押さえながら楽しそうに笑う。
「少し…本気…出す…」
リリアの左眼の奥に赤い光が宿る。
「我が魂動、声、全ては勝利への舞…鬼神乱舞!」
リリアの攻撃力が超強化される。
「良いわネ!ナラ、私も力の一端を見せてあげまショウ!」
アネラーゼが魔力を高める。
「侵略セヨ!付与魔法:魔素強化!」
アネラーゼの魔力が超強化される。
同時にリリアが剣を戻して、背中の大斧を取り出す。
「行くよ…」
リリアが一瞬でアネラーゼの背後に現れて大斧を振るう。
「プリズミティックシールド!」
アネラーゼも防御魔法でダイヤモンドの様に硬く輝く腕でリリアの大斧を受け止める。
凄まじい衝撃波が発生し、結界の外に居る私たちにもその激しさが分かるほどだった。
「貴方、接近戦が得意なのネ?」
アネラーゼがニヤリと笑う。
「うん…それしか…知らない…から…」
リリアは特に表情を変えることも無く淡々と言う。
「ナラ…」
アネラーゼがリリアを弾き飛ばして、リリアの身長の倍ほどの刀身のある物と短い物の2種類のダイヤモンドの様に輝く剣を両手に召喚する。
「私も接近戦で戦ってアゲル!」
アネラーゼはそう言うと一瞬でリリアの目の前に移動し、右腕に持った短い剣で斬りかかる。
「どっせい!」
リリアは大斧を振り上げてアネラーゼの右腕ごと剣を吹き飛ばす。
アラクネラの右腕と握られていた剣が宙を舞い、アネラーゼの背後に深深と突き刺さる。
「凄い力ですネ…まさか、私の腕ごと吹き飛ばすなんて思いもしませんデシタ。」
アネラーゼは自身の無くなった右腕を見て言う。
「だから…言った…リリア…弱くない…」
リリアは当然と言いたげに言う。
「そうネ…貴方の事を見くびっていたワ。正直、一撃か二撃与えれば倒れると思ってタワ。デモ、実際は違っタ…」
アネラーゼは楽しそうに眼鏡をクイッと持ち上げながら言う。
「楽しくなってキタワ!もっともっと激しくいくワヨ!」
アネラーゼは右腕を再生させ、魔力を身体能力に変換する。
「…本気…出す…上限突破!」
リリアの大斧が二倍の重さになり、攻撃力が200倍になる。
「行くワヨ!スパイラルネット!」
アネラーゼのお尻から蜘蛛の糸が発射される。
「その技は効かない…旋風斬!」
リリアの大斧の振り下ろしから竜巻が発生し、アネラーゼの糸を巻き込んでいく。
しかし、同時にリリアの身体が右足から浮き上がり、バランスを崩して飛ばされそうになる。
「そう何度も同じ手にかからないことくらい想定済みヨ!」
体勢が崩れて思う様に動けないところにアネラーゼが飛びかかりからの振り下ろしでリリアに攻撃する。
「このっ!」
リリアはすぐに自分の右足に着いていた糸を切り離し、魔力を纏った右腕でアラクネラの剣を防ぐ。
「ぐっ…」
リリアに苦悶の表情が浮かび上がる。
「アハハハ!もう終わりなワケ無いデスヨネ!」
リリアの受け止めた腕の半分ほどまで剣が入る。
「あぐっ…」
リリアは押されながらも痛みに耐える。
「このままへし折ってあげマス!」
リリアの腕の1/4ほどまできた瞬間、リリアがニヤリと笑った。
「足元に…ご注意…」
そう言った瞬間、アネラーゼの足を引きずるかのように地面が動き出す。
「おっとト?!」
アネラーゼがリリアの腕から剣を離す。
「完全瞬間回復!」
リリアは回復魔法を使って一瞬で自分の右腕を元通りに修復する。
そして、その右腕を地に叩きつけて目の前の地面を崩壊させる。
「アラララ?!」
アネラーゼがバランスを崩して倒れる。
「これで…終わりっ!」
リリアの胸から紋章が浮かび上がり、リリアの力が強化される。
「全てを白く斬り裂く刃…世界樹の断罪!」
それは斜め一直線にアネラーゼの身体を白く塗り潰し破壊する。
「アアアアアアアアァァァァァァァ!」
アネラーゼの断末魔が聞こえると同時に結界が縮小し、全てを元通りに戻す。
アネラーゼは傷跡の残った自身の身体を見て言う。
「まさかこんなにも傷つけラレて負けちゃうなんて思いもしなかっタワ…初めは侮っていたとは言エ、本気で戦ったノニ…」
リリアは肩で息をしながら言う。
「世界樹…おかげ…リリア…負けてた…」
パリスが通訳しようとしたが、アネラーゼが「大丈夫」とジェスチャーする。
「確かに貴方が世界樹の力を使えなけレバ、私が勝っていたワネ。デモ、貴方の力が私を上回ったノハ変わらないワ。貴方が勝っテ、私が負けタ。さっきも魔王サマが言ってたヨウにこの都市は実力主義ナノ。つまり、勝てば全て解決なのデスヨ。」
「そう…」
リリアが小さく言うとアネラーゼが私に言う。
「アリスサン、私もパーティに加えてくれまセンカ?マア、嫌だと言っても、魔王サマのお傍に居るのが秘書の役目デスので、ついて行きますケド。」
こうしてアネラーゼも強引に私のパーティに入る事となった。
「…手続き…面倒くさそうだなぁ…」
私が遠くを見ながらボヤいているとアネラーゼが眼鏡をクイッと持ち上げながらニヤリと笑う。
「ソノ点は心配ご無用デスヨ。私が全て手続きを済まセテ起きまシタからネ!」
「凄い…これが魔王様の秘書の実力なのですね…」
パリスがキラキラと目を輝かせながら言うとアネラーゼはどこか嬉しそうにしながらドヤ顔で胸を張る。
「当然デスワ!私はこの広い魔王都市の王である魔王サマの秘書なのデスからネ!」
「おぉ…」
パリスが感心しているとクレアが遠くから騒がしく戻ってくる。
その後ろを疲れたと言いたげな顔でウルカが追いかけて、両手にパンを抱えたソルが嬉しそうに微笑んでいた。
「わはは!アリスよ、魔王都市の食事は美味いな!私は魔王都市って言うくらいじゃから、もっと禍々しい物が出てくるのかと思ってたのじゃが、そんな事は無くて見た目からすっごく美味しいのじゃ!ほれ!アリスのもあるぞ!」
クレアがトカゲの串焼きをアリスの顔に押し付けながら言う。
「クレアさん、アリスさんの苦手なものを押し付けないでください。魂が飛び出そうな顔をしてるじゃないですか。」
パリスがそう言うとクレアは「わはは!」と笑いながら、トカゲの串焼きを食べ始める。
「…ハッ!?」
アリスが我に帰った時には既にクレアはトカゲの串焼きを平らげていた。
「アリスさん、大丈夫でした?」
パリスが心配そうにアリスを見る。
「だ、大丈夫だよ…ちょっとビックリしただけで…ウッ…!」
アリスがとんでもない速さで門の外へ出て行く。
リリアが凄い速さでアリスを追いかける。
「うむう?アリスはトカゲが苦手なのか?」
アスティアが不思議そうに首を傾げる。
「まだアリスさんが幼い頃に炎蜥蜴に丸呑みされて死にかけた事があって、それ以来トカゲに分類されるものは全部トラウマになってしまったそうです。」
パリスが説明する。
「そうなのか。さすがにフィレスタの大英雄でも、過去のトラウマには弱いのじゃな。」
アスティアが納得した様子で「うんうん」と頷いていた。
「魔王サマもまだ力が弱かった時に似た様な事がありましたヨネ。」
アネラーゼが眼鏡をクイッと持ち上げながら言う。
「わ、我の事は良いじゃろう!?それよりもさっさと宿を探してじゃな…」
「ご安心ヲ!東の龍雅之里方面に向かう門に一番近い宿をご予約シテおりマスヨ。」
「準備が良過ぎるのじゃが?!」
アスティアが雑に扱われているのを見てクレアはどこか嬉しそうに頷いていた。
パリスはアネラーゼの手際の良さをキラキラした目で見ていた。
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スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
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【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~
さとう
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とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。
全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。
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これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。
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