魔法の使えない無能と呼ばれた私は実は歴代最強でした。

こずえ

文字の大きさ
96 / 108
壊れた歯車

73話

しおりを挟む
「その声は茉莉ね!」

茉莉はクマが凄く、髪はボサボサで肌の調子も悪そうだった。

「茉莉…酷い顔…」

リリアがそう言うと治療を始める。

「すみません…最近、魔物の襲撃が多くて何日も寝t…」

茉莉は安心したのか糸が切れた操り人形の様に倒れ、リリアが茉莉の身体を支える。

「茉莉…無理をさせてごめんね…」

アリスは拳を握り締める。

「アリス…さん…?」

様子が変わったアリスを心配してパリスが言う。

「大丈夫…今の私なら…」

アリスは感知を使って敵を発見すると凄まじい速度で移動し、殲滅していく。

その鬼神のごとく殲滅していく様は誰が見ても分かるような焦りが見えたと言う。



しばらくして、リリーフィルとアスティア以外の全員がアリスの屋敷に戻った頃、アリスも戻ってくる。

「皆、もっと早く戻れなくてごめん!」

戻って来て早々にアリスは頭が地面に埋まるんじゃないかと言わんがばかりの勢いで頭を下げる。

フィリアが呆れた様子で言う。

「アンタはアンタの役目があったんでしょ?誰も悪くないし、アンタの事を責めるやつはいないわよ。」

「そ、そうだよ!アリス姉は悪くないよ!たまたま間が悪かっただけなんだしさ!ね?」

マリアが慌ててフォローする様に言うとリリアのソファーで気絶した様に寝てる茉莉を除いて、ずっと屋敷に居た皆が頷く。

「う、う~ん…」

茉莉が目を覚まして起き上がる。

「茉莉…無理しないで…」

リリアの懸命な治療のおかげで茉莉の顔色はかなり良くなっていた。

「大丈夫よ。リリアさんのおかげでかなり本調子に近いところまで回復出来たわ…」

茉莉はそう言うとゆっくりとソファーから立ち上がって言う。

「アリスさん、私は貴方が居なくなって、異形の襲撃が起きて、魔物の襲撃も起きて…寝る事はもちろん、ご飯をゆっくり食べる事もまともに出来ませんでした。」

アリスが「ごめん…」と言うと茉莉は「ふわぁ…」と小さく欠伸をする。

「別に貴方を責めたつもりでは無いんです。私は私の出来る事をやっただけですから…」

茉莉は少し考える様に目を閉じる。

「正直に言うとこの国の事なんてどうでも良かったんです。国が潰れようと生きてれば良いだろうと…そんな考えが何度も頭の中で湧いてきました。でも、それじゃダメだったんです。」

茉莉はゆっくりと目を開けてまっすぐアリスの瞳を見る。

「貴方の居場所はここにしかない事、ここが無くなれば貴方の居場所がない事…私は貴方の帰るべき場所を守る事を命懸けで最優先にしたんです。」

茉莉は少し深呼吸をする。

「私は…いえ、今の私は何よりもこの場所が大切なのです。貴方の…貴方たちの帰るこの場所を守る為なら命すら投げてしまえるほどに…貴方が帰るこの場所を好きになったんです。にも貴方が居ない世界など要らないと言ってしまえるほど、貴方に心酔してしまったのです。」

茉莉はそう言うと右手を突き出す。

「来たれ…傲慢なる翼ルーシェル・ボディ!」

茉莉がそう言うと同時に茉莉の背中に天使を思わせる様な白い翼が現れる。

「大罪宝具…いや、あれは…」

ヴェルドールがそう言うと茉莉は楽しげに笑う。

「これは大罪転身セブルス・リヴォリィよ。アリスさんが帰ってきた時に驚かせたくて特訓したの。私は大罪宝具を扱えないわ。」

茉莉は翼を指さして言う。

「茉莉さんも大罪の名を冠する者だったのですね。」

パリスがそう言うと茉莉は少しだけ違うと言いたげに言う。

「正確にはそれになりかけてるだけよ。今はまだ不完全な力なの。」

茉莉がそう言うと同時に翼が消えると同時にどことなく先程よりも茉莉は元気になった様な感覚を感じる。

「さてと…」

茉莉は眼鏡をかけて皆の方を向いて言う。

「皆さん、新人の方への自己紹介が済んで無かったですよね?」

茉莉がそう言うと真っ先にウェリアが真っ先に手を挙げる。

「私はウェリア・マリアージュですの!今はアリス様のパーティーで魔道士をやってますの!」

「ウェリアは元々はマリアージュ王国のお姫様なんだけど、今は私の仲間として活躍してくれてるんだ。」

私がウェリアについて補足するとソルがどことなく興味ありげに見ていた。

そして、新人組と茉莉以外のパーティーの面々が自己紹介し終わるとブレイサが言う。

「次は俺だな!俺はアリス様の部下のブレイサだ!見ての通り、悪魔だから殺したい奴が居たら言ってくれよな!」

「こーら、ブレイサ。そんな物騒な言葉を使わないの。ここには子供もいるんだからね?」

「へーい。」

ブレイサはつまらなさそうに返事をする。

「俺はウルカだ。見ての通り、狼人おおかみびとだから殴り合いなら任せてくれよな!」

茉莉がウルカの「狼人おおかみびと」に反応して耳をピクリと動かす。

「ソル…それが…名前…」

ソルは短くそう言ってヴァティアの髪をいじり始める。

『私はヴェルドールです。怠惰の名を持つアリス様の手駒です。』

面倒くさそうにゴーレムの中から頭と腕だけ出したヴェルドールが魔法の文字を浮かべる。

「ヴェルドール、せっかくの自己紹介なんだから、声に出して言おうよ。一応、これからも長い付き合いになるんだしさ。」

「うぇ~…めんどくさいですねぇ…」

ヴェルドールは「あ、服が脱げちゃった…」とか言いながら、大事な部分をゴーレムの欠片で隠してゴーレム中から出る。

「改めて、私がヴェルドールです。怠惰の名を持つアリス様の部下ですね。まあ、アリス様のご意向によって対等の仲間としてつきあわさせてもらってますがね。」

ヴェルドールは自己紹介が終わると降りる前と同様にゴーレムの中に戻る。

「私は魔王アスティア様の秘書のアネラーゼですぅ~!本来は蜘蛛女族ですので、この姿では無いんですけど、魔王様の命令でこの姿でいますぅ~」

アネラーゼが眼鏡をクイッとして言う。

「私はイヴだよ!」

「俺はディムだ!」

イヴとディムの二人が息ピッタリに言う。

「る、ルーニー…です?言葉…あまり…わからない…よろしくおねます?」

ルーニーは不安そうな表情で頭を下げる。

「では、最後に私ですね。」

茉莉がそう言って一歩前に出る。

「私は姓を本間、名を茉莉と言う名前です!今は学者も兼業しております。」

「あれ?茉莉、いつの間に学者になったの?」

「魔物の襲撃が起きる前にとある博士に弟子入りをしたのです。その方曰く、「自分はとっても凄い博士だよ!」との事でしたので…」

(あれ?今、一瞬だけ茉莉さんに見られた様な…)

パリスは小さく首を傾げていた。

「なるほどね。」

アリスが納得した様子で言う。

『アリスお姉様、おかえりなさい!』

『ただいま、リリーフィル。』

私がリリーフィルの通信に応答しているとパリスが一瞬だけ首を傾げていたが、すぐに納得した様子で頷いていた。

『さっそくで申し訳ないのですが…』

リリーフィルはそう言って次のように続けた。

連合国及び同盟国合同会議アヴァロニカに参加してくれと連合国のトップのグリモアール帝国の帝王、ガレア・オルティール・アンスレット・グリモアールから直々に指名があったのですが、いかが致しましょうか?』

『わかった。すぐに準備するね!場所はフィレスタ城で大丈夫?』

『はい。大丈夫です!あ、そうそう。パリスも一緒に連れて来てくれとの事でしたので、パリスも一緒に連れて来てください。それとこんなむさ苦しいおっさんが多い会議なんかさっさと終わらせて、早くお姉様とお出かけしたいので、なるべく早く来てくださいね。』

リリーフィルからの通信が切れる。

「むさ苦しいおっさんって…」

アリスがそう呟いて苦笑していると茉莉が納得した様子で頷く。

「私とパリスちゃんにお呼びがかかったみたいだから、準備して行ってくるね。」

「わ、私も…ですか!?」

「うん。なんでかは知らないけど、パリスちゃんも連れて来てってさ。」

アリスがそう言うとリリアがかなり不満げなオーラを出しながらもパリスに合いそうなドレスを持ってきていた。

「これ着て…」

リリアはぐいっと押しつけるようにパリスに渡す。

パリスはそれを受け取る。

「こんなに素敵なドレスを選んでいただきありがとうございます!」

パリスのキラキラとして明るくなった表情を見たリリアが少しだけ嬉しそうに目を細める。

「リリアの分も頑張って…」

「はい!頑張って来ますね!」

アリスはリリアをギュッと抱きしめて、パリスと共に自室で準備する。



自室から出て来た二人はまるで何処かの国のお姫様を思わせる様な美しさをしていた。

アリスに至っては立ち振る舞いも相まってよりいっそう、お姫様の様な雰囲気を出していた。

アリスのドレスはいつもとは違う白いタキシードの様なドレス、パリスは胸元の赤い薔薇が映える白色のドレスだ。

「それじゃ、行ってきまーす」

「い、行ってきます!」

アリスとパリスが屋敷を出ると各自がそれぞれのやるべき事ややりたい事をやり始める。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

処理中です...