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朝の会
一話 卒業できないってさ
しおりを挟む「大変言いにくいんだがね、出席日数が足りなくてね……卒業できないんだよ」
俺の目の前の教師がソファーにゆったりと腰掛けながらそう言った。
「卒業……できない?」
卒業式の日、突然告げられた。
そう。
俺はトイレに……じゃなかった。
俺はいきなり、卒業できないと告げられた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
十神大学
それは『十大神』が秋葉原でアンゴルモアの大王を退けた記念に設立した学校。
神の学校なので、人間の学校とは少しシステムが違う。
俺はその生徒。
卒業式の日、当然のように俺は卒業式に出て、卒業生の席に座っていた。
「おい、もうすぐお前が呼ばれる番だぞ」
右隣からイケボがして目が覚めた。
長い時間、心地よい音楽が流れていたせいか、少し眠っていたようだ。
「悪い悪い、ちょっと寝てた」
少し笑っている俺を見て、右隣にいる左目と右目の色が違う、オッドアイのイケメンも笑った。
隣にいるのは幼稚園からの幼なじみの、海上炎、通称ホノ。
海を司る父さんと、炎を司る母さんのハーフだ。
成績優秀、容姿抜群、おまけにコミュ力まであり、周りの神からチヤホヤされまくり。なのに、幼なじみの俺まで気にかけてくれるほんとにいいやつ、という猫をかぶっている。
まぁでもこうやって俺の番の前に起こしてくれたりもするからいいやつっちゃあいいやつでもある。
「アラアルバ・イマ」
俺の150柱ほど前の卒業生の名前が呼ばれた。
「まだ、俺呼ばれないじゃん」
少し怒り気味で言うとホノはニヤリと笑った。
「コンノヤロ、今から寝たら起きられないギリギリのラインで起こしやがって」
「ハハッ、ごめんごめんお詫びに眠気覚ましあげるよ」
ホノは笑い飛ばして、ポケットから袋に包まれた、白いタブレット状の薬みたいなものを出してきた。
その色といい形といい、多分酸っぱくて目が覚める系のやつだったので何も疑わず、口の中に放り込んだ。
────が口に入れて、すぐに味もせずに溶けてしまった。
「ホノ、これどういう系の眠気覚まし?」
「ん?これ?これはただの下剤だよ。下痢になったら否が応でも寝てられないでしょ」
「テメェなんてもん飲ませてんだよ!」
俺が叫ぶと周りの卒業生がみんなこっちの方を向き、心地よい音楽だけが流れて、周りの視線が全て俺に向けられる。
そこで初めて俺は自分が何をしでかしたかに気づいた
クッソォ、図られたァァ!
「そこの君。卒業式の邪魔して、楽しいか?ん?」
俺の近くの先生がギロリという擬音が聞こえてきそうな感じで俺のことを睨む。
「す、すいません」
俺は弱々しく返事をするしかなかった。
こいつのせいだと言いたいのを我慢してホノの方を向くと。
「静かにしなきゃダメでしょぉ~」
小声で煽ってきやがる。
こいつがやったと言いたいのだが、学校では最初の説明通り猫被ってやがるから全部俺のせいになる。
正に完全犯罪だ。
「海上 炎」
壇上から、ホノの名前が呼ばれた。
「じゃあな、先言ってるよ」
ホノはニヤニヤしながら先に行った。
次は俺の番だなーと思い、下剤がいつ効果を示すのかビクビクしていると、ホノの前の卒業生が、壇上から降りていった。
ホノが壇上に上がっていき……。
「オボエコキ ノユタメルムコヌ」
俺の左隣の生徒の名前が呼ばれた。
あれ?おかしいなぁ……。
最初は深く考えなかった。
「キュロビ ラムダ」
俺を抜かしてどんどん卒業生の名前が呼ばれていく。
た、多分印刷ミスか何かで読む人の紙に書かれてなかったんだろう。
そう思い込んだ。
そして────────
「n\:6〆々\7 %〆…・」
最後の1柱の名前が呼ばれた。
俺だけ呼ばれなかった。その事実だけが重くのしかかる。
最後の1柱が壇上から降りてきて、椅子に座った。
「これで卒業証書授与式を終わります」
きっと、卒業式が終わった後でミスがありました。とかで呼ばれるはずだ。
そうだ!きっとそうだ……。
そう思い込んだ。思い込むしかなかった。
そして──────
「それでは、卒業生の退場です。皆さん大きな拍手を。」
卒業式は終わった。
なぜ俺だけが卒業証書をもらっていないのに、このまま進むのか、意味がわからなかった。
このまま、退場しようとした時、
「事務連絡です。大間光矢君。退場した後、応接室まで来てください。」
よかった。
俺のことを忘れられてるわけじゃないんだ。
俺は卒業式の会場から退場した後、応接室に向かった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
そんな卒業式のことを思い出しながら、俺は呆然とした。
「卒業……できない?」
大学を出たら良い会社に就職できて、父さんは別として母さんに楽をさせられる。
だから頑張った。
トイレ行きたい。
貯めた貯金を切り崩してでも通ってたのに……。
「出席日数が3分の2に達してなくてね、もう一年通うことになってしまう」
いや知らんし。
どこに書いてあるんだよそんなこと。
〔一般常識である〕
…………………。
知ってたとしても無理だよ。
仕方がないだろ。
貯金を切り崩すだけじゃあ学費は払えない。
親は……あれじゃたよれないしな。
貯金ももうなくなってきた。
なのに、もう1年分なんてとても……。
トイレ行きたいぃ。
テストの日は全部出てた。
しかも全部満点だった。
なのに……。
「もう一年なんて無理です!学費が足りないし、何か忘れたんですけど他にも理由があったはずです!このまま中退しろって言うんですか⁈」
「いや、そう言うわけじゃない。一年前に特別措置とかいうのがつくられてね」
ふむ。
「学力はあるのに、単位が足りなくて落とされた神のための措置で、1年間学校の教師をやってもらうと言うものだ。君のお姉さんもそうだったろ。」
あれ?
そうだったっけ?
全然思い出せねぇや。
「当然給料も出るし、1年経ってもそのまま続けてもらっても良い。あと、大学は卒業した扱いになる。どうだ?悪い話じゃないだろ?」
なんだよそれ。そんなの────
「どうする?特別措置を受けるか?」
「受けるに決まってるじゃないですか!大学の教師だなんて、なりたくてもなれませんよ!給料もいいし、人気の職業じゃないですか!」
椅子から立ち上がって、鼻息荒く俺が言うと、
「いや、その、大学じゃないんだ」
なんだ。大学じゃないのか。
少しがっかりはしたものの、今どき、公務員なんて人気の職業なりたくてなれるものじゃない。
「大学じゃなくても十分です!それで!どこの学校なんですか?」
「とにかく受けるんだね?」
先に学校名を教えてもらいたかったが、質問に答えないのも失礼なので、
「はい!受けます!」
と元気よく返事をした。
「よーし、じゃあこの書類にハンコとサインをしてくれる?」
「わっかりましたー!」
元気よくウキウキでハンコを押し、サインを書いた。
あートイレ行きた……じゃなかった。
あー楽しみだなー。
一体どんな学校なんだろう?
「で、どこの学校なんですか?」
「『日本国立土田旗学園都市所属針葉学校』の女子中等部だ」
全く聞いたこともない学校だ。
でも国立ってことは結構いい学校のはず……。
「日本国立……?どこですかそこ、まさか天界じゃないなんて言いませんよね?」
という問いかけに対して先生は真顔で、
「まっさかーそんなわけ────────ある」
俺は青ざめて、
「ま、まさか魔界だなんて言いません…よ……ね?」
祈るような気持ちで聞くと、
「下界だ」
「い、今から取り消すのは……」
「ハンコとサインをしたからムーリー」
「で、ですよねー」
こうしてまんまと大学の教師にはめられ、俺は下界、俗に言う人間界で教師をすることになった。
「じゃあ失礼します」
「うん、下界でも元気でな」
応接室から出てすぐ、
「単位なんて知るかぁぁぁぁ!!!」
周りの人がみんなこっちを見る。
ふぅ……。
トイレ行きたい!!
「『光化』ッ!」
光と化してトイレに駆け込んだ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
光矢が、卒業できない⁈
監視対象を監視していると、とんでもないことを書いてしまった。
しかし、これはいいことを聞いたな……。
早速、暗部に連絡しなければ……。
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