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後編
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整理しながら話を聞いていくと、正確には十年前、場所はこの神社だった。女の子は、ショートカットで、四歳ごろの茉莉花より年上、少なくとも小学生ではあるだろうということ。ただし、茉莉花自身、背が高いため、少し基準がずれている可能性はある。
「えっ、ジャスミン中学生なの!? てっきり高校生かと思っていた……」
「えへへ、よく間違えられるんです。今、十四歳です」
「そろそろ帰らないと、親御さん心配するんじゃない?」
外は日が傾いてきて、空が赤から青へと変わる中間の色をしていた。あまり長く引き留めるのも申し訳ない。
「じゃあ、また明日来ます!」
茉莉花は勢いよく立ち上がると、そのまま駆け足で神社を出ていった。
恩人と会ったのが、この神社なら変にSNSで情報を募るよりも、ビラを配ったり、聞き込みをした方がいいかもしれない。何だか探偵みたいだと、優月は一人で笑みを浮かべていた。にやけた顔を叶に見られたかと思って、さっきまで叶が立っていたところを見たが、誰もいない。
「おーい、優月。手伝ってくれー」
「叶? どこにいるの」
くぐもった叶の声がするが、一体どこから聞こえてくるのか。社務所の廊下を歩きながら、叶の声がする方へ向かう。一番近く聞こえる部屋に入ったが、叶の姿は見えない。
「あれ、ここじゃなかったかな」
「ここだー」
押し入れの中の、辞書のように分厚い本の壁の、さらに向こうから叶の声がした。本を一冊ずつどかしてみると、ようやく叶がいた。
「叶、何しているの」
「名簿を探していたんだ。本殿の前で参拝した者は、自動で記入される仕組みだ。十年前に来ているなら、記録が残っているかもと思ってな」
「でも、小さな子がちゃんと参拝してるかは、微妙な気がするけど」
「一礼だけでも、こんにちは、と挨拶するでも、記録される。神や神社に挨拶をしたという意識さえあればいいんだ。可能性はあるだろう?」
「それなら、確かに」
叶が押し出すようにして、名簿を押し入れの中から部屋の中央に持ってきた。優月も手伝ったが、かなりの重量だ。
「十年前のものだけでも、八冊はある」
「そんなに!? これ全部見るのは、大変そうだね」
「まあ、気長に行こう。明日、本人にも探してもらうとしよう」
「えっ、ジャスミン中学生なの!? てっきり高校生かと思っていた……」
「えへへ、よく間違えられるんです。今、十四歳です」
「そろそろ帰らないと、親御さん心配するんじゃない?」
外は日が傾いてきて、空が赤から青へと変わる中間の色をしていた。あまり長く引き留めるのも申し訳ない。
「じゃあ、また明日来ます!」
茉莉花は勢いよく立ち上がると、そのまま駆け足で神社を出ていった。
恩人と会ったのが、この神社なら変にSNSで情報を募るよりも、ビラを配ったり、聞き込みをした方がいいかもしれない。何だか探偵みたいだと、優月は一人で笑みを浮かべていた。にやけた顔を叶に見られたかと思って、さっきまで叶が立っていたところを見たが、誰もいない。
「おーい、優月。手伝ってくれー」
「叶? どこにいるの」
くぐもった叶の声がするが、一体どこから聞こえてくるのか。社務所の廊下を歩きながら、叶の声がする方へ向かう。一番近く聞こえる部屋に入ったが、叶の姿は見えない。
「あれ、ここじゃなかったかな」
「ここだー」
押し入れの中の、辞書のように分厚い本の壁の、さらに向こうから叶の声がした。本を一冊ずつどかしてみると、ようやく叶がいた。
「叶、何しているの」
「名簿を探していたんだ。本殿の前で参拝した者は、自動で記入される仕組みだ。十年前に来ているなら、記録が残っているかもと思ってな」
「でも、小さな子がちゃんと参拝してるかは、微妙な気がするけど」
「一礼だけでも、こんにちは、と挨拶するでも、記録される。神や神社に挨拶をしたという意識さえあればいいんだ。可能性はあるだろう?」
「それなら、確かに」
叶が押し出すようにして、名簿を押し入れの中から部屋の中央に持ってきた。優月も手伝ったが、かなりの重量だ。
「十年前のものだけでも、八冊はある」
「そんなに!? これ全部見るのは、大変そうだね」
「まあ、気長に行こう。明日、本人にも探してもらうとしよう」
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