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1章 召喚編
7. 過去の聖女
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聖女召喚は、記録によると過去に4回行われている。理沙ちゃんが5代目だ。
宰相から聞いたのは3人だったような、と思いながら資料を読み進めて、理由が分かった。召喚されたものの、聖女の祈りに目覚める前に亡くなった人が1人いたのだ。それが理沙ちゃんの前の聖女、4代目だ。
召喚された時から体調を崩していたと記録に残っているが、それが身体的なものか精神的なものかは分からない。この人については、あまり記録がなかった。おそらく宰相が記録の開示を渋ったのは、この4代目のことを知らせたくなかったからだろうな。
4代目聖女を除いて、聖女はみな普通に長生きしている。聖女の祈りが命を削ったりはしないようだ。
そして、皆この地で生涯を終えている。つまり、自分の世界に帰った人はいない。
国内の浄化は2年、早ければ1年で終了し、そこから近隣の国に派遣されたり、されなかったりだ。
この国の北に瘴気が溜まる森があり、そのせいでこの国の魔物は狂暴化して被害を出す。
この世界で聖女召喚を行うのはこの国だけで、他の国には召喚陣が伝わっていないらしい。
けれど、北の森には、隣の国も接している。あちらはなぜ聖女がいなくて平気なのか、と午前の授業で質問すると、この国から派遣しているから、という答えが返ってきた。でも記録上は派遣されていない聖女もいる。
4代目が聖女の祈りに目覚めていないのにこの国が続いているということは、聖女がいなくても何とかなる方法があるんじゃないだろうか。
過去の聖女たちは例外なく王族と結婚している。突然知らない地に連れてこられて、親切にしてくれた人と恋に落ちる、というのもあるのだろうけど、聖女を王家につなぎとめておきたいという政治的な意図が見え隠れする。
理沙ちゃんはあまり王子様との恋愛に興味はなさそうなので、強制的に王族と結婚させられるなんて言う事態にならないようにしたい。恋愛の相手が王族だった、というのならいいけど。
理沙ちゃんと話して、聖女の仕事をする報酬として、浄化が終わった後の自由を保障してもらうことにした。
その交渉がしたいと連絡し、部屋に訪れたのは、宰相とあの能天気王子だった。
「今後、聖女様に関しましては、王太子であるハイド殿下が取り仕切ることになりました。聖女様と年齢も近いことですし」
チェンジで、と叫ばなかった自分を褒めたい。不安しかない人選だし、理沙ちゃんと結婚したいという願望がダダ洩れだ。
「お嬢様はこの国に協力してもいいと仰っています」
「それは、ありがたいです!聖女様、ありがとうございます」
「その代わりに、お嬢様の要求を全て呑んでもらいます。また、浄化が終わった後の自由を保障してください。何をするか、どこに住むか、誰と結婚するか、すべてお嬢様の意思で決めます」
「それは他の国へ渡られるということですか……?」
「そうなるかもしれません。私たちの国では、そのすべてが保障されていました。この国はその権利を制限されると仰るのですか?」
やっぱりこの国を出られるのは嫌なのか。浄化が終わっても聖女が国にいることは政治的に有利になるのかもしれないが、そんなことこちらには関係がないことだ。
世界中のほとんどの国に行けるパスポートがもらえる国の出身なのだ。浄化に行った国が気に入るかもしれないし、旅行だってしたくなるかもしれないじゃないか。
「それは……、少し考えさせてください」
「王太子殿下がお決めになるのではないのですか?」
王様と相談しないと決められないという返答だった。取り仕切ると言っても、ただの窓口のようだ。
持ち帰り検討すると言うけど、決定権がないなら先に決めておけと言いたい。話だけ聞かせてと言われてプレゼンに来てるんじゃないんだから。
結局翌日、要求は全て呑むと王様から返事があった。
「ちなみに理沙ちゃん、あの王子様、タイプだったりする?」
「えー、あんまりタイプじゃないです」
「ちなみに、どういうのがタイプ?」
理沙ちゃんは流行りのアイドルの名前を挙げてくれたけど、ごめん。そのグループ名は知ってても、おばちゃんには個々の識別ができないんだ。何人グループなのかも怪しいけど、でも王太子とは路線が違うのは分かる。
王太子に惚れさせて理沙ちゃん囲い込み作戦なんだろうけど、可能性は低そうね。
「政子さんは?」
「もう恋愛なんて何十年もしてないわよ」
「しちゃえばいいじゃないですか。新しいことに挑戦ですよ!」
少し立ち直ってきたら、物おじしない感じは今時の子だな、と思うような面も見えてきた。
時々、それ何語?という言葉も出てくるけど、私が分かってないのに気付くと、ちゃんとわかる言葉で言い直してくれる。
ご両親に愛されて、ちゃんと躾けられた子だと分かる。いい子だ。
宰相から聞いたのは3人だったような、と思いながら資料を読み進めて、理由が分かった。召喚されたものの、聖女の祈りに目覚める前に亡くなった人が1人いたのだ。それが理沙ちゃんの前の聖女、4代目だ。
召喚された時から体調を崩していたと記録に残っているが、それが身体的なものか精神的なものかは分からない。この人については、あまり記録がなかった。おそらく宰相が記録の開示を渋ったのは、この4代目のことを知らせたくなかったからだろうな。
4代目聖女を除いて、聖女はみな普通に長生きしている。聖女の祈りが命を削ったりはしないようだ。
そして、皆この地で生涯を終えている。つまり、自分の世界に帰った人はいない。
国内の浄化は2年、早ければ1年で終了し、そこから近隣の国に派遣されたり、されなかったりだ。
この国の北に瘴気が溜まる森があり、そのせいでこの国の魔物は狂暴化して被害を出す。
この世界で聖女召喚を行うのはこの国だけで、他の国には召喚陣が伝わっていないらしい。
けれど、北の森には、隣の国も接している。あちらはなぜ聖女がいなくて平気なのか、と午前の授業で質問すると、この国から派遣しているから、という答えが返ってきた。でも記録上は派遣されていない聖女もいる。
4代目が聖女の祈りに目覚めていないのにこの国が続いているということは、聖女がいなくても何とかなる方法があるんじゃないだろうか。
過去の聖女たちは例外なく王族と結婚している。突然知らない地に連れてこられて、親切にしてくれた人と恋に落ちる、というのもあるのだろうけど、聖女を王家につなぎとめておきたいという政治的な意図が見え隠れする。
理沙ちゃんはあまり王子様との恋愛に興味はなさそうなので、強制的に王族と結婚させられるなんて言う事態にならないようにしたい。恋愛の相手が王族だった、というのならいいけど。
理沙ちゃんと話して、聖女の仕事をする報酬として、浄化が終わった後の自由を保障してもらうことにした。
その交渉がしたいと連絡し、部屋に訪れたのは、宰相とあの能天気王子だった。
「今後、聖女様に関しましては、王太子であるハイド殿下が取り仕切ることになりました。聖女様と年齢も近いことですし」
チェンジで、と叫ばなかった自分を褒めたい。不安しかない人選だし、理沙ちゃんと結婚したいという願望がダダ洩れだ。
「お嬢様はこの国に協力してもいいと仰っています」
「それは、ありがたいです!聖女様、ありがとうございます」
「その代わりに、お嬢様の要求を全て呑んでもらいます。また、浄化が終わった後の自由を保障してください。何をするか、どこに住むか、誰と結婚するか、すべてお嬢様の意思で決めます」
「それは他の国へ渡られるということですか……?」
「そうなるかもしれません。私たちの国では、そのすべてが保障されていました。この国はその権利を制限されると仰るのですか?」
やっぱりこの国を出られるのは嫌なのか。浄化が終わっても聖女が国にいることは政治的に有利になるのかもしれないが、そんなことこちらには関係がないことだ。
世界中のほとんどの国に行けるパスポートがもらえる国の出身なのだ。浄化に行った国が気に入るかもしれないし、旅行だってしたくなるかもしれないじゃないか。
「それは……、少し考えさせてください」
「王太子殿下がお決めになるのではないのですか?」
王様と相談しないと決められないという返答だった。取り仕切ると言っても、ただの窓口のようだ。
持ち帰り検討すると言うけど、決定権がないなら先に決めておけと言いたい。話だけ聞かせてと言われてプレゼンに来てるんじゃないんだから。
結局翌日、要求は全て呑むと王様から返事があった。
「ちなみに理沙ちゃん、あの王子様、タイプだったりする?」
「えー、あんまりタイプじゃないです」
「ちなみに、どういうのがタイプ?」
理沙ちゃんは流行りのアイドルの名前を挙げてくれたけど、ごめん。そのグループ名は知ってても、おばちゃんには個々の識別ができないんだ。何人グループなのかも怪しいけど、でも王太子とは路線が違うのは分かる。
王太子に惚れさせて理沙ちゃん囲い込み作戦なんだろうけど、可能性は低そうね。
「政子さんは?」
「もう恋愛なんて何十年もしてないわよ」
「しちゃえばいいじゃないですか。新しいことに挑戦ですよ!」
少し立ち直ってきたら、物おじしない感じは今時の子だな、と思うような面も見えてきた。
時々、それ何語?という言葉も出てくるけど、私が分かってないのに気付くと、ちゃんとわかる言葉で言い直してくれる。
ご両親に愛されて、ちゃんと躾けられた子だと分かる。いい子だ。
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