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2章 城下編
7. お泊り
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私が王城に泊まり込んでいるうちに、理沙の調子は少しずつ落ち着いていった。
少し痩せてしまったけど、食欲も戻ってきた。人に会うのを怖がって部屋に籠っていたけれど、お庭には出られるようになった。天気の良い日はお庭でお茶をしている。
部屋にはローズしか入れていないし、警護の騎士には目に入るところを極力避けるようにお願いしてある。
理沙が仲良くなったのは女性騎士見習いだけだ。彼女たちは浄化の旅の同行者でもあるので、浄化の旅を思い出してしまうのか、今は会いたくないと言っている。
そうなると、理沙には友達がいない。こういうときに、浄化なんてしなくていいから休んでと言ってくれる友人が、愚痴を言える友達がいてほしいのに。そんな友達が日本にはいたはずなのに。
理沙が少し落ち着いてから、午前中は宿の準備のために下町に通っている。
宿には私たちの住む母屋があって、そこの準備は私が自分でするしかない。ベッドはケチらずにいいものを2つ用意した。
それにこの母屋のトイレはぼっとんじゃないものにリフォームしてもらった。やっぱり住むところは衛生的なほうがいい。
宿のほうのベッドは、このクラスの宿にしては少しいいものにした。どんなに清潔でも寝心地の悪いベッドは使いたくない。
それから、この世界では珍しいらしいが、寝間着の貸し出しをすることにした。
お城を出てから泊まった宿は全て、高級宿も含めてパジャマがなかった。日本の感覚であるものだと思い込んでいた私は、けっこう驚いたのだ。古着を準備しておいて、デポジット制で希望者には貸し出すことにした。それならこっそり持って行かれても困らない。ただ、デポジットの仕組みもないようなので、受け入れられるかどうか、まずは試しにやってみることにしている。
朝食や夕食は出さない素泊まりのみで、希望があればパン屋のパンを代わりに買ってくることで朝食の代わりにする予定だ。
いろいろ手を広げても、人でも足りないし準備も間に合わないので、少しずつ増やしていこうと、ミュラと相談して決めた。
「マーサ、そういえばお隣入ったみたい。商売はしないで、どこかの従業員の宿にするらしいよ」
「へえ。商売敵じゃなくてよかったわね」
騎士たちの詰め所にするのだろう。理沙がとても楽しみにしているので、警備計画がちゃんと進められているようで安心だ。
「ミュラ、今度私の娘を連れてきたいんだけど」
「え、あんた娘いたの?!」
「ちょっと訳ありでね」
ああ、なるほどねえ、とミュラはしたり顔で頷いた。多分かなりの勘違いをされている気がするが、まあいい。
ミュラは他人の恋愛話が大好きだ。この街の若い子たちの恋愛事情はほぼ把握済みだし、誰が浮気したとか、あの人は大商会の会頭の愛人だとか、そういう情報にとても詳しいのだ。その情報に私も付け加えられたのだろう。
警護の準備ができたと言われたのは、宿の開店を5日後に控えた日だった。
「マサコ殿、警護の準備ができました。詳しくは騎士団長から説明します」
「護衛の指揮はフレイグランが行い、聖女様には女性騎士を2名つけます。その他は隣の建物に待機し、一部は客を装って宿に泊まります」
「そのお客さんになる人は知らされるの?」
「いえ、フレイグランは把握していますが、マサコ殿にはお伝えしません」
私が知っていたらバレるだろうからだろうな。時代劇の隠密みたいだ。
「それで、私がすべきことは?」
「何も。何かあった際はフレイグランの指示に従ってください」
「分かったわ」
さっそく理沙に報告しよう。ずっと楽しみにしていたから、きっと喜んでくれる。
「理沙、宿が5日後にオープンするんだけど、その前に泊まりにいかない?」
「行きたい!いいの?」
「騎士の女の子たちが一緒になるけど、大丈夫?」
王城から出られるのが楽しみなようで、騎士の子たちと会うのは気にならないようだ。よかった。
「お泊り、何を持って行こうか」
「全部揃えたから大丈夫よ。でもここほど快適じゃないから覚悟しておいてね」
「大丈夫!お母さん、ありがとう!」
久しぶりに全身で嬉しいと喜びを表している理沙に、ローズもホッとしているようだ。落ち込んでいた理沙を見ていたから、安心したのだろう。
そして翌日、私の用意した古着を着て、バッグに家族写真の絵を入れた理沙は、うきうきとお忍びの馬車に乗った。
少し痩せてしまったけど、食欲も戻ってきた。人に会うのを怖がって部屋に籠っていたけれど、お庭には出られるようになった。天気の良い日はお庭でお茶をしている。
部屋にはローズしか入れていないし、警護の騎士には目に入るところを極力避けるようにお願いしてある。
理沙が仲良くなったのは女性騎士見習いだけだ。彼女たちは浄化の旅の同行者でもあるので、浄化の旅を思い出してしまうのか、今は会いたくないと言っている。
そうなると、理沙には友達がいない。こういうときに、浄化なんてしなくていいから休んでと言ってくれる友人が、愚痴を言える友達がいてほしいのに。そんな友達が日本にはいたはずなのに。
理沙が少し落ち着いてから、午前中は宿の準備のために下町に通っている。
宿には私たちの住む母屋があって、そこの準備は私が自分でするしかない。ベッドはケチらずにいいものを2つ用意した。
それにこの母屋のトイレはぼっとんじゃないものにリフォームしてもらった。やっぱり住むところは衛生的なほうがいい。
宿のほうのベッドは、このクラスの宿にしては少しいいものにした。どんなに清潔でも寝心地の悪いベッドは使いたくない。
それから、この世界では珍しいらしいが、寝間着の貸し出しをすることにした。
お城を出てから泊まった宿は全て、高級宿も含めてパジャマがなかった。日本の感覚であるものだと思い込んでいた私は、けっこう驚いたのだ。古着を準備しておいて、デポジット制で希望者には貸し出すことにした。それならこっそり持って行かれても困らない。ただ、デポジットの仕組みもないようなので、受け入れられるかどうか、まずは試しにやってみることにしている。
朝食や夕食は出さない素泊まりのみで、希望があればパン屋のパンを代わりに買ってくることで朝食の代わりにする予定だ。
いろいろ手を広げても、人でも足りないし準備も間に合わないので、少しずつ増やしていこうと、ミュラと相談して決めた。
「マーサ、そういえばお隣入ったみたい。商売はしないで、どこかの従業員の宿にするらしいよ」
「へえ。商売敵じゃなくてよかったわね」
騎士たちの詰め所にするのだろう。理沙がとても楽しみにしているので、警備計画がちゃんと進められているようで安心だ。
「ミュラ、今度私の娘を連れてきたいんだけど」
「え、あんた娘いたの?!」
「ちょっと訳ありでね」
ああ、なるほどねえ、とミュラはしたり顔で頷いた。多分かなりの勘違いをされている気がするが、まあいい。
ミュラは他人の恋愛話が大好きだ。この街の若い子たちの恋愛事情はほぼ把握済みだし、誰が浮気したとか、あの人は大商会の会頭の愛人だとか、そういう情報にとても詳しいのだ。その情報に私も付け加えられたのだろう。
警護の準備ができたと言われたのは、宿の開店を5日後に控えた日だった。
「マサコ殿、警護の準備ができました。詳しくは騎士団長から説明します」
「護衛の指揮はフレイグランが行い、聖女様には女性騎士を2名つけます。その他は隣の建物に待機し、一部は客を装って宿に泊まります」
「そのお客さんになる人は知らされるの?」
「いえ、フレイグランは把握していますが、マサコ殿にはお伝えしません」
私が知っていたらバレるだろうからだろうな。時代劇の隠密みたいだ。
「それで、私がすべきことは?」
「何も。何かあった際はフレイグランの指示に従ってください」
「分かったわ」
さっそく理沙に報告しよう。ずっと楽しみにしていたから、きっと喜んでくれる。
「理沙、宿が5日後にオープンするんだけど、その前に泊まりにいかない?」
「行きたい!いいの?」
「騎士の女の子たちが一緒になるけど、大丈夫?」
王城から出られるのが楽しみなようで、騎士の子たちと会うのは気にならないようだ。よかった。
「お泊り、何を持って行こうか」
「全部揃えたから大丈夫よ。でもここほど快適じゃないから覚悟しておいてね」
「大丈夫!お母さん、ありがとう!」
久しぶりに全身で嬉しいと喜びを表している理沙に、ローズもホッとしているようだ。落ち込んでいた理沙を見ていたから、安心したのだろう。
そして翌日、私の用意した古着を着て、バッグに家族写真の絵を入れた理沙は、うきうきとお忍びの馬車に乗った。
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