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3章 トルゴード編
7. 苦手なもの
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2日後、再度ドレスの打ち合わせをすると言われて待っていると、仮縫いされたドレスが5着持ち込まれてきた。
「聖女様がお気に召されたデザインのものを簡単に作ってみました」
裏地などはついていない、布の端も処理されていないものだけど、それでもドレスの形になっているのだ。すごい。
色や柄は王妃様とターシャちゃんのお義母さんが選んでくれたそうで、どれも素敵だ。
どれも着てみたくて選べないから、理沙はどうせならと一番振袖に近いものを選んだ。
「お母さん、このドレス着てよ。すごく素敵」
「理沙、それはちょっと……。お腹が一番目立たないのはどれかしら?」
理沙が勧めてくれた一見シンプルなドレスは、正面からはシンプルに見えるけど、背中側は帯を垂らしているように布が重ねられていて華やかだ。
でもそのストレートな感じだと、お腹周りに積み重ねた歴史である脂肪が隠せない……。コルセットをすることになったら、きっと息ができないわ。
私のドレスは、このドレスを参考に、胸元を着物の衿のようにしたもので、体系をうまく隠すものを作ってもらえることになった。
デザイナーさんの分かっていますからという微笑みに、ちょっとお腹周りをすっきりさせることを決意した。まあその決意も3時間しかもたないんだけど。お城のごはんが美味しいのよね。
「ターシャちゃんならこれを着こなせるんじゃない?」
「それいい!ターシャさん、これ着てください」
すらっとしたターシャちゃんなら着こなせるだろう。
聖女様のドレスを着るわけにはいかないとターシャちゃんは渋っていたけど、最終的に理沙のお願いに折れてくれた。
王妃様が、世話をしてくれているお礼にと聖女様が望んだと広めてくれるそうだ。
ドレスはお任せして、お披露目パーティーの前に私たちは浄化に行く。
近隣の国から王族が来るので、お披露目パーティーの開催までには日にちがある。
そこで、今後行く予定になっているクインス側ではなく、反対側ローズモス王国側の魔物が良く出るところに浄化に行くことになった。
湿原というか沼のようなところがあって、そこに魔物が良く出るらしい。
「理沙、どうしたの?」
「……行きたくない」
「理沙、無理はしなくていいのよ。体調が悪いならやめましょう」
こんな理沙は初めて見る。しかも出発の日になって、こんなことを言い出すなんて。
ターシャちゃんも護衛の女性騎士さんたちも心配している。
「理沙さん、中止しますか?」
「いえ、行きます。行きますけど」
「今日はやめましょう。連絡してきます」
「あ、違います!違うんです!ターシャさん待って。行きます。行くけど……、カエル嫌いなんです」
最後は消え入るような声で、理沙がつぶやいた。
ああ、そういうことね。体調が悪いとかじゃなくてよかったわ。
「カエルなんて、見なければいいでしょ」
「簡単に言わないでよ。人と同じくらいって聞いたもん。お母さんは黒いヤツの大きいのが出ても平気なの?!」
「やめて!そんなの無理に決まってるじゃない。リリーちゃん、護衛の騎士さんたちに、遠くであっても理沙の目に入るところまで近寄らせないようにお願いしてもらえるかしら?」
「畏まりました。決して理沙様の目に入れないとお約束しましょう」
女性騎士のリリーちゃんが笑いをこらえて、誓ってくれた。
最初は理沙のいつにない様子に心配していたターシャちゃんたちも、行きたくないのが可愛い駄々だと分かって空気が緩んだ。
今回浄化に行く沼のようなところにはカエルが大きくなったような魔物がいると聞いたが、理沙はそれが怖いようだ。
カエルなんてと思ったけど、苦手なものは人それぞれだから、軽く言って悪かったと反省しきりだ。台所にいる黒いヤツの大きいのなんて、想像したくもない。あいつらは人類の敵だ。
ちなみに黒いヤツが大きくなったような魔物はいないそうだ。もしいるなら、私はそこには行かない。悪いけど理沙ひとりで行ってね。浄化はもう慣れているし大丈夫でしょう。
女性騎士さんは、国境まで迎えに来てくれたリリーちゃん、カーラちゃん、デイジーちゃんの3人が今回も一緒に行ってくれる。
それに加えてあと3人、新しい女性騎士さんも加わって、2人ずつの3交代制になる予定だ。今回は短い旅なのでそこまで必要ないけど、今後のためのお試しらしい。
ターシャちゃんも付いてきてくれる。そうなるとジェン君もだ。
前回はいなかった護衛騎士が理沙の周りを固めて、第二騎士団は万が一にも理沙に魔物が近寄らないように露払いになる。カエルもどきも第二騎士団がきっと討伐しておいてくれるだろう。
「カーラちゃん、護衛騎士って普通の騎士と違うの?」
「そうですね。例えば理沙様の前に魔物が現れた場合、魔物を退治するのが騎士で、理沙様を安全な場所までお連れするのが護衛騎士ですね」
役割が違うのね。
女性騎士は人数が少ないのでほとんどが護衛騎士になるけど、それでもまずは騎士として修行してから護衛騎士になる。護衛騎士はエリートなんだそうだ。
ただし、護衛騎士は礼儀作法とかも厳しいので、現場で暴れていたい人は護衛騎士を希望しない。きっとジェン君たち第二騎士団はそういう人の集まりなんだろう。
実際に、カエル退治に向かう理沙についてくれた護衛騎士さんたちは、とても洗練されていた。ターシャちゃんの言った、第二騎士団は統率の取れた冒険者という表現も、あながち間違っていなさそうだ。
「聖女様がお気に召されたデザインのものを簡単に作ってみました」
裏地などはついていない、布の端も処理されていないものだけど、それでもドレスの形になっているのだ。すごい。
色や柄は王妃様とターシャちゃんのお義母さんが選んでくれたそうで、どれも素敵だ。
どれも着てみたくて選べないから、理沙はどうせならと一番振袖に近いものを選んだ。
「お母さん、このドレス着てよ。すごく素敵」
「理沙、それはちょっと……。お腹が一番目立たないのはどれかしら?」
理沙が勧めてくれた一見シンプルなドレスは、正面からはシンプルに見えるけど、背中側は帯を垂らしているように布が重ねられていて華やかだ。
でもそのストレートな感じだと、お腹周りに積み重ねた歴史である脂肪が隠せない……。コルセットをすることになったら、きっと息ができないわ。
私のドレスは、このドレスを参考に、胸元を着物の衿のようにしたもので、体系をうまく隠すものを作ってもらえることになった。
デザイナーさんの分かっていますからという微笑みに、ちょっとお腹周りをすっきりさせることを決意した。まあその決意も3時間しかもたないんだけど。お城のごはんが美味しいのよね。
「ターシャちゃんならこれを着こなせるんじゃない?」
「それいい!ターシャさん、これ着てください」
すらっとしたターシャちゃんなら着こなせるだろう。
聖女様のドレスを着るわけにはいかないとターシャちゃんは渋っていたけど、最終的に理沙のお願いに折れてくれた。
王妃様が、世話をしてくれているお礼にと聖女様が望んだと広めてくれるそうだ。
ドレスはお任せして、お披露目パーティーの前に私たちは浄化に行く。
近隣の国から王族が来るので、お披露目パーティーの開催までには日にちがある。
そこで、今後行く予定になっているクインス側ではなく、反対側ローズモス王国側の魔物が良く出るところに浄化に行くことになった。
湿原というか沼のようなところがあって、そこに魔物が良く出るらしい。
「理沙、どうしたの?」
「……行きたくない」
「理沙、無理はしなくていいのよ。体調が悪いならやめましょう」
こんな理沙は初めて見る。しかも出発の日になって、こんなことを言い出すなんて。
ターシャちゃんも護衛の女性騎士さんたちも心配している。
「理沙さん、中止しますか?」
「いえ、行きます。行きますけど」
「今日はやめましょう。連絡してきます」
「あ、違います!違うんです!ターシャさん待って。行きます。行くけど……、カエル嫌いなんです」
最後は消え入るような声で、理沙がつぶやいた。
ああ、そういうことね。体調が悪いとかじゃなくてよかったわ。
「カエルなんて、見なければいいでしょ」
「簡単に言わないでよ。人と同じくらいって聞いたもん。お母さんは黒いヤツの大きいのが出ても平気なの?!」
「やめて!そんなの無理に決まってるじゃない。リリーちゃん、護衛の騎士さんたちに、遠くであっても理沙の目に入るところまで近寄らせないようにお願いしてもらえるかしら?」
「畏まりました。決して理沙様の目に入れないとお約束しましょう」
女性騎士のリリーちゃんが笑いをこらえて、誓ってくれた。
最初は理沙のいつにない様子に心配していたターシャちゃんたちも、行きたくないのが可愛い駄々だと分かって空気が緩んだ。
今回浄化に行く沼のようなところにはカエルが大きくなったような魔物がいると聞いたが、理沙はそれが怖いようだ。
カエルなんてと思ったけど、苦手なものは人それぞれだから、軽く言って悪かったと反省しきりだ。台所にいる黒いヤツの大きいのなんて、想像したくもない。あいつらは人類の敵だ。
ちなみに黒いヤツが大きくなったような魔物はいないそうだ。もしいるなら、私はそこには行かない。悪いけど理沙ひとりで行ってね。浄化はもう慣れているし大丈夫でしょう。
女性騎士さんは、国境まで迎えに来てくれたリリーちゃん、カーラちゃん、デイジーちゃんの3人が今回も一緒に行ってくれる。
それに加えてあと3人、新しい女性騎士さんも加わって、2人ずつの3交代制になる予定だ。今回は短い旅なのでそこまで必要ないけど、今後のためのお試しらしい。
ターシャちゃんも付いてきてくれる。そうなるとジェン君もだ。
前回はいなかった護衛騎士が理沙の周りを固めて、第二騎士団は万が一にも理沙に魔物が近寄らないように露払いになる。カエルもどきも第二騎士団がきっと討伐しておいてくれるだろう。
「カーラちゃん、護衛騎士って普通の騎士と違うの?」
「そうですね。例えば理沙様の前に魔物が現れた場合、魔物を退治するのが騎士で、理沙様を安全な場所までお連れするのが護衛騎士ですね」
役割が違うのね。
女性騎士は人数が少ないのでほとんどが護衛騎士になるけど、それでもまずは騎士として修行してから護衛騎士になる。護衛騎士はエリートなんだそうだ。
ただし、護衛騎士は礼儀作法とかも厳しいので、現場で暴れていたい人は護衛騎士を希望しない。きっとジェン君たち第二騎士団はそういう人の集まりなんだろう。
実際に、カエル退治に向かう理沙についてくれた護衛騎士さんたちは、とても洗練されていた。ターシャちゃんの言った、第二騎士団は統率の取れた冒険者という表現も、あながち間違っていなさそうだ。
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