巻き込まれたおばちゃん、召喚聖女ちゃんのお母さんになる

戌葉

文字の大きさ
48 / 89
4章 冒険者編

2. 買い物

 ターシャちゃんの取り成しでひとまず馬車に乗ったけど、理沙はちゃんと話を聞くまでは諦めないという表情をしている。これは話さないとダメそうね。

「レイ君が別のお仕事で護衛が別の人になった日があったんだけど、その時に私を置いて魔物狩りに行っちゃったの。それで魔物に襲われそうになったところを他の冒険者に助けてもらったのよ。傷一つ負ってないから、大丈夫だったのよ」
「だからって!そんな危険なことなんで続けたの?危険はないって言ってたじゃない!」

 私のせいなのね、と理沙が俯いてしまった。違う。あれは私が意地を張っただけだ。シングルマザーでも頑張って息子を育て上げたそのプライドが、理沙やあの国に甘えることを邪魔したのだ。高校生に養われるなんて、と。
 冷静になって考えると、どれだけ無謀なことをしていたのかが分かる。レイ君の厚意に甘えていたことも。

「ごめんね。理沙のおまけであの国に養われるのがどうしても嫌で、意地を張ったの。理沙のせいじゃないわ。ごめんね」
「……宿を買うお金はどうしたの」
「護衛が仕事を放棄して私を危険な目に合わせたことへの謝罪と口止め料をもらったのよ。そのお金で買ったの」
「もう二度としないで。お願いだから。お母さんに何かあったら……」

 ごめんね。もう二度と危ないことはしないから泣かないで。
 理沙を抱きしめると体重を預けてきたので、背中をゆっくりと撫でていると、少しずつ落ち着いてきた。

「さあ、冒険者を続けましょう」
「お母さん、怖くないの?」
「護衛のみんなを信じてるもの」


 ターシャちゃんに仲直りしたので、今日の予定を続けてほしいとお願いし、来たのは冒険者のいろんなものを買うお店だ。こちらは貸し切りになっている。
 いかにも冒険者用のお店で、野営で使うテントや保存食、冒険の便利グッズなどいろんなものがごちゃごちゃと乱雑に並べられている。武器は専用の武器屋さんがあるのでここにはない。

「ここで冒険者としての服とバッグを揃えましょう」
「どういうのを選べばいいんですか?」
「肌が隠れる服ですね。護衛の彼女たちを参考にしてください」

 なるほど。それでリリーちゃんたちが冒険者の格好をしているのか。でも服を用意されると思っていたので、既製服を買うのは予想外だ。種類はそんなにないけれど、理沙が楽しそうにどれにしようかと身体に当ててみているので、わざと既製品にしてくれたのね。お洋服を選ぶのは楽しみの一つでしょう。
 私はクインスできていたのと同じようなものを選んだ。ターシャちゃんはカーラちゃんに選んでもらっている。

「ジェン君、我儘言ってごめんなさいね」
「リーザさんが楽しんでいらっしゃるので何よりです」
「皆さんにお礼を伝えてもらえる?」
「お気遣いありがとうございます」

 服と靴、バッグを選んだら、次は防具だ。
 と言っても慣れていない私たちがしっかりした防具を着ても動けないので、弓道の胸当てみたいなものと、剣道の垂れみたいなものだけだ。
 護衛がいるので、そもそも防具が必要になるような事態にはならないはずだけど、私の一件を聞いた理沙はちゃんと防具もつけると主張したので、私も一緒に買うことになった。
 防具屋さんはお金に糸目をつけずに買ってもらえるとあって、次から次へと出してくれるんだけど、出てきたものを見ても全く分からないので、リリーちゃんたちに選んでもらった。
 私からの注文はただ一つ、動きを妨げない軽いもの。甲冑なんてつけたら一歩も動けない自信がある。

「武器はどうしますか?」
「お母さん、どうする?」
「私は包丁以外は扱えないから持たないわ。持ったところで、仲間に当てるのがオチよ」
「そうよね。私もやめておきます」

 ターシャちゃんも護衛がいるから不要でしょうと賛成してくれた。


 では、最後にポーションを買いましょう、と連れていかれたのは、いかにも怪しい感じのお店だった。
 お店は狭くて、5人も入れば身動きが取れなくなりそうなので、護衛はカーラちゃんだけが入店した。
お店番は童話に出てくる魔女のような服装の薬師さんで、お店の中は薄暗いけど清潔で、棚には所狭しといろんな色の液体が入った瓶が並んでいる。

 これぞファンタジーと理沙がはしゃいでいるけど、気持ちは分かるわ。これは、いい薬だけじゃなく毒薬も売っていそうで、ワクワクする。
 初心者が買うのはこのポーションで、効果は軽い切り傷が治る程度で、とターシャちゃんが詳しく説明してくれるけど、ターシャちゃんは薬師になれる実力があるんだったわね。

「ターシャちゃんの作ったポーションはないの?」
「今はありません。興味があれば作りましょうか?」
「今度見せてください!」

 理沙がポーション作りに興味を持ったようだ。
 その会話を聞いて魔女の薬師さんがターシャちゃんに、薬師だったらこのあたりの薬は珍しいがどうだい、と売り込んでいる。

 私たちは、カーラちゃんの勧めもあって、初心者が買うという傷に効くポーションを買った。理沙がお金をもらって自分で払っている。
 理沙にとってはこの世界で初めての買い物だ。
 受け取ったポーションを見ながら、本当にファンタジーの世界に来ちゃったのね、としみじみと呟いた。
感想 93

あなたにおすすめの小説

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

無能令嬢、『雑役係』として辺境送りされたけど、世界樹の加護を受けて規格外に成長する

タマ マコト
ファンタジー
名門エルフォルト家の長女クレアは、生まれつきの“虚弱体質”と誤解され、家族から無能扱いされ続けてきた。 社交界デビュー目前、突然「役立たず」と決めつけられ、王都で雑役係として働く名目で辺境へ追放される。 孤独と諦めを抱えたまま向かった辺境の村フィルナで、クレアは自分の体調がなぜか安定し、壊れた道具や荒れた土地が彼女の手に触れるだけで少しずつ息を吹き返す“奇妙な変化”に気づく。 そしてある夜、瘴気に満ちた森の奥から呼び寄せられるように、一人で足を踏み入れた彼女は、朽ちた“世界樹の分枝”と出会い、自分が世界樹の血を引く“末裔”であることを知る——。 追放されたはずの少女が、世界を動かす存在へ覚醒する始まりの物語。

アラフォー幼女は異世界で大魔女を目指します

梅丸みかん
ファンタジー
第一章:長期休暇をとったアラフォー独身のミカは、登山へ行くと別の世界へ紛れ込んでしまう。その場所は、森の中にそびえる不思議な塔の一室だった。元の世界には戻れないし、手にしたゼリーを口にすれば、身体はなんと6歳の子どもに――。 ミカが封印の箱を開けると、そこから出てきたのは呪いによって人形にされた大魔女だった。その人形に「大魔女の素質がある」と告げられたミカは、どうせ元の世界に戻れないなら、大魔女を目指すことを決心する。 だが、人形師匠はとんでもなく自由すぎる。ミカは師匠に翻弄されまくるのだった。 第二章:巷で流れる大魔女の遺産の噂。その裏にある帝國の侵略の懸念。ミカは次第にその渦に巻き込まれていく。 第三章:異世界で唯一の友人ルカが消えた。その裏には保護部屋の存在が関わっていることが示唆され、ミカは潜入捜査に挑むことになるのだった。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。