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4章 冒険者編
3. 薬草採取
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冒険者の装備を揃えた翌日は、ゆっくりお城で休んで、次の日は早朝から出発だ。
泊まるのは警備が大変なので、馬車で日帰りで薬草採取ができるところまでとなると、どうしても早朝出発になってしまうそうだ。
「リーザ、冒険者の格好、ばっちり決まってるわ」
「お母さん、本当に大丈夫?怖くない?」
「平気よ。次の日だって薬草採取に行ったのよ」
理沙は私がトラウマになっていないかを心配してくれている。優しい子だわ。心配かけてごめんね。
薬草の種類は、昨日ターシャちゃんから本を借りて、理沙と予習した。採取する薬草は3種類で、理沙がノートに葉の形を写し取ってくれたので間違えないだろう。
今日はターシャちゃんも冒険者の格好をしているけど、すごく板についている。
実はお忍びで薬草を取りに行ったりしていたのかと思ったけど、初めてだった。日本にいるときはトレッキングが趣味だったので、そのせいかもしれないですね、と笑った。休日にひとりでふらっと山に行くこともあったらしい。
私も新しいことに挑戦と思ったときに登山も候補の一つだったから、お互いまだ日本にいたら山で会っていたかもしれない。異世界で会うよりもそのほうが可能性は高そうなのに、縁って不思議。
馬車がついたのは森の入り口で、もうお昼前なので冒険者はほとんどいない。
ここから少し歩いたところに薬草の群生地があるけど、珍しい薬草はないので冒険者にはあまり人気のないところだそうだ。
先発隊が昨日から周辺の魔物を討伐してくれているそうで、魔物に会う確率は低いので安心してほしいと言われた。私がクインスで魔物に襲われたという情報は、理沙だけでなく護衛の人たちにも衝撃だったようで、かなり気を遣ってもらっているのが申し訳ない。
ここは瘴気が薄いからきっと魔物は出ないと理沙のお墨付きももらったので、安心ね。
群生地までは周りを護衛の騎士さんに囲まれて進んだ。少しだけでも森の中に入るのは、理沙も私も初めての経験だ。木の種類が日本と違う気がする。
「気候は似ていますが、植生にはかなり違いがあります。瘴気が影響しているのかもしれません」
疑問を口に出すと専門的な答えが返ってくる。ターシャちゃんの頭の中にはどれだけの情報が詰まっているだろう。呼びかけると応答してくれるAIみたいと思ったのは内緒だ。
しばらく進むと少し開けたところに騎士さんが待っていた。私たちのために場所取りをしてくれていたみたいだ。他の人とバッティングすると警護が面倒だからかも。
「ここで3種類の薬草を採取します。まずは採取の仕方を見てください」
そういってターシャちゃんが、良さそうな薬草の選び方、どこを持つと薬草を傷めないか、どの部分を必要としているか、どうやって採取するか、を丁寧に教えてくれる。
そうなのか。クインスでは思いっきり葉っぱを触っていたけど、傷めるからあまり良くなかったのね、と反省することが多い。丁寧に採取しないと買取価格が下がってしまうので、気を付けたほうがいいと今更知った。
ターシャちゃんが採取した3種類の薬草の実物を受け取って、いよいよ私たちも自分で探す番だ。引率の先生付きでの薬草採取って、学校の課外実習みたいね、と理沙と笑った。
実物を見ながら、昨日理沙が書き写したメモを見て、見分けるポイント確認する。こっちは茎に毛が生えているのね。これは葉の根元が赤くなると。
群生地で目を凝らして探すと、いつも採取していた薬草はすぐに見つけられた。でもほかの2種類が難しい。
「ターシャちゃん、これかしら?」
「ええ、それです。マーサさんさすが経験者ですね」
「お母さんすごい」
よし、理沙とどっちが早く集められるか競争しよう。
「ええ、私初めてなのに。ずるいよ」
「私は年齢っていうハンデがあるんだから互角だと思うわ」
負けないぞ、と理沙が張り切っているけど、どう考えても理沙のほうが有利でしょう。
そう思っていたけど、私の圧勝だった。
理沙はこれ?と言いながら全く別の草を指していた。あんなにきれいに描き写せるのになんで分からないのか不思議。やっぱり今の子はあんまり草を触ったりしないからなのかしら。
分からなさ過ぎて飽きてしまったようで、途中から花を摘んでいた。ブーケを作っている様子が可愛いからいいのだけど。
「リーザさん、その花には毒がありますので」
「え?触ったらどうなるの?」
「皮膚がただれます」
ファンタジーの世界の毒って勝手なイメージだけど強そうで怖い。かぶれるじゃなくてただれるって。
騎士さんたちはみんな薬草が分かるみたいで、警護の手の空いている人は、私と一緒に薬草を摘んでくれた。
騎士にはそんな知識も必要なのね、と軽い気持ちで言ったけれど、知っている理由は命がかかっているからという重いものだった。
騎士学校では薬草、食べられる野草、毒草を覚えさせられる。隊からはぐれた時に生き残るために必要な知識として。それに毒のある花を触ろうとした理沙を止めたように、警護にも必要な知識だ。
この世界は生き延びるのが日本よりも厳しいと、現実を突き付けられたような気がした。
泊まるのは警備が大変なので、馬車で日帰りで薬草採取ができるところまでとなると、どうしても早朝出発になってしまうそうだ。
「リーザ、冒険者の格好、ばっちり決まってるわ」
「お母さん、本当に大丈夫?怖くない?」
「平気よ。次の日だって薬草採取に行ったのよ」
理沙は私がトラウマになっていないかを心配してくれている。優しい子だわ。心配かけてごめんね。
薬草の種類は、昨日ターシャちゃんから本を借りて、理沙と予習した。採取する薬草は3種類で、理沙がノートに葉の形を写し取ってくれたので間違えないだろう。
今日はターシャちゃんも冒険者の格好をしているけど、すごく板についている。
実はお忍びで薬草を取りに行ったりしていたのかと思ったけど、初めてだった。日本にいるときはトレッキングが趣味だったので、そのせいかもしれないですね、と笑った。休日にひとりでふらっと山に行くこともあったらしい。
私も新しいことに挑戦と思ったときに登山も候補の一つだったから、お互いまだ日本にいたら山で会っていたかもしれない。異世界で会うよりもそのほうが可能性は高そうなのに、縁って不思議。
馬車がついたのは森の入り口で、もうお昼前なので冒険者はほとんどいない。
ここから少し歩いたところに薬草の群生地があるけど、珍しい薬草はないので冒険者にはあまり人気のないところだそうだ。
先発隊が昨日から周辺の魔物を討伐してくれているそうで、魔物に会う確率は低いので安心してほしいと言われた。私がクインスで魔物に襲われたという情報は、理沙だけでなく護衛の人たちにも衝撃だったようで、かなり気を遣ってもらっているのが申し訳ない。
ここは瘴気が薄いからきっと魔物は出ないと理沙のお墨付きももらったので、安心ね。
群生地までは周りを護衛の騎士さんに囲まれて進んだ。少しだけでも森の中に入るのは、理沙も私も初めての経験だ。木の種類が日本と違う気がする。
「気候は似ていますが、植生にはかなり違いがあります。瘴気が影響しているのかもしれません」
疑問を口に出すと専門的な答えが返ってくる。ターシャちゃんの頭の中にはどれだけの情報が詰まっているだろう。呼びかけると応答してくれるAIみたいと思ったのは内緒だ。
しばらく進むと少し開けたところに騎士さんが待っていた。私たちのために場所取りをしてくれていたみたいだ。他の人とバッティングすると警護が面倒だからかも。
「ここで3種類の薬草を採取します。まずは採取の仕方を見てください」
そういってターシャちゃんが、良さそうな薬草の選び方、どこを持つと薬草を傷めないか、どの部分を必要としているか、どうやって採取するか、を丁寧に教えてくれる。
そうなのか。クインスでは思いっきり葉っぱを触っていたけど、傷めるからあまり良くなかったのね、と反省することが多い。丁寧に採取しないと買取価格が下がってしまうので、気を付けたほうがいいと今更知った。
ターシャちゃんが採取した3種類の薬草の実物を受け取って、いよいよ私たちも自分で探す番だ。引率の先生付きでの薬草採取って、学校の課外実習みたいね、と理沙と笑った。
実物を見ながら、昨日理沙が書き写したメモを見て、見分けるポイント確認する。こっちは茎に毛が生えているのね。これは葉の根元が赤くなると。
群生地で目を凝らして探すと、いつも採取していた薬草はすぐに見つけられた。でもほかの2種類が難しい。
「ターシャちゃん、これかしら?」
「ええ、それです。マーサさんさすが経験者ですね」
「お母さんすごい」
よし、理沙とどっちが早く集められるか競争しよう。
「ええ、私初めてなのに。ずるいよ」
「私は年齢っていうハンデがあるんだから互角だと思うわ」
負けないぞ、と理沙が張り切っているけど、どう考えても理沙のほうが有利でしょう。
そう思っていたけど、私の圧勝だった。
理沙はこれ?と言いながら全く別の草を指していた。あんなにきれいに描き写せるのになんで分からないのか不思議。やっぱり今の子はあんまり草を触ったりしないからなのかしら。
分からなさ過ぎて飽きてしまったようで、途中から花を摘んでいた。ブーケを作っている様子が可愛いからいいのだけど。
「リーザさん、その花には毒がありますので」
「え?触ったらどうなるの?」
「皮膚がただれます」
ファンタジーの世界の毒って勝手なイメージだけど強そうで怖い。かぶれるじゃなくてただれるって。
騎士さんたちはみんな薬草が分かるみたいで、警護の手の空いている人は、私と一緒に薬草を摘んでくれた。
騎士にはそんな知識も必要なのね、と軽い気持ちで言ったけれど、知っている理由は命がかかっているからという重いものだった。
騎士学校では薬草、食べられる野草、毒草を覚えさせられる。隊からはぐれた時に生き残るために必要な知識として。それに毒のある花を触ろうとした理沙を止めたように、警護にも必要な知識だ。
この世界は生き延びるのが日本よりも厳しいと、現実を突き付けられたような気がした。
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