巻き込まれたおばちゃん、召喚聖女ちゃんのお母さんになる

戌葉

文字の大きさ
49 / 89
4章 冒険者編

3. 薬草採取

しおりを挟む
 冒険者の装備を揃えた翌日は、ゆっくりお城で休んで、次の日は早朝から出発だ。
 泊まるのは警備が大変なので、馬車で日帰りで薬草採取ができるところまでとなると、どうしても早朝出発になってしまうそうだ。

「リーザ、冒険者の格好、ばっちり決まってるわ」
「お母さん、本当に大丈夫?怖くない?」
「平気よ。次の日だって薬草採取に行ったのよ」

 理沙は私がトラウマになっていないかを心配してくれている。優しい子だわ。心配かけてごめんね。
 薬草の種類は、昨日ターシャちゃんから本を借りて、理沙と予習した。採取する薬草は3種類で、理沙がノートに葉の形を写し取ってくれたので間違えないだろう。

 今日はターシャちゃんも冒険者の格好をしているけど、すごく板についている。
 実はお忍びで薬草を取りに行ったりしていたのかと思ったけど、初めてだった。日本にいるときはトレッキングが趣味だったので、そのせいかもしれないですね、と笑った。休日にひとりでふらっと山に行くこともあったらしい。
 私も新しいことに挑戦と思ったときに登山も候補の一つだったから、お互いまだ日本にいたら山で会っていたかもしれない。異世界で会うよりもそのほうが可能性は高そうなのに、縁って不思議。


 馬車がついたのは森の入り口で、もうお昼前なので冒険者はほとんどいない。
 ここから少し歩いたところに薬草の群生地があるけど、珍しい薬草はないので冒険者にはあまり人気のないところだそうだ。
 先発隊が昨日から周辺の魔物を討伐してくれているそうで、魔物に会う確率は低いので安心してほしいと言われた。私がクインスで魔物に襲われたという情報は、理沙だけでなく護衛の人たちにも衝撃だったようで、かなり気を遣ってもらっているのが申し訳ない。
 ここは瘴気が薄いからきっと魔物は出ないと理沙のお墨付きももらったので、安心ね。

 群生地までは周りを護衛の騎士さんに囲まれて進んだ。少しだけでも森の中に入るのは、理沙も私も初めての経験だ。木の種類が日本と違う気がする。

「気候は似ていますが、植生にはかなり違いがあります。瘴気が影響しているのかもしれません」

 疑問を口に出すと専門的な答えが返ってくる。ターシャちゃんの頭の中にはどれだけの情報が詰まっているだろう。呼びかけると応答してくれるAIみたいと思ったのは内緒だ。

 しばらく進むと少し開けたところに騎士さんが待っていた。私たちのために場所取りをしてくれていたみたいだ。他の人とバッティングすると警護が面倒だからかも。

「ここで3種類の薬草を採取します。まずは採取の仕方を見てください」

 そういってターシャちゃんが、良さそうな薬草の選び方、どこを持つと薬草を傷めないか、どの部分を必要としているか、どうやって採取するか、を丁寧に教えてくれる。
 そうなのか。クインスでは思いっきり葉っぱを触っていたけど、傷めるからあまり良くなかったのね、と反省することが多い。丁寧に採取しないと買取価格が下がってしまうので、気を付けたほうがいいと今更知った。

 ターシャちゃんが採取した3種類の薬草の実物を受け取って、いよいよ私たちも自分で探す番だ。引率の先生付きでの薬草採取って、学校の課外実習みたいね、と理沙と笑った。
 実物を見ながら、昨日理沙が書き写したメモを見て、見分けるポイント確認する。こっちは茎に毛が生えているのね。これは葉の根元が赤くなると。
 群生地で目を凝らして探すと、いつも採取していた薬草はすぐに見つけられた。でもほかの2種類が難しい。

「ターシャちゃん、これかしら?」
「ええ、それです。マーサさんさすが経験者ですね」
「お母さんすごい」

 よし、理沙とどっちが早く集められるか競争しよう。

「ええ、私初めてなのに。ずるいよ」
「私は年齢っていうハンデがあるんだから互角だと思うわ」

 負けないぞ、と理沙が張り切っているけど、どう考えても理沙のほうが有利でしょう。

 そう思っていたけど、私の圧勝だった。
 理沙はこれ?と言いながら全く別の草を指していた。あんなにきれいに描き写せるのになんで分からないのか不思議。やっぱり今の子はあんまり草を触ったりしないからなのかしら。
 分からなさ過ぎて飽きてしまったようで、途中から花を摘んでいた。ブーケを作っている様子が可愛いからいいのだけど。

「リーザさん、その花には毒がありますので」
「え?触ったらどうなるの?」
「皮膚がただれます」

 ファンタジーの世界の毒って勝手なイメージだけど強そうで怖い。かぶれるじゃなくてただれるって。
 騎士さんたちはみんな薬草が分かるみたいで、警護の手の空いている人は、私と一緒に薬草を摘んでくれた。
 騎士にはそんな知識も必要なのね、と軽い気持ちで言ったけれど、知っている理由は命がかかっているからという重いものだった。
 騎士学校では薬草、食べられる野草、毒草を覚えさせられる。隊からはぐれた時に生き残るために必要な知識として。それに毒のある花を触ろうとした理沙を止めたように、警護にも必要な知識だ。

 この世界は生き延びるのが日本よりも厳しいと、現実を突き付けられたような気がした。
しおりを挟む
感想 93

あなたにおすすめの小説

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

処理中です...