巻き込まれたおばちゃん、召喚聖女ちゃんのお母さんになる

戌葉

文字の大きさ
50 / 89
4章 冒険者編

4. 買取

しおりを挟む
 翌日、採取した薬草を持って、冒険者ギルドを再び訪問した。
 前回と同じ貴族のお忍びという格好をして、理沙が薬草をカウンターの係員に差し出し、買取をお願いする。
 薬草担当の人が確認するのでそれまで待っているように言われ、理沙は冒険者ギルド内の探検を始めた。前回は登録後すぐに私のクインスでの件を知って、それどころじゃなかったからね。

「依頼の内容がファンタジーだ」
「便利屋って感じよね」

 貼り出されている依頼は魔物の討伐、薬草の採取の他にも、護衛依頼、特定の魔物の素材がほしいとか、内容は多岐にわたる。農業の手伝いとか、外壁の補修とか、そんなのも冒険者に依頼されるんだと思うような依頼もある。それを感心しながら見て、疑問をジェン君に質問している。

「この魔物の討伐と、こっちの素材の依頼は何が違うんですか?」
「討伐は魔物の数を減らすことが目的で、討伐後にその魔物の素材を売るのも冒険者の自由です。素材の依頼は魔物を倒して使える部分を納品しますが、傷がついていたりすると依頼料から引かれることもあります」
「騎士団でも素材を売るんですか?」
「冒険者の仕事を奪わないように、売る場合は少しだけです。ですが、素材の買取価格が高いものは冒険者が率先して狙うので滅多に見かけません」

 なるほど。素材が貴重な魔物は高く売れるから冒険者に倒されるので、討伐が必要になるほど増えたりはしないらしい。けれど傷をつけないように倒すには工夫しなきゃいけないから、ただ倒せばいいだけの討伐を専門にしている冒険者もいるって、ジェン君詳しいわね。

「ジェン君、もしかして冒険者やってた?」
「騎士養成学校時代に少し。小遣い稼ぎに仲間と登録するんですよ」

 公爵家のご子息でもそんなことするのかと驚いたけど、危険のない範囲での冒険者活動は学校も推奨しているらしい。魔物に関しては冒険者と騎士団は持ちつ持たれつの関係なので、冒険者の立場を知っておくことも必要だからってことらしいけど、学生時代のバイトにしてはハードねえ。
 前にターシャちゃんが第二騎士団は統率の取れた冒険者って言ってたけど、本当に冒険者として活動していた人たちなら納得だわ。

 買取の査定が終わったと呼び出されてカウンターに戻ると、30ピリアだが買い取ってよいかと確認があった。
 理沙と同時にターシャちゃんを振り返ると、ターシャちゃんが妥当な値段だと言ってくれたので、買取をお願いし、理沙がお金を受け取った。

「お金を稼いだの初めて。私の学校バイト禁止だったから」
「おめでとう。パン1個くらいしか買えないみたいだけど、そのお金は理沙が好きに使って」

 受け取ったお金を手に乗せて喜んでいる理沙が可愛い。
 でも理沙は浄化を仕事としてお金に換算したらすでに一生遊んで暮らせるくらいの金額を稼いでいるんじゃないかしら。
 そう考えると、最初から1か所いくらって交渉するのもありだったかも。


 冒険者ギルドを出て馬車に乗り込むと、馬車はお城ではなく王都の外れへと進んでいる。目的地は着いてからのお楽しみと言ってターシャちゃんも教えてくれない。
 観光かしら、と思いながら、馬車の窓からの景色を楽しむ。
 冒険者ギルドの周りは背中に大きな剣や弓を背負っているような人が多かったけど、少し離れると日常の買い物に来た感じの普通の人が多くなる。お城から離れていく一方なので、貴族っぽい人は全く見かけない。
 しばらく走って、馬車がついたのは、学校のような建物だった。

「こちらが目的地の薬師養成学校です」
「もしかして、調薬?」
「ええ、リーザさんが興味をお持ちでしたので」

 理沙のためにこの学校の調薬施設を借りてくれたらしい。そういえばターシャちゃんはこの学校にも合格したのよね。
 お城にも薬師の施設があるけど、今そこは浄化の旅に持っていくポーションを作るのにフル回転しているので、こちらの施設を借りてくれていた。

 出迎えに出てくれた人に続いて入ると、学校というよりも研究所という感じの建物だった。

「カーラちゃん、騎士養成学校もこんな感じなの?」
「雰囲気が全く違います。私もここに入るのは初めてです」

 養成学校同士で交流はないから、自分が通う学校以外には入る機会もないそうだ。
 騎士養成学校は訓練場が広く、いつもそこから訓練する人たちの声が聞こえるので賑やからしい。

 校舎の中を進み、こちらですと案内された調薬部屋の壁際には、所狭しと道具が並べられている。中学校の理科室みたいだ。
 3台の机にすでに調薬器具がセットされていて、ターシャちゃんは空いている机に薬草を広げた。買取にごく一部しか出さなかったのは、ここで使うからだったのね。

「昨日採取した薬草です。これを使って簡単なポーションを作りましょう」
「え、もしかして私も作るんですか?」
「はい。理科の実験や調理実習みたいなものですから、簡単ですよ」

 いやいや、薬師の試験が難しいってことは、調薬も難しいはずよね。
 ターシャちゃん、自分ができるからって他人も簡単にできるって思わないで。

「この薬草の葉を潰して、ガーゼで絞って成分を抽出します。次はそれを加熱して、適度な温度になったところでこちらの乾燥させて砕いた薬草を加えます。目安は小さな泡が浮きあがってきたらです」

 ターシャちゃんの説明はとても分かりやすいけど、なにせ器具に問題がある。
 適度な温度って何度?温度計はないの?加えるのは小さじ何杯?

 この世界で薬師になるのが大変な理由の一つが、適量とか適温とか、大雑把な説明が多いからだそうだ。
 ただ、正確に測定する器具も開発されていないし薬草も効果がまちまちなので、何度も作ってそのタイミングや感覚を覚えるしかないらしい。
 統一規格とか同じ品質とかって大事なのねえ。

 理科の実験や調理実習に似ていると言っていたけど、塩少々とか醤油適量とかなんとなくで作っちゃう感じの料理に通じるものがあるわ。
 ターシャちゃんが調薬するのを見たかっただけでやりたかったわけではないのに、と言っていた理沙も、今は真剣に加熱中の液体を見ている。

「何かが出来上がるって楽しいですね」
「反応が始まると色が変わるのも、見ていて楽しいですよ」

 理沙も楽しんでいる。葉をすりつぶしたり、液体を混ぜたり、粉末状の物をくわえたりは、理科の実験みたいだった。懐かしいわ。

「出来た!これ飲んだら傷が治るんですか?」
「簡単なものなので、あまり効果はありませんが。この作り方で塗り薬にしたもののほうが効果は高いですよ」

 飲んだらたちまち傷が治る、というような薬はこの世界にはないらしい。そこはファンタジーじゃないのね。

 出来上がったポーションは、私の物よりも理沙の物のほうが出来が良かった。私のほうが料理で慣れていると思ったのに。理沙は細かい作業が得意なのかもしれないわね。
しおりを挟む
感想 93

あなたにおすすめの小説

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

処理中です...