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4章 冒険者編
1. お忍び
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「理沙さん、次の浄化の旅の出発までは10日ほどありますので、その間に何かしたいことはありますか?」
「じゃあ薬草採取がしたいです!」
移動を少なくするために、クインスでのように頻繁に王都に戻らない予定なので、出発準備に時間がかかっているそうだ。その間にしたいことを聞かれて、理沙が冒険者の薬草採取を希望した。
ターシャちゃんが調整しますのでお待ちくださいと言った翌日の昼食後、まずはこれにお着換えくださいと渡されたのはクインスの下町で着ていたような普通の服だった。これから理沙の冒険者登録に出かける。相変わらずターシャちゃんは仕事が早い。
「リーザ、準備できた?」
「マーサお母さんできたよ」
今日はリーザとマーサの日だ。私のクインスで登録したギルドカードも持って行く。
準備ができたと寝室を出てみたら、リリーちゃんたち護衛だけでなく、ターシャちゃんもドレスではない服を着ていた。クインスの宿で会ったときと同じような服だ。
「ターシャちゃんも行くの?」
「はい。私も冒険者に登録します」
公爵家の若奥様がいいのかしらと思ったけど、廊下に出るとジェン君も待っていたので、おうち公認のようだ。
ジェン君もカエル退治でも護衛してくれた騎士たちも、みんな街中用の普通の服を着ているんだけどイケメン過ぎて、なんというか全く忍べてない。リリーちゃんたちもかっこいい女性冒険者って感じになっているし、周りがとにかくキラキラしい。この中では理沙と私がとびぬけて地味だ。
「ねえ、すごく目立ってる気がするんだけど、気のせい?」
「気のせいではありません。表向きは私のお忍びということになっています。貴族のお忍びはこのようにお忍びと分かる形で行くことが多いです」
お忍びなのに忍ばないってどういうことかと思ったけど、お忍びの場合は見て見ぬふりをするのがマナーらしい。庶民も近寄らないようにするし、お店の人も貴族と分かりつつ貴族扱いしないという不文律があるんだとか。
ただし、さすがに聖女が街中にいると分かってしまうとパニックが起きる可能性があるので、私たちはターシャちゃんの随行員のふりをするのだ。森の中に木を隠すのね。
「ターシャさんのこと、奥様って呼べばいいですか?」
「今まで通りターシャでお願います」
お忍びと聞いて理沙がノリノリだ。あ、理沙じゃなくてリーザだったわ。
お忍びというには派手な馬車に乗って、冒険者ギルドへと向かう。この時間が一番人が少ないらしい。
「いらっしゃいませ。本日はどういったご用件でしょうか」
「私と彼女の登録をお願いします」
「……畏まりました。こちらにご記入ください」
貴族が道楽で何かやっているという視線をものともせず、ターシャちゃんが理沙に申込用紙を渡した。理沙のほうが注目を浴びて居心地が悪そうだ。
ギルドの中はクインスと似通っている。機能性だけを追求したような飾りのない室内に、ちょっとガラの悪そうな冒険者たち。
掃除はあまりされていないのか埃っぽいのも、依頼が壁に乱雑に貼られているところも一緒だ。
理沙たちが登録している間に、私は依頼を見てみよう。
薬草採取に魔物の討伐、素材の買取依頼など、魔物や薬草の種類は違っても見覚えのあるものが多い。クインスで採取していた薬草も依頼に出ている。
そこで気づいた。クインスと比較しようにもお金の単位が違うし、この国の物価も一応は習ったけどよく分からない。
「ねえ、庶民のお昼ご飯を屋台で買ったらいくら?」
「少しいいもので100ピリアくらいでしょうか」
すぐ近くにいる護衛の人に聞くと、答えてくれたけどそもそも貴族っぽいイケメンだから、庶民はもうちょっと安く済ませていたりしそうよね。
「そういえば今日はシーダ君はいないの?」
「別の任務についています」
あの童顔の庶民騎士くんなら知っているかと思ったけど、残念ながらいなかった。
この騎士さんの言葉を信じるなら、クインスで半日で採取していたくらいの薬草では、お昼ご飯がやっと買えるくらいだ。冒険者って本当に大変な職業よね。
「マーちゃん?」
「あれ、みどり君、なんでここに?あ、彼は大丈夫よ。知り合いよ」
「それはこっちのセリフだっつーの。宿を始めたんじゃなかったのかよ。なんでトルゴードにいるんだよ。っていうか俺の名前はキールだ。いい加減覚えろよ」
誰かに呼びかけられたので見ると、クインスでの冒険者仲間のみどり君がいた。鎧が緑なのでみどり君だ。冒険者仲間がたくさんいて覚えられないのだから仕方がない。横文字の名前はハードルが高すぎる。
護衛の騎士さんが警戒しているので知り合いだと伝えたけど、みどり君が武器を持っているからか警戒を緩めない。さすがプロフェッショナル。
「ねえ、お昼ご飯にいくら払ってる?」
「相変わらず話が飛ぶよな。ここだと50ピリア、金がない時は20ピリアのパンだ」
「ありがとう。宿はミュラに任せてきたのよ」
「また薬草採取すんのか?あの護衛はどうした」
「レイ君はクインスよ」
そんな話をしていたら、登録を終えた理沙が近づいてきた。
「お母さん?」
「リーザ、こちらはみどり君。クインスでの冒険者仲間よ。リーザ、私の娘よ」
「まじかよ。こんなかわいい子がほんとにマーちゃんの娘なのか?それから俺の名前はキール」
「なによ。そっくりでしょう?」
「ぜんぜん。んじゃまあ、俺は行くわ。今度は魔物に殺されそうになるなよ」
理沙についてきた護衛を見て面倒ごとに巻き込まれるのを避けようと思ったのか、みどり君は早々に話を切り上げて離れていったけど、最後に爆弾を落としてくれた。
「お母さん、魔物に殺されそうになったってどういうこと?」
「なんでもないわ。それより登録は終わった?」
「何でもないことない。どういうことか説明して!」
あの一件は伏せていたのに、理沙に知られてしまった。ああもう。
「じゃあ薬草採取がしたいです!」
移動を少なくするために、クインスでのように頻繁に王都に戻らない予定なので、出発準備に時間がかかっているそうだ。その間にしたいことを聞かれて、理沙が冒険者の薬草採取を希望した。
ターシャちゃんが調整しますのでお待ちくださいと言った翌日の昼食後、まずはこれにお着換えくださいと渡されたのはクインスの下町で着ていたような普通の服だった。これから理沙の冒険者登録に出かける。相変わらずターシャちゃんは仕事が早い。
「リーザ、準備できた?」
「マーサお母さんできたよ」
今日はリーザとマーサの日だ。私のクインスで登録したギルドカードも持って行く。
準備ができたと寝室を出てみたら、リリーちゃんたち護衛だけでなく、ターシャちゃんもドレスではない服を着ていた。クインスの宿で会ったときと同じような服だ。
「ターシャちゃんも行くの?」
「はい。私も冒険者に登録します」
公爵家の若奥様がいいのかしらと思ったけど、廊下に出るとジェン君も待っていたので、おうち公認のようだ。
ジェン君もカエル退治でも護衛してくれた騎士たちも、みんな街中用の普通の服を着ているんだけどイケメン過ぎて、なんというか全く忍べてない。リリーちゃんたちもかっこいい女性冒険者って感じになっているし、周りがとにかくキラキラしい。この中では理沙と私がとびぬけて地味だ。
「ねえ、すごく目立ってる気がするんだけど、気のせい?」
「気のせいではありません。表向きは私のお忍びということになっています。貴族のお忍びはこのようにお忍びと分かる形で行くことが多いです」
お忍びなのに忍ばないってどういうことかと思ったけど、お忍びの場合は見て見ぬふりをするのがマナーらしい。庶民も近寄らないようにするし、お店の人も貴族と分かりつつ貴族扱いしないという不文律があるんだとか。
ただし、さすがに聖女が街中にいると分かってしまうとパニックが起きる可能性があるので、私たちはターシャちゃんの随行員のふりをするのだ。森の中に木を隠すのね。
「ターシャさんのこと、奥様って呼べばいいですか?」
「今まで通りターシャでお願います」
お忍びと聞いて理沙がノリノリだ。あ、理沙じゃなくてリーザだったわ。
お忍びというには派手な馬車に乗って、冒険者ギルドへと向かう。この時間が一番人が少ないらしい。
「いらっしゃいませ。本日はどういったご用件でしょうか」
「私と彼女の登録をお願いします」
「……畏まりました。こちらにご記入ください」
貴族が道楽で何かやっているという視線をものともせず、ターシャちゃんが理沙に申込用紙を渡した。理沙のほうが注目を浴びて居心地が悪そうだ。
ギルドの中はクインスと似通っている。機能性だけを追求したような飾りのない室内に、ちょっとガラの悪そうな冒険者たち。
掃除はあまりされていないのか埃っぽいのも、依頼が壁に乱雑に貼られているところも一緒だ。
理沙たちが登録している間に、私は依頼を見てみよう。
薬草採取に魔物の討伐、素材の買取依頼など、魔物や薬草の種類は違っても見覚えのあるものが多い。クインスで採取していた薬草も依頼に出ている。
そこで気づいた。クインスと比較しようにもお金の単位が違うし、この国の物価も一応は習ったけどよく分からない。
「ねえ、庶民のお昼ご飯を屋台で買ったらいくら?」
「少しいいもので100ピリアくらいでしょうか」
すぐ近くにいる護衛の人に聞くと、答えてくれたけどそもそも貴族っぽいイケメンだから、庶民はもうちょっと安く済ませていたりしそうよね。
「そういえば今日はシーダ君はいないの?」
「別の任務についています」
あの童顔の庶民騎士くんなら知っているかと思ったけど、残念ながらいなかった。
この騎士さんの言葉を信じるなら、クインスで半日で採取していたくらいの薬草では、お昼ご飯がやっと買えるくらいだ。冒険者って本当に大変な職業よね。
「マーちゃん?」
「あれ、みどり君、なんでここに?あ、彼は大丈夫よ。知り合いよ」
「それはこっちのセリフだっつーの。宿を始めたんじゃなかったのかよ。なんでトルゴードにいるんだよ。っていうか俺の名前はキールだ。いい加減覚えろよ」
誰かに呼びかけられたので見ると、クインスでの冒険者仲間のみどり君がいた。鎧が緑なのでみどり君だ。冒険者仲間がたくさんいて覚えられないのだから仕方がない。横文字の名前はハードルが高すぎる。
護衛の騎士さんが警戒しているので知り合いだと伝えたけど、みどり君が武器を持っているからか警戒を緩めない。さすがプロフェッショナル。
「ねえ、お昼ご飯にいくら払ってる?」
「相変わらず話が飛ぶよな。ここだと50ピリア、金がない時は20ピリアのパンだ」
「ありがとう。宿はミュラに任せてきたのよ」
「また薬草採取すんのか?あの護衛はどうした」
「レイ君はクインスよ」
そんな話をしていたら、登録を終えた理沙が近づいてきた。
「お母さん?」
「リーザ、こちらはみどり君。クインスでの冒険者仲間よ。リーザ、私の娘よ」
「まじかよ。こんなかわいい子がほんとにマーちゃんの娘なのか?それから俺の名前はキール」
「なによ。そっくりでしょう?」
「ぜんぜん。んじゃまあ、俺は行くわ。今度は魔物に殺されそうになるなよ」
理沙についてきた護衛を見て面倒ごとに巻き込まれるのを避けようと思ったのか、みどり君は早々に話を切り上げて離れていったけど、最後に爆弾を落としてくれた。
「お母さん、魔物に殺されそうになったってどういうこと?」
「なんでもないわ。それより登録は終わった?」
「何でもないことない。どういうことか説明して!」
あの一件は伏せていたのに、理沙に知られてしまった。ああもう。
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