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8章 ローズモス編
6. ダンスデビュー
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理沙を歓迎する夜会が開催された。
トルゴードでのお披露目パーティーよりも煌びやかなパーティーだ。
あの時は理沙への挨拶に来た周辺各国の王族がたくさんいたけれど、今回はローズモスの貴族が多い。
お披露目パーティーと違って、今回は理沙への挨拶はなしにしてくれたので、私たちはただ壇上で夜会を眺めるだけだ。
あの時は慣れない事に余裕もなくてあまりちゃんと見ることができなかったけど、今回は壇上から落ち着いて見ることができる。
私たちのそばにはトルゴードの王子様たちがいて、代わりに挨拶を受けたり、パーティーの説明をしてくれたりしている。
先ほどからは生演奏でのダンスが始まったところだ。
ダンスはこういうパーティーでは必ずあるので、国によって違いはないそうだ。まあいきなり盆踊りが始まったら、他の国から来た人たちは戸惑うわよね。
こうして壇上から見ていると、女性がくるくる回ると色とりどりのドレスが広がって綺麗だ。
「理沙、デイジーちゃんと踊ってきたら?」
「上手く踊れないよ」
「あら、ミュラに私のダンスがダメだったって言ったんだから、お手本を見せてよ」
旅の恥は搔き捨てって言うじゃない。
最初は渋っていた理沙も、王子様にも勧められて理沙がその気になった。この煌びやかな雰囲気に気分が高揚しているようだし、トルゴードで夜会に頻繁に出る予定もないので、こんな機会はこの先何度もないでしょう。
「マサコ様もご一緒に」
「足を踏むからやめておくわ」
「ダメ、お母さんも一緒よ」
墓穴を掘ってしまった。あの時私のお相手をしてくれた騎士さんが呼ばれているから、逃げられないらしい。
曲が終わったところで王子様が立ち上がってお妃様と共にフロアの中心へと歩いて行く。
その後ろをついて行くけど、気分は売られる子牛だ。
王様と王妃様、ローズモスとトルゴードの王子様たちやターシャちゃんとジェン君といった理沙の知る人たちが、理沙を囲むように場所どりをしてくれている。理沙に知らない人を近寄らせないための布陣ね。私も理沙の壁くらいにはなれるわ。
「きっと足を踏むけどごめんなさいね」
「どうぞお気になさらず堂々となさっていてください」
練習の時も言われたわね。たとえ足を踏んでも顔に出してはいけないと。
安全靴みたいに靴の甲に鉄板が入っていればこちらも安心できるんだけど、後で謝り倒すことにしよう。
始まったワルツに乗せて、ステップを踏む。
農耕民族は二拍子で生きてきたから三拍子が苦手って聞いたことがあるから、踊れなくて当然なのだと自分に言い聞かせて顔を上げているけど、なんだか周りがすごい。
気づいたら理沙と私たちの周りを、王子様たちがくるくる回っている。この渦巻きを突破して理沙に近づいてくるチャレンジャーはいないでしょうね。
渦巻きの中にいる私たちはきっと周りからあまり見えないと思ったら、気が楽になる。きっと次はないから楽しまなきゃね。
音楽に乗せて足を動かしているうちに曲が終わり、周りから大きな拍手が起きた。私への拍手ではないんだろうけど、でも嬉しいわ。お粗末様でした。
「もう一曲踊られますか?」
「いいえ。十分に楽しませてもらったわ。ありがとう」
お姫様になったようでとてもいい気分だけど、これ以上ヒールで踊ると、筋肉痛になりそうだからやめておくわ。
ローズモスは流行の発信地で、この国から周りの国へと流行りが広がっていく。日本のようにネットやテレビがなく、商人が広げていくため、その広がりはとてもゆっくりだ。
つまり、ローズモスで流行したものが数か月、国によって一年遅れで流行する。
ターシャちゃんのお姉さんのお姫様は、この国に来てそれを実感したそうだ。ドレスにも流行りがあって、ターシャちゃんたちの国のボターニとローズモスでは流行りが違う。
ボターニではローズモスの流行を少し遅れて取り込んで、ボターニ風にしたものが流行するらしい。
それは庶民のおしゃれにも影響する。ドレスは着ないけど、小物とかリボンとか、そんなちょっとしたものにもだ。
なんでそんな話をしているかというと、歓迎パーティーの翌日、ローズモスの王宮に庶民のお店が出張してきているからだ。
ターシャちゃんのお姉さんがトルゴードに来た時に、理沙とオシャレの話で盛り上がったので、理沙のためにこうして王宮でお店を開いてくれたのだ。
集めたお店が庶民向けばかりなのは、きっと理沙の好みを反映してくれたのだろう。ここで高級な宝石ばかりが並んでいたら、傷をつけるのが怖くて、きっと理沙は部屋に入れない。
「最近はこういう大きなリボンをつけるのが流行しています」
「へえ」
「リサ様の髪はまっすぐできれいですから、どんなリボンも似合いますね」
お姫様と理沙は、お揃いにしようとふたりでどれが合うかを髪に当ててみながら選んでいる。それまで他人事のように部屋の隅で見ていたターシャちゃんも巻き込まれている。
「お母さんもお揃いで買おうよ」
「そんな大きなリボンは似合わないわ」
「うーん、じゃあブレスレットとか?」
そう言って理沙は2人でお揃いでつけることができるものを探し始めた。お姫様もこれがいいんじゃないかとアドバイスしている。
その様子は年頃の子たちの買い物風景という感じで、微笑ましい。
ちょっと着ているドレスが豪華だけど。場所が王宮だけど。
品物を選びながら、昨日のパーティーのダンスの出来や、パーティーのドレスのどれが可愛かったというような話で盛り上がっている。
こうして理沙が普通の女の子になれる時間がこれからも必要だわ。お姫様はローズモスにいるから、トルゴードで早くお友達ができますように。
トルゴードでのお披露目パーティーよりも煌びやかなパーティーだ。
あの時は理沙への挨拶に来た周辺各国の王族がたくさんいたけれど、今回はローズモスの貴族が多い。
お披露目パーティーと違って、今回は理沙への挨拶はなしにしてくれたので、私たちはただ壇上で夜会を眺めるだけだ。
あの時は慣れない事に余裕もなくてあまりちゃんと見ることができなかったけど、今回は壇上から落ち着いて見ることができる。
私たちのそばにはトルゴードの王子様たちがいて、代わりに挨拶を受けたり、パーティーの説明をしてくれたりしている。
先ほどからは生演奏でのダンスが始まったところだ。
ダンスはこういうパーティーでは必ずあるので、国によって違いはないそうだ。まあいきなり盆踊りが始まったら、他の国から来た人たちは戸惑うわよね。
こうして壇上から見ていると、女性がくるくる回ると色とりどりのドレスが広がって綺麗だ。
「理沙、デイジーちゃんと踊ってきたら?」
「上手く踊れないよ」
「あら、ミュラに私のダンスがダメだったって言ったんだから、お手本を見せてよ」
旅の恥は搔き捨てって言うじゃない。
最初は渋っていた理沙も、王子様にも勧められて理沙がその気になった。この煌びやかな雰囲気に気分が高揚しているようだし、トルゴードで夜会に頻繁に出る予定もないので、こんな機会はこの先何度もないでしょう。
「マサコ様もご一緒に」
「足を踏むからやめておくわ」
「ダメ、お母さんも一緒よ」
墓穴を掘ってしまった。あの時私のお相手をしてくれた騎士さんが呼ばれているから、逃げられないらしい。
曲が終わったところで王子様が立ち上がってお妃様と共にフロアの中心へと歩いて行く。
その後ろをついて行くけど、気分は売られる子牛だ。
王様と王妃様、ローズモスとトルゴードの王子様たちやターシャちゃんとジェン君といった理沙の知る人たちが、理沙を囲むように場所どりをしてくれている。理沙に知らない人を近寄らせないための布陣ね。私も理沙の壁くらいにはなれるわ。
「きっと足を踏むけどごめんなさいね」
「どうぞお気になさらず堂々となさっていてください」
練習の時も言われたわね。たとえ足を踏んでも顔に出してはいけないと。
安全靴みたいに靴の甲に鉄板が入っていればこちらも安心できるんだけど、後で謝り倒すことにしよう。
始まったワルツに乗せて、ステップを踏む。
農耕民族は二拍子で生きてきたから三拍子が苦手って聞いたことがあるから、踊れなくて当然なのだと自分に言い聞かせて顔を上げているけど、なんだか周りがすごい。
気づいたら理沙と私たちの周りを、王子様たちがくるくる回っている。この渦巻きを突破して理沙に近づいてくるチャレンジャーはいないでしょうね。
渦巻きの中にいる私たちはきっと周りからあまり見えないと思ったら、気が楽になる。きっと次はないから楽しまなきゃね。
音楽に乗せて足を動かしているうちに曲が終わり、周りから大きな拍手が起きた。私への拍手ではないんだろうけど、でも嬉しいわ。お粗末様でした。
「もう一曲踊られますか?」
「いいえ。十分に楽しませてもらったわ。ありがとう」
お姫様になったようでとてもいい気分だけど、これ以上ヒールで踊ると、筋肉痛になりそうだからやめておくわ。
ローズモスは流行の発信地で、この国から周りの国へと流行りが広がっていく。日本のようにネットやテレビがなく、商人が広げていくため、その広がりはとてもゆっくりだ。
つまり、ローズモスで流行したものが数か月、国によって一年遅れで流行する。
ターシャちゃんのお姉さんのお姫様は、この国に来てそれを実感したそうだ。ドレスにも流行りがあって、ターシャちゃんたちの国のボターニとローズモスでは流行りが違う。
ボターニではローズモスの流行を少し遅れて取り込んで、ボターニ風にしたものが流行するらしい。
それは庶民のおしゃれにも影響する。ドレスは着ないけど、小物とかリボンとか、そんなちょっとしたものにもだ。
なんでそんな話をしているかというと、歓迎パーティーの翌日、ローズモスの王宮に庶民のお店が出張してきているからだ。
ターシャちゃんのお姉さんがトルゴードに来た時に、理沙とオシャレの話で盛り上がったので、理沙のためにこうして王宮でお店を開いてくれたのだ。
集めたお店が庶民向けばかりなのは、きっと理沙の好みを反映してくれたのだろう。ここで高級な宝石ばかりが並んでいたら、傷をつけるのが怖くて、きっと理沙は部屋に入れない。
「最近はこういう大きなリボンをつけるのが流行しています」
「へえ」
「リサ様の髪はまっすぐできれいですから、どんなリボンも似合いますね」
お姫様と理沙は、お揃いにしようとふたりでどれが合うかを髪に当ててみながら選んでいる。それまで他人事のように部屋の隅で見ていたターシャちゃんも巻き込まれている。
「お母さんもお揃いで買おうよ」
「そんな大きなリボンは似合わないわ」
「うーん、じゃあブレスレットとか?」
そう言って理沙は2人でお揃いでつけることができるものを探し始めた。お姫様もこれがいいんじゃないかとアドバイスしている。
その様子は年頃の子たちの買い物風景という感じで、微笑ましい。
ちょっと着ているドレスが豪華だけど。場所が王宮だけど。
品物を選びながら、昨日のパーティーのダンスの出来や、パーティーのドレスのどれが可愛かったというような話で盛り上がっている。
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