シンデレラの義姉は悪役のはずでしたよね?

梅乃なごみ

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キスはルールに含まれます(7)

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(――あっ。だめ……よね)
 
 拒否するための手はエルバートの服を掴むことでなんとか制止させた。ルールには『キスはエルバートがしたいときに』とある。これを破るわけにはいかない。
 
「ソフィーの唇、柔らかくて甘くて食べちゃいたくなる」
「んっ」

 恐ろしいことを言わないでほしい。反射的に唇を硬く結ぶと、開けてと促すように包むようなキスをされる。

 さらに奥歯を噛み締めてしまったけれど、わざとらしくちゅっちゅっと軽く吸い付く音が立てられ、一向に退く様子をみせないエルバートにソフィーはおずおずと観念して薄く口を開いた。

 きっとすぐ舌が入ってくるに違いないとソフィーは口元を強張らせる。すると、予想に反して唇を少し硬いものに撫でられ恐る恐る瞼を上げると彼の瞳とかち合った。触れているのは長い指の先で、それは感触を確かめるようにゆっくりと左右に動く。

「そんなに怖がらないで。本当にガツガツ食べたりしないから」
「んっ……んんっ?」

 宥めるような口調で囁くと唇を撫でていた彼の親指が、歯の狭間にぐっと押し込まれた。
 訳が分からず困惑するソフィーにエルバートはアメジストの瞳に甘い熱を込めて指先で小さな舌を擽り、微笑んだ。

「慣れるために少しキスの練習をしようか。この指を僕の舌だと思ってさ」
「ふぁ?……っぁ」

 指でキスの練習? と言われた言葉を理解する前に指先がまた舌を撫でた。爪で優しく引っ掻くようにされると、ぞわっと舌全体に電流が走る。

「まずは指の動きに合わせて舌を動かしてみて」
「ほ、ほんなの……っ」

 そんなのできない。だって、キスの時と違ってエルバートはじっとこちらを観察しているし、自分ひとりだけがだらしなく口を開けて指南されるなんてものすごく恥ずかしい。

「やだ? なら僕の舌で直接やる? もっと近くでずーっと見てられるし僕は大歓迎だけど」
「やひまふ」

 やる、やればいいんでしょ! と投げやりな気持ちでソフィーは指の動きに合わせて舌を絡めた。
 彼の指は容赦なく舌の上で蠢き、脇をくすぐって歯列をなぞる。

「んぅっ……ふっ、ぁ……ッ」
「上手だねソフィー、そう……横こちょこちょされるの好き?」
「んっんッ……は、ぁ……エ、ルバートさま……」

 必死について行くうちに、舌を覆っていた痺れが項に伝染して首から上の力が抜けてしまった。
 いつの間にかソフィーに覆いかぶさっていたエルバートは耳に唇を寄せて、ちゅっとキスをした。さらにはフゥっと息を吹きかけて、耳たぶに甘噛みされた。
 それだけで全神経がそこに集結してしまったのかと思うほどの刺激が走る。

「んっ! んんぅ……っ」
「だーめ。指に集中して」

 そんなの無理。と緩く首を振るソフィーの翡翠色の瞳にはたっぷりの涙が溜まっていて、その一粒がぽろりと頬を伝って落ちる。さすがのエルバートもそれに観念してソフィーの咥内を犯すのを静止した。

「じゃぁ、今度は実践してみようか」
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