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4章 2年目の中年レーサー
第47話 馬面のポニー
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いよいよ東尾師匠が参加するエリートクラスのレースが始まる時間だな。
師匠はスプリントが得意だから、今回はゴール前で観戦する事にした。
周回レースなので、ゴール地点はスタート地点でもある。
目の前で続々と参加選手達がスタート地点で整列を始めた。
師匠はロードバイクも含めて全身真っ赤で目立つので直ぐに居場所が分かる。
「今日こそ俺の活躍を目に焼き付けろよ!」
「迷惑だから静かにしてくださぁ~い!」
「頑張れよエキストラ!」
こちらに向かって手を振りながら叫んだ師匠に、西野と北見さんが返答する。
普通に聞いているだけだと仲が悪い様に聞こえるよな……特に北見さんは。
でも、私のチームで師匠と一番仲が良いのが北見さんだから不思議なものだ。
「お、応援しています!」
「頑張って下さい師匠!」
私と木野さんは普通に声援を送る。
木野さんは師匠と殆ど関わりがないから、少しぎこちない様子だけど。
師匠が返事代わりに手を振っている。
「さてと、ポニーでも応援するか。普通に東尾君を応援しても面白くないからな」
ポニー? 初めて聞くけど、レース参加者にポニーなんて居ないよな。
西野も木野さんも心当たりがないようだ。
西野は首をかしげているし、木野さんは何かを思い出そうとしているのか地面を眺めながら唸っている。
「ほらっ、いるだろ一番後ろ。馬面でポニーテールの男」
北見さんが指さした先には、確かに馬面でポニーテールの男がいる。
スポーツを志す学生であれば普通は長髪の男性はいないから、恐らく社会人なのだろう。
社会人も参加するホビーレースならではといったところか。
私なら空気抵抗が高くなるから髪を短くするけどな。
仕事に影響がなければ丸坊主にしたいくらいだ。
「あの選手がどうしたの? 知り合い?」
「知り合いじゃないさ。毎回エリートクラスで参加してラップアウトしてっからさ。今回こそは完走するように応援しようって思ったのさ」
「それは熱いな実力以上のクラスで戦う選手か……私と同じだな」
「初心者クラスで実力以上の猛士と一緒にしたら可哀そうでしょ」
「そう言われると僕もですかねぇ」
「き、木野さんが気にする事じゃないわよ」
「おいっ、レース始まってるぞ」
北見さんにレースが始まった事を教えられて会場を見渡すと、既に選手集団はバックストレートを走っているではないか。
ローリングスタートなのでレース本番を見逃さずにすんで良かった。
ひとまず観戦と応援に集中する事にした。
選手集団がホームストレートを走り、私達が観戦しているスタート地点を通過した所でレース本番だ。
昨年初めて見た時も驚いたが、激しい加速をする選手集団の迫力は凄いものだ。
一気に第1、第2コーナーを抜けてバックストレートに来た時点で、師匠は8番手くらいを維持している。
まだ2周目だけど調子が良さそうだな。
北見さんが気にかけていたポニーさんは何処だ?
バックストレートを続々と選手が通過していった後、最後尾付近で発見する。
2周目で最後尾だと完走は難しいのではないか?
バックストレートからヘアピンコーナーを抜けて、ホームストレートに戻ってきた時点で、先頭から100m程離されているではないか。
「頑張れ!」
「ファイト!」
「頑張れや!」
「頑張ってください!」
名前を知らないので頑張れとだけ声援を送る。
最後尾で完走目指して走る姿は私のレース展開と同じだな。
参加しているクラスは違うけど、私のレースもこんな感じに見えていたのだろう。
3周目、既に集団からは遅れて一緒に遅れた選手と二人で走っている。
必死にローテーションしながら集団を追いかけているが、このままいけば4周目でラップアウト確定だろう。
4周目、予想通りラップアウトとなり、係員の案内に沿ってコースから出てきた。
なんだか悔しいな。知り合いでもないけど、悔しいという思いが募る。
私が初めてレースに参加した時も同じようにラップアウトだったな。
あの時、応援に来てくれた西野もこんな気持ちだったのだろうか……
「なんか用っすか?」
知らず知らずのうちに男性を見つめていたようだ。
レースから脱落して座り込むポニーテールの男性から声をかけられた。
「失礼した。私も同じようにラップアウした事があったから気になっただけだよ」
「そいつは良いね。強大な相手に立ち向かうのは最高にロックだぜ!」
最高にロック?
意味は分からないが、表情から察すると気に入られたようだ。
「私の場合はビギナークラスだったけどね」
「そいつは失礼だぜ。ビギナークラスだって一般人じゃ想像出来ないくらい鍛えた選手が参加しているんだ。立派なソルジャーだろ?」
「そうだな。凄い選手ばかりだったよ」
「だろう? 分かってるじゃないかブラザー。俺は佐々木利男だ。よろしくな」
「私は中杉猛士です。こちらこそ、宜しく」
良く分からないが握手を交わす事になった。
「あれあれ、中杉君はポニー君と仲良くなってしまったのかね?」
「ポニー君?」
「申し訳ございません。お名前を知らず、長髪の人が珍しかったので、そんな感じの表現をしてしまいまして……」
堂々とポニー君と呼ぶ北見さんではなく、何故か木野さんが謝り始める。
だが、佐々木さんは気にしていない様だ。
「まぁ、珍しいだろうね。でも髪型はギタリストとしての俺のスタイルだから譲れないんだよね」
佐々木さんがポニーテールを解いた。
垂れ下がって顔にかかった髪をかき上げる姿は慣れたものだな。
しかし、ギタリストか……色々な選手がいるものだ。
師匠はスプリントが得意だから、今回はゴール前で観戦する事にした。
周回レースなので、ゴール地点はスタート地点でもある。
目の前で続々と参加選手達がスタート地点で整列を始めた。
師匠はロードバイクも含めて全身真っ赤で目立つので直ぐに居場所が分かる。
「今日こそ俺の活躍を目に焼き付けろよ!」
「迷惑だから静かにしてくださぁ~い!」
「頑張れよエキストラ!」
こちらに向かって手を振りながら叫んだ師匠に、西野と北見さんが返答する。
普通に聞いているだけだと仲が悪い様に聞こえるよな……特に北見さんは。
でも、私のチームで師匠と一番仲が良いのが北見さんだから不思議なものだ。
「お、応援しています!」
「頑張って下さい師匠!」
私と木野さんは普通に声援を送る。
木野さんは師匠と殆ど関わりがないから、少しぎこちない様子だけど。
師匠が返事代わりに手を振っている。
「さてと、ポニーでも応援するか。普通に東尾君を応援しても面白くないからな」
ポニー? 初めて聞くけど、レース参加者にポニーなんて居ないよな。
西野も木野さんも心当たりがないようだ。
西野は首をかしげているし、木野さんは何かを思い出そうとしているのか地面を眺めながら唸っている。
「ほらっ、いるだろ一番後ろ。馬面でポニーテールの男」
北見さんが指さした先には、確かに馬面でポニーテールの男がいる。
スポーツを志す学生であれば普通は長髪の男性はいないから、恐らく社会人なのだろう。
社会人も参加するホビーレースならではといったところか。
私なら空気抵抗が高くなるから髪を短くするけどな。
仕事に影響がなければ丸坊主にしたいくらいだ。
「あの選手がどうしたの? 知り合い?」
「知り合いじゃないさ。毎回エリートクラスで参加してラップアウトしてっからさ。今回こそは完走するように応援しようって思ったのさ」
「それは熱いな実力以上のクラスで戦う選手か……私と同じだな」
「初心者クラスで実力以上の猛士と一緒にしたら可哀そうでしょ」
「そう言われると僕もですかねぇ」
「き、木野さんが気にする事じゃないわよ」
「おいっ、レース始まってるぞ」
北見さんにレースが始まった事を教えられて会場を見渡すと、既に選手集団はバックストレートを走っているではないか。
ローリングスタートなのでレース本番を見逃さずにすんで良かった。
ひとまず観戦と応援に集中する事にした。
選手集団がホームストレートを走り、私達が観戦しているスタート地点を通過した所でレース本番だ。
昨年初めて見た時も驚いたが、激しい加速をする選手集団の迫力は凄いものだ。
一気に第1、第2コーナーを抜けてバックストレートに来た時点で、師匠は8番手くらいを維持している。
まだ2周目だけど調子が良さそうだな。
北見さんが気にかけていたポニーさんは何処だ?
バックストレートを続々と選手が通過していった後、最後尾付近で発見する。
2周目で最後尾だと完走は難しいのではないか?
バックストレートからヘアピンコーナーを抜けて、ホームストレートに戻ってきた時点で、先頭から100m程離されているではないか。
「頑張れ!」
「ファイト!」
「頑張れや!」
「頑張ってください!」
名前を知らないので頑張れとだけ声援を送る。
最後尾で完走目指して走る姿は私のレース展開と同じだな。
参加しているクラスは違うけど、私のレースもこんな感じに見えていたのだろう。
3周目、既に集団からは遅れて一緒に遅れた選手と二人で走っている。
必死にローテーションしながら集団を追いかけているが、このままいけば4周目でラップアウト確定だろう。
4周目、予想通りラップアウトとなり、係員の案内に沿ってコースから出てきた。
なんだか悔しいな。知り合いでもないけど、悔しいという思いが募る。
私が初めてレースに参加した時も同じようにラップアウトだったな。
あの時、応援に来てくれた西野もこんな気持ちだったのだろうか……
「なんか用っすか?」
知らず知らずのうちに男性を見つめていたようだ。
レースから脱落して座り込むポニーテールの男性から声をかけられた。
「失礼した。私も同じようにラップアウした事があったから気になっただけだよ」
「そいつは良いね。強大な相手に立ち向かうのは最高にロックだぜ!」
最高にロック?
意味は分からないが、表情から察すると気に入られたようだ。
「私の場合はビギナークラスだったけどね」
「そいつは失礼だぜ。ビギナークラスだって一般人じゃ想像出来ないくらい鍛えた選手が参加しているんだ。立派なソルジャーだろ?」
「そうだな。凄い選手ばかりだったよ」
「だろう? 分かってるじゃないかブラザー。俺は佐々木利男だ。よろしくな」
「私は中杉猛士です。こちらこそ、宜しく」
良く分からないが握手を交わす事になった。
「あれあれ、中杉君はポニー君と仲良くなってしまったのかね?」
「ポニー君?」
「申し訳ございません。お名前を知らず、長髪の人が珍しかったので、そんな感じの表現をしてしまいまして……」
堂々とポニー君と呼ぶ北見さんではなく、何故か木野さんが謝り始める。
だが、佐々木さんは気にしていない様だ。
「まぁ、珍しいだろうね。でも髪型はギタリストとしての俺のスタイルだから譲れないんだよね」
佐々木さんがポニーテールを解いた。
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しかし、ギタリストか……色々な選手がいるものだ。
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