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最終章 最強部長はロードレースでも最強を目指す
第77話 私が勝つよ
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「猛士さん、優勝おめでとうございます。最高のゴールスプリントの瞬間を写真に収めましたよ」
南原さんが撮影場所から戻ってきて、写真を見せてくれた。
私が先頭でゴールラインを通過する姿が写っている。
かなりカッコよく撮れている。
SNSのプロフィール写真にしたい出来栄えだ。
「ありがとう、南原さん。随分カッコよく撮れているな。撮影の腕を上げたみたいだね」
「いえいえ、カメラの性能のお陰ですよ」
「僕も写ってる」
木野さんもカメラを覗き込んで写真確認を始める。
相変わらず綺麗なコーナリングだな。
「木野さんも凄かったですから。恰好良いコーナリングを撮影出来て満足ですよ」
「後で送って下さい!」
「後で整理して、皆さんに送らせて頂きますよ。佐々木さんの写真もありますよ」
「俺の派手な散り際が写真に残ってしまうとはね。どれどれ……」
利男の写真は……恐ろしい形相だな。
最上位クラスで必死にくらいついていたから当然なのだが、これは怖すぎる。
「こえぇー、鬼の形相だな。他の写真はねぇのかい?」
北見さんが別の写真を催促する。
もう一つの写真は……ラップアウトした後に体育座りしている姿だな……
疲れ切って、うなだれながら体育座りしている姿は哀愁が漂う。
「何これ、可愛い」
「そうね、ポニー感が出ていて良いわね」
ひまりちゃんと綾乃は面白がっているがーー
「そ、それは……」
「普通ですよねぇ……」
「面白くはねぇかな……」
私と木野さんと北見さんは微妙な空気になる。
3人とも同じ経験をしているからだ。
こ、これは辛い……
「何で俺だけぇー!」
「なんだかすみません……」
叫ぶ利男に南原さんが謝る。
「必死に走る姿がカッコ良いですよね」
「良く分かってるじゃないか勇也! 将来凄いレーサーになれるぜ」
勇也くんのフォローで利男が復活した。
「俺にはカッコイイなんて一言も言わねえのによぉ」
「そういう態度がカッコ悪いんじゃないのぉ? もっと落ち着いた話し方に変えたら」
「何だよひまりちゃんまで、余計なお世話だいっ」
「そういうところっ!」
「えっと……」
南原さんが勇也くんを見て声をかけようとする。
そう言えば、直ぐに撮影に向かった南原さんには紹介していなかったな。
「北見勇也です。宜しくお願いします」
「あぁ、北見さんのお子さんだったのですね。自分は南原堅司です」
「南原さんは走らないんですか?」
「去年まではレースしてたけど、今はグルメライドと写真が趣味ですよ」
「そうですか。年末のレースには参加しないのかぁ」
「年末のレースがどうしたのですか?」
「年末のロードレースで猛士さんが対決するんです」
「対決? どういう事ですか?」
私の方を向き、説明を求める南原さんに事情を説明した。
勇也くんのライバルの陸君の事を。
陸君のお兄さんとレースで対決する事になった経緯を。
「自分が写真を撮影している間に、そんな事があったのですね」
「応援に来てくれると嬉しい。都合が合えばだけどね」
「応援ですか……考えておきます」
南原さんが、何故か悩んだ顔をしている。
都合が悪かったのだろうか?
他に予定があるなら、遠慮なく断ってくれても良いのだがな。
その後、私のビギナークラスの表彰式を終えて、それぞれ帰宅したのであった。
*
帰宅後、SNSの通知が来ている事に気付く。
陸君のお兄さんからだ。
『今日は弟の陸がお世話になりました。兄の田中海斗です』
彼の名前は海斗君か。
『中杉猛士です。折角だから一緒にレースを観戦しただけなので、お気になさらないで下さい』
『陸は勇也くんをライバル視していて、いつも失礼な事を言ってるのですよ。ご迷惑をおかけしていたのではないですか?』
『気にする事はないですよ』
『ところで、本当にレースで対決するのですか? レースで決着をつけるのは、正しい事ではないと思うのですが?』
『その通りだね。でも、正論を言っても聞いてはくれなかったのだろう?』
『はい』
『それならレースを通して伝えるしかない』
『分かりました。でも、わざと負ける気はありませんよ。中杉さんが勝てたら良いのですけど』
中杉さんが勝てたら良いかもしれないか……
私は仕事での師匠の教えを思い出した。
今、返すべき言葉は「勝てたら」でも「勝ちたい」でもない!
『私が勝つよ』
『大した自信ですね』
『私が新人の頃に習った事ですよ。出来ますと言えとね。出来たらいいなんて甘えた事は言うな。出来たらラッキーみたいな腑抜けた意志だから、お前は仕事が出来ないんだ。出来る様になるまで、あらゆる手段を試せってね。レースなら必ず勝ちますって言わされるだろうな』
『勝ちます、ですか。勉強になりました』
『仕事の師匠の受け売りなのだけどね』
『いえ、中杉さんのレースに対しての心構えを教えて頂けて良かったです。年末の対決を楽しみにしています』
『こちらこそ楽しみにしているよ』
返信を終えて時間を確認すると24時を過ぎていた。
楽しかったから気付かなかったな。
海斗君は良い選手ではないか。
素晴らしい選手との対決……益々年末のレースが楽しみとなった。
南原さんが撮影場所から戻ってきて、写真を見せてくれた。
私が先頭でゴールラインを通過する姿が写っている。
かなりカッコよく撮れている。
SNSのプロフィール写真にしたい出来栄えだ。
「ありがとう、南原さん。随分カッコよく撮れているな。撮影の腕を上げたみたいだね」
「いえいえ、カメラの性能のお陰ですよ」
「僕も写ってる」
木野さんもカメラを覗き込んで写真確認を始める。
相変わらず綺麗なコーナリングだな。
「木野さんも凄かったですから。恰好良いコーナリングを撮影出来て満足ですよ」
「後で送って下さい!」
「後で整理して、皆さんに送らせて頂きますよ。佐々木さんの写真もありますよ」
「俺の派手な散り際が写真に残ってしまうとはね。どれどれ……」
利男の写真は……恐ろしい形相だな。
最上位クラスで必死にくらいついていたから当然なのだが、これは怖すぎる。
「こえぇー、鬼の形相だな。他の写真はねぇのかい?」
北見さんが別の写真を催促する。
もう一つの写真は……ラップアウトした後に体育座りしている姿だな……
疲れ切って、うなだれながら体育座りしている姿は哀愁が漂う。
「何これ、可愛い」
「そうね、ポニー感が出ていて良いわね」
ひまりちゃんと綾乃は面白がっているがーー
「そ、それは……」
「普通ですよねぇ……」
「面白くはねぇかな……」
私と木野さんと北見さんは微妙な空気になる。
3人とも同じ経験をしているからだ。
こ、これは辛い……
「何で俺だけぇー!」
「なんだかすみません……」
叫ぶ利男に南原さんが謝る。
「必死に走る姿がカッコ良いですよね」
「良く分かってるじゃないか勇也! 将来凄いレーサーになれるぜ」
勇也くんのフォローで利男が復活した。
「俺にはカッコイイなんて一言も言わねえのによぉ」
「そういう態度がカッコ悪いんじゃないのぉ? もっと落ち着いた話し方に変えたら」
「何だよひまりちゃんまで、余計なお世話だいっ」
「そういうところっ!」
「えっと……」
南原さんが勇也くんを見て声をかけようとする。
そう言えば、直ぐに撮影に向かった南原さんには紹介していなかったな。
「北見勇也です。宜しくお願いします」
「あぁ、北見さんのお子さんだったのですね。自分は南原堅司です」
「南原さんは走らないんですか?」
「去年まではレースしてたけど、今はグルメライドと写真が趣味ですよ」
「そうですか。年末のレースには参加しないのかぁ」
「年末のレースがどうしたのですか?」
「年末のロードレースで猛士さんが対決するんです」
「対決? どういう事ですか?」
私の方を向き、説明を求める南原さんに事情を説明した。
勇也くんのライバルの陸君の事を。
陸君のお兄さんとレースで対決する事になった経緯を。
「自分が写真を撮影している間に、そんな事があったのですね」
「応援に来てくれると嬉しい。都合が合えばだけどね」
「応援ですか……考えておきます」
南原さんが、何故か悩んだ顔をしている。
都合が悪かったのだろうか?
他に予定があるなら、遠慮なく断ってくれても良いのだがな。
その後、私のビギナークラスの表彰式を終えて、それぞれ帰宅したのであった。
*
帰宅後、SNSの通知が来ている事に気付く。
陸君のお兄さんからだ。
『今日は弟の陸がお世話になりました。兄の田中海斗です』
彼の名前は海斗君か。
『中杉猛士です。折角だから一緒にレースを観戦しただけなので、お気になさらないで下さい』
『陸は勇也くんをライバル視していて、いつも失礼な事を言ってるのですよ。ご迷惑をおかけしていたのではないですか?』
『気にする事はないですよ』
『ところで、本当にレースで対決するのですか? レースで決着をつけるのは、正しい事ではないと思うのですが?』
『その通りだね。でも、正論を言っても聞いてはくれなかったのだろう?』
『はい』
『それならレースを通して伝えるしかない』
『分かりました。でも、わざと負ける気はありませんよ。中杉さんが勝てたら良いのですけど』
中杉さんが勝てたら良いかもしれないか……
私は仕事での師匠の教えを思い出した。
今、返すべき言葉は「勝てたら」でも「勝ちたい」でもない!
『私が勝つよ』
『大した自信ですね』
『私が新人の頃に習った事ですよ。出来ますと言えとね。出来たらいいなんて甘えた事は言うな。出来たらラッキーみたいな腑抜けた意志だから、お前は仕事が出来ないんだ。出来る様になるまで、あらゆる手段を試せってね。レースなら必ず勝ちますって言わされるだろうな』
『勝ちます、ですか。勉強になりました』
『仕事の師匠の受け売りなのだけどね』
『いえ、中杉さんのレースに対しての心構えを教えて頂けて良かったです。年末の対決を楽しみにしています』
『こちらこそ楽しみにしているよ』
返信を終えて時間を確認すると24時を過ぎていた。
楽しかったから気付かなかったな。
海斗君は良い選手ではないか。
素晴らしい選手との対決……益々年末のレースが楽しみとなった。
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