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一章 パンドラ
第五話 神託魔法
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西域で最も古い国であるローラント王国。その西端、コロア川の東岸に災害の女神の社がある。
西域では見慣れない様式の建物の普段はあまり使われていない正殿で、東域の島国では一般的な神官服である白衣と緋袴に身を包んだ二人の少女が、正座で向き合っていた。
「それで?」
アリスのサラサラの金髪が、白衣を押し上げる胸にかかる。
問われたユニは、金髪が撫でる胸を凝視していて聞いていなかった。
「ユニちゃん?」
「ああ、うん。その、ね……」
相談があると言ったものの、どう切り出したものか。
「……うん。パンドラが黙ったままなの」
「えっと……いつもの?」
「んにゃ。いつもより長いね」
「いつから?」
「この神官服ができた日だから……十日?」
いつもの喧嘩だったら、三日ほどでどちらかが謝るのだが、今回はどちらも謝らなかったので、いつの間にか十日が過ぎた。
「お風呂でユニちゃんがキレちゃった日、だよね?」
首肯で返す。
「なんで十日も謝らなかったの?」
「静かで快適だから」
ユニが「なにを当然のことを」みたいな顔で返す。
顔の上半分が前髪に覆われていても、幼馴染みは正確に表情を読み取ってくれる。
「それだけ?」
「読書が捗った」
清々しい表情でサムズアップするユニに、アリスがため息をつく。
ユニは平民生まれなので、故郷では日曜学校以外で本に触れたことなどなかったし、あまり興味もなかった。ところが、中央教会で過ごしていた時期に教会の蔵書を読んで読書の楽しさを知ってしまった。以来、国からの少ない支援金の大半を、本の購入資金に充てている。
そんなユニにとって、この十日間は非常に充実した日々だった。いつも騒がしくして読書の邪魔をする女神が静かだった。たったそれだけで、生まれて初めて”充実した時間”というものを味わった。
(いつかパンドラが言ってた”リア充”ってヤツだな)
ただ、静かではあるけど、十日も黙ったままだと気味が悪い。それでアリスに相談したのだが、冷静に考えてみたらそれほど困ってもいなかった。けど、このままでは気持ち悪い。いつの間にか生活の一部になってしまったパンドラの下ネタを、十日も聞いていない。なぜか調子が出ないような気がする。
「ユニちゃん。女神様に謝りなさい」
「え? やだよ」
「あの悪口は酷いよ?」
「パンドラが謝ったら謝ってもいい」
「そんな子供みたいな」
この二人は知らなかったが、パンドラもユニと同じで、ユニが謝ったら許そうと思っていた。
「謝るのは癪。けど、聞きたいことがある」
「聞きたいこと?」
「うん。神託魔法。アリスはなにか知ってる?」
十日前に聞こうとしていたことを仲直りの理由にしよう。
「んー。中央教会で習った程度なら教えられるけど……多分、ユニちゃんも知ってると思うよ」
「一応、聞かせて」
アリスが一つ咳払いして、教科書の暗唱みたいに話し始める。
中央教会における神託魔法とは、神託の巫が使える魔法だ。
魔法と言っても、なんでもできるわけではない。その巫の担当神が司る現象しかできない。
パンドラで言えば災害。豊穣の神フレイアであれば、農業に関わるあれこれ。戦の神ミネルヴァであれば、戦に関すること。
残念ながらその内容は、ユニも知っている程度の話だった。だったのだが、頑張って話してくれるアリスが可愛かったので黙って聞いていた。
「やっぱり、ユニちゃんも教わってた?」
正確には、中央教会での授業をサボって教会の書架に籠っていた時に読んだ本に載っていたのだが、首肯で返す。
「これ以上だと……私は知らないな。やっぱり神様に直接聞く方が確実だよ」
「謝りたくない」
アリスがふかーいため息で返事する。
一つだけ状況を打開する方法はある。あるのだが、使いたくない。それはユニが一方的に損をする方法ではない。むしろ、ユニにとってもありがたい。しかし、それをするとユニ自身、自制できるか自信がない。パンドラと一緒に暴走してしまうかもしれない。
けど、まあいいかな。自分にも利益があるし、パンドラも喜んでくれる。後でアリスに怒られるかもしれないけど、アリスなら最後に許してくれるだろう。
「……まあ、パンドラが許してくれる魔法の言葉なら知ってるけど……」
「どんな?」
アリスがゴクリと喉を鳴らす。
「アリスとお風呂入る」
『許す』
「許してくれるって」
「ん?」
話の中心であるアリスだけが、状況から置き去りにされる。
「ほんじゃあ、神託魔法を教えて」
「ちょっ! ちょっと待って! え? お風呂? なんで?」
「で、話聞いてたと思うけど、神託魔法ってなんなの?」
「いやいやいや。ユニちゃん聞いて! お風呂ってどゆこと? またオッパイ揉むの?」
(揉みますとも)
『神託魔法かー。そろそろ教えないといけないよねー』
なおもアリスの抗議は続くが、パンドラが始めた講義が掻き消してくれた。
『まあ、正確に言うと、中央教会の司祭以上が使う職業適性検査も神託魔法の一種なのよねー。例外だけど』
三年前の成人式を思い出して遠い目になる。
『神託魔法ってのはね、信仰心を対価に起こす奇跡なの。起こせる奇跡はさっきの話の通りだけどー、信仰心を集められない巫は奇跡を起こせないの』
「ちなみに、今私が起こせる災害って?」
『んー。精々、小さな竜巻程度かなー。疫病はどれも結構な信仰心が必要だしー、地震はかなり必要。あ、蝗害なら、小規模でもそれなりの被害が出るかなー?』
「蝗害って、イナゴ? 虫の神様の管轄じゃないの?」
『うん。被ってるよ。本来はキキリとか虫の神の管轄だけどー……なーんて言えばわかりやすいかなー?』
「間借りする感じ?」
『お? おー。それそれ。そんな感じー』
パンドラの説明によると、ほぼ全ての災害は誰かしらの管轄下にある。その現象を災害として顕現させるために、管轄下から借り受ける感じなんだそうだ。
疫病であれば病の神。竜巻であれば風神。地震であれば大地の神。それぞれの神から現象を借りて、災害という形で人間界へ顕現させる。
普通の神は自身の司る現象のみを神託魔法として使えるのだが、災害の神は司るのがほぼ他神の管轄下なので、こういった形の神託魔法になる。それ故、対価となる信仰心も他の巫に比べて多くなる。
「いまいちわかんない」
『ま、貸し借りの件は私達だけの問題だからー、ユニが気にする必要はないわよー』
(そんなもんか?)
『ああ、でも、場合によっては貸してもらえないこともあるわねー。貸してもらう相手の神の損になる場合はー、貸してくれないわねー』
例を挙げると、病の神の神託の巫がいる地域に疫病を流行らせようとすると、断られたりする。
「ふーん。……で、信仰心ってなに?」
『厳密に言うと”信頼”なんだけどねー』
「神への?」
『んーん。巫と神への』
「ん? 私も?」
『そ。巫女が集めた信頼、心の力って言った方がわかりやすいかな? を、対価にして、んー……許可証? かなー? ユグドラシステムに地上への介入を許可してもらうんだけどー……あー、人間にわかるように説明するの難しいなー』
そこまで完璧に理解したいわけではない。どうすればどういった現象を起こせるとか、その程度の説明でも良かったのだが、この女神はなんでも答えてくれる。そのせいで、知りたくもない天界の仕組みを教えられている。
「あー。そういった天界の秘密的な話は興味ないな。もっとこう、実利的? な話をして」
『えー? 別に機密情報じゃないから、秘密じゃないんだけどー』
(いやいや。秘密にしとけよ。そもそも、”ユグドラシステム”なんて、中央教会のどの本にも載ってなかったぞ)
他の神も巫に天界の話をするが、パンドラほど詳しく説明する神も珍しい。
『んー。ユニが陪神になった時にー、予備知識があった方がすぐに働けるでしょー?』
「神になってまで働きたくないってば」
『ま、しょうがないかー。知りたくなったらいつでも言ってねー』
「神になるつもりもないし、神になっても働かない」
『んじゃあ、神託魔法の使い方ー。まあ、ぶっちゃけ、私に言うだけなんだけどね』
「ん? パンドラに”この災害を起こしてください”って?」
『うん。前に神降ろしの実験をしたでしょ? あんな感じー。具体的な災害と場所も言ってほしいかなー。ユニが行ったことのある土地なら、どこでも大丈夫だよー』
(思ったより簡単に使えるんだ)
もっと小難しい呪文みたいなのが、必要になるのかと思っていた。
『あと、言い忘れたかもだけどー、対価として信仰心じゃなく、巫の命を使う場合もあるよー。これは重要だからよーく聞いてねー』
真面目に聞いてほしいなら喋り方をなんとかしてほしいけど、それは黙っておく。
『信仰心を対価に要請する場合はー、私も断る場合がある。必要のない虐殺であったりー、その結果地形が大幅に変わったりとか。ま、そんな願いは、信仰心が足りなくてできないと思うけどねー。でも、それを可能にするのが巫の自己犠牲なの。巫が自分の命を対価にすると宣言した場合ー、神はその願いを受理しなければいけないのー。ユニがー、自分の命を対価にアリスちゃんの操を守ってって要請したらー、私は断れないのー』
「いやいや、アリスの貞操は私が自力で守るよ」
首を傾げるアリス。思わず抱きしめたくなる。てか、抱きしめた。
『例えば、だよー。私としては使わないでほしいねー。巫が自己犠牲をする時は、追い込まれた時って相場が決まってるからねー。休眠期間に大きく影響しちゃうよー』
「使わないわよ」
『そうしてねー。神託魔法に関してはこんな感じかしらねー。ここまででなにか聞きたいことあるー?』
「うんにゃ」
『それじゃあ、試しになんか使ってみるー? 今ユニを信頼してるのはー、アリスちゃんとハンクだけだから、大したことはできないけどねー』
「試しで死人が出たら嫌だから、やめとく」
『無難だねー。もっとこうさー、冒険しようよー』
「ハンクじゃあるまいし」
そのハンクは現在、上から三番目のBランク冒険者になっている。農夫の才能しかないのに冒険しすぎ。
「試しに使うにしても、今の私に使えそうな災害って、他にないの?」
『んー。信仰心が足りないからなー。故郷がなくなったのが痛いわねー。ユニを信頼してくれる人って、本当にいないのよー』
薄々気づいていたけど、パンドラには言われたくない。
『そうねー。さっきも言ったけど、小さな竜巻と蝗害くらいかなー……あー、魔素溜まりがあったー』
「それって魔獣が生まれる原因の?」
『そそ。体内に魔素を大量に取り込んだ獣は魔獣になるのー。まあ、魔獣って神魔大戦時代の生物兵器なんだけどねー』
「お前らの不始末かよ」
現代において、魔獣に食い殺されるのが旅人の死因、不動の一位だ。
『いやいや。獣に魔素を取り込ませたら魔獣を作れるって発見したのは人間だしー、魔獣を飼いならして生物兵器にしようって言い出したのも人間だよー』
「業が深いな、人間!」
かつては兵器として使役していた魔獣が、今や野生化して旅人を襲うようになった。
『因果応報だねー』
人の悪意で生まれた魔獣が、巡り巡って人類の敵になったとパンドラは言いたいのだろう。
「んで、私が使える魔素溜まりって、どんくらいの規模?」
『あー。精々、狼一匹を魔狼に変える程度、かなー。虫なら、それなりの魔虫の群れができるけどー、哺乳類を魔獣化するには、結構な量の魔素が必要だからー……うん。そんな感じかなー』
(あんまし使い道がないな)
「ん? 哺乳類を? 人間も魔獣化するの?」
『するよー。てか、元々は人の身で魔族、ああ、正確に言っとくと、魔族ってのは私達と意見を違えた神ねー。人の身で魔族に勝つために開発されたのがー、魔素なの。魔素を大量に取り込んだ人間が魔人って呼ばれたんだけどー、大半の魔人は自我を失って暴れ回るだけの迷惑な存在になっちゃったのー。そんでー、魔素を人間に使う計画は頓挫したんだけどー、その代わりに研究されたのが魔獣化。今の魔獣とは性能が違うからわからないと思うけどー、戦場では結構活躍したんだよー。ドラゴンとか』
「ドラゴンって魔獣なの?」
『うん。遺伝子操作したキメラを魔獣化させたのがドラゴン。最初に十体作ったら魔族側も作っちゃって一時期は戦場が凄いことになってたわねー。神だって殺せるんだからー。てか、ダンナを殺したのがドラゴンなんだけどねー』
「ああ。戦死したって言ってたわね」
『思えばカオスな時代だったなー。人化魔法でドラゴンを人間の姿にして孕ませる男神とかいてー、めちゃくちゃだったけど結構面白い時代ではあったなー。両陣営のドラゴンがステゴロでやりあったりー、ブレスを吐き合ったりー、そこに理性をなくした魔人が乱入したりー、カオスだったなー。根暗のアンラは大喜びしてたけどー』
「そのドラゴンと神の子供ってどうなったの?」
『ん? ああ、竜人って呼ばれてたわねー。戦後は国を興して、人間の嫁さんを貰ったはずよー。その子供は普通だったわねー』
「この辺の国?」
「うん。北西の島国。えっとー……なんてったっけ? 今、帝国が攻めあぐねてるとこ」
西の隣国、ハルケニア帝国が、西域の統一に乗り出して早い段階で会戦したのだが、狭い海峡で隔たれた島国への侵攻は未だに成功していない。帝国が誇る戦の巫女の騎士団を投入すれば、すぐに片が付くという意見が多い。しかし、巫女は各戦線に引っ張りだこなので、海峡によって膠着した戦線は後回しにされている。そんなわけで、国力で劣るはずの島国が制圧されず、海峡を挟んでの睨み合いを二十年ほど続けている。
「ああ。赤い竜の伝承があるとこね。赤い竜に力を授かった王が興した国だっけ?」
『ん? ちょっと違うー。その赤い竜が竜人ー』
少し興味があって読んだ歴史書に書かれていた内容の真実を、女神との雑談で聞かされた。
『話がだいぶ逸れちゃったけどさー、ユニがいろんな災害を起こすには、いろんな人から信頼されないとだねー』
「信頼はどうでもいいわ。私は、アリスに信頼されていればそれだけでいい」
「ユニちゃん!」
腕の中の天使に抱きつかれた。
ユニの言葉に感動したのだろう。チョロすぎる子だ。
ユニの薄っぺらい胸に、アリスの素敵な胸が当たる。
『いいなー。このタイミングで神降ろししてほしー』
「ダメ。私が堪能する」
主に胸の感触を。
(アリスを堪能しておきたいけど、もう一つ聞きたいことがあるんだよね)
しかし、アリスを離したくはない。ないので、抱きしめたまま質問する。
「パンドラ。神託魔法で災害を起こせるのはわかった。けど、ちょっとわからないことがあるの」
『なになにー? お姉さんなんでも答えちゃうよー』
何千年単位で生きている神の「お姉さん」に軽くイラッとする。が、話が逸れるので怒りを飲み込む。
「神は巫女の要請がないと、人間界へ力を行使できないのよね?」
『厳密に言うと少し違うけどー、その認識でも問題ないよー』
「なら、パンドラになにも要請していないのに、なんで災害が起きるの? パンドラ以外の災害の神がいるの?」
『私以外にもいるよー。けど、そいつらはー、今は休眠中ー』
「なら、なん」
『ガイアの自浄作用』
ユニの追求は、パンドラにしては珍しい真面目なトーンで遮られた。
『この星を司る神、ガイアは、人間の存在を認めていないの』
創世神話では「天界から追放された人間を、ガイアが自らの体を大地として住処を与えてくれた」となっているが、パンドラが言うには、他の神々の説得によって渋々自らの体に住ませているということらしい。
『少なくとも、地震や火山の噴火はガイアが人間を減らすためにやっているの。私じゃ、どうしようもないわ』
「減らすって、なんでそんなことを?」
『あなた達だってそうでしょ? 体に付いた虫を払ったりするでしょ? ガイアにとってはそれと同じ。鬱陶しいから払っただけよ』
あまりの言い様に言葉を失ってしまう。そして、そんなことを言うパンドラが理解できない生き物のように思える。普段の言葉から忘れがちだが、この女神も神の一柱だったのだ。
アリスを抱きしめる腕に力が籠る。
『ふふっ。怖い?』
「……ええ。とても」
『そうね。そうでしょうね。でもね、神様も人間が怖いのよ』
意外な言葉だ。
『さっきも言ったけど、人間を好きなようにやらせたら、神すら殺せる兵器を作れるのよ? 自分達が崇める存在を殺す兵器を、嬉々とした表情で作っていたわ。全ての人間がそうってわけじゃないのは知ってるけど、あれを間近で見た神々は、人間という存在に恐怖したわ。いつか、自分達を根絶やしにするかもしれない可能性を秘めた存在。そんな存在を目の当たりにしたらユニならどうする?』
「殺す」と即答しかけて、留めて飲み込む。
「……排除する」
言葉を柔らかくしたつもりだったが、腕の中のアリスがビクッとしたから失敗したようだ。
『でも、神々はそうしなかった。自分達を殺せるのなら、自分達をさらに進化させる存在になるかもしれない。そう思うようになったの。そう思うようになった神々が、今の世界を、人間をゆっくり導くためのユグドラシステムを作ったのよ』
「神様は進化したいの?」
『少し違う。知らない世界を見たいの。その方法が進化なら、喜んで進化するわ。ガイアは違うって言うけど、私はね、進化の可能性を持っていない私達を知らない世界に連れ出してくれるのは、貴女達人間だと思ってるわ』
以前、パンドラが「神は退屈が一番嫌い」と言っていたのを思い出す。
『だからね。私達に新しい世界を見せて』
真摯な言葉に姿勢を正す。
『とりま、アリスちゃんとお風呂に入ろー』
急にいつものパンドラに戻って、ホッとしたようなガッカリしたような。
『私の知らない世界にれっつらごー!』
「うるせー」
やっぱりホッとしている。
西域では見慣れない様式の建物の普段はあまり使われていない正殿で、東域の島国では一般的な神官服である白衣と緋袴に身を包んだ二人の少女が、正座で向き合っていた。
「それで?」
アリスのサラサラの金髪が、白衣を押し上げる胸にかかる。
問われたユニは、金髪が撫でる胸を凝視していて聞いていなかった。
「ユニちゃん?」
「ああ、うん。その、ね……」
相談があると言ったものの、どう切り出したものか。
「……うん。パンドラが黙ったままなの」
「えっと……いつもの?」
「んにゃ。いつもより長いね」
「いつから?」
「この神官服ができた日だから……十日?」
いつもの喧嘩だったら、三日ほどでどちらかが謝るのだが、今回はどちらも謝らなかったので、いつの間にか十日が過ぎた。
「お風呂でユニちゃんがキレちゃった日、だよね?」
首肯で返す。
「なんで十日も謝らなかったの?」
「静かで快適だから」
ユニが「なにを当然のことを」みたいな顔で返す。
顔の上半分が前髪に覆われていても、幼馴染みは正確に表情を読み取ってくれる。
「それだけ?」
「読書が捗った」
清々しい表情でサムズアップするユニに、アリスがため息をつく。
ユニは平民生まれなので、故郷では日曜学校以外で本に触れたことなどなかったし、あまり興味もなかった。ところが、中央教会で過ごしていた時期に教会の蔵書を読んで読書の楽しさを知ってしまった。以来、国からの少ない支援金の大半を、本の購入資金に充てている。
そんなユニにとって、この十日間は非常に充実した日々だった。いつも騒がしくして読書の邪魔をする女神が静かだった。たったそれだけで、生まれて初めて”充実した時間”というものを味わった。
(いつかパンドラが言ってた”リア充”ってヤツだな)
ただ、静かではあるけど、十日も黙ったままだと気味が悪い。それでアリスに相談したのだが、冷静に考えてみたらそれほど困ってもいなかった。けど、このままでは気持ち悪い。いつの間にか生活の一部になってしまったパンドラの下ネタを、十日も聞いていない。なぜか調子が出ないような気がする。
「ユニちゃん。女神様に謝りなさい」
「え? やだよ」
「あの悪口は酷いよ?」
「パンドラが謝ったら謝ってもいい」
「そんな子供みたいな」
この二人は知らなかったが、パンドラもユニと同じで、ユニが謝ったら許そうと思っていた。
「謝るのは癪。けど、聞きたいことがある」
「聞きたいこと?」
「うん。神託魔法。アリスはなにか知ってる?」
十日前に聞こうとしていたことを仲直りの理由にしよう。
「んー。中央教会で習った程度なら教えられるけど……多分、ユニちゃんも知ってると思うよ」
「一応、聞かせて」
アリスが一つ咳払いして、教科書の暗唱みたいに話し始める。
中央教会における神託魔法とは、神託の巫が使える魔法だ。
魔法と言っても、なんでもできるわけではない。その巫の担当神が司る現象しかできない。
パンドラで言えば災害。豊穣の神フレイアであれば、農業に関わるあれこれ。戦の神ミネルヴァであれば、戦に関すること。
残念ながらその内容は、ユニも知っている程度の話だった。だったのだが、頑張って話してくれるアリスが可愛かったので黙って聞いていた。
「やっぱり、ユニちゃんも教わってた?」
正確には、中央教会での授業をサボって教会の書架に籠っていた時に読んだ本に載っていたのだが、首肯で返す。
「これ以上だと……私は知らないな。やっぱり神様に直接聞く方が確実だよ」
「謝りたくない」
アリスがふかーいため息で返事する。
一つだけ状況を打開する方法はある。あるのだが、使いたくない。それはユニが一方的に損をする方法ではない。むしろ、ユニにとってもありがたい。しかし、それをするとユニ自身、自制できるか自信がない。パンドラと一緒に暴走してしまうかもしれない。
けど、まあいいかな。自分にも利益があるし、パンドラも喜んでくれる。後でアリスに怒られるかもしれないけど、アリスなら最後に許してくれるだろう。
「……まあ、パンドラが許してくれる魔法の言葉なら知ってるけど……」
「どんな?」
アリスがゴクリと喉を鳴らす。
「アリスとお風呂入る」
『許す』
「許してくれるって」
「ん?」
話の中心であるアリスだけが、状況から置き去りにされる。
「ほんじゃあ、神託魔法を教えて」
「ちょっ! ちょっと待って! え? お風呂? なんで?」
「で、話聞いてたと思うけど、神託魔法ってなんなの?」
「いやいやいや。ユニちゃん聞いて! お風呂ってどゆこと? またオッパイ揉むの?」
(揉みますとも)
『神託魔法かー。そろそろ教えないといけないよねー』
なおもアリスの抗議は続くが、パンドラが始めた講義が掻き消してくれた。
『まあ、正確に言うと、中央教会の司祭以上が使う職業適性検査も神託魔法の一種なのよねー。例外だけど』
三年前の成人式を思い出して遠い目になる。
『神託魔法ってのはね、信仰心を対価に起こす奇跡なの。起こせる奇跡はさっきの話の通りだけどー、信仰心を集められない巫は奇跡を起こせないの』
「ちなみに、今私が起こせる災害って?」
『んー。精々、小さな竜巻程度かなー。疫病はどれも結構な信仰心が必要だしー、地震はかなり必要。あ、蝗害なら、小規模でもそれなりの被害が出るかなー?』
「蝗害って、イナゴ? 虫の神様の管轄じゃないの?」
『うん。被ってるよ。本来はキキリとか虫の神の管轄だけどー……なーんて言えばわかりやすいかなー?』
「間借りする感じ?」
『お? おー。それそれ。そんな感じー』
パンドラの説明によると、ほぼ全ての災害は誰かしらの管轄下にある。その現象を災害として顕現させるために、管轄下から借り受ける感じなんだそうだ。
疫病であれば病の神。竜巻であれば風神。地震であれば大地の神。それぞれの神から現象を借りて、災害という形で人間界へ顕現させる。
普通の神は自身の司る現象のみを神託魔法として使えるのだが、災害の神は司るのがほぼ他神の管轄下なので、こういった形の神託魔法になる。それ故、対価となる信仰心も他の巫に比べて多くなる。
「いまいちわかんない」
『ま、貸し借りの件は私達だけの問題だからー、ユニが気にする必要はないわよー』
(そんなもんか?)
『ああ、でも、場合によっては貸してもらえないこともあるわねー。貸してもらう相手の神の損になる場合はー、貸してくれないわねー』
例を挙げると、病の神の神託の巫がいる地域に疫病を流行らせようとすると、断られたりする。
「ふーん。……で、信仰心ってなに?」
『厳密に言うと”信頼”なんだけどねー』
「神への?」
『んーん。巫と神への』
「ん? 私も?」
『そ。巫女が集めた信頼、心の力って言った方がわかりやすいかな? を、対価にして、んー……許可証? かなー? ユグドラシステムに地上への介入を許可してもらうんだけどー……あー、人間にわかるように説明するの難しいなー』
そこまで完璧に理解したいわけではない。どうすればどういった現象を起こせるとか、その程度の説明でも良かったのだが、この女神はなんでも答えてくれる。そのせいで、知りたくもない天界の仕組みを教えられている。
「あー。そういった天界の秘密的な話は興味ないな。もっとこう、実利的? な話をして」
『えー? 別に機密情報じゃないから、秘密じゃないんだけどー』
(いやいや。秘密にしとけよ。そもそも、”ユグドラシステム”なんて、中央教会のどの本にも載ってなかったぞ)
他の神も巫に天界の話をするが、パンドラほど詳しく説明する神も珍しい。
『んー。ユニが陪神になった時にー、予備知識があった方がすぐに働けるでしょー?』
「神になってまで働きたくないってば」
『ま、しょうがないかー。知りたくなったらいつでも言ってねー』
「神になるつもりもないし、神になっても働かない」
『んじゃあ、神託魔法の使い方ー。まあ、ぶっちゃけ、私に言うだけなんだけどね』
「ん? パンドラに”この災害を起こしてください”って?」
『うん。前に神降ろしの実験をしたでしょ? あんな感じー。具体的な災害と場所も言ってほしいかなー。ユニが行ったことのある土地なら、どこでも大丈夫だよー』
(思ったより簡単に使えるんだ)
もっと小難しい呪文みたいなのが、必要になるのかと思っていた。
『あと、言い忘れたかもだけどー、対価として信仰心じゃなく、巫の命を使う場合もあるよー。これは重要だからよーく聞いてねー』
真面目に聞いてほしいなら喋り方をなんとかしてほしいけど、それは黙っておく。
『信仰心を対価に要請する場合はー、私も断る場合がある。必要のない虐殺であったりー、その結果地形が大幅に変わったりとか。ま、そんな願いは、信仰心が足りなくてできないと思うけどねー。でも、それを可能にするのが巫の自己犠牲なの。巫が自分の命を対価にすると宣言した場合ー、神はその願いを受理しなければいけないのー。ユニがー、自分の命を対価にアリスちゃんの操を守ってって要請したらー、私は断れないのー』
「いやいや、アリスの貞操は私が自力で守るよ」
首を傾げるアリス。思わず抱きしめたくなる。てか、抱きしめた。
『例えば、だよー。私としては使わないでほしいねー。巫が自己犠牲をする時は、追い込まれた時って相場が決まってるからねー。休眠期間に大きく影響しちゃうよー』
「使わないわよ」
『そうしてねー。神託魔法に関してはこんな感じかしらねー。ここまででなにか聞きたいことあるー?』
「うんにゃ」
『それじゃあ、試しになんか使ってみるー? 今ユニを信頼してるのはー、アリスちゃんとハンクだけだから、大したことはできないけどねー』
「試しで死人が出たら嫌だから、やめとく」
『無難だねー。もっとこうさー、冒険しようよー』
「ハンクじゃあるまいし」
そのハンクは現在、上から三番目のBランク冒険者になっている。農夫の才能しかないのに冒険しすぎ。
「試しに使うにしても、今の私に使えそうな災害って、他にないの?」
『んー。信仰心が足りないからなー。故郷がなくなったのが痛いわねー。ユニを信頼してくれる人って、本当にいないのよー』
薄々気づいていたけど、パンドラには言われたくない。
『そうねー。さっきも言ったけど、小さな竜巻と蝗害くらいかなー……あー、魔素溜まりがあったー』
「それって魔獣が生まれる原因の?」
『そそ。体内に魔素を大量に取り込んだ獣は魔獣になるのー。まあ、魔獣って神魔大戦時代の生物兵器なんだけどねー』
「お前らの不始末かよ」
現代において、魔獣に食い殺されるのが旅人の死因、不動の一位だ。
『いやいや。獣に魔素を取り込ませたら魔獣を作れるって発見したのは人間だしー、魔獣を飼いならして生物兵器にしようって言い出したのも人間だよー』
「業が深いな、人間!」
かつては兵器として使役していた魔獣が、今や野生化して旅人を襲うようになった。
『因果応報だねー』
人の悪意で生まれた魔獣が、巡り巡って人類の敵になったとパンドラは言いたいのだろう。
「んで、私が使える魔素溜まりって、どんくらいの規模?」
『あー。精々、狼一匹を魔狼に変える程度、かなー。虫なら、それなりの魔虫の群れができるけどー、哺乳類を魔獣化するには、結構な量の魔素が必要だからー……うん。そんな感じかなー』
(あんまし使い道がないな)
「ん? 哺乳類を? 人間も魔獣化するの?」
『するよー。てか、元々は人の身で魔族、ああ、正確に言っとくと、魔族ってのは私達と意見を違えた神ねー。人の身で魔族に勝つために開発されたのがー、魔素なの。魔素を大量に取り込んだ人間が魔人って呼ばれたんだけどー、大半の魔人は自我を失って暴れ回るだけの迷惑な存在になっちゃったのー。そんでー、魔素を人間に使う計画は頓挫したんだけどー、その代わりに研究されたのが魔獣化。今の魔獣とは性能が違うからわからないと思うけどー、戦場では結構活躍したんだよー。ドラゴンとか』
「ドラゴンって魔獣なの?」
『うん。遺伝子操作したキメラを魔獣化させたのがドラゴン。最初に十体作ったら魔族側も作っちゃって一時期は戦場が凄いことになってたわねー。神だって殺せるんだからー。てか、ダンナを殺したのがドラゴンなんだけどねー』
「ああ。戦死したって言ってたわね」
『思えばカオスな時代だったなー。人化魔法でドラゴンを人間の姿にして孕ませる男神とかいてー、めちゃくちゃだったけど結構面白い時代ではあったなー。両陣営のドラゴンがステゴロでやりあったりー、ブレスを吐き合ったりー、そこに理性をなくした魔人が乱入したりー、カオスだったなー。根暗のアンラは大喜びしてたけどー』
「そのドラゴンと神の子供ってどうなったの?」
『ん? ああ、竜人って呼ばれてたわねー。戦後は国を興して、人間の嫁さんを貰ったはずよー。その子供は普通だったわねー』
「この辺の国?」
「うん。北西の島国。えっとー……なんてったっけ? 今、帝国が攻めあぐねてるとこ」
西の隣国、ハルケニア帝国が、西域の統一に乗り出して早い段階で会戦したのだが、狭い海峡で隔たれた島国への侵攻は未だに成功していない。帝国が誇る戦の巫女の騎士団を投入すれば、すぐに片が付くという意見が多い。しかし、巫女は各戦線に引っ張りだこなので、海峡によって膠着した戦線は後回しにされている。そんなわけで、国力で劣るはずの島国が制圧されず、海峡を挟んでの睨み合いを二十年ほど続けている。
「ああ。赤い竜の伝承があるとこね。赤い竜に力を授かった王が興した国だっけ?」
『ん? ちょっと違うー。その赤い竜が竜人ー』
少し興味があって読んだ歴史書に書かれていた内容の真実を、女神との雑談で聞かされた。
『話がだいぶ逸れちゃったけどさー、ユニがいろんな災害を起こすには、いろんな人から信頼されないとだねー』
「信頼はどうでもいいわ。私は、アリスに信頼されていればそれだけでいい」
「ユニちゃん!」
腕の中の天使に抱きつかれた。
ユニの言葉に感動したのだろう。チョロすぎる子だ。
ユニの薄っぺらい胸に、アリスの素敵な胸が当たる。
『いいなー。このタイミングで神降ろししてほしー』
「ダメ。私が堪能する」
主に胸の感触を。
(アリスを堪能しておきたいけど、もう一つ聞きたいことがあるんだよね)
しかし、アリスを離したくはない。ないので、抱きしめたまま質問する。
「パンドラ。神託魔法で災害を起こせるのはわかった。けど、ちょっとわからないことがあるの」
『なになにー? お姉さんなんでも答えちゃうよー』
何千年単位で生きている神の「お姉さん」に軽くイラッとする。が、話が逸れるので怒りを飲み込む。
「神は巫女の要請がないと、人間界へ力を行使できないのよね?」
『厳密に言うと少し違うけどー、その認識でも問題ないよー』
「なら、パンドラになにも要請していないのに、なんで災害が起きるの? パンドラ以外の災害の神がいるの?」
『私以外にもいるよー。けど、そいつらはー、今は休眠中ー』
「なら、なん」
『ガイアの自浄作用』
ユニの追求は、パンドラにしては珍しい真面目なトーンで遮られた。
『この星を司る神、ガイアは、人間の存在を認めていないの』
創世神話では「天界から追放された人間を、ガイアが自らの体を大地として住処を与えてくれた」となっているが、パンドラが言うには、他の神々の説得によって渋々自らの体に住ませているということらしい。
『少なくとも、地震や火山の噴火はガイアが人間を減らすためにやっているの。私じゃ、どうしようもないわ』
「減らすって、なんでそんなことを?」
『あなた達だってそうでしょ? 体に付いた虫を払ったりするでしょ? ガイアにとってはそれと同じ。鬱陶しいから払っただけよ』
あまりの言い様に言葉を失ってしまう。そして、そんなことを言うパンドラが理解できない生き物のように思える。普段の言葉から忘れがちだが、この女神も神の一柱だったのだ。
アリスを抱きしめる腕に力が籠る。
『ふふっ。怖い?』
「……ええ。とても」
『そうね。そうでしょうね。でもね、神様も人間が怖いのよ』
意外な言葉だ。
『さっきも言ったけど、人間を好きなようにやらせたら、神すら殺せる兵器を作れるのよ? 自分達が崇める存在を殺す兵器を、嬉々とした表情で作っていたわ。全ての人間がそうってわけじゃないのは知ってるけど、あれを間近で見た神々は、人間という存在に恐怖したわ。いつか、自分達を根絶やしにするかもしれない可能性を秘めた存在。そんな存在を目の当たりにしたらユニならどうする?』
「殺す」と即答しかけて、留めて飲み込む。
「……排除する」
言葉を柔らかくしたつもりだったが、腕の中のアリスがビクッとしたから失敗したようだ。
『でも、神々はそうしなかった。自分達を殺せるのなら、自分達をさらに進化させる存在になるかもしれない。そう思うようになったの。そう思うようになった神々が、今の世界を、人間をゆっくり導くためのユグドラシステムを作ったのよ』
「神様は進化したいの?」
『少し違う。知らない世界を見たいの。その方法が進化なら、喜んで進化するわ。ガイアは違うって言うけど、私はね、進化の可能性を持っていない私達を知らない世界に連れ出してくれるのは、貴女達人間だと思ってるわ』
以前、パンドラが「神は退屈が一番嫌い」と言っていたのを思い出す。
『だからね。私達に新しい世界を見せて』
真摯な言葉に姿勢を正す。
『とりま、アリスちゃんとお風呂に入ろー』
急にいつものパンドラに戻って、ホッとしたようなガッカリしたような。
『私の知らない世界にれっつらごー!』
「うるせー」
やっぱりホッとしている。
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