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第八章 伝説の彼方に
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「正直なところ、そのときのパターンにもよると思うけど、エルシアたちの結界なら、軽く破壊できるんじゃねえか?」
「それって力が暴走したときの状況によって暴走する力にも幅があるってことなのかな?」
考え考えリオネスがそう言って一樹は黙って頷いた。
「力が暴走したとき、それは主に破壊とか、負の方向に向かるという意味なのかな?」
アストルの尤もな問いに一樹はちょっと悩んでかぶりを振った。
「力の制御が出来ないから、そういう事態になるだけで、亜樹が持つ力そのものに善も悪もねえよ。怖いのは亜樹が自分の力に翻弄されてコントロールできないってことだ。制御不能な力が、どういう方向へ働くかは、小さいころから力のコントロールを叩き込まれてきたエルシアたちが一番よく知ってるんじゃねえのか?」
一樹の指摘も尤もで、この場を重苦しい空気が支配した。
「これはなんとしても彼にカのコントロールを覚えてもらう必要がありそうだね」
エルシアが堅い決意の声でそう言って、リーンはまた嫌そうな顔になった。
そのために亜樹をエルダ山に連れていくのだろうとわかっていたから。
まあ今の話明を聞いてしまったら、自分個人のわがままで亜樹を引き止めたいとは言えないのだが。
「それを前提として訊ねるけど、亜樹の力は目覚めていない状態でも、引き出すことは可能なのかな? つまりコントロールを覚えさせることが」
当たり前と言えばあまりにも当たり前の事実に気づいたのは、聡明なリオネスだった。
そもそも封印された状態である以上、力を引き出せない可能性の方が強いのだ。
コントロールを覚えさせようと言っても、力を引き出せなかったら無意味だ。
問われて両腕を組み、一樹は暫く困惑した顔をしていた。
「できるともできないとも言えねえな」
「そう」
「亜樹にそういう力があるのは事実だ。今亜樹がこっちにいることを思うと、一度は力を発動させたんだと思う」
「つまり亜樹がこちらに迷い込んだのは偶然ではなく、亜樹の力が招いた結果だと?」
亜樹と出逢った当初、彼から偶然だと説明を受けていたリーンは、素直に驚いていた。
当人は自分のせいだなんていう自覚は欠片ほどもなかったみたいなのに。
「偶然で界の扉が開くかよ。亜樹と杏樹が川に落ちた場所っていうのが、かなり高いところで、おまけに川の流れも急激だった。落ちたら多分助からねえな。自分を襲った危機に反応して、亜樹の力が自然と発動したんだと思う。それ以外の理由で亜樹が界を越えることはまずねえよ」
身を守るために生まれ持った力が、ひとりでに発動する。
それはエルシアたちには簡単に理解できることだった。
自分の身を守ろうとしたときに、力は自然と発動する傾向がある。
特殊な力というのは、元々当人を守るためにあるのだから当然だ。
しかしこの説明の意味するところは。
「つまり彼の力を引き出す可能性は無ではなく、コントロールを覚えさせることも不可能ではないということだ」
しっかりした口調で言い切られて、一樹は憮然としたまま頷いた。
このままの流れだと、またエルシアたちと暮らすことになりそうだと気付いて。
「コントロールを覚えさせた後に力が、暴走するようなことになっても、さっきみたいな事態は起きるのかい?」
今度訊ねてきたのはアストルだった。
その顔はエルダ神族を統べる者のそれになっている。
リオネスも常の幼さを消して、統治者としての顔を見せていた。
「それって力が暴走したときの状況によって暴走する力にも幅があるってことなのかな?」
考え考えリオネスがそう言って一樹は黙って頷いた。
「力が暴走したとき、それは主に破壊とか、負の方向に向かるという意味なのかな?」
アストルの尤もな問いに一樹はちょっと悩んでかぶりを振った。
「力の制御が出来ないから、そういう事態になるだけで、亜樹が持つ力そのものに善も悪もねえよ。怖いのは亜樹が自分の力に翻弄されてコントロールできないってことだ。制御不能な力が、どういう方向へ働くかは、小さいころから力のコントロールを叩き込まれてきたエルシアたちが一番よく知ってるんじゃねえのか?」
一樹の指摘も尤もで、この場を重苦しい空気が支配した。
「これはなんとしても彼にカのコントロールを覚えてもらう必要がありそうだね」
エルシアが堅い決意の声でそう言って、リーンはまた嫌そうな顔になった。
そのために亜樹をエルダ山に連れていくのだろうとわかっていたから。
まあ今の話明を聞いてしまったら、自分個人のわがままで亜樹を引き止めたいとは言えないのだが。
「それを前提として訊ねるけど、亜樹の力は目覚めていない状態でも、引き出すことは可能なのかな? つまりコントロールを覚えさせることが」
当たり前と言えばあまりにも当たり前の事実に気づいたのは、聡明なリオネスだった。
そもそも封印された状態である以上、力を引き出せない可能性の方が強いのだ。
コントロールを覚えさせようと言っても、力を引き出せなかったら無意味だ。
問われて両腕を組み、一樹は暫く困惑した顔をしていた。
「できるともできないとも言えねえな」
「そう」
「亜樹にそういう力があるのは事実だ。今亜樹がこっちにいることを思うと、一度は力を発動させたんだと思う」
「つまり亜樹がこちらに迷い込んだのは偶然ではなく、亜樹の力が招いた結果だと?」
亜樹と出逢った当初、彼から偶然だと説明を受けていたリーンは、素直に驚いていた。
当人は自分のせいだなんていう自覚は欠片ほどもなかったみたいなのに。
「偶然で界の扉が開くかよ。亜樹と杏樹が川に落ちた場所っていうのが、かなり高いところで、おまけに川の流れも急激だった。落ちたら多分助からねえな。自分を襲った危機に反応して、亜樹の力が自然と発動したんだと思う。それ以外の理由で亜樹が界を越えることはまずねえよ」
身を守るために生まれ持った力が、ひとりでに発動する。
それはエルシアたちには簡単に理解できることだった。
自分の身を守ろうとしたときに、力は自然と発動する傾向がある。
特殊な力というのは、元々当人を守るためにあるのだから当然だ。
しかしこの説明の意味するところは。
「つまり彼の力を引き出す可能性は無ではなく、コントロールを覚えさせることも不可能ではないということだ」
しっかりした口調で言い切られて、一樹は憮然としたまま頷いた。
このままの流れだと、またエルシアたちと暮らすことになりそうだと気付いて。
「コントロールを覚えさせた後に力が、暴走するようなことになっても、さっきみたいな事態は起きるのかい?」
今度訊ねてきたのはアストルだった。
その顔はエルダ神族を統べる者のそれになっている。
リオネスも常の幼さを消して、統治者としての顔を見せていた。
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