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第8章:マッサ鉱山と謎のダークエルフ編
第18話:鉄巨兵との闘い
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対峙するアイアンゴーレムに、どう勝てばいいのか考える。
幸い、相手もこちらの出方を窺っているのか、無暗に襲ってこない。
「……ゴーレムは水が弱点だと思ったんだがな」
「土には水が浸み込むが、鉄には浸み込まんからな。アイアンゴーレムの弱点は水ではないのだろう」
俺の呟きに、キアラが応える。
そうか……ん? 待てよ……? となると『鉄』の弱点って、まさか……?
俺は魔力を左手に溜める。
——そして!
「『エルファイアー』!!」
火属性の中級魔法をぶっ放した。
ボウウウウン!!
「ゴオオオオ!!」
炎が直撃したゴーレムがよろける。
間違いない!! アイアンゴーレムの弱点は火だ!!
「ご主人様! どうやら、効いてるみたいだな!!」
「ああ!! これで勝てる!! 絶対に勝ってみせる!!」
「なら、私とロウナで敵を引き付ける! レオはどんどん炎魔法を放ってくれ!!」
作戦が決まった。
キアラとロウナがアイアンゴーレムの隙を作るために前に出る。
先ほどのダメージを与えるための攻撃ではなく、あくまで敵の注意を引き付けるための攻撃を繰り返す。
「エルファイアー!! エルファイアー!! エルファイアー!!」
俺は、その隙に火球を鉄巨兵めがけてガンガンぶちこんでいく。
「ゴゴオオオ!! ゴゴオオオ!! ゴゴオオオ!!」
地鳴りのするような呻き声を挙げながら体勢を崩すアイアンゴーレム。
いける!! これなら勝てる!!
そう思った直後、アイアンゴーレムはとんでもない行動に出る。
拳を前に突き出したかと思うと、急にその拳から煙が出る。
……そして!!
そのまま、ロケットの如く、拳が発射される!!
「な、なんだ!? 拳そのものが飛んだ!?」
「まずい!! ご主人様!?」
前方で注意を引いていたキアラとロウナが叫ぶ。
拳は距離をとって魔法攻撃を続けていた俺めがけて飛んでくる。
「く……くそっ!!」
避けようと思うが、咄嗟のことで身体が反応しきれていない。
直撃を避けながら、受け止めるので精いっぱいだった。
ドゴオオオオン!!
車に撥ねられたのかと思うほどの衝撃が身体全体に走る。
「ぐあああああああああああっ!!」
俺は、リズたちが居る後方まで吹き飛んだ。
くそ……!! 油断した……!!
あれほど過信や慢心は死に繋がると肝に銘じていたのに。
弱点を見つけて気が高揚していた。
メンバーの疲労もあって戦闘を長引かせられないと気が急いてしまった。
いや、クエスト期限のこともあって、強引にボスに挑んだのがそもそも誤りだったか。
身体の骨が折れたのだろう……動けない。
「レオ様!! 今、回復を!! 『モアヒール』!!」
すぐにセーラが駆け寄って回復魔法をかけてくれる。
すぐそばで、シレイドが心配そうに立ち尽くしていた。
「くそおおおおっ!! 止まれデカブツううう!!」
「そっちに行くなぁあああ!! 私たちと戦え!!」
ロウナとキアラが声を張り上げる。
目をやると、アイアンゴーレムがこちらに向かってノシノシと歩いてくる。
なるほど。火属性魔法が使える俺にトドメを刺しに来たようだ。
セーラの回復魔法のおかげで、傷は癒えたが、身体中の痛みと衝撃の痺れが引かない。
くそ……まだ、動けない。
動けるようになるにはもう少しかかるか……。
……万事休す……だな。
そう思っている間にも、アイアンゴーレムは構わず向かってきて遂に俺の真ん前に立つ。
キアラとロウナが尚も横から攻撃を放つも、意に介さない鉄巨兵。
アイアンゴーレムが大きく腕を振り上げる。
シレイドとセーラが俺をかばうように覆いかぶさる。
「二人とも……俺はいい!! ……逃げろ!!」
「イヤ!! シレイドは……ご主人様の奴隷!! ……彼女!!」
「私もです!! ヒーラーとして、彼女として、怪我をしている彼氏を見捨てることはできません!!」
俺の命令を、シレイドとセーラは泣きそうになりながら固辞する。
くそ……動け、動け!! 俺の身体!!
絶望的な状況に成す術がない。
――その時!!
俺たちを守るように前方にリズが立っていた。
「り、リズ!? な、なにしてる!! 下がれ!!」
俺の言葉に首を横に振るリズ。
「あ、あたしだって! 冒険者……ううん、レオの彼女なんだから!!」
そう言って、彼女は銃を構える。
僅かに指が震えている。
強大な敵を前にして、恐怖を感じているのだろう。
だが、攻撃の構えを解かない。
「効くかどうかは分かんない! でも、あたしだって戦える!! 火が弱点なら、これでどう!? あたしの奥の手!! サラマンダーの鱗で作った『小火竜弾』の『ヘビーショット』!!」
リズの銃から放たれた一発の弾丸。
それは振り上げられた鉄巨兵の腕に当たり……!!
ドガアアアアアアアン!!
大爆発を引き起こした!!
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
腕が焼け爛れ、もげ落ち、凄まじい叫び声をあげるアイアンゴーレム。
な、なんて威力だ……!!
「出し惜しみはしない!! 『ヘビーショット』!! 『ヘビーショット』!! 『ヘビーショット』!!」
ドガアアアアアアン!! ドガアアアアアアン!! ドガアアアアアアン!!
リズが放った『小火竜弾』の雨。
鉄巨兵の足が吹っ飛び、肩がもぎ取れ、胸部にどデカい穴が開く。
「す、すごい……」
「や、ヤバいな……」
キアラとロウナがその光景をポカンと見ている。
「はあ……はあ……はあ……」
武技の乱発で気力が尽きたのか、リズが肩で息をしている。
「た、倒せたのでしょうか……!?」
セーラが言ったその瞬間——!!
「ゴ……ゴオオオオオオオオオオオオオオ!!」
最後の力を振り絞って、アイアンゴーレムが残っていた左腕をリズ目がけて振り上げる。
「くっ……!!」
覚悟を決めたように、目を閉じるリズ。
……だが。
「よくやったな。リズ」
「へ? れ、レオ?」
俺は彼女の頭を撫でて、前に立つ。
正直、身体中がバキバキに軋むが、リズが時間を稼いでくれたおかげで、動ける程度にはなった。
「くらえ……!! 俺の全魔力を込めた……『エルファイアー』!!」
俺が放った最大出力の火球が、アイアンゴーレムの頭に直撃する。
そして……。
頭部分にある眼の光が消え、大きな地鳴りとともにアイアンゴーレムは倒れたのだった。
幸い、相手もこちらの出方を窺っているのか、無暗に襲ってこない。
「……ゴーレムは水が弱点だと思ったんだがな」
「土には水が浸み込むが、鉄には浸み込まんからな。アイアンゴーレムの弱点は水ではないのだろう」
俺の呟きに、キアラが応える。
そうか……ん? 待てよ……? となると『鉄』の弱点って、まさか……?
俺は魔力を左手に溜める。
——そして!
「『エルファイアー』!!」
火属性の中級魔法をぶっ放した。
ボウウウウン!!
「ゴオオオオ!!」
炎が直撃したゴーレムがよろける。
間違いない!! アイアンゴーレムの弱点は火だ!!
「ご主人様! どうやら、効いてるみたいだな!!」
「ああ!! これで勝てる!! 絶対に勝ってみせる!!」
「なら、私とロウナで敵を引き付ける! レオはどんどん炎魔法を放ってくれ!!」
作戦が決まった。
キアラとロウナがアイアンゴーレムの隙を作るために前に出る。
先ほどのダメージを与えるための攻撃ではなく、あくまで敵の注意を引き付けるための攻撃を繰り返す。
「エルファイアー!! エルファイアー!! エルファイアー!!」
俺は、その隙に火球を鉄巨兵めがけてガンガンぶちこんでいく。
「ゴゴオオオ!! ゴゴオオオ!! ゴゴオオオ!!」
地鳴りのするような呻き声を挙げながら体勢を崩すアイアンゴーレム。
いける!! これなら勝てる!!
そう思った直後、アイアンゴーレムはとんでもない行動に出る。
拳を前に突き出したかと思うと、急にその拳から煙が出る。
……そして!!
そのまま、ロケットの如く、拳が発射される!!
「な、なんだ!? 拳そのものが飛んだ!?」
「まずい!! ご主人様!?」
前方で注意を引いていたキアラとロウナが叫ぶ。
拳は距離をとって魔法攻撃を続けていた俺めがけて飛んでくる。
「く……くそっ!!」
避けようと思うが、咄嗟のことで身体が反応しきれていない。
直撃を避けながら、受け止めるので精いっぱいだった。
ドゴオオオオン!!
車に撥ねられたのかと思うほどの衝撃が身体全体に走る。
「ぐあああああああああああっ!!」
俺は、リズたちが居る後方まで吹き飛んだ。
くそ……!! 油断した……!!
あれほど過信や慢心は死に繋がると肝に銘じていたのに。
弱点を見つけて気が高揚していた。
メンバーの疲労もあって戦闘を長引かせられないと気が急いてしまった。
いや、クエスト期限のこともあって、強引にボスに挑んだのがそもそも誤りだったか。
身体の骨が折れたのだろう……動けない。
「レオ様!! 今、回復を!! 『モアヒール』!!」
すぐにセーラが駆け寄って回復魔法をかけてくれる。
すぐそばで、シレイドが心配そうに立ち尽くしていた。
「くそおおおおっ!! 止まれデカブツううう!!」
「そっちに行くなぁあああ!! 私たちと戦え!!」
ロウナとキアラが声を張り上げる。
目をやると、アイアンゴーレムがこちらに向かってノシノシと歩いてくる。
なるほど。火属性魔法が使える俺にトドメを刺しに来たようだ。
セーラの回復魔法のおかげで、傷は癒えたが、身体中の痛みと衝撃の痺れが引かない。
くそ……まだ、動けない。
動けるようになるにはもう少しかかるか……。
……万事休す……だな。
そう思っている間にも、アイアンゴーレムは構わず向かってきて遂に俺の真ん前に立つ。
キアラとロウナが尚も横から攻撃を放つも、意に介さない鉄巨兵。
アイアンゴーレムが大きく腕を振り上げる。
シレイドとセーラが俺をかばうように覆いかぶさる。
「二人とも……俺はいい!! ……逃げろ!!」
「イヤ!! シレイドは……ご主人様の奴隷!! ……彼女!!」
「私もです!! ヒーラーとして、彼女として、怪我をしている彼氏を見捨てることはできません!!」
俺の命令を、シレイドとセーラは泣きそうになりながら固辞する。
くそ……動け、動け!! 俺の身体!!
絶望的な状況に成す術がない。
――その時!!
俺たちを守るように前方にリズが立っていた。
「り、リズ!? な、なにしてる!! 下がれ!!」
俺の言葉に首を横に振るリズ。
「あ、あたしだって! 冒険者……ううん、レオの彼女なんだから!!」
そう言って、彼女は銃を構える。
僅かに指が震えている。
強大な敵を前にして、恐怖を感じているのだろう。
だが、攻撃の構えを解かない。
「効くかどうかは分かんない! でも、あたしだって戦える!! 火が弱点なら、これでどう!? あたしの奥の手!! サラマンダーの鱗で作った『小火竜弾』の『ヘビーショット』!!」
リズの銃から放たれた一発の弾丸。
それは振り上げられた鉄巨兵の腕に当たり……!!
ドガアアアアアアアン!!
大爆発を引き起こした!!
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
腕が焼け爛れ、もげ落ち、凄まじい叫び声をあげるアイアンゴーレム。
な、なんて威力だ……!!
「出し惜しみはしない!! 『ヘビーショット』!! 『ヘビーショット』!! 『ヘビーショット』!!」
ドガアアアアアアン!! ドガアアアアアアン!! ドガアアアアアアン!!
リズが放った『小火竜弾』の雨。
鉄巨兵の足が吹っ飛び、肩がもぎ取れ、胸部にどデカい穴が開く。
「す、すごい……」
「や、ヤバいな……」
キアラとロウナがその光景をポカンと見ている。
「はあ……はあ……はあ……」
武技の乱発で気力が尽きたのか、リズが肩で息をしている。
「た、倒せたのでしょうか……!?」
セーラが言ったその瞬間——!!
「ゴ……ゴオオオオオオオオオオオオオオ!!」
最後の力を振り絞って、アイアンゴーレムが残っていた左腕をリズ目がけて振り上げる。
「くっ……!!」
覚悟を決めたように、目を閉じるリズ。
……だが。
「よくやったな。リズ」
「へ? れ、レオ?」
俺は彼女の頭を撫でて、前に立つ。
正直、身体中がバキバキに軋むが、リズが時間を稼いでくれたおかげで、動ける程度にはなった。
「くらえ……!! 俺の全魔力を込めた……『エルファイアー』!!」
俺が放った最大出力の火球が、アイアンゴーレムの頭に直撃する。
そして……。
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