上 下
8 / 10

第8話:今度こそチェリー味。

しおりを挟む
美都ちゃんの家と僕の家は同じ方向・・・そしていつも途中のT字路から
右と左に分かれる。
そのT字路までは彼女と一緒。

「芳樹・・・私・・・芳樹の一番好きなところってどこだって思う?」

「え?なんでそんなこと聞くの?」

「いいから答えろ」

「え~と・・・あ~・・・たとえば頼りないところ・・・」

「うん・・・」

「あと・・・へたれなところとか優柔不断なところとか・・・」

「まあな・・・でもそれって全部、負の感情じゃん?」
「ネガティブな感情だろ?」

「そうかもしれないけど・・・それ以外僕になにがあるっての?・・・」

「芳樹はもっといいところいっぱいあるよ」
「私ね、芳樹の素直なところが一番好きなの?」

「素直?・・・僕が?」

「そうだよ、それって一番大事なことだよ」
「素直っていうことはさ、いろんな要素を持ってるってことだよ」
「 変なプライドないし・・・自己中じゃないし、わがままでもない」
「私の言葉をちゃんと受け止めて理解して、私と言う人格を認めてくれてる」

「芳樹に告られた時、私は頼りない男がマストなのって言ったけど、
本当は君の真っ直ぐでブレないところが好きだって思ってたの・・・」

「それに芳樹は、よそ見することなく一生懸命私を好きでいてくれる」
「今の私にとって君が一番大切な存在だよ、芳樹・・・」

T字路の分かれ道で、美都ちゃんはそう言った。

まさか美都ちゃんからそんな切々と想いを語られるとは思わなかった。
彼女の性格からして思ったことを、クチに出さないでいるのはイヤ
なんだろうな。

そして美都ちゃんは周りをキョロキョロ見回して誰もいないことを
確認すると僕に近寄って、そっとキスした。

「恋人同士のコミュニケーション・・・また明日ねのキスだよ」
「さすがに学校の中じゃできないからね」

「芳樹・・・好きだよ・・・愛してるって言葉は照れるけど・・・」
「うん、まあそう思ってる」

「じゃ~また明日な、バイバイ・・・」

そう言い残して美都ちゃんは笑顔で手を振りながら帰って行った。
遠ざかっていく僕の彼女、僕の恋人。
小さくなっていく美都ちゃんが僕のほうを振り返って手を振るのが見えた。

僕も思い切りアピールするように彼女に両手を振った。

そして愛しい僕の彼女は坂の向こうに消えていった。

「また明日も会おうね、美都ちゃん」
「僕も照れるけど・・・君のこと愛してるって言いたい・・・」

美都ちゃんとは、もう初キスじゃなかったけど、でも今度はちゃんと
チェリー味がした。

つづく。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

涙が宝石になるって、知らなかったんですか?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:132

Kobanashi No.2

歴史・時代 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

真相には虚は無く、唯一つの結果のみが残る。

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

宵闇の魔法使いと薄明の王女

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:5

まっ黒なばしょ

絵本 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

少年の日の夏の思い出で

青春 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

エースキラー ~フィールドに賭けた青春~

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

俺はヒーローじゃない!

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

わたしを不幸なまま死なせることはできないの

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

僕は☓っぽいけど○だから☓子校に行くなんて間違ってる!

青春 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

処理中です...