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第ニ章
アルバァ 第4話
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コルネーリオさんの過去の話をよく知らないし、ここで追及するのも野暮過ぎる気がする。どんなことを経験したにしろ、コルネーリオさん僕を助けた。彼がいなければ僕は今も山の森で彷徨っているかもしれない。
『サポート』さんがいるからいつかは出て来るだろうが、今みたいに短時間で着くのは困難だ。
それなのに変に疑うのはよろしくない、確実に。暗い過去とか誰にも知られたくない事件なんて、誰もがとまでは言わないが、大多数の人はあるだろう。
僕が何回か好奇心と闘っている内に、僕たちに検問の順番が来たようだ。
順番が来るまでに他の通行人を観察した結果が正しければ、まずは四角いよく分からない機械に手を乗せる。それが白く光れば通行証もしくは金を払えば問題なく中に入ることができる。
中には灰色に光った者もいた。その者達は大体門番と揉めあって何処かに連れて行かれる。極一部の者は何か金属がぶつかり合う音がする袋を門番に渡して通った。
恐らくは金貨?(この国の通貨を調べる必要もあるな)がいっぱい入った袋からだろう。何か見てはいけない闇を見てしまったような気分になったが、これも一種の必要悪なのだろう。
それにしても、この身体の性能は素晴らしい。袋を渡した女と門番は僕から結構離れた場所にいたが、その袋から漏れ出る音は簡単に拾えた。
ただ聴覚が研ぎ澄まされた訳ではない、強さは調整可能になっている。雑音や風の音はその気になればと思えばかなり大音量になるが、聞こうとしなければほぼ聞こえない。
何度も繰り返すように、僕はこの身体を全く使いこなせていない。生まれてたった数時間なのだから、しょうがないと思うし、今は聴覚をある程度コントロールできるようになったから他の感覚をコントロールできる日も遠くないだろう。
さて、ここで問題が発生した。検問では四角い機械を触る必要がある。どういう原理で動いているのかは知らないし、考えようともしなかった。
しかし、今は考えずにはいられない。この機械が白く光るか灰色に光ることしか見たことがない(そんなに量をこなせていないから他の色もあるかもしれない)。
それが僕が触ったら黒く光った。灰色で検問に引っかかってゴタゴタが起きて揉めるのなら、黒はもっとヤバいじゃないのか?
ほら、コルネーリオさんたちと門番たちが目を見開いてぽかーんと間の抜けた顔をしている。やはりこれはヤバいことに違いない。
まさか僕の異世界の初住居は牢屋になるのだろうか。異世界に転生して数時間に前科が付いてしまうのだろうか。ここはさっさと逃げてしまったほうがいいだろうか。
「あのー……」
「はっ、はい!」
ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!!!
急に声をかけられて、無駄に大きな声で返事をしてしまった。しかもかなり挙動不審になっている。これぞ典型的な怪しいやつの人物像である。教科書に載せてもいいくらい。
門番たちも僕の挙動不審さに顔色を変えている。これは逮捕されるパターンか、それとも連行されるパターンか……
どっちみちいいことはない。
さぁ!思い立ったが吉日!!今のうちにとっとと逃げよう。
コントロールが激ムズだがすこぶる程高性能のこの身体なら無傷で逃げ切ることも不可能じゃない!!!はず。
さようなら、コルネーリオさん。あなたのおかげでこの異世界の基本情報を少しだけ得ることができた。まだまだこの世界の情報を聞きたかったが、それはもう叶わないようだ。
さようなら、カヴァリエーレさん。あなたとは一言も喋ったことはないが、仲間の為にそんな瀕死状態も厭わないような方ですからきっととても良い性格をしているでしょう。
さようなら、ドナートさん。あなたとの初会話はあまり良くないものでしたが、それも仲間想いからのことでしょう。実際、ヘトヘト状態なカヴァリエーレさんがここまでやってこれたのはあなたがいたからだろう。
僕の異世界の初イベントは素晴らしいものだ。僕が今日のことを忘れることはない。もう会えるかどうか分からないが、再び会えるとならその時は今日の礼を言おう。
では、さら………!!!
「どうぞお入りください。」
ば?
えっ、どゆこと?
『サポート』さんがいるからいつかは出て来るだろうが、今みたいに短時間で着くのは困難だ。
それなのに変に疑うのはよろしくない、確実に。暗い過去とか誰にも知られたくない事件なんて、誰もがとまでは言わないが、大多数の人はあるだろう。
僕が何回か好奇心と闘っている内に、僕たちに検問の順番が来たようだ。
順番が来るまでに他の通行人を観察した結果が正しければ、まずは四角いよく分からない機械に手を乗せる。それが白く光れば通行証もしくは金を払えば問題なく中に入ることができる。
中には灰色に光った者もいた。その者達は大体門番と揉めあって何処かに連れて行かれる。極一部の者は何か金属がぶつかり合う音がする袋を門番に渡して通った。
恐らくは金貨?(この国の通貨を調べる必要もあるな)がいっぱい入った袋からだろう。何か見てはいけない闇を見てしまったような気分になったが、これも一種の必要悪なのだろう。
それにしても、この身体の性能は素晴らしい。袋を渡した女と門番は僕から結構離れた場所にいたが、その袋から漏れ出る音は簡単に拾えた。
ただ聴覚が研ぎ澄まされた訳ではない、強さは調整可能になっている。雑音や風の音はその気になればと思えばかなり大音量になるが、聞こうとしなければほぼ聞こえない。
何度も繰り返すように、僕はこの身体を全く使いこなせていない。生まれてたった数時間なのだから、しょうがないと思うし、今は聴覚をある程度コントロールできるようになったから他の感覚をコントロールできる日も遠くないだろう。
さて、ここで問題が発生した。検問では四角い機械を触る必要がある。どういう原理で動いているのかは知らないし、考えようともしなかった。
しかし、今は考えずにはいられない。この機械が白く光るか灰色に光ることしか見たことがない(そんなに量をこなせていないから他の色もあるかもしれない)。
それが僕が触ったら黒く光った。灰色で検問に引っかかってゴタゴタが起きて揉めるのなら、黒はもっとヤバいじゃないのか?
ほら、コルネーリオさんたちと門番たちが目を見開いてぽかーんと間の抜けた顔をしている。やはりこれはヤバいことに違いない。
まさか僕の異世界の初住居は牢屋になるのだろうか。異世界に転生して数時間に前科が付いてしまうのだろうか。ここはさっさと逃げてしまったほうがいいだろうか。
「あのー……」
「はっ、はい!」
ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!!!
急に声をかけられて、無駄に大きな声で返事をしてしまった。しかもかなり挙動不審になっている。これぞ典型的な怪しいやつの人物像である。教科書に載せてもいいくらい。
門番たちも僕の挙動不審さに顔色を変えている。これは逮捕されるパターンか、それとも連行されるパターンか……
どっちみちいいことはない。
さぁ!思い立ったが吉日!!今のうちにとっとと逃げよう。
コントロールが激ムズだがすこぶる程高性能のこの身体なら無傷で逃げ切ることも不可能じゃない!!!はず。
さようなら、コルネーリオさん。あなたのおかげでこの異世界の基本情報を少しだけ得ることができた。まだまだこの世界の情報を聞きたかったが、それはもう叶わないようだ。
さようなら、カヴァリエーレさん。あなたとは一言も喋ったことはないが、仲間の為にそんな瀕死状態も厭わないような方ですからきっととても良い性格をしているでしょう。
さようなら、ドナートさん。あなたとの初会話はあまり良くないものでしたが、それも仲間想いからのことでしょう。実際、ヘトヘト状態なカヴァリエーレさんがここまでやってこれたのはあなたがいたからだろう。
僕の異世界の初イベントは素晴らしいものだ。僕が今日のことを忘れることはない。もう会えるかどうか分からないが、再び会えるとならその時は今日の礼を言おう。
では、さら………!!!
「どうぞお入りください。」
ば?
えっ、どゆこと?
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