好きな世界を選んでいいと言われたんですが、多すぎるから分裂しちゃいました。

ニコニ

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第一章

ワーヒド 第5話

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 入って来たのは貴族の三十代前半の男だった。立ち上がって礼をする。

「貴殿がワーヒド・ヒグチ殿か。」

「はい、ワーヒド・ヒグチといいます。」

「王からアーラム領を任されているウィンセント・ロン・アーラムだ。
 オークの群れを退治してくれたことに礼を言う。」

「いえ、大したことではありません。」
 人間は謙虚に生きた方がいい。

「早速本題に入ろう。
 オークの魔石の買い取り額をどう考えているか?」

「そちらにお任せします。」
 笑顔で答えた。
 どうせ価値どころか、金銭の単位すら知らないんだ。大損されようが、カモにされようが文句は言えん。

「ならば、200万ユルドでどうだろうか。」

「構いません。」
 よくわからないけど、200万だから少なくはないだろう。

「ワーヒド殿はこの国の方ではないな?」

「遠いところから来ました。」
 後はご自由に想像してください。

「ではワーヒド殿、この領の専属魔術師になる気はあるだろうか?」
 なんとお誘いが来ました。

「ありますよ。」
 もちろん、こんなおいしいお誘いは受けていただきます。素性も知らない怪しさ炸裂な人を雇ってくれるところなんてそう多くないはず。この機を逃したらもうないかも。

「ワーヒド殿、いくつか個人的に話したいことがあるからついて来てくれ。」
 正体を探られたらどうしよう。
 窓すらない部屋に連れてこられた。なんだか得体の知らない気持ち悪さがある。

「では、『平等契約』を結ぼう。
 決め事はただ一つ、お互いを裏切らないこと。」
 それは守って損どころか、当たり前のことですので躊躇なく名前を書く。紙が光って無くなった。これもスキルかマジックアイテムの一種だろうか。
 考えているうちにウィンセントがガチャガチャとカギをかける。

 ヤバい、この人はもしやあっちの趣味をお持ちのかたでしょうか。上司が部下にあんなことやこんなことをしてそのままこの作品がムーンライト送りに…
 ならなかった。いきなり土下座してきた。Sの方ではなくMの方ですか。

「ワーヒド殿、このような見苦しいことになって申し訳ない。
 領主として頭を垂れること人前ではできない。
 ワーヒド殿、どうかこの領をお救いください。」
 いえいえ、こちらこそ申し訳ありません。僕の心はどうやら穢れきっていました。あなた方一家みんないい人です。

「どうか、頭を上げてください。何かお困りでしたらはなしてください。」

「これから共に闘うためにアーラム領の現状について説明しましょう。」

 ウィンセントさんの話の内容をまとめると。まず、作物がちっとも育たない。海産物で一時凌ぎしてるけど年々赤字。先先代すなわち初代アーラム伯爵の時は広大な領地があり、穀倉地帯までいかないが、領内の消費はへっちゃらなほどあった。しかし、先代が馬鹿だったため、ギャンブルに入り浸り、借金としてその地域を隣のウルバン領に売った。このままではウルバン領に吸収され、属領なされてしまうという。
 ちなみに先代は数年前にギャンブル場に行く途中に事故って死んだらしい。散々迷惑掛けといて、死ぬとはしょうもない奴だ。

「わかりました、アーラム領を助けましょう。
 作物ならどうにかなるかもしれません。」
 なぜなのかは言うまでもない。
 こっちはメインジョブが『農民』なんだ、むしろ本領発揮だ。

「ワーヒド殿、貴殿ならもう知っていると思いますが、この場所は魔力封じの部屋です。入った後に術式を起動しました。
 だから今は魔法が使えずしょうがなく承諾しているのかも知れませんが、こちらも命懸けです。ご無礼をお許しださい。」

 気持ち悪さの正体は魔力封じなのか。本当に使えなくなってのかな?と言っても植物がないから…

 〈ゼラ木材〉
 〈モセン木材〉
 〈ゼラ木材〉
 〈ゼラ木材〉
 〈レドゥー木材〉
 …………………………………
 机と本棚に表示が出てきた。これは操作できるということだろうか?こっそりやってみよう。
 少し魔力を込める。
 あら不思議、とか形を想像してなかったからなのか、机がまるで現代アートのやうな形になった。
 ウィンセントさんは呆然としてる。
 どうしよう、これっていくら弁償すれば良いのでしょうか?仕事初日から上司の物を壊すなんて悪印象しかない。給料を減らされるかも知れない。前途真っ暗。

 しばらく嫌な沈黙の間が空いた。
 僕は審判を待つ罪人、いや、断罪を待つ死刑囚のような感じだった。

「まさかこれほどとは、数千年もの修練を重ねた伝説の存在なら魔力封じも効かないと耳にしたことがあります。
 ワーヒド殿、いやワーヒド様。アーラム家は代々あなた神として崇め奉るを誓いましょう。
 あなた様ほど力をお持ちでしたら、さっき私と結んだ『平等契約』などただの笑いものです。
 あなたの存在をアーラム家だけの秘密にします。
 どうか、アーラム家をお護り下さい。」
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