最強の魔族がやってきた ~人の世界に興味があるらしい~

夏樹高志

文字の大きさ
59 / 85

第58話 その後の世界へ その3

しおりを挟む
 ゼムドは龍の住まう土地へ到着し、ファルデザートと会話を始めていた。

 ファルデザートが驚愕して質問する。

「じゃあ、六人を半死にして、魔族どものいる場所へ放り投げて来たのか?」

「そうだ。いつものことだ。あいつらも何か技術の向上があれば、俺に戦いと挑むし、俺も何か思いつけばあいつらで技を試す。この三千年間、それを繰り返してきた。魔族は瀕死になると生命維持のために寿命を削って、回復を急ごうとする。半殺しにして、魔族のいるところに放り込んでおけば回復は早まるだろう。それぞれのダメージ具合から、死なないような魔族がいるところへは放り投げたから死にはしないだろう。また喰らった技の解析も早まるずだ。魔族特有の強烈な生存本能が機能して、回復後に相手を上回ろうとする」

「それは寿命を捨てるということか?」

「俺たちは老衰では基本的に死ねない。必ず最後は誰かに殺される。お前たちと違って、寿命に意味があるわけじゃない。むしろ、ある時点で少しでも強くなれる方が、長期的には長生きできる可能性が高まる。お前たちとは生存環境が根本的に異なる。俺たちの寿命は10万年程度と言われているが、老衰で死ぬならもっと長く生きられるはずだ」

「……」

 ファルデザートは思う。

 なるほど、これは強くなるわけだ。しかも、この三千年は互いに技を掛けあうことで、さらに技術を磨くようなったか。
 やはりこいつらは〝危険〟だ。
 放置するわけにはいかない。

 現時点ではゼムドが頂点に立って、魔族の暴走を抑えることができるが、ゼムドの死後、あるいは他に強い魔族が発生して、そいつが世界の均衡を崩そうとするなら放っておくわけにはいかない。
 それにゼムドもまだ不安定だ。
 あのエルフが、誰かに殺されでもしたらどうなるか分からない。
 ゼムドも子供過ぎる……

 そう思っていると、ゼムドが話し始めた。

「お前が俺の今の発言を聞いて、何を考えたかは大体分かる。俺が生きているうちは世界のバランスは力で保てるだろう、ただ、その後はどうなるか分からない。だから、俺はあいつらを人の地へ連れていくことにした。あいつらのような奴らが今後も現れて、自由勝手に生きるとするなら、世界に異変が生じることになる。だが、人の世界を知って戦うこと以外の事を覚えれば、世界を壊そうとしないと思う。それに掛けてみたい」

「具体的にどうするつもりだ?」

「まず、あいつらの魔力を完全に抑える。今のままでは人の地へ近づくだけで、人が死ぬ。俺のように人へ近づいても人が死なないように魔力をコントロールさせる必要がある。戦闘時に気配を消すことは必要にもなるから、当然、魔力を抑えることはあいつらもできる。ただ、日常生活の何気ない動作で魔力を放出した時に、それで人が汚染されるようでは困る。その意識を改めてもらう必要がある」

「それにはどれくらい掛かる?」

「おそらく1~2年程度だろう。ただ、一人、男の子の魔族がいるが、こいつは問題ない。今すぐに人の地へ連れて行っても問題は起こさないだろう。しかし、こいつを教育係にして、残りの五人の意識改革をする。しばらくは人の地へ近づけさせない」

「ふむ、まぁ、それがいいのだろう。おまえがやりたいようにやれ。それよりも、お前が云う個々の尊厳とやらをどうして欲しいのか具体的に言え」

「おまえたち龍種は戦争を禁じたが、これは本来、獣族の本能を消す行為だ、奴らは戦いを好む。これを押さえつけるのは好ましくない。闘いを推奨する」

「待て。三千年前に確かに我らが戦争を禁じたが、それはそれなりに理由があってのことだ。おまえが守っている人族も世界各地に点在して、強い種から逃げるように生きていた。そのような種を保護してやる意味合いもあった。単に戦いを認めればそれらの者達が死に瀕することになる」

「いや、闘いは認めると言ったが、他種族を蹂躙するのは認めない。ただ、一方で領土の拡大については自由競争にする。具体的には、闘技大会を開く。各種族からメンバーを選抜してそのメンバー同士を戦わせて、勝ったところが負けたところから領地を奪う、あるいは金銭を奪う。ルールは適当だ。お互いが殺し合いをしたいなら殺し合いを認める。殺し合いをしたくないなら、認めない。死にそうになったら俺が守ってやってもいい」

「……」

「男の子の魔族はケリドというが、こいつは何故か魔族にしては獣族と交流がある。こいつにも協力してもらって、闘技大会を開くつもりだ。ケリドは様々な方面に詳しい。闘技場の建設から大会の運営手法まで興味を示すだろう。龍種から、何か案はあるか?」

「……いや、無い。おまえがやりたいようにやってみろ」

「あと、お前たち龍族には、各獣族の代表に、お前たち名義でこの闘技大会の参加について提起してもらう。俺のことについて知っている獣族はそれほど多いわけじゃない。お前の発言の方が影響力は大きいだろう」

 ファルデザートは、ふむ、と思う。
 まぁ、問題が起きるかもしれないが、ゼムドがやりたいというならそうしてやろうと思う。

「構わん。やってやろう。それより少し気になることがある。お前が魔族を倒す時に使ったという魔法に興味がある。それはどういう魔法だ?」

 それを聞くとゼムドは立ち上がって、魔力を放出し始めた。

「おいおい、待て。我らは別に首を折られなくても魔法を見せてもらえば理解しようとする。魔法の一つを聞くだけで、首を折られるのは敵わん」

 そう言うとゼムドは魔力を抑える。

 そして一言。

「そうか」

 ファルデザートはやれやれ、と思う。
 やはりゼムドもまだ子供だ。
 他人の立場で考えるという点では全く話にならない……。
 気を付けないとこっちもケガをしてしまうな……。

 そう思うファルデザートであった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。 日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。 アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。 「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。 貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。 集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。 そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。 これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。 今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう? ※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは 似て非なる物として見て下さい

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

才能に打ち砕かれた日から、僕の最強は始まった

雷覇
ファンタジー
ワノクニ、蒼神流・蒼月道場。 天城蒼真は幼き頃から剣を学び、努力を重ねてきた。 だがある日、異世界から来た「勇者」瀬名隼人との出会いが、すべてを変える。 鍛錬も経験もない隼人は、生まれながらの天才。 一目見ただけで蒼真と幼馴染の朱音の剣筋を見切り、打ち破った。 朱音は琴音の命で、隼人の旅に同行することを決意する。 悔しさを抱えた蒼真は、道場を後にする。 目指すは“修羅の山”――魔族が封印され、誰も生きて戻らぬ死地へと旅立つ。

最強転生悪役令嬢は人生を謳歌したい!~今更SSクラスに戻れと言われても『もう遅い!』Cクラスで最強を目指します!~【改稿版】

てんてんどんどん
ファンタジー
 ベビーベッドの上からこんにちは。  私はセレスティア・ラル・シャンデール(0歳)。聖王国のお姫様。  私はなぜかRPGの裏ボス令嬢に転生したようです。  何故それを思い出したかというと、ごくごくとミルクを飲んでいるときに、兄(4歳)のアレスが、「僕も飲みたいー!」と哺乳瓶を取り上げてしまい、「何してくれるんじゃワレ!??」と怒った途端――私は闇の女神の力が覚醒しました。  闇の女神の力も、転生した記憶も。  本来なら、愛する家族が目の前で魔族に惨殺され、愛した国民たちが目の前で魔族に食われていく様に泣き崩れ見ながら、魔王に復讐を誓ったその途端目覚める力を、私はミルクを取られた途端に目覚めさせてしまったのです。  とりあえず、0歳は何も出来なくて暇なのでちょっと魔王を倒して来ようと思います。デコピンで。 --これは最強裏ボスに転生した脳筋主人公が最弱クラスで最強を目指す勘違いTueee物語-- ※最強裏ボス転生令嬢は友情を謳歌したい!の改稿版です(5万文字から10万文字にふえています) ※27話あたりからが新規です ※作中で主人公最強、たぶん神様も敵わない(でも陰キャ) ※超ご都合主義。深く考えたらきっと負け ※主人公はそこまで考えてないのに周囲が勝手に深読みして有能に祀り上げられる勘違いもの。 ※副題が完結した時点で物語は終了します。俺たちの戦いはこれからだ! ※他Webサイトにも投稿しております。

処理中です...