【完結】彼は皇帝なので、彼女は薬師として尽くすことにしました。

朝日みらい

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6. 心の葛藤 

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アラクシウスの態度が、最近どうもよそよそしい。  

いや、最初から特別に親しいというわけではなかったけれど、あの金色の瞳で私をじっと見つめて、「エリナ」と名前を呼ばれるたび、私は心が揺れるような不思議な気持ちになるようになっていた。

それなのに、ここ数日は目を合わせてもすぐに逸らされたり、短い返事だけで会話を切られたりする。  

なんなのよ、この冷たさ…。  

「私、何かしましたか?」  

ついその言葉が口を突いて出たのは、彼がまた私を避けるようにして帰ろうとした時だ。  

「…いや、何もしていない。」  

振り向かずにそう答える彼の声は、低く硬い。  

「じゃあ、なんでそんな態度なんですか?」  

少し声が震えてしまったのは、私が傷ついているせいだ。

自分でも驚くけれど、彼に避けられることが、こんなにも胸に刺さるなんて。  

アラクシウスはため息をついて、ようやく私の方を向いた。

その表情はどこか苦しげで、私は余計に訳が分からなくなる。  

「やはり…俺と深く関わらない方がいい。」  

「どうしてですか?」  

「俺は、帝国を背負う皇帝だ。責任も重圧も…君を巻き込むべきではないんだ。」  

その言葉に、私は一瞬言葉を失った。

彼の言っていることは分かる。

分かるけれど、それはつまり――  

「私に、関わりたくないってことですか?」  

彼の瞳が揺れた。  

「そういう意味ではない。」  

「だったら、ちゃんと説明してください!私は、ただ…あなたが避ける理由を知りたいだけです!」  

声を荒げてしまった私に、アラクシウスは驚いたようだった。

でも、その金色の瞳がじっと私を見つめ返してくると、逆にこちらが居心地悪くなって目を逸らした。  

「エリナ…」  

彼の声が少しだけ柔らかくなる。

それが、私をさらに泣きたくさせる。  

「俺は…お前に惹かれている。それが怖いんだ。」  

思わず彼を見上げた。

その言葉の意味を、すぐに理解することができなかった。  

「惹かれてるって…?」  

「お前といると、俺は自分が皇帝だということを忘れそうになる。だが、それが許されるはずがないんだ。」  

彼の表情には、本当に苦しみが滲んでいて、私はそれ以上何も言えなくなってしまった。

彼が私を避けていた理由が分かったような気がする。

でも、それは私を安心させるものではなかった。  

「…そんなの、勝手です。」  

自分でも、どうしてそんな返事をしたのか分からなかった。

ただ、言わずにはいられなかった。  

「勝手に私を避けて、勝手に自分で怖がって。私の気持ちはどうでもいいんですか?」  

アラクシウスは驚いたように目を見開いた。  

「お前の気持ち…?」  

「そうですよ!私だって、あなたに惹かれてるかもしれないのに!」  

言ってしまった。

言った瞬間、顔が熱くなって、私はすぐに目を逸らした。  

「でも、あなたがそんな態度を取るから…私、どうしていいか分からないんです!」  

しばらくの沈黙の後、彼が低く笑ったのが聞こえた。

その笑い声に、私は思わず彼を睨みつける。  

「何がおかしいんですか!」  

「いや、悪い…ただ、お前がそんな風に怒るとは思わなかった。」  

アラクシウスは少し柔らかい表情で私を見つめていた。

その顔を見ると、さっきの苛立ちがどこかへ飛んでいく。  

「俺は…どうしたらいいんだろうな。」  

呟くようにそう言った彼の声には、いつものような強さがなかった。

それが、私の心をぎゅっと締め付ける。  

「どうしたらいいかなんて、私にも分かりません。でも…一緒に考えましょうよ。」  

そう言った時、アラクシウスの瞳が少しだけ暖かくなったように見えた。  

「エリナ、お前は本当に不思議な女だな。」  

彼がそう言って微笑んだ時、私は思わず顔を赤くしてしまった。

もう、こんな風に笑うの、反則じゃないの?  

でも、彼との距離が少しだけ近づいた気がして、私は胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じていた。
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