【完結】彼は皇帝なので、彼女は薬師として尽くすことにしました。

朝日みらい

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16. 試練の始まり 

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アラクシウスと私は、これまで順調に進展していると思っていた。

でも、何だか最近、おかしな空気が流れ始めたような気がする。

帝国では、隣国との戦争がはじまり、彼の政務の忙しさが増して、私たちの時間が減ってきたのだ。

彼が悩んでいることもわかっているし、私も王宮で薬師としての仕事をこなすことに必死になっていた。

だけど、心の中では不安が膨らんでいた。

その日の夕方、私はいつものように薬草を摘んでいた。

風が心地よく吹いて、少しでもアラクシウスに会える時間を作ろうと考えながら、薬草を一束にまとめる。

だけど、頭の中にあるのは、彼の顔ばかりだ。

「エリナ。」  

ふと、後ろから声が聞こえた。

振り向くと、アラクシウスが立っていた。

彼の顔には、いつものような落ち着きと冷静さがあるけれど、目の奥に疲れが見え隠れしているのがわかる。

「アラクシウス!」  

「やっと君に会えた。」  

少し照れたような笑顔を見せるアラクシウスに、私は胸がキュンとした。

こんなにも忙しい中で、私に時間を割いてくれることが嬉しくて、思わず手を伸ばして彼の手を取ってしまった。

「でも、こんなに疲れてるんじゃない?」  

「心配しなくても大丈夫だよ。」  

彼は優しく私を見つめながら、手を握り返してくれる。

けれど、やっぱりその目にはどこか隠せない疲れがあって、私はどうしてもそのことを心配してしまう。

「でも、アラクシウス、最近本当に忙しそうね。少しでも休んだ方がいいわ。」  

「そうかもしれないけど、エリナ、俺には今、国を守る責任がある。」  

その言葉には、やっぱり彼が抱える重荷が乗っているのがわかる。

私は彼が背負っているものの大きさを、身をもって感じる。

「私、わかってる。でも、あなたが無理をしているのが心配だわ。」  

「心配させないようにするよ。」  

アラクシウスはそう言いながら、優しく私を抱きしめてくれた。

その温もりに、少しだけ心が落ち着く。

でも、同時に胸の奥に不安も募る。

「でも、最近あんまり話せていない気がする。前みたいに、もっと一緒に過ごしたいな。」  

その言葉が、私から思わずこぼれてしまった。

だって、彼と過ごす時間が減るたびに、どうしても心の中で何かがすれ違っていく気がしていたから。

「俺も、エリナともっと話したい。君と過ごす時間が、俺にとってどれほど大切か、わかっているつもりだ。」  

アラクシウスは私の顔を見て、そう言ってくれる。

けれど、またその目に疲れが滲んでいるのを感じて、私はそれをどうしても払拭できなかった。

「でも…」  

「心配しないで。君がいてくれるだけで、俺は十分だよ。」  

その言葉に、私は少しだけ安心する。

けれど、それでも心の中にはもやもやとした不安が残っているのも事実だ。

アラクシウスがどんなに頑張っても、彼と一緒に過ごす時間が少なくなればなるほど、私はどうしても心の中に壁を作ってしまうような気がしてならない。

「アラクシウス、もし何かあったら、私にも頼ってね。私はあなたを支えたい。」  

その言葉を、私は心から伝えたかった。

だって、彼が辛い時に少しでも力になれるなら、何でもしたいと思っているから。

アラクシウスはその言葉に少し驚いたように目を見開き、そして私をじっと見つめた。

その視線があまりにも熱くて、私は少し照れてしまう。

「ありがとう、エリナ。君がいてくれるだけで、俺は心強い。」  

彼はそう言って、再び私を抱きしめてくれる。

そのぬくもりに、私は自分の不安が少しだけ消えたような気がした。

でも、心の中ではまだ、彼と過ごす時間が足りないと思う気持ちが消えなかった。

それでも、私は信じることに決めた。

アラクシウスも私も、今は忙しくても、これからまたもっとお互いに寄り添える時間が来るはずだと。

それまで、私は彼を支え、彼が無理しないように見守り続ける。

そう決めたから、きっと乗り越えられる。

「アラクシウス、私、あなたのことをずっと応援してる。」  

彼はその言葉に満面の笑顔を返してくれて、私はその笑顔を見て、少しだけ不安を吹き飛ばすことができた。
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