【完結】彼は皇帝なので、彼女は薬師として尽くすことにしました。

朝日みらい

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27. 不安の中で

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「アラクシウスへ、無事に帰ってきてくれることを祈りつつ、手紙を書いている私です。」

手紙の端に、何度も書き直した言葉を何気なくしたためながら、私はふっとため息をついた。

今日はやけに、手紙が進まない。

頭の中でアラクシウスのことばかり考えてしまって、どうしても集中できなくなる。

「もしかして、またすぐに私のことを思い出してくれるかな。なんてね。」

なんて言ったところで、彼がすぐに帰ってくるわけでもないけれど、少しでも彼の気持ちを感じたくて、心の中でそんなことを呟く。

薬師としての仕事が忙しくなってきた。

病院で次々とやってくる戦傷者のケアに追われ、手を休める暇もない日々。

足元をよく見れば、痛みを抱えた兵士たちが、ひとりまたひとりと運ばれてくる。

誰かが倒れるたびに、アラクシウスが無事でいることを心から願ってしまう。

「また新しい傷…」

私が傷口に薬を塗りながら、ひとり呟いた。

顔を見ればみんなつらい表情をしているけれど、私がやるべきことは、この痛みを少しでも和らげてあげること。

それだけ。

「ああ、アラクシウス…」

手元の薬を準備しながら、心の中で彼の顔を思い浮かべる。

どんなに辛いことがあっても、彼の笑顔が浮かぶだけで、なんだか勇気が湧いてくる気がする。

あの笑顔が、私を支えてくれている。

「でも、アラクシウスが帰ってくるまで、私も頑張らないと。」

薬を持ちながら、ふと心が落ち着く。

アラクシウスが私に言ったことを思い出す。

「お前が頑張ってるから、俺も強くなれる。」

その言葉を、もう一度胸に刻んで。

彼が戦場にいる間、私が弱音を吐くわけにはいかない。

私も彼を支えるために、戦傷者たちを癒して、できる限りのことをしなければ。

その夜、私はまたひとつ手紙を書き直す。

何度も何度も、自分の言葉を並べていく。

心の中では不安が渦巻いているけれど、そんな私にアラクシウスの声が響くような気がする。

「エリナ、ちゃんと待っててくれよ。」

思い切り顔を赤くして、手紙に「無事に帰ってきて」という言葉を書いた。

アラクシウス、あなたが帰ってくる日まで、私はここで待ってるよ。


その翌日、また戦傷者たちが次々と運ばれてきた。

薬草を取り出し、傷を治療していくうちに、思いがけず一瞬だけ、アラクシウスのことを感じる。

「アラクシウスがここにいてくれたら、もっと心強いのに。」

傷を手当てしながら、心の中でひとりぼんやりと思う。

その時、ふっと顔を上げると、何かが視界に入ってきた。

「あれ、何か気配が…?」

目を凝らすと、少し遠くの方でちょうど傷を手当てされている姿が見えた。

「アラクシウス!?」

気づかれないように、私は胸がドキドキしながらも、彼の顔をじっと見つめた。

違う兵士だった。

なんだかほっとしてしまう。


その夜、私はまた手紙を書いた。

「無事に帰ってきて、必ず私を守ってくれるって信じてるから。」

なんだか、少しだけ心が軽くなる気がした。

アラクシウスのことを信じて待っているだけで、私は強くなれる。

彼もきっと、私のことを待っているはずだから。
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