【完結】彼は皇帝なので、彼女は薬師として尽くすことにしました。

朝日みらい

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28. 戦火の中で 

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「アラクシウス……」

手紙の文字を何度も何度も見つめた。

だって、あの日からずっと、あの言葉が心に響いていて、どうしても震えが止まらない。

彼が無事でいてくれると信じたい気持ちと、戦場のことを考えるたびに込み上げてくる恐怖が交差して、心の中がぐちゃぐちゃになってしまう。

私が薬師として忙しく働いている中、時々心がぽっかりと穴が空いたように感じるのは、やっぱりアラクシウスのことが頭から離れないから。

たとえ日々多忙でも、彼がどんな状況にいるのかを考えるだけで心が締め付けられる。

ある日、またしても彼からの手紙が届いた。

私は急いでそれを開けて、一言一言を読み進めていった。

「エリナ、心配しないでくれ、必ず帰る。」

その言葉が書かれていた。

けれども、私はその先が怖くて、思わず息を飲んでしまった。

アラクシウスはいつも私を安心させようとしてくれるけれど、その裏にある不安を隠しきれない気がしてならなかった。

---

その日、またしても兵士たちが運ばれてきた。

傷だらけの兵士たちが、ひとりまたひとりと、私の手に委ねられていく。

彼らを一生懸命に治療していると、どこかでアラクシウスの姿が浮かんでくる。

「アラクシウス……無事に帰ってきて、お願い……」

心の中で何度もそう呟きながら、傷口に薬を塗り、痛みを和らげることに専念した。

彼が帰ってきてくれたら、またあの温かい笑顔が見られるのに――そう思うだけで、少しだけ元気が湧いてくる気がした。

けれども、そんなある日、突然の知らせが入ってきた。

「アラクシウス殿が、戦場で重傷を負った。」

その瞬間、私の足がガクンと震えた。

あまりにも急すぎて、信じられない。

でも、すぐに私は駆け出していた。

アラクシウスが今どこにいるのか、そのすべてが気になって仕方がなかった。

兵士たちが支えてくれたおかげで、なんとかアラクシウスのもとに辿り着くことができた。

彼が倒れているその姿を見た瞬間、私は息を呑んだ。

顔色が青ざめ、意識もはっきりしないようだった。

心臓が早鐘のように打ち、まるで自分の心臓が彼の傷と共に痛むような感覚が走った。

「アラクシウス…!」

涙が溢れてきた。

私がどんなに必死で彼を支えようとしても、力が入らない。

私の声がうわずり、手が震える。

彼が少しでも痛みを感じているなら、どうしてもその痛みを和らげたかった。

すぐに彼の傷を確認し、私は手早く治療を始めた。

「エリナ……。」

アラクシウスがぼんやりとした目で私を見上げた。

その言葉を聞いた瞬間、私は胸が締め付けられ、涙が溢れ出すのを抑えきれなかった。

「無事に帰って来るって約束だよ、アラクシウス。あなたがこんなになって……!」

涙声になりながら言うと、アラクシウスはゆっくりと微笑んだ。

「心配かけてごめん。」

その笑顔が、私を少しだけ安心させてくれる。

でも、やっぱりその痛々しい傷を見ていると、心の中で何度も叫びたくなる。

「許してるよ。帰ってきてくれたんだから。だからお願い、無理しないで。わたしがいるから、頼っていいんだよ。」

私は少し強く彼を抱きしめた。

少しだけ、彼の体温を感じたくて。

彼も私の肩を強く掴んできて、そのぬくもりを感じ取っているようだった。

「お前がそばにいてくれるだけで、俺は大丈夫だ。エリナ、お前がいるだけで、どんな戦でも怖くない。」

その言葉に、私は再び涙が溢れた。

それでも、私は彼を支えながら、治療を続けた。

彼の傷が少しでも癒されるように、できる限りのことをしなければならないと思った。

「エリナ、ありがとう。」

アラクシウスは、痛みをこらえながらも、私に微笑んだ。

その笑顔に、私は再び力をもらった。

もう少しだけ、頑張らないと。
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