【完結】彼は皇帝なので、彼女は薬師として尽くすことにしました。

朝日みらい

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29. 命の恩人 

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「アラクシウス……」

彼の顔を見つめるたびに、心臓が痛む。

彼の目は閉じられ、息も浅い。

血だらけで倒れている姿は、私の胸に鋭い痛みを突き刺す。

こんなことがあっていいのか、なんでこんなにも私の前から彼を奪おうとするのか。

でも、私は絶対に諦めない。

薬師としての腕を信じて、アラクシウスを必ず救わなきゃ。

そう心に誓い、私はひたすらに手を動かし続けた。

「これで、少しは楽になってくれるはず…」

薬草を混ぜた薬を彼の傷口に塗り込む。

彼の体が痛みに震えているのがわかるけれど、私が焦っても意味がない。

ゆっくりと、確実に。

慎重に作業を進める。

「エリナ……お前の顔が見えると安心する。」

アラクシウスがかすれた声で言った。

その言葉に、私は少し驚きながらも、無意識に微笑んでしまった。

「もちろんよ、アラクシウス。あなたがいなくなったら、私どうして生きていけばいいのか、考えられないんだから。」

声をかけながら、私は彼の額に手を当ててみる。

少しだけ熱いけれど、まだ冷やしておいた方がいい。

「お前がいなきゃ、俺も生きていけないよ。」

アラクシウスの言葉に胸がギュッと締めつけられる。

なんでこんなに彼が大切なのか、こんなにも愛しているのか。

自分でもわからなくなるくらい、心が満たされていくのがわかる。

「だから、絶対に……無事に帰ってきてくれなきゃダメよ。私、ずっと待ってるから。」

彼の手を握る。

震える手を、温かく包み込む。

アラクシウスの目が少し開き、ぼんやりと私を見つめる。

「本当にお前、優しいな。」

「当たり前よ!だって、あなたがこんなに私を気にかけてくれるんだもの。」

私は少しだけ意地悪く、笑ってみせた。

少し照れくさいけれど、彼が気づいてくれると嬉しいから。

「エリナ、お前の笑顔が見られて、本当に良かった。」

その言葉が、胸の奥にじわりと染み込んでくる。

彼は無理して笑おうとしないで、素直に言葉にしてくれるから、私はそのままに心を預けてしまう。

---

その後も、私は夜も昼も、アラクシウスの治療に全力を尽くした。

薬草を煎じ、傷の手当をし、疲れを感じる暇もない。

けれども、それでも心の中で少しだけ安心できる瞬間があった。

それは、彼が私の手をしっかり握ってくれていた時。

---

「エリナ…ありがとう。」

アラクシウスがやっと、はっきりとした声で言った。

顔色が少しずつ戻り、意識もはっきりしてきたのだ。

「当たり前でしょ。私はあなたの命を預かってるんだから。」

ちょっとドヤ顔で言ってみると、アラクシウスはやっぱり、にやっと笑った。

「本当に、お前には命をかけて感謝してる。」

その言葉を聞いた瞬間、私はまた顔が熱くなってきた。

アラクシウスが私にそう言うと、どうしてこんなに心がときめくんだろう。

普段はしっかりしてるのに、こんな時に限って顔が赤くなる自分が情けない。

「それだけじゃ足りないわよ、アラクシウス。これからもっと、感謝してもらわないと。」

私は彼をじっと見つめた。

すると、アラクシウスが少し驚いた顔をしてから、すぐににっこりと笑って言った。

「じゃあ、俺が元気になったら、君が欲しいもの全部、何でもあげるよ。」

「それなら、ちょっと高級な花束と、あとは一緒に散歩でもしてくれたら嬉しいわ。」

私の冗談に、アラクシウスは笑いながら、しっかりと私の手を握り返してきた。

「それくらいは、なんでもしてやるよ。だから、俺をもっと治療してくれ。」

そう言うと、今度は彼が少し私を引き寄せて、私の額に軽くキスをしてきた。

思わずドキっとしてしまった。

---

「命をかけた絆」って、きっとこういうことを言うんだろうな。

アラクシウスが無事に回復して、私と一緒に過ごす日々を取り戻せるように、これからもずっと支え合っていきたい。

二人で歩む未来が、もっと幸せであふれるように。
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