虐げられた王女は隣国の王太子と出会ったので、真実の愛を見つけることにしました。

朝日みらい

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第14章: 二人の秘密(レオニード視点)

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夜の庭園は静まり返っていて、月明かりがやけに神秘的だ。

涼しい風が頬を撫で、ふわりと香りを運んできて、その一瞬、僕はまるで別の世界にいるような気がした。

でも、そんなことを考えている間に、僕の目の前にアリシアが立っている。

「おや、こんな時間に何をしているんだ?」

思わず声をかけると、アリシアは一瞬驚いたような顔をして、それから少しだけ肩をすくめた。

「ただ…星を見ていたんです。なんだか、故郷を思い出して。」

ああ、なるほど。

僕にはどうしても星空を見て故郷を思い出すという感覚がピンと来なかったけれど、アリシアはどこか懐かしそうに遠くを見つめていた。

そんな彼女を見て、僕は少しだけ息を呑んだ。

「故郷か。君にとっては大切な場所なんだろうな。」

そう言いながら、僕も無意識に自分の幼少期のことを考えていた。

そんなに深く考えたことはなかったけれど、今、この瞬間にふと頭に浮かぶのは、広大な庭と、見慣れた顔たちだった。

「あんまり…良い思い出じゃないんですけどね。」

突然、アリシアがぽつりと言ったその言葉に、僕は思わず目を向ける。

彼女がどんな過去を持っているのか、知りたかったけれど、何となく、それを聞くのは今じゃないような気がした。

代わりに、僕は自分の話をしてみようかな、と思って。

「俺も、幼いころはあまり楽しい記憶はないな。王太子として育てられたけど…ほとんど、厳しくて。」

思わず苦笑いを浮かべると、アリシアが意外そうに顔を上げた。

「え? あのレオニードが…厳しく育てられた?」

「そうだよ。自分でも信じられないけど、あの冷たい王宮の中で、他の王族と比べて僕はちょっとだけ、自由に育てられたんだ。でもそれでも、親からの期待は大きくて…。」

僕は少しだけ息を詰める。

思い出したくなかったけど、彼女にはどうしても知って欲しかった。

アリシアがふと微笑んで、すぐに肩をすくめる。

「それでも、今こうして自由に話せるんですね。すごいことですよ。」

その一言に、僕は何だか胸が温かくなった。

アリシアの優しさって、なんだか本当にズルいくらいに心に沁みる。

彼女のその笑顔を見ていると、心がふっと軽くなる。

「お前は、本当に…。」

「どうしたんですか?」 

アリシアがにっこりとした笑顔を見せながら僕に問いかける。

その笑顔に、僕の心が一瞬で溶けてしまいそうだ。

「いや、君が思っているよりも、ずっと強いんだなって、改めて感じたんだ。」

それに、アリシアが照れくさそうに顔を赤らめる。

彼女が照れる姿を見ると、どうしても僕も照れてしまうじゃないか。

「そ、そんな…。レオニードこそ、すごく強いんじゃないですか。王太子だし…。」

その言葉を聞いて、僕は少し肩をすくめてみせる。

「強さって、ただ力強く振る舞うことじゃないんだろうな。」

「本当にそうですね。」

アリシアの目が少しだけしっとりとした光を放っている。

まるで、僕の心の中にある思いが、彼女の心に通じたみたいで。

今まで感じたことがなかった感情に、僕の胸はさらに温かくなる。

「レオニード、もしかして…」

アリシアが何かを言いかけたけれど、その言葉を引っ込めてしまったようだった。

その一瞬が、まるで時間が止まったかのように、二人の間に静かな空気が流れる。

僕もアリシアも、何となくお互いの気持ちに気づきながら、まだそれを言葉にできないもどかしさがあった。

「アリシア、俺たちは、こうして一緒にいられて本当に嬉しい。」

気づけば、僕の口からその言葉が出ていた。

そして、アリシアは一瞬驚いたように目を見開き、それからじんわりと笑った。

「私も…嬉しいです。」

その笑顔を見ると、僕はもう何も言えなくなった。

何となく、二人だけの秘密のような気がして、なんだか照れくさい。

でも、それでもいい。

だって、この瞬間、僕は心の中で確かな何かを感じていたから。
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