【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。

朝日みらい

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 彼はいつもと変わらない様子で部屋に入ってくると、いつものように優しくセーリーヌの頭を撫でてくれる。

「もうすぐ殿下の結婚式だね」

「ええ……」

 セーリーヌは頷いた。

 しかし、そのあとに続く言葉は何も思い浮かばない。

 すると、アドニス侯爵はいつもの微笑を浮かべながらこう言ったのだ。

「もしよければだが……私があなたを娶ってもいいだろうか?」

「え……?」

 突然の申し出にセーリーヌは目を丸くした。

 しかし、アドニス侯爵は真剣なまなざしでこちらを見つめている。

 冗談を言っているようには見えない。

 むしろ、こちらが断っても逃がさないという気迫すら感じられた。

「あ、あの……それはどういう……」

 セーリーヌは混乱してうまく言葉を発することができなかった。

 すると、アドニス侯爵はふっと表情を和らげると、再びセーリーヌの頭を撫でてきた。

「困らせてしまったようだね」

 そして、彼はゆっくりと立ち上がった。

 部屋を出て行くつもりだ。

 セーリーヌは慌てて彼を引き止めた。

「あ、あのっ!」

 アドニス侯爵はこちらを振り返ってくれたが、なんて言えば良いのかわからない。

 セーリーヌはしばらく口をパクパクさせていたが、やがて意を決して口を開いた。

「あの……お気持ちは嬉しいのですが……」

「そうか」

 アドニス侯爵は寂しそうに微笑んだ。

 それを見てセーリーヌの胸がチクリと痛む。

 しかし、ここで流されて彼の申し出を受け入れるわけにはいかないのだ。

「わたくしのような傷のある女を娶っても、あなたが恥をかくだけですわ」

「そんなことはないと思うが?」

「いいえ。わたくしは同情されているのは愛ではないと…心苦しいといいますか…」

「同情だと思うか」

 アドニス侯爵は苦笑を浮かべた。

 そして、再びゆっくりとこちらに歩み寄ってくる。

 思わず一歩後ずさった。

 だが、すぐに壁際まで追い詰められてしまう。

 アドニス侯爵はセーリーヌの顔の横に手をついた。

「私は本気だ。子供のころにあなたと会ってから、ずっとあなたを見てきた。ずっと好きだった」
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