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(4)彼との時間
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それからというもの、アリシアとレオネルは庭園で会うことが日常になっていった。
花を眺めながら語らう時間や、午後の紅茶を楽しむひとときは、アリシアにとって小さな幸せだった。
レオネルは、ただ話をするだけではなく、アリシアの言葉の一つひとつに耳を傾けてくれた。
彼の瞳はいつも穏やかで、どんなに小さなことでも真剣に聞いてくれる。
その態度に、アリシアの中で固く閉ざされていた心の扉が、少しずつ開き始めた。
「ねえ、レオネル。」
ある日、バラが咲き誇る庭園でアリシアは声を上げた。
「うん?」と、レオネルは手にしていたティーカップをテーブルに置き、彼女の方を向いた。
「私…なんだか、少しずつだけど、自分を許せるようになってきた気がするの。」
その言葉を聞いたレオネルは、一瞬驚いたように目を見開き、それから柔らかく微笑んだ。
「それはすごい進歩だ。君がどれだけ勇気を出してきたか、僕はちゃんと見ているよ。」
アリシアは少し照れたようにうつむいた。
そして、つい口をついて出た言葉があった。
「でも、本当に私に価値があるのかな…?」
その一言に、レオネルはすっと立ち上がり、彼女の正面に回り込んだ。
そして少し身をかがめ、アリシアの目をじっと見つめる。
「アリシア、君は自分で気づいていないだけだよ。」
「何に?」
「君は、とても優しくて、誰よりも努力している。僕にとって君がどれだけ特別か、伝えるのは難しいくらいだ。」
アリシアの顔がふっと赤くなった。
普段は冷静に見えるレオネルのこんな直球の言葉に、胸がどきどきと騒ぐ。
「そ、そんなに言われたら困るわ。」
「困らせるつもりはないさ。」と、レオネルは肩をすくめながら、少し悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「ただ、君が君自身をもっと大事にしてくれるといいな、と思うだけだよ。」
それから、しばらく二人は花の香り漂う庭で言葉を交わさずにいた。
鳥のさえずりだけが空間を満たし、その静寂がどこか心地よかった。
その数日後、アリシアとレオネルがいつものように庭で会っていると、ふと彼が問いかけてきた。
「アリシア、君はこれからどうしていきたい?」
突然の質問に、アリシアは驚いて目を見開いた。
「どうして、って…何を?」
「君がもっと幸せになるためには、どうしたらいいと思う?」
その言葉に、アリシアは戸惑いながらも答えを探そうとした。
けれど、すぐには何も浮かばない。
「私が幸せになるために…?」
「そう。」
レオネルは優しくうなずいた。
「君が本当に望むことは何だろう?」
アリシアは視線を少し遠くに向けた。
これまでの人生、彼女はいつも他人の期待に応えようと努力してきた。
家族、婚約者、そして貴族社会。
それが当然だと思っていた。
「私が望むこと…そんなの考えたこともなかったわ。」
「それじゃあ、これを機に考えてみないか?」
レオネルは微笑んでテーブルの上のティーカップを手に取る。
「君には、自由に未来を選ぶ権利があるんだ。」
その言葉に、アリシアの胸の奥が少しずつ熱くなるのを感じた。
「未来を選ぶ…」
彼女は何度もその言葉を繰り返す。
自分に未来を選ぶ権利がある。
それは、これまで一度も思い浮かばなかった考えだった。
「でも、私には何ができるんだろう?」
「まずは小さな一歩からだよ。」
レオネルは軽い調子で言った。
「たとえば、明日君がやってみたいことは何?」
「明日…?」
アリシアは考え込む。
そして、ふと笑みを浮かべた。
「実はね、ずっと作りたいお菓子があるの。母が昔、教えてくれたレシピで。」
「いいじゃないか。それを作ってみよう。そして、僕にも分けてくれると嬉しい。」
アリシアは少し照れくさそうに頷いた。
自分が明日やりたいことを口に出すだけで、こんなに気分が晴れるとは思わなかった。
花を眺めながら語らう時間や、午後の紅茶を楽しむひとときは、アリシアにとって小さな幸せだった。
レオネルは、ただ話をするだけではなく、アリシアの言葉の一つひとつに耳を傾けてくれた。
彼の瞳はいつも穏やかで、どんなに小さなことでも真剣に聞いてくれる。
その態度に、アリシアの中で固く閉ざされていた心の扉が、少しずつ開き始めた。
「ねえ、レオネル。」
ある日、バラが咲き誇る庭園でアリシアは声を上げた。
「うん?」と、レオネルは手にしていたティーカップをテーブルに置き、彼女の方を向いた。
「私…なんだか、少しずつだけど、自分を許せるようになってきた気がするの。」
その言葉を聞いたレオネルは、一瞬驚いたように目を見開き、それから柔らかく微笑んだ。
「それはすごい進歩だ。君がどれだけ勇気を出してきたか、僕はちゃんと見ているよ。」
アリシアは少し照れたようにうつむいた。
そして、つい口をついて出た言葉があった。
「でも、本当に私に価値があるのかな…?」
その一言に、レオネルはすっと立ち上がり、彼女の正面に回り込んだ。
そして少し身をかがめ、アリシアの目をじっと見つめる。
「アリシア、君は自分で気づいていないだけだよ。」
「何に?」
「君は、とても優しくて、誰よりも努力している。僕にとって君がどれだけ特別か、伝えるのは難しいくらいだ。」
アリシアの顔がふっと赤くなった。
普段は冷静に見えるレオネルのこんな直球の言葉に、胸がどきどきと騒ぐ。
「そ、そんなに言われたら困るわ。」
「困らせるつもりはないさ。」と、レオネルは肩をすくめながら、少し悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「ただ、君が君自身をもっと大事にしてくれるといいな、と思うだけだよ。」
それから、しばらく二人は花の香り漂う庭で言葉を交わさずにいた。
鳥のさえずりだけが空間を満たし、その静寂がどこか心地よかった。
その数日後、アリシアとレオネルがいつものように庭で会っていると、ふと彼が問いかけてきた。
「アリシア、君はこれからどうしていきたい?」
突然の質問に、アリシアは驚いて目を見開いた。
「どうして、って…何を?」
「君がもっと幸せになるためには、どうしたらいいと思う?」
その言葉に、アリシアは戸惑いながらも答えを探そうとした。
けれど、すぐには何も浮かばない。
「私が幸せになるために…?」
「そう。」
レオネルは優しくうなずいた。
「君が本当に望むことは何だろう?」
アリシアは視線を少し遠くに向けた。
これまでの人生、彼女はいつも他人の期待に応えようと努力してきた。
家族、婚約者、そして貴族社会。
それが当然だと思っていた。
「私が望むこと…そんなの考えたこともなかったわ。」
「それじゃあ、これを機に考えてみないか?」
レオネルは微笑んでテーブルの上のティーカップを手に取る。
「君には、自由に未来を選ぶ権利があるんだ。」
その言葉に、アリシアの胸の奥が少しずつ熱くなるのを感じた。
「未来を選ぶ…」
彼女は何度もその言葉を繰り返す。
自分に未来を選ぶ権利がある。
それは、これまで一度も思い浮かばなかった考えだった。
「でも、私には何ができるんだろう?」
「まずは小さな一歩からだよ。」
レオネルは軽い調子で言った。
「たとえば、明日君がやってみたいことは何?」
「明日…?」
アリシアは考え込む。
そして、ふと笑みを浮かべた。
「実はね、ずっと作りたいお菓子があるの。母が昔、教えてくれたレシピで。」
「いいじゃないか。それを作ってみよう。そして、僕にも分けてくれると嬉しい。」
アリシアは少し照れくさそうに頷いた。
自分が明日やりたいことを口に出すだけで、こんなに気分が晴れるとは思わなかった。
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