【完結】透明令嬢だったけれど、素敵な愛を知ることができました。

朝日みらい

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(8)幸せの気配 

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レオネルと過ごす日々は、アリシアにとってますます楽しいものになっていた。

最初は無理して作っていた笑顔が、今では自然に出てくるようになり、毎日のように心が温かくなった。

彼との会話が嬉しくて、彼の声を聞くだけで心が軽くなるのを感じるようになった。

ある日の午後、アリシアは図書館で静かに本を読んでいると、ドアが突然開き、レオネルが顔を覗かせた。

「アリシア、ちょっといいか?」

彼の声が響くと、アリシアは驚き、顔を上げた。

「え?あ、はい。」

アリシアは手に持っていた本を閉じて、レオネルを見た。

「君、また本を読んでるのか。いつも真面目だな。」

レオネルは肩をすくめながら、ニヤリと笑った。

「別に、読むのが好きなだけです。」

アリシアは少し照れくさそうに答え、恥ずかしそうに本をテーブルに置いた。

「それより、あなたは何をしてるんですか?」

「俺?」

レオネルはやや考えるふりをして、「君を困らせることを考えてるんだよ。」と、にっこりと笑った。

「またそれですか?」

アリシアは軽くため息をつきながら、思わずレオネルの腕を軽く叩いた。

「だって、君が笑ってくれるのが一番嬉しいからな。」

レオネルは腕を引き寄せて、突然、アリシアの近くに顔を寄せた。

「本当に困ってるのか?」

「ちょ、ちょっと!何をするんですか!」

アリシアは慌てて後ろに引いたが、レオネルの笑顔に思わず笑いがこぼれた。

「冗談だって。」

レオネルは肩をすくめ、面白そうに言った。

「でも、君が困ってる顔も可愛いんだな。」

「……そんなことないです!」

アリシアは顔を赤くしながら否定した。

「あなたがからかってばかりだから、困ってるんです!」

「それは悪いことか?」

レオネルはわざとらしく考え込むふりをしながら言った。

「君が俺に笑顔を見せるための最高の方法だと思うけど?」

その言葉に、アリシアはまた顔を赤くして、少し困ったように目を伏せた。

「…何だか、あなたが言うと、ちょっと不安になります。」

「不安?」

レオネルは驚いたように目を大きく開いて、「君が俺に不安になるなんて、どうしてだ?逆だろ?俺は君に不安を感じることなんて絶対ないぞ。」と、力強く言った。

「それは、あなたが優しすぎるからです。」

アリシアは小さくため息をつきながら言った。

「でも、私が本当に必要とされてるのか、たまに疑ってしまうことがあるんです。」

「必要とされてる?」

レオネルは真剣な表情でアリシアを見つめ、少し間をおいた。

「君がいない世界なんて、俺には考えられないよ。」

その言葉に、アリシアはびっくりして口を閉じた。

レオネルがこんなにも真剣に自分に向き合ってくれることが、ただ嬉しくて、心が温かくなるのを感じた。

「私も、あなたがいない世界なんて…」

アリシアはぽつりと言った。

レオネルは優しく微笑みながら、彼女の手をそっと取った。

「それなら、俺が君を守ってやるよ。ずっと一緒にいるから、安心して。」

アリシアはその手の温もりを感じ、少しだけ安心した。

これが、彼女がずっと求めていたものなのかもしれない。

愛されること、必要とされること。

少しずつ、それを信じられるようになり始めていた。

「でも、あなたが言うと、なんだか…照れますね。」

アリシアは少し顔を赤くしながら、恥ずかしそうに言った。

「照れる必要なんてないよ。」

レオネルはにっこりと笑って、さらに優しく手を握り返した。

「君が笑顔でいると、俺も嬉しいんだ。」

「笑顔…か。」

アリシアは自分の顔を触ると、自然と微笑んでしまった。

「でも、あなたのせいで、どんどん照れくさくなるんです。」

「それなら、もっと照れさせてあげようか?」

レオネルは意地悪そうに言って、アリシアの顔に近づく。

「だ、だめですよ!」

アリシアは急いで後ろに下がったが、その表情はすでに笑顔に満ちていた。

「あなたって、本当に…。」

「そうだな、俺は本当に君を困らせるのが得意だ。」

レオネルはニヤリと笑った。

「でも、それだけじゃない。君に幸せを感じてもらいたいからさ。」

「それなら…」

アリシアは少しだけ考え、「あなたが言う通り、笑顔でいることにします。」と、穏やかに言った。

「それでいいんだよ。」

レオネルは手をアリシアの肩に置き、優しく引き寄せると、ゆっくりと微笑んだ。

「君の笑顔が、俺の一番の幸せだ。」
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