【完結】透明令嬢だったけれど、素敵な愛を知ることができました。

(10)ふたりの秘密の場所

レオネルとアリシアが森で過ごした後、彼らはますます仲良くなった。

アリシアはレオネルといると、心からリラックスできるようになり、彼もまた彼女に気を使いながらも、自然体で接してくれるようになった。

ある日、レオネルはふとした瞬間に提案した。

「アリシア、少しだけ秘密の場所に行ってみないか？」

「秘密の場所？」

アリシアは目を丸くして答えた。

「そんな場所、どこにあるんですか？」

「うん。」

レオネルは少しだけ不敵な笑みを浮かべて、「僕が子供の頃、よく隠れて遊んでた場所さ。」

「…隠れて遊んでた場所って、どんなところですか？」

アリシアは少し警戒しつつも、興味津々で尋ねた。

「まあ、特に何かがあるわけじゃないんだけど…」

レオネルは少し誇らしげに言った。

「ただ、あの場所は誰にも教えたことがないから、君だけに教えてあげるんだ。」

アリシアはその言葉に、どこか胸が高鳴るのを感じた。

彼に特別な存在だと感じてもらえることが、うれしくて仕方がなかった。

「わかりました。」

アリシアはにっこりと笑いながら答えた。

「あなたに誘われたら、行かないわけにはいきません。」

レオネルはその笑顔にまた心が温かくなり、うれしそうに頷いた。

「じゃあ、行こう。」

二人は並んで歩きながら、少しだけ遠くへと向かっていった。

やがて、森の奥にある小さな丘に到着した。

その場所には、古びた石のベンチと、見晴らしの良い場所が広がっていた。

「ここが僕の秘密の場所だ。」

レオネルは少し照れくさそうに言った。

「誰にも言ったことがない場所だから、君も絶対に秘密にしておいてくれ。」

「もちろんです。」

アリシアはしっかりと頷き、「でも、こんなに素敵な場所、誰にも教えたくないのもわかります。」

「そうだろ？」

レオネルはにやりと笑った。

「ここから見る景色が、いつも僕を落ち着かせてくれるんだ。」

アリシアはその景色を見渡しながら、ふとしみじみとした気持ちになった。

「本当に素敵ですね…でも、どうしてここが特別な場所なんですか？」

「うーん、それは…」

レオネルは少し考え込んだ後、アリシアを見つめた。

「君と一緒に見たいからだよ。」

「え？」

アリシアは目を丸くして驚いた。

「私と？」

「そうだ。」

レオネルは肩をすくめて、照れ隠しに軽く笑った。

「君とこうして、秘密の場所を共有できてうれしいんだ。」

アリシアはその言葉に胸がきゅんとするのを感じた。

まるで夢のようだった。

レオネルが自分にそんなに心を開いてくれることが、信じられないくらい幸せだった。

「私も、嬉しいです。」

アリシアは小さく頷き、顔を赤くして言った。

「レオネルがこんな場所に連れてきてくれるなんて、思ってもみませんでした。」

レオネルはその言葉に少しだけ満足げに笑い、隣に座った。

「じゃあ、もっと君を驚かせてやろうかな。」

「また何かするんですか？」

アリシアは少し警戒しながら尋ねた。

「今度は、君の好きなことを教えてあげる。」

レオネルはにっこりと笑い、アリシアの目をじっと見つめた。

「君が本当に心から好きなこと、教えてくれるか？」

アリシアは少し照れながらも、しっかりと答えた。

「ええ、私が好きなことは…音楽です。歌うことが好きで、ピアノも少し弾けます。」

「音楽か…」

レオネルは頷きながら、ふと少しだけ不思議そうに言った。

「じゃあ、今度、君の歌を聴かせてくれ。」

「え…？」

アリシアは目を丸くして驚いた。

「私が歌うのを？」

「もちろん。」

レオネルは真剣な表情で言った。

「君の歌を聴いて、もっと君を知りたいと思ったから。」

その言葉にアリシアは胸が高鳴った。

音楽を愛する自分の一面をレオネルに見せることができるなんて、なんて幸せなことだろうと思った。

「わかりました。」

アリシアはにっこりと笑い、「でも、歌うのはちょっと恥ずかしいので、あなたも歌ってくれますか？」

「え？」

レオネルは目を見開き、驚きながら答えた。

「俺が歌うのか？」

「そうです。」

アリシアはにっこりと笑った。

「レオネルも歌ってくれるなら、私も勇気を出して歌います。」

「ま、待ってくれ！」

レオネルは手をひらひらと振りながら焦り、アリシアの前に両手を差し出した。

「歌なんて俺、全然得意じゃないから！」

「だから、あなたの歌を聴きたかったんですよ。」

アリシアは微笑みながら肩をすくめた。

「お互いに歌って、少しだけ恥ずかしさを乗り越えましょう。」

レオネルはその笑顔に再び心を掴まれた。

彼女がこんなにも可愛らしくて、素直に気持ちを伝えてくれることが、信じられないくらい嬉しかった。

少し躊躇しながらも、彼は意を決して言った。

「じゃあ、君の歌が素晴らしいなら、俺も歌ってみる。」

その言葉にアリシアは思わず顔を赤くして、「それなら、負けませんよ。」と、にっこり笑った。