【完結】透明令嬢だったけれど、素敵な愛を知ることができました。

(19)思いがけない再会

その日の午後、アリシアは庭を歩きながら、頭の中を整理しようと試みていた。

どうしても心が落ち着かない。

婚約者のこと、家のために結婚すること、そしてその後に続く自分の人生。

そのすべてが、何か重くて、どうしても胸を締めつけられるような気がしていた。

「どうしたんだ、アリシア？」

突然、声をかけられた。

アリシアはびっくりして振り返った。

そこには、レオネルが立っていた。

彼は軽く首をかしげて、少し驚いた表情でアリシアを見つめていたが、すぐににっこりと笑った。

「今日はどうしたんだ？なんだか元気がないように見えるけど。」

「え？」

アリシアは少しだけ息を呑み、思わず顔をしかめた。

「あ、うん…なんだか色々考えすぎちゃって。」

「また考えすぎてるのか？」

レオネルは肩をすくめて、にやりと笑った。

「僕もよく考えすぎるけど、アリシアの場合、ちょっと深刻すぎるよ。」

アリシアは自分があまりにも深刻になりすぎていることに気づき、軽く笑った。

「確かに…うーん、でも、なんだか色々考えなきゃいけないことが多すぎて、どうしたらいいかわからなくなっちゃったの。」

「ふむふむ。」

レオネルはしばらくアリシアを見つめ、真剣な顔で考えるようにしたが、すぐにニヤリと笑いながら歩み寄ってきた。

「でもさ、こんなふうに考えすぎるのは、まるでアリシアらしくないよ。もっと楽に考えればいいじゃないか。」

「楽に…」

アリシアは少し首をかしげながら、その言葉に何か引っかかるものを感じた。

「でも、結婚って、そんなに簡単に決められるものじゃないでしょ？」

レオネルは肩をすくめて、まるでそんなこと気にも留めないような素振りを見せた。

「もちろん、結婚って大事なことだと思うよ。でもさ、決して肩の力を入れすぎることはないんじゃないか？あんまり考えすぎて身動き取れなくなるより、もっとリラックスして、心の声に耳を傾けてみたら？」

アリシアはその言葉に少し驚いた。

レオネルがこんなに真剣に自分の話を聞こうとしていることに、少し心が温かくなったのだった。

「でも、私、結婚を決めるのは家のためにもなるから、簡単にはいかないんだよね。」

アリシアは顔をしかめながら、歩き続けた。

レオネルはその話に少しだけ顔を曇らせたが、すぐに元気に声を上げた。

「じゃあ、家のために結婚するって決める前に、アリシア自身が本当に幸せになれる道を見つけないとね。」

「うーん…」

アリシアはその言葉に少し考え込んだが、すぐに彼の真剣な目を見つめ返した。

「でも、それって、どうやって見つけるの？」

「うーん、難しい質問だね。」

レオネルはちょっと腕を組みながら、少し遠くを見つめる。

彼が何か考えている様子を見て、アリシアは少しだけ不安になる。

しかし、次の瞬間、レオネルがくすっと笑いながら言った。

「でも、こういうのって、案外気づいたときに簡単に見つかるもんだよ。」

「気づいたときに？」

アリシアは首をかしげた。

「それじゃあ、私は一体どうやって気づけばいいの？」

「それは君次第だよ。」

レオネルは微笑みながら、アリシアの肩に優しく手を置いた。

「でも、焦らずに、少しずつ答えを見つけていけばいいんだ。」

その言葉にアリシアは驚いた。

レオネルがこんなにも自分を気遣ってくれることに、心の中で小さな温かい気持ちが広がっていくのを感じた。

彼の肩の温もりが心地よくて、思わず力を抜いてしまいそうだった。

「ありがとう、レオネル。」

アリシアは微笑みながら、彼に向かって言った。

「どういたしまして。」

レオネルはにっこりと笑った。

「いつでも話してよ。僕はアリシアの味方だから。」

その言葉に、アリシアはまたも心の中でほっと息をついた。

レオネルの存在が、今、何よりも安心できる場所になっていると感じていた。

何も言わずに肩を並べて歩く時間が、何よりも大切に思えてくる。

「じゃあ、少し休憩しようか？」

レオネルが提案した。

アリシアは頷き、二人で庭のベンチに腰を下ろした。

静かな午後のひとときが、二人にとって、何気ないけれどとても贅沢な時間のように感じられた。