【完結】透明令嬢だったけれど、素敵な愛を知ることができました。

(31)朝の散歩

朝食を終えた後、アリシアはレオネルと一緒にコテージ近くの小道を歩くことにした。

爽やかな朝の空気を感じながら、二人は並んで歩いていた。

「なんだか、夢みたい。」

アリシアはふっと言った。

「夢？」

レオネルはアリシアを見て、少し驚いたような顔をした。

「どうして？」

「こんなに…」

アリシアは照れくさく言葉を探した。

「こんなに穏やかな時間が、私に訪れるなんて思わなかったから。」

レオネルはその言葉を受けて、思わずアリシアに手を伸ばした。

「そうか、じゃあ、この手を取ってくれる？」

「え？」

アリシアは目を見開いて、少し驚いた。

けれど、その顔がすぐに恥ずかしそうに紅潮した。

「な、何言ってるの？」

「君が僕と一緒にいるのが夢みたいって言ったから、なら、手を繋ぐのも夢じゃないってことだよね？」

レオネルは軽く笑いながら言った。

アリシアは少し考えた後、思い切って彼の手を取った。

「そ、そうね。夢じゃないわね…」

手を繋ぐと、その温かさに心がふわっと落ち着いた。

レオネルの手は思ったよりも優しくて、力強かった。

それがまた、アリシアの胸をドキドキさせた。

「ねえ、レオネル。」

アリシアは少し顔を上げて、彼に問いかけた。

「私、今、少しだけ怖いの。」

「怖い？」

レオネルは顔をしかめた。

「何が？」

「こんな風に、急に幸せになっていいのかって。」

アリシアは少し俯き加減で言った。

「私、こんなに優しくされることに、慣れてないの。」

レオネルはその言葉を真剣に受け止めると、彼女の手を握りしめた。

「大丈夫だよ、アリシア。君が幸せになるのは当然だ。それに、僕は君を絶対に離さない。」

「レオネル…」

アリシアはその言葉に、胸がいっぱいになった。

「ありがとう。」

その瞬間、レオネルはアリシアを少し引き寄せ、そっと額にキスをした。

「ずっと、君を守るよ。」

その一言に、アリシアの心は完全に溶けてしまいそうになった。

「うん…私も、あなたと一緒にいたい。」

アリシアは顔を赤くしながら答えた。

心の中では、もっとレオネルに触れたくてたまらない気持ちが広がっていた。

「じゃあ、これからずっと一緒だね。」

レオネルはアリシアの手を引きながら、ゆっくりと歩き始めた。

「一緒に歩こう。」

「うん。」

アリシアはその言葉に、ほんのり微笑みながら歩き出した。

二人の足音が重なり、静かな庭の中で、まるで時間が止まったかのように感じられた。

その後も、二人はしばらく庭を歩きながらおしゃべりを続けた。

レオネルがアリシアをからかうと、アリシアは顔を真っ赤にして答え、そしてまた、二人は笑い合う。

そんな日常の中で、彼らの距離はどんどん縮まっていく。

「ねえ、レオネル。」

アリシアがふと思い立ち、彼を振り返った。

「私は、あなたにもっと頼ってもいいのかな？」

「もちろんだよ。」

レオネルは微笑みながら、アリシアに近づいた。

「何でも頼んでくれ。僕は君のために何だってするから。」

アリシアはその言葉に、ますます胸が温かくなった。

「じゃあ、もっと…甘えてもいい？」

レオネルは驚いたような顔をしつつも、すぐににやりと笑った。

「甘えるのは得意なんだね、アリシア。」

「うるさいよ。」

アリシアは恥ずかしそうに顔をそむけると、レオネルはふっと笑ってその顔をじっと見つめた。

「でも、君が甘える姿、見てみたいな。」

レオネルは軽くアリシアの手を引き寄せ、今度は少し真面目な顔で言った。

「僕に、頼りきってくれてもいいんだよ。」

アリシアは一瞬言葉を失い、そしてようやく口を開いた。

「…じゃあ、頼るね。」

彼女は少し照れくさく言うと、レオネルの腕にしっかりと寄りかかってきた。

「うん、いいよ。」

レオネルは優しくアリシアを抱きしめ、二人はそのまましばらく静かに歩き続けた。

まるで世界が二人だけのものであるかのように感じられた。

こうして、二人の絆は日々深まっていく。

どんな些細なことでも一緒に感じることが、二人にとっては何よりも大切な時間だった。