【完結】透明令嬢だったけれど、素敵な愛を知ることができました。

(32)小さな冒険

数日後、アリシアとレオネルは午前中の散歩を楽しんだ後、思い立って森の小道を歩き始めた。

ここは普段、あまり人が訪れない場所のようだが、二人にとっては新たな冒険のようなものだった。

「ここ、なんだか秘密の場所みたいね。」

アリシアは辺りを見回しながら、楽しそうに言った。

「秘密の場所？」

レオネルは少し驚いた表情でアリシアを見た。

「それなら、俺もここが好きだな。君と二人きりの場所って感じがして。」

アリシアはその言葉に少し顔を赤くしたが、すぐににっこりと笑った。

「まあ、レオネルがそう言うなら、私もここが気に入ったわ。」

レオネルはその笑顔を見て、無意識に足を速めた。

「よし、じゃあ、この場所が本当に秘密だって証明するために、ここで何か面白いことをしよう。」

「え、面白いことって？」

アリシアはその言葉に少し不安そうな顔をした。

「例えば…君が僕に告白する番とか？」

レオネルは悪戯っぽく笑いながら言った。

アリシアはその言葉に目を丸くし、すぐに顔を真っ赤にした。

「な、なに言ってるのよ！」

「だって、君が告白するのはきっと面白いだろうなと思って。」

レオネルはからかうように言うと、アリシアの手を取って引き寄せた。

「でも、もちろん僕の告白だって負けてないよ。」

アリシアは困ったように顔をしかめた。

「あなたが告白するって、どういうことよ？」

レオネルは真剣な顔をして、アリシアをじっと見つめた。

「アリシア、君を好きだ。君が僕のそばにいることが、何よりも幸せなんだ。」

アリシアは一瞬言葉を失い、心臓が大きく跳ねた。

彼の真摯な眼差しが、どこか深い場所に響く。

「…私も、レオネル。あなたがいてくれるから、こんなに安心できるの。」

「本当に？」

レオネルは微笑みながら、少し近づいてきた。

「じゃあ、もっと僕を頼ってくれる？」

アリシアは少し照れながらも、彼を見上げて頷いた。

「もちろん。」

その瞬間、レオネルはそのままアリシアの手を握り、軽く引き寄せた。

「じゃあ、この場所から僕たち二人だけの秘密を作ろう。」

そう言って、アリシアの髪を優しく撫でた。

アリシアはその優しさに胸がいっぱいになり、思わず目を伏せた。

「レオネル…」

「ん？どうした？」

レオネルはちょっと驚いたように尋ねた。

アリシアは少し悩んだ後、勇気を出して言った。

「あなたと一緒にいると、なんだかすごく幸せ。ずっとこうやって、一緒にいたいと思ってる。」

その言葉にレオネルは驚き、そしてとても嬉しそうに微笑んだ。

「僕もだよ、アリシア。君といると、どんなに疲れていても、心が満たされる。」

二人はしばらく、そのまま静かな時間を過ごした。

周囲の静けさが、二人の間に流れる空気を一層特別なものにしていた。

レオネルがアリシアの手を軽く握り直すと、彼女は少しだけ顔を上げて笑顔を見せた。

「じゃあ、この場所が二人だけの秘密の場所ってことで。」

アリシアが少し恥ずかしそうに言った。

「うん、君と僕だけの場所だ。」

レオネルはしっかりと頷き、アリシアの手を取った。

「これからもずっと、君と一緒にいられるって信じてる。」

アリシアはその言葉を聞いて、心から温かい気持ちが広がるのを感じた。

「私も、ずっとあなたと一緒よ。」

彼女はレオネルに微笑みながら、手を強く握り返した。