11 / 12
第11章 真実の告白と選択
しおりを挟む
妹セレーネの叫び声と共に幕を閉じた夜会から、幾日も経たない夜のことでした。
学院でも街でも、彼女の名は「失脚した令嬢」として囁かれ、人々の噂の中心から落ちていきました。
私の心もまだ揺れていました。
妹が失脚した痛みか、それとも自分がようやく“見られる側”に立ってしまったことへの戸惑いか……。
そんな時でした。
静かな夜道を歩く私の前に、琥珀色の瞳の人が現れたのは。
「クラリッサ」
名を呼ばれるだけで胸が震えるのは、いつからだったでしょう。
「君を……ずっと守りたかった」
その言葉に足が止まりました。
「……でも、あの時は……妹に婚約を受け入れたでしょう……」
「家の意向だ。俺はただ従うしかなかった。それがどれだけ悔しかったか……君には伝わらなかったかもしれない」
彼は一歩近づき、その大きな手で私の頬をそっと撫でます。
熱が伝わり、思わず瞳を閉じてしまいました。
「クラリッサ。俺は、今度こそ君を一人にしない。誰が何を言おうと、君を選ぶ」
琥珀の色に映るのは揺るぎない誠意。
胸がじんと熱くなるのに、次の瞬間には別の青い瞳が思い浮かんでしまうのです。
「クラリッサ嬢」
振り向けば、そこに立っていたのはアレクシオン殿下でした。
月明かりの下、金糸のような髪がひときわ輝いておられます。
「殿下……」
「君はどれほど人知れず努力してきたのだろう。私は……その強さに心を打たれた」
殿下は私の手を取って、ゆっくりと指を重ねられました。
「君の意思を尊重したい。だが――もし許されるならば、君の未来に寄り添いたいと思っている」
その優しい声に、心が大きく揺さぶられます。
どうして私のような者が、殿下の言葉に胸を震わせているのか。
琥珀とサファイア。
どちらの瞳もまっすぐに私を見つめています。
「俺は君を幸せにするためなら、すべてを敵にしても構わない」ダリオ。
「私は君自身を見ている。他の誰でもなく、クラリッサを」アレクシオン殿下。
涙が自然と溢れてしまいました。
「どうして……こんなに、優しくしてくださるの……? わたしは……ずっと“不要品を押し付けられる姉”だったんです」
唇が震え、言葉がこぼれます。
その時ダリオは私を抱きしめ、殿下はそっと私の髪に指を触れられました。
「君は自分を過小評価しすぎだ」
「不要なのは“古い噂”であって、君ではない」
両方の声が、胸を貫いていきます。
私は涙を拭い、ゆっくりと顔を上げました。
「……もう、誰かが決めた道は歩きません。わたくしの未来は、わたし自身が選びます」
声は震えていましたが、確かに意思を持っていました。
どちらを選ぶのか。その答えは今すぐには言えません。
でも――。
「必ず、自分の心で決めますわ。その時が来ましたら……どうか受け止めてくださいませ」
私の言葉に、ダリオは強く頷き、殿下は優しく微笑まれました。
学院でも街でも、彼女の名は「失脚した令嬢」として囁かれ、人々の噂の中心から落ちていきました。
私の心もまだ揺れていました。
妹が失脚した痛みか、それとも自分がようやく“見られる側”に立ってしまったことへの戸惑いか……。
そんな時でした。
静かな夜道を歩く私の前に、琥珀色の瞳の人が現れたのは。
「クラリッサ」
名を呼ばれるだけで胸が震えるのは、いつからだったでしょう。
「君を……ずっと守りたかった」
その言葉に足が止まりました。
「……でも、あの時は……妹に婚約を受け入れたでしょう……」
「家の意向だ。俺はただ従うしかなかった。それがどれだけ悔しかったか……君には伝わらなかったかもしれない」
彼は一歩近づき、その大きな手で私の頬をそっと撫でます。
熱が伝わり、思わず瞳を閉じてしまいました。
「クラリッサ。俺は、今度こそ君を一人にしない。誰が何を言おうと、君を選ぶ」
琥珀の色に映るのは揺るぎない誠意。
胸がじんと熱くなるのに、次の瞬間には別の青い瞳が思い浮かんでしまうのです。
「クラリッサ嬢」
振り向けば、そこに立っていたのはアレクシオン殿下でした。
月明かりの下、金糸のような髪がひときわ輝いておられます。
「殿下……」
「君はどれほど人知れず努力してきたのだろう。私は……その強さに心を打たれた」
殿下は私の手を取って、ゆっくりと指を重ねられました。
「君の意思を尊重したい。だが――もし許されるならば、君の未来に寄り添いたいと思っている」
その優しい声に、心が大きく揺さぶられます。
どうして私のような者が、殿下の言葉に胸を震わせているのか。
琥珀とサファイア。
どちらの瞳もまっすぐに私を見つめています。
「俺は君を幸せにするためなら、すべてを敵にしても構わない」ダリオ。
「私は君自身を見ている。他の誰でもなく、クラリッサを」アレクシオン殿下。
涙が自然と溢れてしまいました。
「どうして……こんなに、優しくしてくださるの……? わたしは……ずっと“不要品を押し付けられる姉”だったんです」
唇が震え、言葉がこぼれます。
その時ダリオは私を抱きしめ、殿下はそっと私の髪に指を触れられました。
「君は自分を過小評価しすぎだ」
「不要なのは“古い噂”であって、君ではない」
両方の声が、胸を貫いていきます。
私は涙を拭い、ゆっくりと顔を上げました。
「……もう、誰かが決めた道は歩きません。わたくしの未来は、わたし自身が選びます」
声は震えていましたが、確かに意思を持っていました。
どちらを選ぶのか。その答えは今すぐには言えません。
でも――。
「必ず、自分の心で決めますわ。その時が来ましたら……どうか受け止めてくださいませ」
私の言葉に、ダリオは強く頷き、殿下は優しく微笑まれました。
15
あなたにおすすめの小説
断罪された私ですが、気づけば辺境の村で「パン屋の奥さん」扱いされていて、旦那様(公爵)が店番してます
さら
恋愛
王都の社交界で冤罪を着せられ、断罪とともに婚約破棄・追放を言い渡された元公爵令嬢リディア。行き場を失い、辺境の村で倒れた彼女を救ったのは、素性を隠してパン屋を営む寡黙な男・カイだった。
パン作りを手伝ううちに、村人たちは自然とリディアを「パン屋の奥さん」と呼び始める。戸惑いながらも、村人の笑顔や子どもたちの無邪気な声に触れ、リディアの心は少しずつほどけていく。だが、かつての知り合いが王都から現れ、彼女を嘲ることで再び過去の影が迫る。
そのときカイは、ためらうことなく「彼女は俺の妻だ」と庇い立てる。さらに村を襲う盗賊を二人で退けたことで、リディアは初めて「ここにいる意味」を実感する。断罪された悪女ではなく、パンを焼き、笑顔を届ける“私”として。
そして、カイの真実の想いが告げられる。辺境を守り続けた公爵である彼が選んだのは、過去を失った令嬢ではなく、今を生きるリディアその人。村人に祝福され、二人は本当の「パン屋の夫婦」となり、温かな香りに包まれた新しい日々を歩み始めるのだった。
義母と義妹に虐げられていましたが、陰からじっくり復讐させていただきます〜おしとやか令嬢の裏の顔〜
有賀冬馬
ファンタジー
貴族の令嬢リディアは、父の再婚によりやってきた継母と義妹から、日々いじめと侮蔑を受けていた。
「あら、またそのみすぼらしいドレス? まるで使用人ね」
本当の母は早くに亡くなり、父も病死。残されたのは、冷たい屋敷と陰湿な支配。
けれど、リディアは泣き寝入りする女じゃなかった――。
おしとやかで無力な令嬢を演じながら、彼女はじわじわと仕返しを始める。
貴族社会の裏の裏。人の噂。人間関係。
「ふふ、気づいた時には遅いのよ」
優しげな仮面の下に、冷たい微笑みを宿すリディアの復讐劇が今、始まる。
ざまぁ×恋愛×ファンタジーの三拍子で贈る、スカッと復讐劇!
勧善懲悪が好きな方、読後感すっきりしたい方にオススメです!
悪役令嬢に相応しいエンディング
無色
恋愛
月の光のように美しく気高い、公爵令嬢ルナティア=ミューラー。
ある日彼女は卒業パーティーで、王子アイベックに国外追放を告げられる。
さらには平民上がりの令嬢ナージャと婚約を宣言した。
ナージャはルナティアの悪い評判をアイベックに吹聴し、彼女を貶めたのだ。
だが彼らは愚かにも知らなかった。
ルナティアには、ミューラー家には、貴族の令嬢たちしか知らない裏の顔があるということを。
そして、待ち受けるエンディングを。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
家族の肖像~父親だからって、家族になれるわけではないの!
みっちぇる。
ファンタジー
クランベール男爵家の令嬢リコリスは、実家の経営手腕を欲した国の思惑により、名門ながら困窮するベルデ伯爵家の跡取りキールと政略結婚をする。しかし、キールは外面こそ良いものの、実家が男爵家の支援を受けていることを「恥」と断じ、リコリスを軽んじて愛人と遊び歩く不実な男だった 。
リコリスが命がけで双子のユフィーナとジストを出産した際も、キールは朝帰りをする始末。絶望的な夫婦関係の中で、リコリスは「天使」のように愛らしい我が子たちこそが自分の真の家族であると決意し、育児に没頭する 。
子どもたちが生後六か月を迎え、健やかな成長を祈る「祈健会」が開かれることになった。リコリスは、キールから「男爵家との結婚を恥じている」と聞かされていた義両親の来訪に胃を痛めるが、実際に会ったベルデ伯爵夫妻は―?
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる