【完結】婚約解消だったので、嫌われ者の侯爵に嫁ぐことにしました。

朝日みらい

文字の大きさ
14 / 15

第14章: アレクシスの告白 

しおりを挟む
あー、もう、どうしてこうなるんだろう。

あれから数日、私たちはようやくお互いの誤解を解けたと思っていた。

でも、アレクシスの様子がどうも変。

なんだか、心の中に重たいものを抱えているみたいで、いつも以上に黙っているし、目も合わさないし…。

あれだけ、私たちの関係が前進したって思っていたのに、どうしてこんなにぎこちなくなるんだろう。

それに、アレクシスの目が、まるで何かを決心したみたいに見えることがあって。

私はそれが気になって仕方ない。

でも、どうしてもそのことを聞けなくて、つい誤魔化してしまう。

ああ、でもこれじゃダメだ。

何かがモヤモヤしているうちに、また元のようにお互いの気持ちをすれ違わせるなんて嫌。

だから、今日は意を決してアレクシスに話しかけてみようと思う。

「あの…アレクシス、少し話せる?」

私は彼を呼んだ。

その瞬間、アレクシスがハッとして顔を上げる。

その顔は、やっぱり少し困惑しているようだった。

「セシリア…どうした?」

アレクシスはちょっとだけ警戒しているように見えるけど、それでも私の顔をじっと見ている。

「最近、何か変だよね?」

私は少し勇気を出して言ってみた。

どうしてこんなに緊張しているんだろう?

でも、こうでもしないと、ずっとモヤモヤしたままだ。

「変?」

アレクシスは少し目を細め、やっと理解したように私を見つめ直す。

「いや、特に何も…」

「うーん、でも、なんだか、あまり話してくれないし、いつも考え込んでいるみたいだし。」

私はちょっと無理に明るく言ったけど、どうしてもその隙間が気になる。

アレクシスが何を考えているのか、全然わからない。

アレクシスは少し黙って、しばらく私の目を見つめた。

それから、まるで深く息を吐くようにして、口を開いた。

「実は、セシリア…」 

アレクシスの声が少し震えているような気がして、私はちょっと驚く。

でも、何かを言いたいんだって伝わってくる。

「うん?」

私は少し心配そうに彼を見つめた。

「君に伝えたいことがある。」

彼の目が真剣で、でもちょっと恥ずかしそうで、まるで何かに踏み出すような気配を感じる。

「あ、もしかして、また誤解してるとか?」

私は冗談っぽく言ったけれど、その目が真剣だから、冗談のつもりで言ったのに、思わずドキドキしてしまう。

「いや、誤解じゃない。」

アレクシスはちょっと照れながらも、しっかりと私を見つめて言った。

「セシリア、俺は…」

うわ、ドキドキする…。

何かを言おうとしているアレクシスを見ていると、胸が高鳴る。

こんなに心臓がバクバクしているの、久しぶりだ。

「俺は、セシリアを…」

彼はそこで一度言葉を切った。

少しだけ顔を赤らめたアレクシスを見て、私は思わず息を呑む。

「好きだ。」

その一言が、まるで時間が止まったみたいに響いた。

アレクシスが私を見つめながら言ったその言葉。

心臓が止まりそうなくらい、胸がいっぱいになった。

「え?」

私は思わず言葉が出てこない。

でも、目の前のアレクシスの顔を見ていると、確かに彼の目には、私に対する気持ちが詰まっているのがわかる。

「好きだ。」

彼がもう一度、静かに繰り返す。

その言葉が私の心に染み込んで、まるで温かいものに包まれるようだった。

「アレクシス…」

私はその名前を呟いた。
 
心が溢れそうになるくらい、彼の気持ちが嬉しくて、なんだか涙が出そうになってしまう。

アレクシスは照れくさそうに顔を赤らめながら、私の目を見つめ続ける。

「これまで、ずっと君を支えてきたつもりだった。でも、実は俺が一番、君に支えられていたんだ。」

「アレクシス…」

私はその言葉に胸がいっぱいになり、彼の手を握った。

「俺が君を守りたいんだ、セシリア。」

アレクシスがその言葉を言うと、私の心の中で何かが爆発したみたいに、嬉しさが溢れ出す。

「私も…アレクシスのこと、大好きよ。」

 私は彼の手をしっかり握り返した。

その手の温かさが、私にとって何よりの安心感だ。

アレクシスはにっこりと笑って、少し私を引き寄せた。

「それなら、これからも一緒にいてくれるか?」

「もちろん。」

私はそのまま、彼に少し寄り添った。

アレクシスが少し驚いた顔をしたけれど、すぐに笑顔を見せてくれた。

「ありがとう、セシリア。」

アレクシスが私の名前を呼ぶと、その声がますます甘く聞こえた。

もう、これ以上の幸せはないかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約者を奪った妹と縁を切ったので、家から離れ“辺境領”を継ぎました。 すると勇者一行までついてきたので、領地が最強になったようです

藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。 家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。 その“褒賞”として押しつけられたのは―― 魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。 けれど私は、絶望しなかった。 むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。 そして、予想外の出来事が起きる。 ――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。 「君をひとりで行かせるわけがない」 そう言って微笑む勇者レオン。 村を守るため剣を抜く騎士。 魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。 物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。 彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。 気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き―― いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。 もう、誰にも振り回されない。 ここが私の新しい居場所。 そして、隣には――かつての仲間たちがいる。 捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。 これは、そんな私の第二の人生の物語。

元婚約者からの嫌がらせでわたくしと結婚させられた彼が、ざまぁしたら優しくなりました。ですが新婚時代に受けた扱いを忘れてはおりませんよ?

3333(トリささみ)
恋愛
貴族令嬢だが自他ともに認める醜女のマルフィナは、あるとき王命により結婚することになった。 相手は王女エンジェに婚約破棄をされたことで有名な、若き公爵テオバルト。 あまりにも不釣り合いなその結婚は、エンジェによるテオバルトへの嫌がらせだった。 それを知ったマルフィナはテオバルトに同情し、少しでも彼が報われるよう努力する。 だがテオバルトはそんなマルフィナを、徹底的に冷たくあしらった。 その後あるキッカケで美しくなったマルフィナによりエンジェは自滅。 その日からテオバルトは手のひらを返したように優しくなる。 だがマルフィナが新婚時代に受けた仕打ちを、忘れることはなかった。

「きみ」を愛する王太子殿下、婚約者のわたくしは邪魔者として潔く退場しますわ

間瀬
恋愛
わたくしの愛おしい婚約者には、一つだけ欠点があるのです。 どうやら彼、『きみ』が大好きすぎるそうですの。 わたくしとのデートでも、そのことばかり話すのですわ。 美辞麗句を並べ立てて。 もしや、卵の黄身のことでして? そう存じ上げておりましたけど……どうやら、違うようですわね。 わたくしの愛は、永遠に報われないのですわ。 それならば、いっそ――愛し合うお二人を結びつけて差し上げましょう。 そして、わたくしはどこかでひっそりと暮らそうかと存じますわ。 ※この作品はフィクションです。

幼馴染み同士で婚約した私達は、何があっても結婚すると思っていた。

喜楽直人
恋愛
領地が隣の田舎貴族同士で爵位も釣り合うからと親が決めた婚約者レオン。 学園を卒業したら幼馴染みでもある彼と結婚するのだとローラは素直に受け入れていた。 しかし、ふたりで王都の学園に通うようになったある日、『王都に居られるのは学生の間だけだ。その間だけでも、お互い自由に、世界を広げておくべきだと思う』と距離を置かれてしまう。 挙句、学園内のパーティの席で、彼の隣にはローラではない令嬢が立ち、エスコートをする始末。 パーティの度に次々とエスコートする令嬢を替え、浮名を流すようになっていく婚約者に、ローラはひとり胸を痛める。 そうしてついに恐れていた事態が起きた。 レオンは、いつも同じ令嬢を連れて歩くようになったのだ。

溺愛王子の甘すぎる花嫁~悪役令嬢を追放したら、毎日が新婚初夜になりました~

紅葉山参
恋愛
侯爵令嬢リーシャは、婚約者である第一王子ビヨンド様との結婚を心から待ち望んでいた。けれど、その幸福な未来を妬む者もいた。それが、リーシャの控えめな立場を馬鹿にし、王子を我が物にしようと画策した悪役令嬢ユーリーだった。 ある夜会で、ユーリーはビヨンド様の気を引こうと、リーシャを罠にかける。しかし、あなたの王子は、そんなつまらない小細工に騙されるほど愚かではなかった。愛するリーシャを信じ、王子はユーリーを即座に糾弾し、国外追放という厳しい処分を下す。 邪魔者が消え去った後、リーシャとビヨンド様の甘美な新婚生活が始まる。彼は、人前では厳格な王子として振る舞うけれど、私と二人きりになると、とろけるような甘さでリーシャを愛し尽くしてくれるの。 「私の可愛い妻よ、きみなしの人生なんて考えられない」 そう囁くビヨンド様に、私リーシャもまた、心も身体も預けてしまう。これは、障害が取り除かれたことで、むしろ加速度的に深まる、世界一甘くて幸せな夫婦の溺愛物語。新婚の王子妃として、私は彼の、そして王国の「最愛」として、毎日を幸福に満たされて生きていきます。

悪役令嬢カタリナ・クレールの断罪はお断り(断罪編)

三色団子
恋愛
カタリナ・クレールは、悪役令嬢としての断罪の日を冷静に迎えた。王太子アッシュから投げつけられる「恥知らずめ!」という罵声も、学園生徒たちの冷たい視線も、彼女の心には届かない。すべてはゲームの筋書き通り。彼女の「悪事」は些細な注意の言葉が曲解されたものだったが、弁明は許されなかった。

婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました

日下奈緒
恋愛
アーリンは皇太子・クリフと婚約をし幸せな生活をしていた。 だがある日、クリフが妹のセシリーと結婚したいと言ってきた。 もしかして、婚約破棄⁉

断罪された私ですが、気づけば辺境の村で「パン屋の奥さん」扱いされていて、旦那様(公爵)が店番してます

さら
恋愛
王都の社交界で冤罪を着せられ、断罪とともに婚約破棄・追放を言い渡された元公爵令嬢リディア。行き場を失い、辺境の村で倒れた彼女を救ったのは、素性を隠してパン屋を営む寡黙な男・カイだった。 パン作りを手伝ううちに、村人たちは自然とリディアを「パン屋の奥さん」と呼び始める。戸惑いながらも、村人の笑顔や子どもたちの無邪気な声に触れ、リディアの心は少しずつほどけていく。だが、かつての知り合いが王都から現れ、彼女を嘲ることで再び過去の影が迫る。 そのときカイは、ためらうことなく「彼女は俺の妻だ」と庇い立てる。さらに村を襲う盗賊を二人で退けたことで、リディアは初めて「ここにいる意味」を実感する。断罪された悪女ではなく、パンを焼き、笑顔を届ける“私”として。 そして、カイの真実の想いが告げられる。辺境を守り続けた公爵である彼が選んだのは、過去を失った令嬢ではなく、今を生きるリディアその人。村人に祝福され、二人は本当の「パン屋の夫婦」となり、温かな香りに包まれた新しい日々を歩み始めるのだった。

処理中です...