[完結]仮面の令嬢は、赤い思い出を抱いて眠る

刻まれた記憶

14

「ああ。死んでしまえばいい。メアリーじゃないお前なんて、俺は愛していないからな」

「ひどい人！ママの言った通り、死んでしまえばいいんだわ」
　少女は近くにあった尖った石を取り上げて、父親に向かっていく。

　しかし、か弱い腕でかなうはずはなく、あっという間に弾き飛ばされてしまう。
　そして少女を抱えると崖の際にまで運んで行く。

「どうだ、メアリー。お前の復讐はこれで終わりだ」

　その時、暗闇に隠れていたサムが石を振りかざした。
　頭を抱えて倒れこむリチャード。
　メリサの手を握ると、少年は安全な木陰にいるように指示した。

「どこへ行ってしまうの、サム？ねえ、ダメ。行っちゃダメ！」

　少年は無言のまま、再び崖に戻って行く。やがて鈍い水しぶきの音がした…。

　読み終わった光子は、頭が真っ白になっていた。
父、源治がリチャードで、私がメリサだったとしたら…。
　湖畔で起きた父の自殺が、第三者に殺されていたとしたら…。

　私はそれを全て目撃していたとしたら…。

「いままでメアリー役だった大門さんは、今度は娘メリサ役で再登場します。麗子は仮面の女役です。それではさっそく読み合わせをしましょう」

　登は一同が本から顔を上げるのを待ってから言った。