【完結】薔薇の仮面 ~演劇大好き少女は公爵様に溺愛されて~

朝日みらい

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第16章 炎に包まれる宮廷

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宰相派の反乱が勃発した。

宮廷はまさに修羅場になってしまった。

豪華なシャンデリアの輝きが、今や炎の赤に飲み込まれ、悲鳴と怒号が飛び交う混乱の渦 の中に私はいた。  

「ヴァルター……どこにいるの?」  

心臓が早鐘を打つ。彼は仲間たちと宰相と直接対決し、ついにその不正と悪事を暴こうとした――その知らせは耳に入っていた。でも、それだけじゃ終わらない。宰相派の兵士たちは王宮に火を放ち、まるで地獄の釜が開いたかのような惨状になっている。  

そんな中、私は劇団の仲間を探しながら、燃え盛る回廊を駆け抜けた。  

「ルイ! シモーヌ! 無事!?」  

「マリア、ここよ!」  

舞台仲間のシモーヌが煙の中から飛び出してきた。その顔はすすで汚れていたが、命がある。それだけで少しだけ安堵した。  

「他のみんなは?」  

「裏口に避難したわ! でもルイがまだ……!」  

その瞬間、背後で 轟音がした。振り返ると、柱が崩れ、炎がさらに広がっていく。  

「まずいわね……!」  

汗が背中をつたう。だが、私はこんなところで立ち止まるわけにはいかない。ヴァルターが命を懸けて戦っているのに、私ができることをしないでどうするのよ!  

「行くわよ、シモーヌ!」  

「えぇ!」  

ルイを探すためにもう一歩踏み出そうとした瞬間、鋭い声が響いた。 

「マリア・フォン・レーベンシュタイン!」  

その声に、背筋が凍った。  

振り返ると、そこには王妃が立っていた。  

彼女の目は冷たく、口元はきっちりと結ばれていた。炎の明かりが彼女の金の髪にゆらめき、まるで威圧感の化身のように見える。  

「……これは、どういうことでしょう?」  

ゆっくりと王妃が近づいてくる。  

私は彼女を真っ直ぐに見つめた。  

「見ての通り、劇団の仲間を助けようとしていただけですわ、陛下」  

「ずいぶんとお優しいこと。ですが、あなたには別の役目があるはず」  

王妃の声は冷え切っていた。  

「捕らえなさい」  

その一言で、兵士たちが私を取り囲んだ。  

「なっ――」  

「マリア!」 

シモーヌが叫んだが、剣を突きつけられた。  

「っ……!」  

私はギリギリと唇を噛んだ。ここで抵抗すれば、シモーヌが巻き込まれる。でも――。  

(ヴァルター……!)  

今、あなたはどこにいるの? 無事なの?  

「さて、あなたには少し静かにしてもらいます」  

王妃の静かな命令とともに、私は兵士たちに両腕を掴まれ、炎と煙の中、連れ去られた。  

ヴァルター、早く戻ってきて……!
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